俺は今日、心に誓った――。
呪霊を倒し、この残酷な世界を救う。
「助けてくださり、ありがとうございます」
俺は、昨日俺の母を救えなかった男に、礼を言った。
「全然いいよー。君、ツイてないネー」
笑いながら言う男。
言葉の端々に、少し不気味な余裕がある。
「この呪霊は、2級といったところかな。かわいそっ」
見たこともないような、よく分からない言い方だ。
男の見た目は――若い、20代くらいか、もしかしたら10代かもしれない。
赤い帽子を被り、ほっぺたにはお札のようなものが張り付いている。
そのせいか、近寄るだけで少し怖い。
「そんなに人のことジロジロ見ないでよー、照れる~」
「えっ、あー、すいません。見た目が少し……アレだから、つい」
「まぁ、僕に見惚れちゃうのはほどほどにしなよ、ハハ」
確かに見た目は奇妙だ。でも顔はイケメンだ。
いや、可愛い系も混ざっている。ホストとかにいそうな、モテ顔。
「君は高校生でしょ。お母さんをこの年で失うとは大変だね。これからどうするの?どっかの施設に預けてもらったら?」
確かに、それも選択肢かもしれない。
だが、この世界には呪霊がいる。施設にいても安全とは限らない。
それに――家族の仇も、困っている人たちも、放っておけない。
「とりあえず、警察に届けて、あとは……」
「あのっ」
「ん?どうした?」
呪霊を倒したい、と言おうとしたが、声が震えて出ない。
目の前の男は、絶対に強い。
俺にできるのか、不安で胸が押しつぶされそうになる。
「なに? どうしたの? 早く言ってよ」
小さな声で、俺は言った。
「化け物を……倒したい……」
男は聞こえなかったのか、笑う。
「呪霊を……困っている人を助けたいんです。家族の仇もとりたい。難しいのは分かってる。でも、やりたいんです! 教えてください!!」
言い終えた瞬間、男はしばらく沈黙した。
やがて笑った。
「いいよ、教えてあげる」
「本当に……ですか!?」
目の前で笑っている男は、昨日の戦闘で見せた強さのままだ。
あんな一瞬で呪霊を倒す力が、自分にあるのだろうか――。
「この世界には、呪力で呪霊を倒す呪術師という者がいる。
呪力とは、簡単に言うとその人自身のエネルギーみたいなものさ。
呪霊を倒したいなら、君も呪術師にならなきゃ」
「呪術師になるには……?」
「試験が毎月15日にあるんだ。それに合格すれば、呪術師になれる。
簡単じゃない。呪術師は厳しい世界さ。弱いやつはすぐ死ぬ。
悪い人間や呪霊と、戦わなきゃならない。それでもいいのか?」
「待ってください……悪い人間って、何ですか?」
「ん~説明しづらいな。これは呪術師にしか知られていないことなんだ。
あの呪霊は、僕たちにとっては弱い存在だ。でも、敵サイドには呪力を持った人間がいる。
彼らのせいで呪霊が生まれると考えられている。それに、殺し屋集団もいて、呪力を使えるらしい。
そういう連中を倒すのが、俺たち呪術師の仕事だ」
「なるほど……わかりました」
まずは試験に合格しないと、話は進まない。
「試験の会場は、東京・中央区の呪術師本部だ。ネットで調べれば出るよ。
内容は呪霊を倒せるか、才能を見られるんだ」
「才能?」
「呪術師は才能が重要なんだ。努力も大事だけど、才能がなければ話にならない」
才能か……俺にそんなものがあるのか?
不安で胸がいっぱいになる。
「ハハハ、大丈夫。もし君が落ちても、僕が推薦してあげられる」
「推薦……そんなことも?」
「できる人は限られてるけどね。僕でも、上の存在の力を借りれば可能だ。
だが、推薦されるにはそれなりに強くならなきゃいけない。君はまだ弱い。残念だけど、今は無理だね」
すごい人なんだ……。
「ありがとうございます! 試験、絶対に合格してみせます!」
男が立ち去ろうとする。
「アハハ、お礼なんていらないよ。試験、頑張ってね」
あ、名前を聞いていなかった。
「俺、中村颯人です。あなたの名前は?」
男は振り返らず、ニヤリと笑う。
「俺の推薦なしで呪術師になって、会えたら教えてあげるよ」
そう言い残し、男は去っていった。