はい、今回もシリアスです。
うっかり投稿しちゃったので見なかったことにしてもらえると嬉しいです。
無言で教室を出ていく渡辺を見送る綾小路は前日のことを思い出していた。
何もせずに帰ろうとする渡辺を南雲は引き留めた。何をした、ポイントはどうするつもりだ、もう一回やれ、こんなことを言っていた。だが変わらず無表情のまま、かえる、とだけ言った渡辺に、南雲は後ろから拳を振り上げた。
声をかけたのは綾小路だった。端末のカメラを起動して近寄り、どうするつもりですか先輩、と。
舌打ちをして拳をおろして帰ろうとする南雲にポイントについて聞くと、本人がいらねぇって言ってんだ、渡す気はないとこたえた。
確かに口約束であり勝負の内容も結果も証明するものはなにもない。渡辺はいらないとは言っていないが貰うつもりもなさそうだ。あきれた綾小路がどうするか考えていると渡辺が声をかけた。
「その程度のやつだよ、最初から分かってたからもう帰ろう」
最初から織り込み済みだったのか、と綾小路が納得してついていこうとすると、
「待ちやがれ」
南雲に肩を掴まれた。
掴んではいるものの視線の先は渡辺の背中、ぐつぐつと煮立っている怒りとその根源でもある高すぎるプライドが南雲の開いた口から吐き出す言葉を悩ませていた。
「お前は、アイツの何だ」
「友人です」
一切の視線を逸らさずに聞く南雲。
「俺の、ことを、知っていたのか」
「どうですかね、少なくともオレは先輩のこと知りませんでした」
未だギラついためで睨みつけている。
「………………クッソ! ポイントだ!」
渡辺ではなく、綾小路に送られる100万ポイント、それを確認すると渡辺の後を追う。
「いつか、いつか後悔させてやるぞ………………!」
誓いとも、負け犬の遠吠えともいえる言葉は綾小路の耳に届いていたが、本当に向けられていた相手に伝わったのか、そればかりは本人にしか分からない。
その日から、渡辺は一人で行動するようになった。
佐倉や椎名から調子が悪いのかと聞かれたが、何も知らない綾小路には答えられなかった。なんと堀北からも変なものでも食べたのかと聞かれ、これがツンデレというやつかと感動していたら冷たい目で見られたので、気のせいかもしれない。
ほかのクラスメイトから遊びの誘いを受け何度か参加したが、綾小路は以前ほど楽しめなかった。
何をしたらいいのか考えても何も思いつかない、そんな自分に人工的な天才は新しいことを学んだ。歯がゆさ、くやしさ、そんなつらい思いを纏めて、弱さ。噛み締めるには苦く、飲み込むには綾小路は幼かった。
そして時は過ぎて五月。
その日、Dクラスは混乱の渦に陥っていた。
支給されるはずのポイントがなにもなく、説明を求める生徒たちにあらゆる面から判断された結果だと担任の茶柱は言う。遅刻、授業態度、そのたもろもろ、小学生でもできることをできなかったDクラスを、茶柱は「不良品」だといいきった。
この時、もう少し言い方を変えていれば良かったかもしれない。外を見ていた超能力の肩がピクリと動いていたのを、誰も気が付いていなかった。
その後、次のテストで赤点を取ると退学になると言われたクラスは退学者を出さないよう、いくつかのグループに分かれて勉強会を企画する。
綾小路が参加したメンバーは主催の堀北とクラス最下位の須藤が相性が悪く、櫛田のサポートもありながらかろうじて崩壊していないといったありさまだった。
図書館でも騒ぐ様子を陰から渡辺が覗いていたのを綾小路だけが気が付いた。それでも何も言わず、堀北の勉強会はなんとか進んでいく。薄氷の上とはいえ、まだギリギリたもっていた。ある者の器も。
「え、でも範囲が変わったって言われたよ?」
最後の一押しはBクラスの中心メンバーであった一之瀬だった。もちろん本人に悪気はなく、むしろCクラスとケンカになりそうなところを止めた人格者。悪意はなかったし、策略もなかった。
それゆえに致命的だった。
確認を取りに行けば「言い忘れていた」と悪びれる様子のない担任。ただでさえ、限界であった堀北たちはもう終わり、ホワイトルームで培った頭脳を持って綾小路はそう冷静に判断した。
同時に、
(渡辺ならこの状況をどうするんだろう)
とも思った。
勉強会を開くといっても全員が参加するわけじゃない、個人で勉強する者もおり、渡辺もその一人だった。勉強が得意じゃない、といっていたのなら勉強会に参加するのでは? そう思っていた綾小路は何も言わず教室を出ていく友達の背中に何も声をかけられなかった。
メールでも、部屋の前に行ってみても、なんと声をかけらいいのか分からない。ホワイトルームでは教わることは無かったことだ。
茶柱に確認を取った範囲変更に合わせて教材を作る堀北の手伝いをして帰宅していたところ、綾小路は見覚えのある人影を見つけた。
隠れながら除くと、堀北がメガネをかけた男子生徒と話している。会話の内容からして二人は兄妹のようだった。
(確か男の方は生徒会長、堀北の兄だったのか)
言い合う二人、そして生徒会長が手をあげると、
綾小路は思わず間に割って入った。
「綾小路………君?」
「ほう?」
急に現れた綾小路に驚く堀北兄妹。だが一番驚いたのは割って入った綾小路だった。
なぜ割って入ったのか、本人には分からない。こんな事をして目立てば、自身の目標である平穏な学生生活は遠ざかるかもしれない、ホワイトルームにたどり着くものもいるかもしれない。だというのに、
「何のつもりだ、これはただの制裁。家庭間の問題に外部が口を挟むんじゃない」
言われたことはもっともだ。オレは知らないだけで、これが家庭の普通なのかもしれない。止めるだけならカメラなどで録画していると伝えればいい、なんなら実際に暴力が振るわれた後に出れば取引の材料になった。
なのに、体は動いていた。
「………オレには堀北の家がどんなものなのか分からない、これが普通なのかもしれない」
クラスメイトを守るように立ったまま、綾小路はしゃべりだす。
「見ているだけでも、見てみぬふりでも間違いじゃなかったのかもしれない」
何を言っているのかなぜこんなことを言っているのか、頭では疑問と止まれという指示が繰り返される。
「でも」
しかし止まらなかった。
「ここで動かないと、もう友達と会えない気がした」
堀北は目を見開き、生徒会長はその言葉の意味を咀嚼していた。反撃も追撃もなく、しばし時間だけが流れる。
「………ふっ、そんな理由で割り込んでくるとはなかなかにおかしい奴だ」
先に動いたのは生徒会長、とげとげしい雰囲気もなくなり綾小路も肩の力を抜く。
「鈴音、今のお前がAクラスになるのは無理だ。せいぜい足掻け」
そう言って消えていった生徒会長の背中が見えなくなると、綾小路は堀北に手を差し出した。
「………聞いてたの?」
「たまたま通りかかっただけだ、全部じゃない」
「………………さっき言ってた友達って、渡辺君?」
「………向こうがまだそう思ってくれてたらいいんだけどな」
「そう………」
自分が尊敬、崇拝してるといっても過言ではない相手から守ってくれたはずのクラスメイト。うつぶせていた顔をあげればいつものように無表情、だけどほんの少し悲しみを持っていたことに堀北は気が付いた。
「ケンカでもしたの?」
「気が付いたら話さなくなった………………どうやって声を掛けたらいいのか分からん」
「そ、あなたも結構子どもなのね」
手を取って立ち上がり、力なく笑う堀北。そこにはいつもの凛とした雰囲気もなく、落ち込んでいる年相応の少女だった。
「さて、どうする?」
「勉強会を続けるわ、それしかできないもの。あなたは?」
「オレも手伝う………あと、もう少し考えてみる」
「そう、それがいいとも思うわ。彼が静かだと不気味なの」
「………最近何もないから寂しいとか」
「何か言ったかしら?」
「なんでもない」
うっかりな言葉でいつもの鋭さを取り戻した堀北。身体に染み付いた謝罪を反射的におこなう綾小路。
そんな二人の様子を空から見ていたものがいた。透明なために誰の目にもカメラにも映らず、なんの機械を使うことなく空を飛んでいるものが。
それは空から眺めた後、一瞬で姿を消した。
次の日である。
『話がしたい』
綾小路に短いメールが届いた。
駆け足だけど許して!シリアスさっさと終わらせたいの!次回もだけど!
あと時系列バラバラになっちゃうけど展開的に入れ替えたかったの!この先もあると思うので苦手だったらお気に入り外してもらって大丈夫です!
あと前回主人公の観察眼すげーって感想多かったのですが、それについてはまた本編でやろうと思います。
今回の成果
綾小路:100万ポイント、合理的にはいらないナニカ
南雲:踏みつぶしたい後輩
渡辺:Sシステムに連なる学校のアレコレ
感想やお気に入り登録増えてきて嬉しいです。
どうでもいいかもしれませんが、同時投稿してるISの二次創作がランキングに乗りました。ユーザーネームから飛べるのでよかったら見てね。