うたわれちゃったもの   作:ポチ&タマ

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第4話 目覚め

【◯月◯日 晴れ】

 

 こうして日記をつけるのはつい昨日のようだが、日付を遡ると数百年ぶりらしい。

 俺自身あまりに環境が様変わりしたため、情報の整理も兼ねてここに記載しておく。

 

 俺の最後の記憶は、ミコトとオウカの悲惨な姿に、異形の姿へと変じたアイスマン。

 そして、そんな彼たっての願いを叶えるため【六道・地爆天星】で封じた。

 その後の記憶が曖昧なのだが、気付けば見慣れない作りの部屋。ベッドの上に寝ていたのだ。

 様子を見にやって来た有翼種の金髪美女ーーウルトリィさんは、俺が目覚めたことを知るや否や驚きの表情を浮かべ、その後朗らかな微笑みを浮かべるとまさかの低身低頭。

 まるで王様と対面するかのようにへりくだり、俺の目覚めを祝福してくれた。

 ここが何処で何故自分が寝かされていたのか、疑問に思う俺にウルトリィさんは丁寧に応えてくれて。

 あれからまさかの数百年だとさ。

 

 俺が研究施設から連れ出したケモミミたち。くそったれな追手の手により全滅したと思われたが、今ではかつての人間たちのように数を増やしたとのこと。大小様々だが国を起こしているとの話だから、総数一万人は超えているかもしれない。

 アイスマンを封じた俺は、その後何故かコールドスリープされていたようで。偶然、俺が眠っていたエリアを彼女の妹さんが発見。俺を見つけたらしい。

 その後、機械の故障かなにかでコールドスリープが解除されたのだが、何故か俺は目覚めず。

 今の今まで寝たきりだった俺を、ウルトリィさんたち手厚く看病してくれていたのだ? 目が覚めたら数百年の時を経ていたとか、おとぎ話みたいだぜ。

 

 ウルトリィさんから聞いた話では、俺たちのことも歴史の一つとして広く知られており、自分たちの出自も一部のヒトは知っているとのこと。

 彼女たちを創造した科学者ーー今では旧人類を【大いなる父】。そんな彼らから自分たちの祖先を救ったアイスマンを【ウィツアルネミテア】と謳っており。

 そして、アイスマンと並んで彼女たちを助け、教え導いた存在が、【救世主】こと俺ーーうちはウチワだとか。

 

 ただのケモミミ大好き幼女見守り隊なのに、ウルトリィたちからの扱いがキリストのそれなんよ……。

 信仰なんていらねえええええええ!

 

 

 

【○月☓日 晴れ】

 

 永い間コールドスリープしていたためか思った以上に体が弱っている。人の手を借りなければ満足に歩けないくらいだ。

 目覚めてからベッドの上での生活を余儀なくされている身ではあるが、カミュちゃんは頻繁に遊びに来てくれるし、ウルトリィさんも何かと気に掛けてくれるため寂しくはない。

 それに、ウルトリィさんから聞く話は新鮮だし、この時代の勉強なんかもさせてもらっているから退屈とも無縁だ。

 しかし、ウルトリィさんもカミュちゃんもこの国のお姫様だってのに、病人にかまけてばかりでいいのかね。

 

 この国はオンカミヤムカイ。大神ウィツァルネミテアの教義を守る宗教国家で「始まりの國」とも言われているらしい。

 争いや災いを防ぐことを使命とし、他國との仲介役を請け負う事から「調停者」とも呼ばれているとか。

 現代で言うところのヴァチカン共和国に相当する国だが、ウルトリィさんとカミュちゃんはなんとこの国の皇女様だ。そんな偉い人が日々付きっきりで面倒を見てくれるのだから、なんか場違い感が半端ない。

 救世主とか謳われて崇められてるけど、ただのケモロリが大好きなだけの忍びなのに⋯⋯。

 

 しかし改めて思うが、皇女姉妹は凄まじい別嬪さんだ。

 姉のウルトリィさんは、腰の高さまで金髪が伸びており、日の光に当たると比喩ではなく物理的にキラキラと輝いていらっしゃる。

 天使を彷彿とされる白翼は美しく、その立ち居振る舞いは気品と慈愛に溢れ、老若男女問わず多くのヒトたちから畏敬の念を集めているようだ。

 隠しきれぬ聖母のような優しさを醸しながら、親身に俺の世話を焼いてくれる。頭の上がらないヒトである。

 

 そして、そんな彼女の妹である、カミュちゃん。

 彼女を一目見た時は驚いた。

 まだ記憶に新しいあの子ーームッちゃんにそっくり、というか瓜二つなのだ。

 純白の有翼種にして珍しい漆黒の翼や、肩の高さまである群青色の髪に、その声まで。

 唯一にして最大の違いは表情くらいなもの。あの子は感情の起伏を表に出さない傾向にあったが、カミュちゃんはその真逆の天真爛漫。

 心で感じたことを素直に表に出し、全身でそれを表現するような無邪気さがある。

 

 当然、カミュちゃんがムッちゃんでないことは百も承知。あの子の遺伝子を受け継いでいるのは確かだろうが、カミュちゃんはカミュちゃんだ。

 そんなカミュちゃんは俺の第一発見者でもあり、事あるごとに構ってもらいに来る。

 中でもアイスマンやミコトたちとの暮らし、嘗ての思い出が気になるようで、よく目を輝かせながらせがんでくるな。

 そのたびにウルトリィさんにやんわりと嗜められ、それに待ったをかけた俺が懐かしみながらあの頃の思い出を言って聞かせる。

 そんな穏やかな時間を過ごしている。

 

 

 

【○月○日 曇り】

 

 あれから一週間。

 ウルトリィたちから必死にやめるように懇願されるも、このくらい全然大丈夫だからと押し通したリハビリのおかげで完全回復。九喇嘛の回復力がなければもう少し時間が掛かっただろう。

 チャクラも問題なく練れるため、足裏のチャクラ吸着のみで崖を上り下りするリハビリは中々だった。山肌が結構脆いから加減を誤ると頭から真っ逆さまなんだよな。

 まあ、このリハビリをしてからウルトリィの監視の目が厳しくなったんだけど。水面歩行の行だけでも「お願いですからお止めください。溺れてしまったらどうするのですか」と困った顔で懇願してくるからなあ。

 

 一方のカミュちゃんは、チャクラを用いた摩訶不思議な光景がとても興味深いらしく、逆にもっと見せてと催促してくる。

 忍術の教えを乞うてきたけど、そもそも彼女たちはチャクラを感じ取れないからなぁ。

 でもカミュちゃんも法術の扱いに長けてるから、それらを応用して再現出来ると思う。

 法術は俺も興味のある分野だからカミュちゃんやウルトリィさんから教わってるし、最近では治癒系の新術を開発に勤しんでたり。

 

 俺のお世話係と称しても過言ではないほど世話を焼いてくれるウルトリィさんに、お兄様と呼び慕ってくれるカミュちゃん。

 俺の勘違いでなければウルトリィさんたちも俺に気を許してくれているようで、この一週間で随分と仲が深まったと思う。

 ウルトリィさんたちだけでなく、お城勤めをしている侍女さんや色々な文献を調べている学者さんたちも親しくしてくれている。

 俺が救世主その人なのは明言していないが公然の秘密となっているようで、最初は卑屈に感じるほど低身低頭の姿勢で敬っていたが、俺自身のお願いともあって少しだけ態度を難化してくれた。

 お陰様で今では軽い会釈で留めてくれている。

 まあ、ウルトリィさんたちの働きもあるんだろうけどな。

 

 空を見上げると、月に寄り添うような形で小惑星が浮かんでいるのが確認できる。

【六道・地縛天星】で封じたアイスマンがあそこに居るんだな。眠っている間に術が解けなくて良かった。

 今も術の維持のためチャクラが消費されているのを感覚で理解できるが、消費量は思っていたよりずっと少ない。

 人柱力のデフォスキルである常時チャクラ自動回復バフの方が上回っているから、意識を失っている間も維持できていたのだろう。

 

 この時代のヒトたちの暮らしを見てみたい、という俺の希望から、ウルトリィさんとカミュちゃん姉妹で少しだけ城下を散策させてもらった。

 翼を広げて自由に空を飛んでいる人々。ウルトリィさんやカミュちゃんに気がつくと大きなざわめきが起こり、皆手を合わせてお辞儀をする。

 手を振り返す姉妹たちに挟まれる俺も当然注目の的となるが、ウルトリィさんが大切な客人であると告げると、俺に対してもお辞儀をしてきた。

 俺も彼らに習ってお辞儀を返す中、ウルトリィさんが小言で教えてくれる。

 どうやら俺が救世主であることは上層部のヒトしか知らないらしい。

 

 見渡す限りはレンガで出来た建物や、岩盤をくり抜いた洞穴式の家が目に入る。ナルトの世界で言うところの砂の国に近いかな。

 だが、こちらは緑に囲まれているため空気が非常に澄んでいる。

 市場にも顔を出させてもらったが中々活気があるね。売っている品はどれも見覚えのないものばかりだけど。

 日頃の感謝を込めてアクセサリーとかプレゼントしたいところだが、生憎この身は無一文。無念である。

 

 いつか彼女たちに報いたいな。

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