うたわれちゃったもの   作:ポチ&タマ

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第2話 束の間の平和

【△月○日 晴れ】

 

 筆を執るのは、約三カ月ぶりだ。

 この三カ月、色々なことがあったため順を追って整理する。

 

 まず、三カ月前。

 ついにムッちゃんと逢うことが出来た。

 毎日念話で会話してるのに、顔を合わせたのは一度だけってのは寂しいから、ムッちゃんに内緒でコンタクトを取ったのだ。

 念話の感覚から九喇嘛か逆探してくれたおかげで場所はすぐに分かったのだが、そこは他のデコイたちが暮らしているような部屋ではなく、何故か廃棄所。

 部屋の前まで来ると、ムッちゃんの凄く焦った声が脳に響き渡り、照れ隠しだと思って部屋に入ったのだが。

 

 そこには、ホルマリンと思われる液体に浸けられた脳や内臓などが、瓶詰めされた状態で乱雑に並べられており、瓶にはそれそれラベルが貼られていて。

 ムッちゃんの声が脳に響くなか、手に取った瓶詰めの脳には『ロストナンバー63』の文字があり。

 此処に着てようやく、デコイたちが非人道的扱いを受けていると知った。

 

 それからの記憶はうろ覚えだが、怒りが天元突破した俺は施設にいるデコイの皆とムッちゃんたちロストナンバー、そしてアイスマンを神威空間へ保護し、完全体スサノオで施設を破壊しながら地上へ向かった。

 地上はすっかりポストアポカリプスとなっており、この世界の人間は生存できないとのことであったが、どうやら俺は例外のようで。

 取り敢えず施設から追っ手が来ることも考慮して、遠く離れた森林地帯に逃げ延びたのである。

 それが丁度三ヶ月前。

 

 その後、神威空間から解放したケモミミたちから感謝喝采雨あられを受けた俺。

 創造主の手前従順な振りをしていたが、モルモットと同じ扱いを受け、いつ廃棄処分されるか分からない、そんな恐怖から解放してくれたのだから『救世主』と呼ばれるのも仕方ない、とアイスマンに諭され。

 この地をケモミミ少女たちの楽園にするぞと意気込み、アイスマンや他のケモミミたちの力を借りつつ、集落を作り始め。

 ロストナンバーの中で交信出来るのはムッちゃんのみと知り、皆と一緒にお別れの挨拶をして。

 

 で、なんやかんやと健やか過ごすこと今日で三ヶ月。

 俺命名、ケモミミの里。

 村長、俺。

 相談役、アイスマン。

 住民、五十八名。

 

 何故か俺が村長になってしまった⋯⋯。

 

 

 

【△月△日 晴れ】

 

 研究所からケモミミ少女たちを拉致っていた時は、スピード重視だったため気付かなかったが、デコイと呼ばれるケモミミ少女たちは多種多様な見た目をしている。

 とはいっても差異があるのは主にケモミミとケモ尻尾だけだが、モチーフとなった動物の特性をある程度受け継いでいるようで、見ていて本当に心が温まる。

 

 ウサギの獣人は総じて小柄であり、一人でいると寂しくて泣いてしまう寂しがり屋。

 オオカミの獣人は逆に一人でいることを好み、よく皆が遊んでいるのを離れた場所から見守っているが、一緒に遊ぼうと無邪気な子供に手を引かれては口元をむにゃむにゃさせている。

 中には天使の翼を生やした獣人もいて、早熟な彼女たちはパット見、高校生くらいの見た目をしていて、何かとあれやこれやとお世話してくれるため、少しでも気を抜くとダメそうで恐い⋯⋯。

 

 村人の半数は年端もいかない幼女たち。天真爛漫で無垢な幼女たちの遊んでいる姿は、まさに天使の戯れ。

 研究者たちが彼女らに仕出かしたことは万死に値するが、ケモミミ少女たちを生み出した偉業は讃えるべきだと思う。

 が、少々我々異性との距離が近すぎるのは如何なものだろうか。

 アイスマンに対してもそうだが、皆が皆フレンドリーかつ妙にボディタッチが多いのが少し困りもので。

 腰に抱きついてきたりする幼女たちは微笑ましくて尊死で済むものの、腕を組んできたり背中から抱きついくる年長組は、女性の象徴がこれでもかと押しつけてくるため非常に生きた心地がしない。

 幼女とは呼べない女性とのスキンシップは、木の葉の頃から変わらず苦手だ⋯⋯。

 

 

 

【△月□日 曇り】

 

 アイスマン博識すぎる。

 食用となる雑草や山菜、農地の開拓方法。果てには手先も器用だから石器のナイフや斧、木の枝を削って槍なども作ってしまった。

 それらツールを使って野生動物を狩り、皮もなめすことが出来るのだから、アイスマンの知識には脱帽である。

 記憶喪失ということで以前どのような職についていたか不明だが、脳内にWIKiがあるのではと思うくらい物知りだ。

 

 俺はというと、木の葉の忍びとして培った体術や手裏剣術、気配の消し方や音を立てない歩き方など狩りに役立てられるスキルを伝授している。

 この世界でも問題なくチャクラを練られるが、他の者に分けることは出来ない。試しにアイスマンにチャクラを流してみたが、チャクラを全く感じないそうな。

 ちなみに、忍術が使えないと分かり非常に残念そうな顔をしていたアイスマン。聞けば忍術に並ならぬ憧れがあったのだそうな。

 

 

 

【△月☓日 晴れ】

 

 この地で暮らし初めて今日で半年。ケモミミ少女たちは人間と構造がやや異なるためか、妊娠から出産までのスパンが恐ろしく短いことが分かった。

  というのも、前々から良い雰囲気であったアイスマンとミコトがついに結ばれたのだ。

 どっちから告白したのかは分からんが、幸せそうな顔でお腹を擦っているミコトと、ゲッソリとした顔のアイスマンを見れば一目瞭然。

 そんなホワホワした笑顔のミコトのお腹が僅か一ヶ月で妊娠八ヶ月ほどの妊婦並みに膨らみ、たったの二ヶ月で出産に至ったのである。

 いやー、幸せそうなミコトたちを見るだけで、こっちも笑顔になっちゃうなぁ⋯⋯。

 だからオウカたちよ、そんな飢えた狼のような目でこちらを見ない。忍びである親の寝込みを襲っても無駄無駄無駄ァ!

 ムッちゃんも結託してサイコキネシスするな!

 

 

 

【□月○日 雨】

 

 今更であるが、ムッちゃんのことについて少し記しておこう。

 ファッキンマッドサイエンティストたちの手により脳のみとなったムッちゃんは、ホルマリン漬けとなった瓶の中でしか生きられない。

 ムッちゃんのように解体処分された子たちをロストナンバーと呼ばれ、ムッちゃんの他にも多くの子供たちが処されてしまった。

 マツオ氏が言っていたが、特殊な素体から造られたからかホルマリン漬け状態で生きてるのはムッちゃんのみ。

 そんなムッちゃんだが、自由を謳歌する仲間たちを見ていて辛くなったのか、終わらせて欲しいと嘆願された。

 この世界にやって来てから長く過ごしてきた友を失うのは正直心に来るものがあるが、ムッちゃんの心境も分からなくはない。

 また逢えるからしばしのお別れ、とやらはよく分からぬが、ムッちゃんの意を汲み介錯したのであった。

 

 まあ、その後、産まれたアイスマンとミコトの子がムッちゃんであったと知った時は、思わず宇宙猫になったがな!

 何でも自身にリィンカーネーションとやらの術を掛けたとのこと。いわばセルフ輪廻転生の術である。

 アイスマンとミコトの子として産まれたムッちゃんはそれまでの記憶を持っており、赤ん坊の頃から異様に俺に懐いていたのも得心がいった。

 喋れるくらいまで成長してからカミングアウトされ、今度こそ拙者のお嫁さんになると告げられた時は、アイスマンに肩を叩かれる羽目になったけど!

 

 そんな経緯があり、アイスマンたちの娘として転生したムッちゃんは、溢れんばかりの幼女パワーで今日も拙者の腰に突撃してくる。

 それはそうと、ミコトはケモミミ系女子であるのに、産まれたムッちゃんは有翼種特有の翼ーーそれも堕天使を彷彿とさせる漆黒の翼を持っているのは何故だろうか?

 

 

 

【□月△日 雨】

 

 ミミズがのたうったような字が綴られている。

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