うたわれちゃったもの   作:ポチ&タマ

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第5話 ラルマニオヌ国

【□月□日 晴れ】

 

 この地で目覚めてから一ヶ月。コールドスリープの影響はすっかり抜け落ち、此処での生活にも慣れてきた。

 木の葉での暮らしや記憶の奥底に眠る現代知識から、色々と政の助言をしてきたためか、この国の皇でありウルトリィさんたちの親父さんからヴンダーの役職を与えられた。

 現代の言うところのアドバイザーのようなもので、ちゃんと給金も出るためようやくウルトリィさんの保護から抜け出せた感じ。

 まあ、金銭面では脱却しただけで向こうの過保護っぷりは健在だけどね。

 そんか感じで、今はオンカミヤムカイに拠点を置きつつ、見聞を広めるため近隣を見て回っている。

 のだが、なんか行く先々で歓迎を受け、宴や祭りを開かれるのは何故なんだ?

 

 今思うと、始まりはただの散策だった。

 この時代の人々の暮らしが気になり、ウルトリィさんたちに付き添われながら城下街に出た日のこと。

 道行く人々は何故か俺を見ると、涙を流して顔を手で覆い、一声掛けるとひどく畏まって土下座をする。

 なんだなんだと集まる人々たち。波紋が広がるように俺を敬い崇め始め。

 いつかの間にか用意してあった神輿の上にライド・オンである。

 

 俺が【救世主】本人であるのは公然の秘密だが、あの皇女姉妹が畏まって付き従い、あまつさえ見たことのない衣服ーー忍装束ーーに身を包んでいる。

 きっと、あの方こそが王城で噂の救世主様に違いない! という図式が出来上がっているのでは、とはウルトリィさんの言。

 お兄様のオーラを感じ取ったんだよ、とはカミュちゃんの言。

 どっちが正しいのか分からないが、ただの散策が気づけば【復活なされた救世主様のお披露目】の会に様変わりし。

 事のあらましを聞いた皇様から、近隣の村々へ顔を見せてはくれまいかと懇願された。

 

 大いなる救世主様に失礼です、と諫めてくれるウルトリィさん。皇様自身も自覚はあるのか非常に申し訳なさそうにしていたが、俺としては断る理由はなく。

 むしろ、かつての時代からどう成長したのか興味津々で。二つ返事で頷いたのである。

 オンカミヤムカイの人々は有翼種だから、ケモミミじゃないんだよなぁ。

 まあ彼女たちの翼も触り心地がいいけど、ケモミミと尻尾でしか摂取できない成分が存在するから、やっぱりケモミミ美少女に癒されたい。

 まあ、ウルトリィさんやカミュちゃんが好意で触らせてくれた翼は絹のような触り心地で、あれはあれで悪くないけどね。

 

 

 

【□月☓日 晴れ】

 

 調停者としての役割があるウルトリィたちだが、そもそも調停者とは何なのか。

 詳しい話を聞いたところ、紛争当事者の間に入って公平・中立な立場で話し合いを仲介・支援し、双方の合意による円満解決を目指す役割らしい。ネゴシエーターみたいなものか。

 この時代の世界地図を見せてもらったが、大まかな形は地球のそれから逸脱していない。もちらん日本は存在しないが、向こうの日本地図を参照とするならオンカミヤムカイは静岡県辺りかな。

 当然周囲には大小様々な国があり、戦争も勃発しているようだ。

 ウィッアルネミテア教の総本山であるオンカミヤムカイが戦争をふっかけられたことはないが、周囲で起こるいざこざに介入しては、まあまあまあと落ち着かせているらしい。

 ケモミミ美少女を愛する心に一片の曇りがない俺としては野郎共が倒れるのはともかく、無辜の少女たちが悲しむのは看過できない。俺の名前で交渉が滞りなく進みら戦争を回避できるならと、神輿に乗った甲斐があるというものだ。

 

 そういえば、この前ラルマニオヌという国に行った時の話しだ。

 世界に影響を与える超大国として知られ、戦闘民族が収めており色々な国に喧嘩をふっかけては併呑して領地を拡大している国。

 なんか最近もまた戦争して勝ったようで、その度に争い事はやめましょうと調停者が派遣されているとのこと。

 今回はウルトリィが調停者として出向き、皇のお願いもあって同行することになった。

 

 オンカミヤムカイとは違った文化、国民性。何よりも驚いたのは、彼らがオウカと同じケモ耳と尻尾を持っていたのだ。

 かつて、俺の寝床を襲ったお転婆な女の子。

 あの頃、オウカ以外に同じケモ耳と尻尾を持つ女性は居なかったから、ラルマニオウの民たちは間違いなく、オウカの子孫である。

 だが、あの夜で彼女は子を授かることなく、その後は科学者たちの餌食となってしまった。オウカの子供は存在しないはずだが、何故子孫が居るのだろうか⋯⋯。

 

 

 

【□月◯日 晴れ】

 

 ラルマニオヌ国にはオウカと同じギリヤギナ族の他にシャクコポル族という、ぶっちゃけウサギの獣人族がいる。

 垂れたウサ耳が非常に愛らしいキュートな種族なのだが、残念なことに彼ら彼女らの多くはギリヤギナ族から差別を受けていた。

 力こそすべてな実力主義者のギリヤギナ族からすれば、戦闘力が劣るシャクコポル族は軟弱な存在。戦でもあまり活躍しないこともあり、さらに差別意識に拍車を掛けているらしい。

 

 ケモミミ少女が同じケモミミ少女を虐げるなんて、あってはならない。

 お説教をかましたいところだが、実力主義という思想に基づく価値観を変えるのは非常に難しく、イジメはいけませんと説いても偽善者と切って捨てられた。心が死んだね……。

 それでも守るべきケモミミ少女たちが貶し合うのは見るに耐えない。

 偽善であろうとも我が愛に誓って仲裁に入り、力がすべてではなく可愛いが正義なのだと教え込んだ。

 野郎には拳で、女性には善意に訴えるようにこんこんと、そして少女たちにはラブ&ピースの想いを熱意とともに。

 結果、手応えは三割程度といったところか。

 もちろん、イジメられ続けた結果だろう、諦観の念を抱いているっぽいシャクコポルたちにも反抗しろと、やられっぱなしで悔しくはないのかと少しだけ説教。

 負け犬根性が完全に根付いたら、近い将来絶対に後悔するからな。

 

 

 

【□月□日 晴れ】

 

 難航すると思われた交渉だが、思いの外スムーズに事が運んだらしい。

 なんでも、俺という存在はこの国の人にとっても特別なようで、俺が言うならと二つ返事で頷いたそうだ。

 いや、同行してるだけで別に大した発言はしてないんだが。

 まあ、争いがなくなるのはいいことだから、重々しく頷いておいたけど。

 しかし、オンカミヤムカイとは別ベクトルだなここのヒトは。

 向こうでは一歩下がった位置で静々と付き従う従者チックな言動が多いが、こっちは敬語を使っているもののガハガハ笑いながら首に腕を回してくる暑苦しい猛者どもという印象。

 ラルマニオヌの人たちとの初交流が模擬戦だからなぁ。

 オウカの子孫なだけあって凄まじい膂力に敏捷性を誇るラルマニオヌ人。自力が違うため、チャクラで身体能力を底上げしないと勝てないほどだ。まあ、体術はまだまだだったけどね、

 

 姫様通しで交流があるのか、この国の皇女であるカルラゥアツゥレイさんとウルトリィさんは仲が良く、会話に花を咲かせていたのだが題目が俺なのはちょっと小っ恥ずかしい。

 しかもカルラゥアツゥレイさんの話によると、彼女たちはオウカと俺の血を継いでいるしく、頻りに『寵愛を賜りしオウカ様の子孫ですもの、主様の正当なる後継者はわたくしたちではなくて?』とウルトリィを煽り。   

 彼女も彼女で『言い伝えによるとウチワ様から一番信を得ていたのは、始祖様ーーつまりはムツミ様とのことです。きっとオウカ様と同じく寵愛を得ていたことでしょう』と真っ向から反論。

 

 オウカには寝込みを襲われた上に、俺の認識だと彼女との間に子を儲けてはいないし、ムッちゃんは確かに付き合いは一番長いが、そもそも彼女はロストナンバーだった頃はボディがなく、セルフ転生してからは幼女だからなあ。

 各々の主張に心の中でツッコミを入れながら、どちらが真なる後継者に相応しいか丁々発止を繰り広げている中、気配を殺して背景と一体となる俺であった。

 

 俺のケモ耳と尻尾好きな点はラルマニオヌのヒトたちも認知しているようで、楚々とした態度でありながら何気に近づき、耳や尻尾を触らせようとしてくるカルラゥアツゥレイさん。

 メッチャ触りたい、ものすごく触りたいが、彼女はウルトリィと年の瀬が変わらない。つまりは二十歳。

 これがロリであれば、臆することなくその触り心地を堪能できたであろうが、相手は年頃の女性だ。

 つまりはセクハラ&パワハラに該当する可能性があるし、やっぱり少女ではなく女性を相手にするのは苦手。  

 日常的な会話とかは大丈夫だが、色事や恋愛を匂わせるとなると恥ずかしくて無理!

 なので、カルラゥアツゥレイを始めとしたケモ耳女性たちの誘いを断り、野郎どもはそもそも論外なのでその辺に投げ飛ばしつつ、ラルマニオウに滞在する間はほぼ逃げ回る羽目となるのだった。

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