日曜日の夕方、ボーダー本部。
アタッカー達との腕比べをして打ち上げをした後、正隊員に支給されているスマホ端末に一つのメッセージが届いた。
……忍田本部長からの呼び出しとかマジかよ。
ボーダーの派閥で俺は忍田派に所属しているけど、何かやらかしたかな?
俺はビビりながら忍田さんが待つ本部長室へ出頭した。
「失礼します」
「浩也、いきなり伸び出してすまないな」
「大丈夫です。それよりもなぜ太刀川さんは床に正座しているんですか?」
「慶は加古に大学のレポートを任せてランク戦をしていた罰だ」
いつものやつですね。
太刀川さんは戦闘IQはかなり高いが、学業の成績はイマイチ。
なんなら落第寸前らしいのは知っているので、俺は何も言えなくなった。
死んだ目の太刀川さんが、助けを求めるようにこちら見てくる。
「な、なあ浩也、助けてくれないか?」
「すみませんが俺の上司は忍田さんなので本人に言ってください」
「ちくしょう!」
太刀川さんごめんなさい。
悔しそうに俯く太刀川さんが正座する中で、俺はソファーに座り忍田さんに質問する。
「忍田さんすみません。自分を呼び出した理由はなんでしょうか?」
「それは……浩也にはコレを任せたいと思ってな」
忍田さんがテーブルに置いたのは黒い腕輪。
中央には盾と二本の剣が交差しており、どこかカッコよく見える。
「えっと? その黒い腕輪はブラックトリガーですよね」
「名前は空舞〈くうまい〉。このブラックトリガーを起動できたのはお前だけだ」
「つまり忍田さんは自分の派閥を強化したいのですか?」
「それもあるが、使える手札は一枚でも多い方がいい」
原作未登場のブラックトリガー……。
前に起動した時は八本の剣型トリガーが空中で浮かび、盾や高火力の砲台になったりした。
他の武器はブレード一本だけだが変形で盾にもなり、使い方次第であの『風刃』にも勝る力を持っている。
「正直に申し上げると、自分には荷が思いです」
「そうか? 浩也が空舞を使った時は慶や蒼也すら歯が立たなかった記憶があるが?」
「たまたまですよ」
空舞の練習をした後、太刀川さんや風間さんと模擬戦をやった。
その結果、太刀川、風間、小南に勝つことはできたが、使い手の俺としては『分相応の力じゃない』と思った。
ブラックトリガーを勧めてくる忍田さんに戸惑っていると、今まで正座していた太刀川さんが目を輝かせ始める。
「よし浩也。そのブラックトリガーを使ってもう一度、おれと勝負しろ!」
「慶はレポートの件で反省していろ!」
「うぐっ!? 忍田さん、すみません」
忍田さんは太刀川さんの師匠をしているから、ちゃんと制御が出来ているな。
壁の前で縮こまっているボーダー隊員No.1は置いといて、忍田さんが難しい顔をする。
「浩也がブラックトリガーを持ちたくない理由は、紛失した時が怖いからだったか?」
「紛失もありますが、自分はレイガストを気に入っているんですよ」
「なるほど……。それなら、通常はノーマルトリガーで、非常時は空舞を使って欲しい」
「わ、わかりました。ただその場合は自分の立場はどうなりますか?」
「基本はB級隊員で動いてもらう」
と、なると、立場的には今と変わらないのか。
ブラックトリガー使いは強制的にS級隊員になり、一人で一つ部隊以上の戦力をして数えられる。
「了解です! では自分はB級ソロでのんびりしながら、レイガストの良さを広げますね」
「相変わらずチームは組みたくないのか?」
「ええ……。自分は団体行動が苦手なので難しいです」
正直、チームを組んでも俺は役に立たない。
自分が『場に弾かれてきた』人間なので、臨時以外でチームが組みにくいのはわかっている。
そのことは忍田さんにも話したけど、どこか納得されてない気がする。
「私個人としては浩也にチームを組んで欲しいがな」
「申し訳ありませんが、そのご期待には添えないです」
「無理には言わない。ただお前はもっと自信を持った方がいい」
自分が役立たずなのは『俺自身』がよく知っている。
どこか周りの評価が高い気がするが、ここでから回ったら事故るのは体験している。
忍田さんからの優しさに、俺は目を逸らすしかなかった。
「ん? 行き場所がないならおれのチームにくるか?」
「A級の太刀川隊には俺は実力不足ですよ」
「いいと思ったんだがな? まあ、気が変わったら言ってくれ」
「太刀川さんありがとうございます」
ほんとボーダーの人達は暖かい。
太刀川さんからのお誘いをやんわり断り、俺は忍田さんの方に視線を戻す。
「忍田さんすみません。お話は終わりでしょうか?」
「私からの話は終わりだが、もう少し本部長室で待機して欲しい」
「えっ……」
今度は何が起きるんだ?
俺はビビりながら待っていると本部長室のドアが開き、見覚えのある目つきの悪い少女が現れた。
「忍田本部長失礼します! 今日こそ浩也とチームを……え? なんで浩也、いえ、霧雨さんがいるの!?」
「えっと? なんで黒羽さんが本部長室に?」
「それはその……」
「黒羽君は時間を見つけて君と組みたいと私に言ってきてな」
マジでどういうこと?
とんでもない展開に固まっていると、黒羽さんは顔を真っ赤にしながらこちらを見た。
「そうよ! でも一年くらいアプローチをしているのに、アンタは振り向いてくれないじゃない!」
「カメレオンで不意打ちしてきたり、ストーカーされたら怖いだろ!」
「「浩也は大変だな……」」
てか、オペレーターがなんで戦闘用のトリガーを持っているんだよ。
過去の嫌な記憶を思い出していると、忍田さんが難しい表情を浮かべながら言葉を発してきた。
「今のところは防衛任務で同じにしているが、黒羽君には足りないのか?」
「もちろんです!」
「女の執着は怖いな……」
太刀川さん、そのセリフは俺のですよ。
笑顔で頷く黒羽さんに、男子勢がタジタジになっている。
そんな中、本部長補佐の沢村さんが涼しい顔で本部長室に入ってきた。
「話は聞いたわ! 浩也君、愛佳ちゃんとチームを組みなさい!」
「ごめんなさい、ストーカーはお断りします!」
「……恋する乙女に障害なんてないのよ!」
「法律は守りましょうね!?」
あかん、この人は忍田さんにぞっこんだったな。
色んな意味でカオスになり、俺は場を収めるで無駄に体力を使う。
その結果、俺が防衛任務をする時は黒羽さんがほぼ固定でオペレーターになることが決まりました。
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・恋するストーカーオペレーター・クロハネ
・名前、黒羽愛佳〈くろはねあいか〉
・ポジション、オペレーター
・年齢16歳
・誕生日、9月15日
・血液型、AB型
・星座、オオカミ座
・職業、高校生
・好きなもの、浩也〈霧雨〉、暗躍、シュークリーム
〈パラメータ〉
・トリオン7
・機器操作8
・情報分析8
・並列処理10
・戦術8
・指揮7
〈トータル〉
・41