作者は頭が悪いので高度な頭脳戦はかけません。なのでそんなもん知らねぇ!と言わんばかりなノリと勢いだけで進めていくのでそれでも良い方だけどうぞ。
頭脳戦をしないで頭からっぽで見れるよう実を目指しています。
教室は賑わっていた。
最初のHRに担任が話したのは学校ではポイントと呼ばれる学内専用通貨について、そしてポイントで買えないものはないということ。その話を聞いた学生たちは自らのポイントを見て驚愕した。
その数はなんと十万ポイント。
さっきまでの説明が本当なら、入学したての生徒に十万円分の資金を配ったということだ。
驚くもの浮かれるもの、反応はそれぞれだが大半は大喜びだった。
そんな中で、驚きと同時に怪しんで疑問に思うものもいた。
(入学したての高校生に十万? オレは知らないがこれが普通なのか?)
綾小路清隆は一見普通の高校生だが、その正体は普通とはかけ離れている。
彼は人工的に天才を造ることはできるか、という「ホワイトルーム」と呼ばれる実験施設の出身である。
実験が成功なのか失敗なのか、綾小路は同学年どころか大人と比較しても頭脳、体力、その他の技術がまさに天才と呼ばれるにふさわしいものを持っていた。
そんな彼が欲したのはいわゆる、普通の生活であった。
友達と遊んだり、恋人とデートをしたり、学生生活のイベントに一喜一憂したり。
親元から脱走する形でここ、高度育成高等学校に入学したのだ。
だが幸運なのか不幸なのか、普通の学生生活を望んだ彼が入学したこの学校はどうも普通ではなさそうだった。
綾小路は端末に表示された十万の数字を見ながら、のちに知ることになるが、Sシステムと呼ばれたポイント制度について考えていた。
「な、ちょっといいか?」
本来なら隣の席の堀北に罵倒され、担任である茶柱に取引という名の脅迫をされながらといったかなり悲惨な学校生活を送るのだが、この世界では、
「おれ、渡辺海斗って言うんだけど、良かったらちょっと話さね?」
後ろの席から声をかけられた綾小路はちょっと驚いて、
「あぁ、オレは綾小路清隆だ。よろしく」
差し出された手を握った。
彼らはこの学校ではじめての友人となったのだ。
「まぁあれだな、ぶっちゃけどう思う?」
「そうだな………………」
あいさつも済ませた二人がするのはポイントについての考察だった。
「怪しい、とは思う。ほかの学校がどうなのかは知らないが、いきなりこんな金額を学生に渡すのは普通、ではないと思う」
「そりゃそうだよな~」
「渡辺はどう思った?」
「え、なんか詐欺られそう」
「詐欺?」
思ってもいなかった言葉が出てきて綾小路の興味を誘う。
「詐欺っての言うのは?」
「なんかアレなんだよな~悪魔の契約みたいに最初はあまーい言葉で興味をひかせて、そのあと一番大事なものを持っていくみたいな。そんな性格の悪い感じがする」
「なるほどな」
悪魔のように性格が悪い、言いえて妙だと思った綾小路はふと隣の席を見た。見てしまった。
「なに、要件がないのならこちらを見ないでほしいのだけど。不愉快だわ」
視線を向けただけで出てくる罵倒。いくら人工的に造られた天才といえど異性からの罵倒に耐える訓練などはしていない。
落ち込んだ綾小路を見ながら、渡辺は驚いていた。
「なんかすげぇな、朝もそうだったけど何? 二人とも知り合いなの?」
「いや、今日がはじめてだ」
「私と綾小路君を一緒にしないでもらえるかしら? それとも仲が良いように見えるのなら眼科に行くことをお勧めするわ」
「………………堀北はこういうやつなんだ」
「なるほど面白い奴だな」
「!?」
渡辺の感想に驚く綾小路。まさか罵倒をされたのに落ち込むでも怒るでもなく、褒めるとは予想にしなかった反応だ。
「今の言葉を面白いと感じるのなら、ずいぶんとおめでたい頭をしているようね。綾小路君と仲良くするのにぴったりだと思うわ」
「綾小路、これはカンなんだがおそらく堀北はポンコツ面白い人間だと思う」
「なんですって………………!」
「渡辺、度胸は尊敬するがその辺にしておかないか、堀北の圧が凄くて心臓に悪い」
なんなら冷や汗をかき始めているほどには堀北の怒りがヒートアップしている。だというのに渡辺はほうほうと、にこやかに堀北の相手を続けていた。
その後、授業が始まるまで、渡辺がからかい堀北はそれに反応して怒り、綾小路は冷や汗をかく謎の連鎖が続いた。
頼むから勘弁してほしい、と縮こまった綾小路だが、結局休み時間になるたびに同じことがあるので、放課後になるとかなりの体力を持っているはずなのにクタクタになっていた。
放課後、クラスの生徒はそれぞれポイントに胸をはずませ遊びに出かけていた。
もちろん自分に割り振られた寮に帰ったり、図書館で勉強する者もいるだろうがいまだ高校生。体力のある遊び盛りの学生は大半が遊びや買い物に行っていた。
そして綾小路と渡辺はというと、
「いやー悪いな買いものに付き合わせて」
「大丈夫だ、オレも興味はあったしいろいろ見て回るのは楽しかった」
例にもれず遊びに出かけていた。
遊びといってもカラオケやボーリングに行ったわけではなく、ショッピングモールの探索だ。
放課後になってすぐ、渡辺が綾小路をどんな店や施設があるのか見に行かないかと誘った。もともと学内の探索をする予定だった綾小路はこれを承諾。ついでにと堀北にも声をかけたのだが、いつもの罵倒を残して去っていった。
初日からクラスの中心人物となっている平田や櫛田の誘いをまた今度と断り男二人で教室を出たのだ。
「やっぱメインはアレだな、無料商品」
「あぁ、やはりポイントは減る可能性があるのが分かったのはでかい」
二人が見て回って一番目を引いたのは無料商品のコーナー。置いてあるのは些細な日用品や賞味期限が近い食品など、生活するには必要な安価な商品。
もし仮に毎月十万ポイント配布されるなら絶対とは言わないが必要のないもの、それが表すことそれはすなわち、
「増減だけでなく、最悪もらえるポイントがゼロの可能性もある」
「だな」
もしこれが一人なら疑問で終わっていたかもしれないが、離れたところで少し観察すると利用する生徒がそれなりにいた。それも上級生ばかり。
「ポイント増減の基準、きっかけは何だと思う?」
「んーそりゃ学校だしなぁ、成績とか? 流石に急にデスゲームが始まったりはしないだろうけど、ほらポイントで武器が買えるみたいな」
「それは………………流石に冗談だよな?」
「冗談と思ったなら言い切れよ、おれもそう思いたいよ」
ありえない、とは言い切れない程度にはこの学校への不信感が募り始めている二人。
その後もあーでもないこーでもないと学校についての考察を話しながら寮へ帰り、渡辺の部屋についた。
「悪いな荷物持たせて」
「いや一人だと気が付かなかったこともあったし、渡辺と一緒で良かった。ありがとう」
綾小路の胸中では初めて友達と買い物にでかけることができた喜びがあり、それを踏まえてのお礼だった。
「気にすんなよ、お礼じゃねぇけど何かあったら声かけろよ、手伝うぜ」
「そうするが、………………それはどうするんだ」
そう言って綾小路の向けた視線の先には何故かメイド服。
「これな、ノリで買ったけどマジでやらかしたな」
何を売っているのか見て回った時に二人が見つけたのがメイド服などのコスプレ衣装。
それなりの値段はするが十万もの大金ならぬ大ポイントを持っているなら余裕で出せる金額。綾小路がこんなものも売っているのかと驚いたのだが、もう一人はバカだった。
「何でこんなもんまで売ってんだよ!」
と、笑い出しそのまま勢いで購入してしまったのだ。途中までは綾小路が若干ひくくらいのテンションで笑っていたのだが、時間がたって落ち着きだすと気が付いた。
「めっちゃ邪魔だなこれ」
「買い物するときもかさばるし、店員さんの視線が痛かったんだが」
「いやほんとスマン」
日用品などの買い物もしたのだが、袋をもらい損ねたのでしばらくの間、メイド服を持ち歩く二人の男子学生の様子が目撃されることになった。
「買ったはいいが値段としては捨てづらいし、堀北あたりに着てもらうか?」
「似合う、のか? それはそれとしてクラスメイトの殺人現場なんかオレは見たくないぞ」
「もしおれが死んでたら犯人を見つけてくれ」
「推理する余地もなく一人しかいないだろ」
死んだ目で笑いあう二人の頭にはメイド服を着て赤い液体がついている刃物を持つ堀北の姿が思い浮かんでいた。
「……じゃ、また明日な」
「あぁ、死ぬなよ」
「縁起でもねぇこと言うな」
ドアがしまったあと、綾小路は今日のことを振り返る。学校は何か秘密にしていることがあり、堀北は恐ろしく、渡辺はいい奴で、
「友達と遊ぶのは楽しい、きっとこれが楽しいって気持ちなんだろうな」
胸の中に沸いたぬくもりを感じながら持っていたレジ袋に視線を落とす。
「………………あ」
うっかりなのか、自分のものではないものが袋に紛れ込んでいた。見覚えもあり、渡辺がメイド服を袋に入れたせいではみ出したので預かっていたものだ。
明日でもいいかとも思ったが、そんなに歩いたわけでもない。
これも普通の生活かと誰も気が付かないほど、少し浮かれていた。
引き返して渡辺の部屋をノックするが、返事がない。
「いやマジでこれどーすんだよ」
ドアに耳を当ててみると中からは声がするので気が付いていないだけだろう。
試しに取っ手に手をかけると鍵をかけていなかったのかドアは開いた。
「渡辺、お前の買ったやつが紛れていたんだが………………」
そこで綾小路は言葉が途切れた。
部屋の中では渡辺がいた。
そして、
見覚えのあるメイド服が渡辺の動かす指の通りに、宙に浮いて動いていた。
これを見た方は気が付くでしょう、どっかのピンク髪超能力とのクロスオーバーじゃないんかい!と
これがメンタルヘルスです