俺たちは今、福岡に来ていた。
任務は、福岡の田舎の方で呪霊が大量に発生しているため、それを討伐することだという。
田舎ということもあって、人はあまりいない。民家もまばらで、道は細く、木々が生い茂っている。呪霊が出れば、即討伐するようにとのことだった。
「俺たち4人で、呪霊を倒せるのかな……」
俺は小声でつぶやいた。
昨日試験に受かり、今日が初任務だ。正直、不安しかない。
あかねも同じように不安そうにしている。
一方、大輝とさくは、楽しそうに顔を輝かせていた。
「2人は余裕そうだな……うちらと違って」
「当たり前だろ?早く、術式を使ってみたいんだ」
「僕は早く上の階級にあがりたいなー」
しばらく歩いていると、目の前に呪霊が現れた。
大きさは人間より少し小さい程度。だが、動きは不気味で、目に狂気が宿っている。
「どうする?俺たち、戦い方の作戦なんて考えてないよね?」
確かに……作戦らしい作戦は何もない。
「僕が相手の動きを止める。その隙に倒してくれ」
さくが提案した。
「それなら俺に任せろ。俺の爆発で叩き潰す」
大輝も力強く言う。
「わたしは風でサポートするわ」
あかねも即座に答える。
「俺は……俺も大輝と一緒に攻める」
俺は覚悟を決めた。
こうして即席の作戦が決まる。
呪霊が俺たちに気づき、じりじりと近づいてくる。
「ときのたび」
さくが術式を放つ。
呪霊の動きがピタリと止まった。
「よし、今だ!」
大輝が前に飛び出し、呪力を込めた拳を放つ。
「デトロモード」
呪霊に直撃。呻き声を上げ、動きが鈍る。
「グヴー」
さくの時間停止が解けると、呪霊は再び動き出した。しかし、既に瀕死状態だ。
俺とあかねが最後の一撃を決める。
「デスウィンディ」
「はかいライド」
「ヴヮッッーーー」
呪霊は叫びながら消えていった。
初めての戦闘だったが、俺たちは勝てた。少しだけ自信がつく。
「我ながらナイス作戦だったな」
「はいはい、すごいすごい」
「さく、お前の術式ってどれくらい相手を止められるんだ?」
「よく分からない。ただ、呪力を使う量が多いほど相手は長く止まる。さっきのはおそらく4級の呪霊だから、少しの呪力でも結構止められた」
「なるほど、そりゃ便利だな」
「こういう連携ができると、本当にチームっぽく感じるね」
楽しい。
俺たちは戦える。初任務とは思えない連携だ。
⸻
呪霊を討伐し、さらに歩いていると、前方から人が駆けてきた。
「どうしたんですか?」
「あんたたちも早く逃げた方がいい。奥に強い呪霊がいる」
その人物は、呪霊から逃げていたようだ。
「安心してください。俺たち、呪術師です」
「そうかい……なら頼もしいね。頑張って倒してきてくれ」
俺たちは指示通り、奥へ急ぐ。
そこには、さっきよりも明らかに大きく、強そうな呪霊が立っていた。
「とりあえず、さっきの作戦で行くぞ」
大輝がさくに声をかけた。
「じゃあ行くよ、時の終(タイムロスト)」
さくが術式を放つ。
しかし、呪霊の動きを止める時間は前回より短い。
「なっ……」
呪霊は大輝に向かって一撃を放った。
動きが速く、避けられない。大輝が吹っ飛び、倒れる。
「大丈夫か?」
「……気絶してる」
やばい。状況はかなりまずい。
「時の終(タイムロスト)」
再度、時間を止める。
しかし長くは止まらない。
「風の力(ウィンディロング)」
あかねが攻撃するも、ほとんど効かない。
俺の術式は近距離型のため、この距離では手が出せない。
そこへ、知らない声が聞こえた。
「任務大変そうやね」
振り向くと、黒髪の男が立っていた。手には銃を持つ。
呪霊も警戒している。
男は悠然と呪霊に近づき、顔面を殴られても平然としていた。
「ざんねん」
一発の銃弾で、呪霊は消滅した。
「大丈夫かぃ?」
「おかげさまで、大丈夫です」
その男は黒髪で、整った顔立ち。
「呪術師ですよね。名前を伺ってもよろしいですか」
「橋本奏斗(はしもと かなと)だ。君の言う通り、呪術師、特級さ」
特級──
呪術師の中でもトップの存在。
その人が、今、目の前にいる。