防衛任務終わり。
報告書も書き終ったし、新米の二人とも別れた。
このまま夜ご飯を食べに行くか悩んでいると、黒髪ショートヘアの女子オペレーターに呼び止められた。
「霧雨さん、このあとは時間ある?」
「ご飯ついでならいいぞ」
「美少女のわたし相手に即答しないのね」
「相変わらずお前は刺々しいな」
「あら? 真木よりもマシだと思うけど?」
マキリッサはもう処刑人だよ。
彼女と関わりたい人なんてそうそういないだろ。
俺は冷や汗を流しながら、最近はオペをしてもらう機会が多い相手へ言葉を返す。
「真木に次ぐ性格の悪い黒羽さんが何を言っているんだ?」
「性格が悪いのは元からよ。それよりも早く何か食べに行きましょう」
「なんで自然に一緒に行くことになっているんだよ!?」
ほんとコイツは自分のペースに持ち込むのが得意だな。
黒羽さんのマイペースさに頭を抱えるが、本人は特に気にせずニヤリと笑った。
「ほんと霧雨さんは面白いわ」
「俺からすれば君は悪魔だけどな」
「自分でも悪魔と思うわよ」
なんで自分でも認めているだよ!?
嬉しそうに笑う黒羽さんに腕を掴まれ、ボーダー本部内にある食堂へ移動する。
深夜にやっている食堂はありがたいな。
ここは24時間営業で夜勤で働く職員や隊員に重宝されている。
俺はトンカツ定食、黒羽さんは豚の生姜焼き定食の食感を購入して、受け取り口で料理を受け取った。
そのまま二人席に座り、料理を食べながら会話を始めていく。
「霧雨さん的に今日組んだ新人はどうだったの?」
「経験を積めば伸びるタイプだと思うぞ」
「そう? じゃあ質問を変えるけど、チームに入れたくなる人材かしら?」
「悪いけど俺はソロがいいんだよ」
ポイント稼ぎなら個人で充分で、チームを組むと原作崩壊するかもしれない。
どこか不満げに頬を膨らませている黒羽さんをよそに、俺はマイペースにトンカツを食べる。
「霧雨さんはなんでチームを組まないの?」
「さっきも言ったけど、ソロで充分なんだよ」
「ほんともったいないわね!」
もったいないね……。
マスタークラスはボーダーでも限られているが、俺以外のB級ソロでもいる。
「もったいないのはお互い様だろ」
「ふふっ。なら、アナタのチームに入れてよ」
「サイドエフェクト持ちのオペレーターは俺には贅沢すぎる」
優秀なトリオン持ちが稀に発現するサイドエフェクト。
有名なのは迅悠一さんの『未来予知』や影浦先輩の『感情受信体質』などが有名どころ。
一見すれば強い能力だけど、サイドエフェクト持ちは『周りと違うこと』で苦しんでいる人も多い。
「いつもその言い訳でチーム勧誘を断るわね」
「だったら、俺と組もうとするのは諦めろよ」
「悪いけど命の恩人にはしつこいほど絡みたいの」
「ほんといい性格をしているな」
「それはお互い様でしょ」
コイツ、ほんといい性格をしているな。
俺は苦笑いをしながら残りのトンカツやご飯を書き込む。
対する黒羽さんは笑顔でこちらを見ており、どこか怖く感じてしまう。
早く食べて離れるか。
残りの味噌汁を食べて終えて俺は席から立ち上がる。
「もしかして女子高生を残して帰るのかしら?」
「言い方……。俺は個室に戻るだけなんだが?」
「ならわたしを待ってくれてもいいじゃない!」
「ほんとお前はワガママだな……」
ワールド・トリガーの世界で女性に振り回されているんだ?
確かに俺は受け身だけど、グイグイと食いついてくる黒羽さんも強いな。
彼女の食事が終わるまで会話に付き合わされた。
⭐︎⭐︎
次の日の日曜日。
ボーダー本部のランク戦ブースでは多くの隊員が集まり模擬戦を行っている。
今日は誰がいるかな?
昨日は荒船さんと戦ったから、辻ちゃんか米屋あたりがいてくれるとありがたい。
そう思いながらランク戦ロビーでのんびりしながら周りを見る。
「なんで霧雨君はロビーで黄昏ているのよ」
「別にいいだろ。てか、熊谷こそ鈴鳴の対策をしなくてもいいのか?」
「それは三浦君にも言われたから考えているところよ!」
対面のソファーに座ったミディアムショートの女子隊員・熊谷。
原作にも登場しており、那須さんの護衛のイメージが強いアタッカー。
「それでなんのよう?」
「少し恥ずかしいけど村上先輩にどう勝てばいいか相談したいのよ」
「なるほど……。ちなみに個人かチーム、どっちだ?」
「両方と言いたいけど、今はチームで勝ちたいわ」
まだチームの方が村上先輩を崩しやすい。
原作ではNo.4アタッカーだけど、今はNo.7アタッカーで一万点を超えたあたり。
しかもレイガストは持っておらず、孤月とシールドで戦うタイプなので崩しようはある。
「あくまで俺が思いつく範囲だけど、熊谷は防御メインで動けばいいと思うぞ」
「確かにアタシは防御は得意だけど、村上先輩に勝てなくない?」
「チーム戦で前衛のタイマンをやるよりも、那須隊が有利な中距離で戦った方が勝率が上がるだろ」
「確かに……。なんでその方法が抜けていたんだろう?」
「灯台下暗しだっんじゃない?」
俺がお勧めした戦い方は原作で使われた戦法。
熊谷は俺のアドバイスを聞いた後、目を輝かせながら一つ頷いた。
「なんだかんだ話を聞いてくれてありがとう」
「いいよこれくらい」
とりあえず対戦相手をどうしよう。
そのことで頭がいっぱいになっていると、熊谷がニヤリと笑った。
「お礼に模擬戦をしてあげるわ!」
「それはお礼と言えるのか?」
「いいじゃない! てなわけでブースに入りなさい!」
一応、対戦相手が見つかって良かったのかな?
俺は熊谷に誘われてブースの中に入る。
そのまま彼女と戦い21対9で勝ち越したので、俺は満足しながらコーヒーを飲むのだった。