【□月○日 雨】
ラルマニオヌ国に滞在したのは一週間程度だったが、その間にまさかの内乱勃発である。
内乱が生まれる下地はもともとあった。実力主義者のギリヤギナ族が治める実力至上主義社会の国。
長年戦が苦手なシャクコポルの多くは、ギリヤギナの人々から蔑まれ差別を受けていた。
潜在的な不満や不安、怒り、憎しみが募りいつ爆発しても可笑しくない状況だったのだろう。
争いはよくない、差別なんて以ての外だ。
力でなく思いやりを持ち、他者を尊重しなさい。
与えた恩はいつか倍になって返ってくるものだ。
イジメ現場を見つけては耳障りの良い言葉を並べ、時には本気でお説教をかました。
七割程度のヒトは『あなた様かそう仰せになるのであれば』と従い、表面上はこれまでの付き合いかたを変えてくれた。
心の奥底でどう思っているかはともかく、行動が伴っているのならいつか本当になるときが来るだろう。そうウルトリィにしたり顔で語った翌日のことである。
残りの三割を引き連れたのか、そこそこのシャクコポル族を引き連れた青年が、ラルマニオヌ国からの独立を宣言。
血走った目で『シャクコポルに栄誉を!』と腕を振り上げているのだ。
当然、独立宣言は却下され、良い感じの関係を再構築しつつあったシャクコポルたちも反対に賛成。
そしたら『ならば是非もなし! オンカミオンビタイカヤンよ、我らに力を与え給え』と叫ぶと何処からとも無く、武者ロボットが登場。
そう、あの憎き科学者たちが使っていたロボットである。
この時代からしてみればまさしくロストテクノロジーそのもの。
ロボは全部で十体程度だったが、凄まじい膂力を持つ戦闘民族のギリヤギナの戦士でも手に負えず、あっという間に戦火の火は燃え上がったのだ。
国賓である俺たちはすぐに国外へ逃がそうとするカルラゥアツゥレイたちだが『こういう時に調停者は居るのです』とウルトリィたちは残る気満々。
調停者としての任を果たそうする彼女たちを置いて俺が逃げる訳がなく、俺もウルトリィたちと一緒に『争いはいけまへんで!』、『争うのは食事の席だけでよろしい!』と仲裁に入るも、完全に戦気に呑まれた人々に届くわけがなく。
血を流すお父ちゃんを見て涙を流す幼女に堪忍袋の緒が切れた。
戦火の中央に跳び立つと須佐之男を顕現。旧時代のロボで無双するシャクコポルたちには『メッ!』と須佐之男デコピンを見舞い、チャクラを伴った咆哮ーー【忍法・天地咆哮】で場の空気を支配した。
その後、顔面を蒼白にした両者に須佐之男越しでお説教。
それが大分怖かったのか双方矛を納めると『長らく虐げてきた我らにも責がある』と元皇が認め、反乱軍のリーダー格も戦を起こしたことを謝罪。
仲直りの握手を交わすトップたちだが、たまらないのは戦火に巻き込まれた無辜な民である。
早期の段階で終戦したとはいえ、死者は百を越える。
幼女たちの痛々しい泣き声に、俺は禁じ手を切った。
即ち、死者蘇生。神の御業そのもの。
輪廻眼の【外道・輪廻転生の術】は自身の命と引き換えに死者をこの世に喚び起こす術である。閻魔王の力も使えば損壊した肉体を修復することもできる。
ハイリスクハイリターンの術だが、コストをチャクラで賄うことでノーリスクでの発動が可能。
まあ、初代尾のない尾獣のチャクラと九喇嘛のそれを足してようやくトントンだから、その後回復まで半年近くは掛かるがな!
まあ、悲しみの声が聞こえなくなったなら、禁じ手を切った甲斐があったもいうものだ。
【○月□日 曇り】
前回の日記から一ヶ月も空いてしまった。
ようやく調子が戻ってきたから、その後の話を書くこととする。
シャクコポル族による反乱が起こったラルマニオヌ国だか、責任を取って元皇が引退。本来なら第一皇女であるカルラゥアツゥレイが後を継ぐはずだが、前皇は後任をシャクコポル族に渡したらしい。
これを以てシャクコポルとギリヤギナの和睦とした新皇は、国号をクンネカムンと改めた。
あの戦争で無双の働きを見せたロボは国防の要として、目を光らせているとのこと。
そこまではいい。さもありなんという流れ、非常に腑に落ちる話だ。
だが、神と崇がめられるのは解せぬ。
何でも【外道・輪廻転生の術】で死者蘇生したことが決定打になったらしい。
古から語られる伝説の解放者その人と言われても今一ピンと来なかった人々も、死者が蘇る奇跡を目の当たりにしては疑いの余地もないとのことで。
すっかりラルマニオーーいや、クンネカムン国の人々は俺を【大いなる解放神】と呼び信仰心を捧げているとの話。
その証拠として、元皇族であるカルラゥアツゥレイとシャクコポル族の姫であるクーヤちゃんが巫女として与えられた。
いや文字通り、まるで贈呈品のように所有権を譲渡されたのだ。人身御供の何物でもないが、カルラゥアツゥレイーーいや、カルラ本人は納得しているようで、『巫女として主様の所有物になれるなんて、光悦の至りですわ』とむしろ向こうからグイグイくる始末。
ていうか、クーヤちゃんに至っては一歳の幼女なんですが。
彼女の教育係であるご老人ゲンジマルさんから『教育のため、しばし暇を頂きまする』と告げられているためクンネカムンで英才教育を施されているが、まさに洗脳教育。
ぶっちゃけありがた迷惑なのだが、オウカの面影があるカルラさんに『わたくしは必要ではありませんの⋯⋯?』と潤んだ目を向けられるとそれ以上拒むことが出来ず。
いつの間にかお側付きのポジションを獲得していたウルトリィさんはウェルカムなようで、我が事のように喜んでいた。
そんなこんなで、ラルマニオ国もといクンネカムン国での出来事はまたたく間にオンカミヤムカイに轟き、帰国した際にはまるで英雄の凱旋のように人々が集まり拍手喝采で迎えられ。
皇には先の一件を讃えられ、ウルトリィは上級調停者に昇格。
『ウルトリィを昇格した手前褒賞を与えぬ故、何卒⋯⋯!』と頭を下げられながら、俺には特務調停者の役職を与えられた、
政に利用するつもりかと激怒するウルトリィだが、名前だけの役職で束縛力はなく、好きに過ごしていいとのこと。
それでも失礼にもほどがあります、とプンスカなウルトリィだが、俺としては調停者の立場を利用して国々を旅する口実を得られたから寧ろありがたかったり。
まあ、そんな感じで俺の初外交は終えたのだった。