うたわれちゃったもの   作:ポチ&タマ

11 / 13
六道九喇嘛モードの条件をすっかりド忘れしていました。
1話修正済みです。


第11話 傑物

【□月△日 晴れ】

 

 ハクオロたちの下剋上が始まって一ヶ月が経つが、手堅い敵将に攻めあぐねている。

 領主であるササンテは比較的簡単に排除出来たのだが、問題はそこからだ。本格的に朝廷が動き出した。

 兵士は雑兵レベルであるものの軍である以上向こうの方が少しだけ練度が高く、それを率いる将軍は歴戦の強者。

 何処となく我が自慢の弟イタチを彷彿とさせる、冷静沈着の武人。ウォプタルと呼ばれる馬に相当するダチョウの上から繰り出される槍捌きは中々のもので、第三次忍界大戦を経験している俺からして上位に位置する武力。

 そして、末端の兵まで手足の如く操り、戦況を読み適切な選択を取れる判断力。

 個の武力に加えて将としての力も備わった、そんな歴戦の猛者が我らの壁となって毎度立ちはだかるのだ。

 ベナウィといったか。木の葉にいた頃なら間違いなく暗部行きだろう。

 それを補佐する副将も中々の逸材。斬馬刀並みの大太刀を扱う筋骨隆々の大男で、見た目相応の切り込み隊長といった武人だ。

 小さな関所などを攻略して着実に本丸へ近づきつつも、後一手のところで攻めきれないのは、この二人によるものだろう。

 

 だが、腑に落ちないのがベナウィだ。

 いくら俺やオボロの助力があるといえど数では圧倒的に不利なのはこちら。ベナウィたちウォプタル隊の機動力を活かす作戦などいくらでもある。それこそ電撃作戦やヒットアンドウェイなど。

 なのに、毎回力量を測るように戦力を小出しにするのは何故だろうか。まるで何かを見極めようとするかのように。

 

 その疑問に確たる解が出たのが、つい昨日のこと。とある集落が軍によって蹂躙され火を掛けられたと、数少ない生き残りから知らせがあったのだ。

 急行してみると、辛うじて限界がわかる程度まで焼けた家々。そして黒焦げの亡骸たち。

 常に冷静なハクオロも『ここまでするのか、お前たちは……!』と厳しい目を、すでに待機していたベナウィに投げ掛けると。

 何か言い返そうとする副将クロウを制して『必要とあらば。……あるいは見せしめ、ですかね』と口にした。

 耳が良い俺でないと聞き逃してしまいそうなほど小さな呟きだったが、その発言からしてベナウィたちは関与していないと分かる。

 その後の情報で、件の集落を襲ったのはヌワンギ率いる一軍であることが判明したのだ。

 ヌワンギというと、エルルゥの幼馴染でヤマユラでの生活を忘れてしまったボンボン。そして、今も床に臥したまま目を覚さないトゥスクルさんに危害を加えた奴だ。

 どのような経緯か知らないが、どうやらヌワンギはベナウィと同等の地位を得たらしい。

 

 ハクオロを目の敵にして、無辜の民を手に掛けるヌワンギに、そんな彼を諌めるベナウィ。

 ベナウィの上司であるササンテもクズで、しかもこの国の皇であるインカラとやらは実兄だとか。

 この国の行く末を憂いているのは、軍属で命令から逆らえないベナウィたちなのかもしれない。

 もしそうであれば、戦を通じてハクオロの人となりを見極めようとしているのかも。

 そう感じ取った俺は、ハクオロに一つ策を提示してみた。

 次の戦でベナウィに投降を呼び掛けるのだと。

 

 

 

【□月□日 晴れ】

 

 義に厚いオボロは反対していたが、ハクオロは俺の提案を受け入れた。どっちにしろ謀反を起こした時点で行く着くところまで行くんだ。なら、後のことを考えて使える将をキープしておきたい。

 投降を呼び掛けられ驚いた様子のベナウィだが、結果的には応じなかった。

 それでも国の行く末を憂う発言や、ハクオロに国を背負う覚悟があるのか問うなど揺さぶりを掛けることはできたと思う。

 

 チキナロと名乗る商人がやって来た。

 商売の臭いを嗅ぎつけて来た、と言っているが、十中八九スパイの類いだろう。商人というのも本当だろうが、目線や話術、気配の配り方がスパイのそれだ。

 恐らく、ベナウィから頼まれてやって来たといったところか。人身売買以外ならなんでも取り扱うと公言しているんだ、こっちもベナウィたちの情報を仕入れさせてもらった。

 しかし、チキナロの言っていた【影の懐刀】とは俺のことか?

 商人だから噂話に敏い所もあるんだろうが、俺の存在も大分認知されてきたな。

 

 

 

【□月×日 曇り】

 

 カルラが中々エグい策を思いついた。

 ハクオロたちと袂を分かったように見せかけて、ヌワンギの軍へ接触。油断しているところを強襲し、門を開いて味方を砦の中へと引き込むという作戦。

 使い古された作戦だが何よりもエグイのが、選抜された者が俺とカルラ・ウルトリィの三名というところ。しかも俺に至っては変化の術でエルルゥに化けるという。

 油断を誘うためにあえて女人のカルラとウルトリィ、そしてヌワンギが絶賛片思いをしているエルルゥ扮する俺が『もうハクオロについていけない!』と女々しく逃げ込めば。

 ヒトとしてクズな上に将としての資質もないヌワンギのことだ。有頂天になって簡単に警戒を解くに違いない。

 これがベナウィたちであれば即警戒されることだろう。

 

 と、いうことで。これから這う這うの体で逃げ出した風を装い、ヌワンギたちの拠点へと向かう。

 変化の術のクオリティを知るエルルゥには嫌な思いをさせるな。

 帰ったらスイーツの一品や二品、なんとか知識から捻り出して献上するとしよう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。