うたわれちゃったもの   作:ポチ&タマ

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 無事、就活が終わったので。
 ついでに匿名も解除。


第8話 盲目の病弱ケモミミ少女

【×月〇日 曇り】

 

 特別調停者という肩書きを得た俺だが、実質あってないようなもの。役職に対する明確な仕事はなく、ウルトリィの父である王様からは『ご自由にお過ごしくだされ』とのお許しを頂いた。

 なので、調停者として各国を練り歩く気ままな一人旅でもしようかと思ったんだが、ウルトリィとカルラはついてくる気満々で。まあ俺のお世話係を豪語する二人だから、彼女たちの同行を許した。

 カミュもメチャクチャついて来たそうにしていたが、王位継承権一位になってしまったこともあり、お城でお勉強の日々。

 ちなみに普通に考えれば姉のウルトリィが一位のはずだが、ムッちゃんの血が色濃く出ているカミュが次期王様になるらしい。

 

 駄々を捏ねて不貞腐れる妹分にお土産の約束をして機嫌を取りつつ、旅行先はどうしようかとウルトリィたちと相談。

 地理的に一番近いのはケッチャ・クッチャだが、そこは軍事大国で国王のニウェとやらは必ず俺を利用するだろうとのこと。

 政争に巻き込まれるのはごめん被りたい俺に、なら此処ならどうでしょうと示されたのが、ケナシコゥルペだった。

 なんでも俺に合わせたい人がヤマユラというと里にいるらしい。

 ならそこで、という流れでケナシコゥルペ国のヤマユラへ向かうこととなった。

 

 そんな矢先に俺の元を訪れたのが、オボロと名乗る青年。

 曲がりなりにも救世主と称される俺はそこそこ厳重な警護がつけられている。部屋の前には見張りが必ずいるし。

 そんな彼らの警護をすり抜け、誰一人気づかれることなく俺の前に立った彼は、この時代のヒトにしては中々忍べている。忍びの才能は間違いなくあるだろう。

 聞けば、クンネカムン国で起こした奇跡ーー死者蘇生の噂を聞きつけ、わざわざ遠方からやって来たらしい。

 オボロの頼み、それは病に伏す彼の妹を救ってほしいという懇願。

 助けを求めるケモミミ少女が居るのであれば、是非もなし。

 ヤマユラの村へ行く前に、オボロの妹の元へ向かうのだった。

 

 

 

【×月×日 曇り】

 

 オボロとその従者の双子少年、ドリィとグラァの先導の元彼らが身を隠すアジトへやって来た。

 同行者はウルトリィとカルラ、そしてカミュの三人。法術のアシストによる治療で彼の妹を救うべし。

 ドリィとグラァの話によると彼らは義賊であるらしく、悪徳領主からくすねた金品や食糧を貧しい民たちに還元しているらしい。

 現在はササンテとやらが治める領地で活動しており、俺たちが向かおうとしていたヤマユラの村も近隣なのだとか。まさに渡りに船とはこのことだな。

 

 案内された場所は小さな砦で、オボロとやドリィたちと同じケモミミをした男たちが油断なく目を光らせていた。

 そんな警戒を密にしている砦の一角に、その子はいた。

 オボロの妹であるユズハちゃん。年の瀬はカミュと同じ十六歳くらいか。

 非常に可憐かつ楚々としており、そして儚い。

 生まれつき病弱なのだろう、生命力は兄のオボロの半分もなく明日にも消えそうなほど儚い命を宿していた。

 しかも病の影響で物心ついた頃から目が見えないとのこと。

 

 一縷の希望に縋る声で『お医者さんを連れてきたぞ! 死者すら蘇るほどの名医だ! これでユズハの体も治るに違いない!』と励ます兄に、彼女は目を閉じたまま熱に浮かれた顔に微笑みを宿し、言った。

『お日様の⋯⋯強いお日様の匂いがします⋯⋯。このような場所から申し訳ございませんお医者。ユズハの体は治りますか?』と。

 医者と比べるのも烏滸がましいが、これでも綱手さんから医療忍術の手解きを受けた身。

 ユズハちゃんの病状から察するに免疫疾患が濃厚だと診断した俺は、長い闘病生活が待ち受けているが治せない病気ではないと太鼓判を押した。

 現在ウルトリィたちと開発している医療忍術と法術の合わせ技であれば、快癒するに違いない。

 俺の言葉に漢泣きするオボロは何度も頭を下げ、ユズハちゃんも心の底から嬉しそうな声で喜んだのだった。

 

 

 

【×月〇日 晴れ】

 

 病は気からという名言があるように、心身のバランスは健康を維持する上で不可欠な要素である。

 病弱で床に付すことが多かったユズハちゃんにとって、部屋の中が唯一の世界。親しいヒトはドリィやグラァなどの付き人たちのみで、友人もいないという。

 それを聞いたカミュはユズハちゃんの手を取ると、『じゃあ私と友達になろうよ!』と人懐こい笑顔で距離を縮めた。

 初めて出来た友達にユズハちゃんもニッコリ。妹に友達が出来てオボロは再び滝のような涙を流した。

 

 ケモミミ少女たちの戯れる姿に癒しを感じながら、一先ずユズハちゃんの体調を整えてみた。

 分け与えたチャクラで免疫力を活性化させる医療忍術を試してみると、顔の赤みが少しだけ取れて、体温も平熱に近づいたようだ。応急処置だが、これ以上の悪化は防げるだろう。

 

 体調が回復したのを肌感じたのか、布団から体を起こしたユズハちゃん。驚いた顔で胸元に手を当てて『今まで感じてた息苦しさがなくなりました』と感想を述べた。

『ユズハの、ユズハの未来は、明るい……!』

 三度の漢泣きをするオボロは、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら俺の手を握ると、

 

『あにじゃとよばぜてぐれぇ!』

 

 巫女に続き、今度は義理の弟が生まれたようだ。

 

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