ここは時空から見ればありふれた世界、分類は時空用語で表すと『マジカル☆ロリポップ』。
最近では世界を超えられる者は区別をつけるために異世界ファンタジー系なら『ドラゴンファンタジー』、変身ヒーローものは『マスクドヒーロー』など名称を付けて分かりやすくしている。
主にカワイイ魔法少女が悪の組織に素敵な力と絆で立ち向かう王道路線の物語を表している、ちなみに人死が出たり裏切ったりするダークな路線の場合は『ブラッディ☆ドレス』と別の括りなので注意。
時空監理局上層部のポチとローレンはそんな雰囲気溢れる世界に訪れていた、何故この世界に訪れていたのか? それはざっと20分前まで遡る……。
「たくっちスノー、俺達でグッズ売れば儲かりそうなんだけどいいアイデアある?」
「えっ、確かに儲かりそうだけど大丈夫なのそれ? 訴えられない? ……あっおい待て逃げるな黒影! 都合悪くなったな逃げるなアアアア責任から逃げるなアアアア!!」
「ねえポチ、ちょっくら良い感じのグッズアイデア出して?」
「やっぱりタイアップかな? 人気アイドルとかキャラクターの推し活グッズ! ちょっと色々あって俺も星野アイちゃんのグッズ買い漁ってるんだよね!」
「なるほどキャラクター人気か! だったら皆がまだ手を出してなさそうなもの……あっ、マジカル☆ロリポップに出てくるようなファンシーな魔法少女!」
「俺はいいアイデアだと思うね、ただプリキュアとかをお金の道具にするのはちょっと気分的に良くないから……その辺の交渉は全面的に協力してもらいたいんだけど」
「うん、その手のグッズ作るのはポチが上手いって聞いてるからね……あと一人誰か暇そうなやつ……あっローレン!」
「俺めちゃくちゃ暇じゃないんですけど!? 出来ることが少ないだけですよ!?」
ということがありローレンが無理矢理駆り出された、もちろん嫌々な顔をしているが分身が余ってたのでしょうがないと現在に至る。
ポチは早速魔法少女グッズの交渉ついでにサイン貰ったり観光する気満々だったがそう簡単にはいかないだろうと思っていた、手元には例の『オリジナル』のマンガがあるのでどんな世界かも分かる、ここは【魔法少女にあこがれて】という作品らしい。
「ふむふむ、この世界に居る魔法少女はトレスマジアっていうのか……ああここもう既にメディア展開してグッズ作られてるのか」
「ええ? それだけ有名なら俺たちがやることって特にないんじゃ……」
「まあ待って! グッズを作る上の注意事項とか参考になる事とか見つかるかもしれないしさ! それに時空規模はまだでしょ?」
ポチは拾って一面を見る、トレスマジアと相対する悪の組織エノルミータに関する記事が載っていた。
典型的な世界征服を掲げるエノルミータはつい最近総帥が変わったと時空の情報でも聞く、新たに総帥となったマジアベーゼは経歴が一切不明で幹部から一気に成り上がり前総帥を実力で引きずり降ろした……それ以外の事は一切の謎に包まれている、周囲から見て分かっているのは弱肉強食で結構武闘派な組織なんだな……ということ。
トレスマジアもだが変身者は認識阻害の力があり正体は関係者以外誰にも分からないようになっているらしい、ポチも本が読めるとはいえ口に出してはいけない、言ったら極めて残虐な手段で処刑されると黒影にキツく言われている。
本題は……新時代となりマジアベーゼの存在が発覚してからエノルミータの規模は時空の脅威レベルまで跳ね上がった、ついこの間特盟がマジアベーゼを『要注意級の高ランク時空犯罪者』として認定したことも記憶に新しい。
「時空犯罪者になっていきなり要注意だよ? たくっちスノーも怪しんでるから余裕があればマジアベーゼの調査もしたくてね」
「多分そういうのこそあの人の仕事なのでは……?」
ポチとローレンははっきり言って両方とも戦闘向きではない為に悪の組織に潜入するなんて無茶ぶりかもしれない、だがポチはこの仕事をするなら自分がうってつけであると自負している、マジアベーゼの傾向を探るくらいなら自分が得意分野だ。
「魔法少女といっても見た目が突然変異レベルで変化するようなのは稀だ、魔法使いプリキュアとかあるにはあるけど基本的にその心配はないと言っていいよ」
「性別とか変わるパターンもあるにはありますしねぇ……」
「でも基本的に変わってないってことは肉体構造は同じということ、顔は分からなくても体は正直だ、骨格、肌の質、ほくろの数、体の癖、体毛、傷跡、スリーサイズなど……」
「待ってそこまで細かくデータ化したら貴方がお縄ですから」
「冗談だよ、マジアベーゼの趣味傾向や注意点に行動や観察結果を資料にすればいいだけだ、SCPとかの報告書とかみたいなものだから!」
「そんな都合よく……」
「まあいかないだろうね、だから今回は魔法少女タイアップグッズの仕事を軸に頑張っていこう! というわけでいこうぜ漆黒くん!」
「はあ……どうしよう、俺たちなんとかなるかな?」
「へーきへーき! 今回俺達主人公じゃないんだからそこまで派手に動かなければいいって!」
時空監理局は2つの目的のためにトレスマジアとエノルミータに近付く。
だがこれが壮大な歴史の転換の前触れであることを二人はまだ知らない。
というかこの世界に生きる者全てが想像だに出来ないだろう、どんなとんでもないことが起きるのか……それがポチ達のせいじゃないとしても、彼女達に別世界の新たな縁が出来るとしても。
「……各時整列」
どこにあるかも分からない時空監理局でも突き止められないエノルミータアジト、トレスマジアに対抗する為に戦いを繰り広げる幹部達が会議室に集う。
【ベーゼちゃん親衛隊長】レオパルト
【おねむ本部長】ネロアリス
【アイドル志望宣伝部員】ロコムジカ
【コソコソ潜伏工作員】ルベルブルーメ
四人の幹部の真ん中に陣取る総帥マジアベーゼは冷たい顔をしながらこれからの目的について語る。
──実の所彼女は前総帥と違い世界征服には微塵も興味がない、ただ楽しみたいだけだ……トレスマジアとの激闘、勇姿、間近で拝められる至福の時間、しかし現在は問題が多く折角の一時を邪魔されることも多い。
「……ここ1週間我々は何回トレスマジアと戦いましたか?」
「3回くらいね」
「……では次に、我々はトレスマジア以外にどんな敵と戦ったか私がリストアップしていきます、えー……秘密結社HERO、オブリビオンを名乗る謎の集団、なんとかの神の使い、なんとか監理局、全時空特殊警察連盟とかそんな名前のやつ、殺し屋、なんとか竜のなんとかかんとか……ああもう!! 最近の私達変な奴らに絡まれすぎですって!!」
全体的に悪の組織が時空規模に有名になった事や誰でも時空を越えられるようになった弊害も当然ある、トレスマジア以外に戦う相手が一気に増えたことである。
元々トレスマジア以外に魔法少女もいるし悪の組織なので相手を選ぶ贅沢は言ってられないが、ヒーローや警察の他にも名を上げたい時空犯罪者や気まぐれで現れた第三勢力まで邪魔してくる。
百歩譲って魔法少女でも来てくれないかと思うがそうもいかない、ベーゼにとっては魔法少女以外面白みもないのに無視できないのだからストレスが溜まる一方である。
だがそれより許せないことがまだある、トレスマジアの方もまた数多く現れる敵存在の相手ばかりさせりて疲弊している。
「トレスマジアがここ一ヶ月で戦っている存在、我々を省いても沢山あります、さっき言った秘密結社HERO、多幻獣という謎の化け物、業界用語でオブリビオンなどと呼ばれている生命群、それと※長いので10分以上省略」
マジアベーゼはトレスマジアを愛している、変身する前から尊敬し敬愛して憧れている。
そして今では……そんな誇り高い彼女達の尊厳を自分の手でめちゃくちゃにすることに悦びを感じているが、今ではそんな機会も少なくなっている。
まるで一方的に玩具を取り上げられたような気分であり現在の情勢には不満しかない。
「新時代って奴は不便でさぁ、これからアタシらは可能性的にはガンダムとか仮面ライダーとかいう奴らともケンカしていくことになるわけだし」
「悪の組織が文句言うのもおかしな話だけど部外者が関わってこないでほしいわね……」
「だからどうするって? こっちもめちゃくちゃやってはいるが全部こっちのせいってわけでもないだろ」
「ええ、ですが土足で一方的に好き放題されて貴方達もいい気分ではないでしょう……我々の邪魔をする者は全員追い出しましょう、この空間では私達とトレスマジアだけが戦えばいいんです」
「オッケーだよベーゼちゃん、私らにとっても面倒な奴らだしどうせ襲ってくるなら……」
二度とこの世界に来たくならないように全員叩きのめす、こうしてエノルミータはトレスマジアと戦えるようになるために……あくまで自分達の目的の為に住処に蔓延る時空各地の悪を殲滅してやる。
トレスマジアが誰にも余計な悪に巻き込まれて自分達と無縁なところで倒れて欲しくない、最終的には自分が彼女達に倒されるようにしたい。
そんな理想を叶えるために『それ以外』をひたすら根絶する、それが時空犯罪者マジアベーゼの願いだった。
「後から知ったんだけどさぁ、ベーゼやトレスマジア狙いで色んな奴が来て本日もニッチなショータイムらしいんですよ奥様」
「それ早く言ってくださいよ!!」
その一歩絶賛戦闘中に巻き込まれてるポチとローレン、こういったバトルが絡むお話の世界は毎日のように他の世界から来た奴らが様々な動機で戦いを繰り広げる、はっきり言ってこういう世界に住める人々はよっぽどのタフかバトルマニアくらいである。
しかし余波だけでビルがぶっ壊れたり海が荒れるような奴も空気を読まずに我が物顔で街を荒らすのでベーゼのストレスが溜まるのも納得である、彼女はどういう心境が分からないが無関係な民は襲わないタイプの悪者らしきことは分かった。
「それで魔法少女はいつ現れるんですか!?」
「そうは言ってもね! 時空犯罪者は百人居てもトレスマジアはたったの三人! 空気読めない奴らばかりで……って、だから時空ヒーロー達も来るのか」
「何呑気な事言ってるんですか! これじゃ元の任務どころじゃありませんよ!!」
ポチ達は逃げていく内に何かに引っかかってすっ転ぶ、足元には大量のメカブ……これが妙にネチョネチョしてるので動きにくいし磯臭い。
周りでメカブを街に撒き散らしている変な奴らがいた、ポチから見た場合あれは低ランクのW級時空犯罪者だが充分めんどくさい。
「我らメガブ団! 時空の全てをメカブで埋め尽くして全人類1日3食メカブ生活を掲げる!」
「クソみたいな動機だな!」
「いやーでもたくっちスノーさんだったら相手しないよなぁこの公害メカブ変質者……」
メカブの山でベトベトになって立ち上がれないながらもポチはこれなんとか出来ないかと考えていた、おいしいメカブのレシピなら心当たりはあるがもう既に街中メカブまみれにしてる時点でもう時空監獄で断罪者にお世話になってもらうしかないのでポチ達に出来ることは1つー!
「もしもし局長! 助けてー!!」
「監理局として恥ずかしくないのですか!!」
「だって俺ヒーローとかじゃないんだもん!! グリモアをちょっと読んで今後の展開が分かるだけで」
「ネタバレやめてください!!」
そんな声が届いたのか上空から光るものが遠目でも見える、しかし飛んできたのは鳥でも飛行機でもトレスマジアでも無くミサイルの雨、メカブごと木っ端微塵に吹っ飛ぶがポチはマガイモノなのでどんなに身体が弾け飛んでも復活できる、ローレンはダメっぽいがちょうどネタバレを許せないタイプの悪の総帥マジアベーゼが空からドロップキックしてくれたおかげで直撃は避けられた。
メガブ団は吹っ飛んで真っ黒なまま予め野獣先輩が通報しておいた緊急次元通行で落ちていく、これは監理局の特権であり抵抗不可と判断した時空犯罪者を直接時空監獄に放り込むことが出来るのだ。
ミサイルが撃ち終わり煙が晴れてポチは双眼鏡でミサイルの発射先を探ってみると一瞬だが人の姿が見えた。
「自衛隊? それとも時空ヒーローか?」
「めちゃくちゃ見逃した……けど多分時空ヒーローや魔法少女とかではないね」
「ひ……ひとまずエグい格好の女の子のことはいいや、また変な奴らに捕まらないうちにさっさと逃げるよ」
「あのさぁ……今更なんすけどポチ、俺らがその変な奴らに含まれないって保証は?」
「え?」
突然背後から肩を叩かれる、ポチみたいな人間にとって突然声をかけられることは身に覚えがありすぎる恐怖なので恐る恐る振り返ると警察ではない、ないのだが……金髪でフリフリのお洒落な姿を着たそれはまさしく魔法少女……。
「ま、まさか……トレスマジア……ですか……?」
「なあそこの兄ちゃん、うちとちょっとそこでお話せえへんか……?」
「俺知らね」
「有言実行で逃げようとしないで漆黒くん!!」
「なら実力行使や」
「もしもし副局長ォー!!」
黄色の魔法少女は逃げる野獣先輩を強引に力で失神させて眠らせ、ポチは最初から抵抗しても良くないと思ったので大人しくすることにしたが念の為たくっちスノーにはメールした。
「私の幸せを返せー!!」
その一方マジアベーゼは息を切らしながらも動き回って一般徘徊時空犯罪者を次々としばき倒している、魔法少女に比べたらメガブ団くらいの奴ならタイマンでも倒せるし鞭を振るえばいくらでも怪物を作り出せるし時空通販局と呼ばれる大手通販会社で取り寄せてた物を使えば強力な下僕を作れる、彼女はそういう魔法を持っているのだ。
ベーゼはこれを個人的に『星壁獣』と呼んでいる、3秒でルベルブルーメに考えてもらった。
名前はかっこいいがトレスマジアにセクハラしたい要望から淫猥な事を得意とする……そのついでで他陣営を追い出したいというストレスから強大な戦闘能力を持っている。
「もう一発いでよ! 星壁獣パンドラゴラ!」
【星壁獣パンドラゴラ】
元にしたもの:ダイヤフラワーの種。
値段:400ジーカ
能力:結晶操作・スタチュー化。
ベーゼの力で生まれた花のような怪物は七色に輝く結晶をまき散らしたり敵を拘束して一気に片付ける、今日だけで普段の3日分は魔力を消費してる気がする所にさきほどメガブ団にミサイルを撃ち込んでいたレオパルトから連絡が入る。
「おつかれ~ベーゼちゃん、今SNS見たらトレスマジアが不審者捕まえて一旦離れたってさ」
「分かりました、数も減ってきましたし今日は一旦引き上げ! 各自撤退するように! 今日は会えませんでしたが明日こそはトレスマジアと戦いますよ!」
ベーゼはパンドラゴラを残して時空の渦を作り撤退、パンドラゴラは信号弾を握っており投げると爆発、レオパルトを筆頭に次々と中に入っていき閉じた。
数分後にはトレスマジアの一人が駆けつけて切り裂いて一瞬で倒すが、仲間が不審者を捕まえたと聞いて急いで戻った。
「で? おたくらどこ出身?」
「グッズをちょっと広めようとしてね、というか許可を貰いたくて」
「俺もう帰りたいんですが……」
「戻ったわサルファ……それで変質者というのはその人?」
「ああ、戦ってるところにウロチョロしてたんで事情聴取や」
「まあ、なんというかアレの確認も俺達の仕事なので……」
ポチとローレンは軽く説明をして、自分達がトレスマジアにお願いしてグッズの販売を頼みに来たことを説明する、彼女達にとっては急に現れておいてこんなことを言い出すのだから不服かもしれないが時代の流れに適応する為にも話を聞いていく。
「それならそれで最近現れる変な奴らに関してはどういう見解や、アレのせいでうちらは今までの何倍も忙しくなっとる」
「新時代を起こしたのは俺たちじゃないから……といっても見過ごせないのは分かってる、でも俺たちにも余裕がないんだよ」
「今俺達も貴方達のような人達に片っ端から声かけて乗り遅れないようにしているので……も、もちろんそちらにもメリットは提示しますから! あくまで俺達は裏方の立場ですし」
「よくそれで私達に会ってお金貰おうって態度取れるわね……」
「それで俺が一瞬見たミサイルの雨を打ち出した子は君らの敵でいいんだよね?」
「それは多分レオパルトの事だよね……おかしな話ではあるんだけど、この世界に訪れる変な人達をやっつけてるのって私達よりエノルミータの面々なの」
「えっマジアベーゼが? うちら時空界隈でも急に名を上げ始めた厄介な奴なんだけど……これは調査記録に書いておくか」
「ま、だからといっていい奴というのも違うけどな」
「さて……漆黒君、俺のリュックに発明品のどこでもテント用意してあるからセッティングしておいて」
「は? 何いっとんねんお前、まさかウチらの所に上がり込む気か?」
「だってここに入れば魔法少女も沢山来そうだからね、マジアベーゼの調査も俺達の仕事の範疇だしここで魔法少女を待ってグッズ交渉しておけば俺達の仕事はなんとか終わるってわけ」
「じゃあまた敵がなんか来て襲ってきたら?」
「なんか流れ弾でやられてくれないかなって祈る!」
「こんなことで仕事になるのかな……」
意気揚々と目的の為にこの世界に滞在を決意するポチ、トレスマジアの3人その後ろ姿を神妙な顔で眺めていた……。
「どうしようかアズール、サルファ」
「多分ほっといちゃいけない奴よね……タイアップはちょっと悩むところだけど」
そしてメールが監理局に届いて、時空間に乱れが生まれ……【魔法少女にあこがれて】世界に異変が起きる!
「うわっマジでこいつら野宿してるやん」
ポチがこの世界に滞在して早くも1日、発明品の力でテントを張っても問題ないところ、すなわち飛行機が飛んでこない程度に高い空にテントを張っているのだ、降りる時はハシゴがあるし上がる時には全力でジャンプすればカッコよく拾ってくれる優れものだ。
「おはよう京都弁の魔法少女ちゃん! 俺は君らの特定とかはする気ないから安心して!」
「ウチはマジアサルファや、ちゃんと覚えんかい」
「覚えてるよ、それで他がアズールにマゼンタちゃんでしょ? 出来れば君らでグッズ作って監理局の仕事進めたかったけどなかなかうまくいかないものだね」
「なんでどこの馬の骨かも分からんやつに養分チューチューさせろと? 言っとくがよそ者に好き勝手されたくないのはウチらも同じ気持ちや」
サルファはめんどくさそうにテントの上にいるポチに石でもぶん投げてやろうと思ったがいちいちこんなのに構ってられないので直接しばきあげようと浮遊してテントに侵入した。
戦闘力を持たないと本人は語るが信用出来るか怪しいので戦闘態勢は崩さず警戒は怠らない。
「……それで? 現状この世界に魔法少女は来ないで、それくらい分かってるやろ」
「それはまあベーゼの振る舞いが有名らしいからね、俺も情報を調べてびっくりしたよ……こりゃ何が何でも君等を連れて行かないと」
マジアベーゼは魔法少女にスケベな事を行うのが好きな変態サディストである。
強者であると同時にそのような性癖さえも時空で知れ渡っているので貞操を守りたい別世界の魔法少女達は怖くて近寄りたがらないという、まあ当然の結果でありベーゼがいる以上この世界に魔法少女なんか来るわけない。
逆に変な奴らが多いのも納得がいく、男ならベーゼに狙われることもないしなんなら逆に強い女幹部をこの手で堕としてやりたいというのは一般性癖だ、あと類は友を呼ぶという言葉もある……ということをポチは長々と話した、世界を調べる上で知ることは大事なことだ。
「いや〜、早くグッズ作りたいな」
「心配せんでもお前は充分あいつの同類や……あっ、時間的にそろそろまずいな」
サルファは時計を見てテントから出る、自分に何もしてこなかったということは本当に戦闘力は持たないのか? しかしサルファはこれ以上面倒事が増えても困るので警戒を緩めない、むしろ自分達が忙しくなるのはこれからだし寒気を感じる。
「なんか不思議と嫌な予感するんよなぁ……何が来てもおかしくないが……せめてつくねちゃんとか大魔法峠とかあの辺りがええけども!」
一方でポチもどうにかこの場所に魔法少女を呼びたくて悩んでいた、サルファはああ言ってるもののヒーローたちの助け合いや観光もこれから先止まらなくなっていくので彼女達にも慣れてもらいたいというのがある。
「となると魔法少女が来たくなるような魅力を出さないとなぁ……つまりはマジアベーゼに邪魔されないようにするには……」
「その件ですが黒影局長に相談してみたらいいアイデアがあると」
「う、う──ん仕方ない!」
監理局ならではの対策方法は局長の脳内にはいくらでも思いつく、ある意味では町おこしのようで楽しくなってきたポチは時空監理局のPCを立ち上げながら行動に移す、しかしそれが黒影のアイデアというと全く安心できないところもある、実際は仕事しながらサルファの言うことが正しい気もしてきた。
「ああ……今日も魔法少女成分が足りない……」
彼女の名前は柊うてな、誰も知らない関係者しか知らない……マジアベーゼの正体である。
かつては変身しなくても魔法少女をそばで眺めて推し活を満喫していたのだが、ポチが言っていたようにマジアベーゼの事は周囲に知られてトレスマジア以外は会いたがらないしトレスマジアも変な奴らに絡まれているので本当〜に推し活の面では暇を持て余しているのだ。
潰しても潰しても消えないゴキブリのような奴らばかりで気が滅入る、おかげでコンディションも最悪で表向きの姿は不健康まっしぐらである。
「うてなちゃん、おはよう」
「ああ……うん」
クラスメイトに話しかけられても上の空みたいな返事をしてしまうので心配されることも多い。
ちなみに今心配してくれた花菱はるかはある意味敵であるマジアマゼンタの変身前だが彼女達はお互いに正体を知らない。
はるかもまた変な奴らや時空犯罪者に絡まれており、気分は落ちていないが私生活でも疲労を残したままである。
この時空新時代で一番弊害を受けたのは休む暇もなくなっているヒーロー達だろう。
授業を受けても上の空のまま、帰り道うてなはぼーっとしたまま気分を和らげようと魔法少女グッズでも買おうとしたが最近そんなことの繰り返しの為にもう既に財布はすっからかんだった。
仕方ないのでそのまま家に帰る。
「うぐ……戦いがしたいなら自分の世界でやってくれたらいいのに、トレスマジアも変なのに絡まれて……はあ」
もうやりたいこともないので帰ったら寝ることの繰り返し、マジアベーゼとして勝負するためにも最近は柊うてなとして生きる時はひたすら休養に徹しなくてはならない。
昼夜逆転ならぬ通悪逆転の日々を送り、今は夢の中で好き放題彼女達相手に愉しむくらいしか出来ないがあまりにも都合が良いと「なんか違う……」と解釈違いを起こし直ぐに目が覚めて泣いてしまう。
「私がやりたかったことはこんなことじゃなかったはずなのに……」
泣いてもしょうがない、時空新時代の元凶はもう死んでいるし……自分は現実では悪の総帥、敵だらけだから。
「そろそろ変身するか」
それに町を他の変な奴らに好き放題されるのはうてなにとってもいい気分ではない、これは自分の精神を安定させるためであると割り切り見えないところで変身を済ませて外に出る。
「大変! また私達の世界に変な人達が現れたの!」
「相変わらず数が多いわ! 手分けして片付けましょう!」
「またか! 俺としてもちょっと同情してきたよ!」
その一方でトレスマジアも騒ぎの予感がして変身、ポチも本を頼りにしていけばマジアベーゼに会えるはずだと時系列を確認しながらアズールの後ろに回りおいかける、総帥になっているということはマジアベーゼがアズールを逆境まで追い込んで覚醒させてゴッドイベントを一つ済ませている、しかしまだ大きな進化などには至ってないといったところだろうか?
「貴方色んな世界の管理をしている組織なんでしょう? 私達の世界がこんなにめちゃくちゃになっているのに何か思うところはないの?」
「あるに決まってるでしょ! 俺だって世界平和が第一だしただ自分の仕事を遂行なんて出来ないからちょっと寄り添ったりもするよ、最初はどうやったら魔法少女が来るかを上司に相談してたんだけどその上司がわけありなんでどうしてもついていかないと不安なんだ!!」
アズールの飛行にビルを飛び越える形で追いついていくポチ、このまま回り込んでイベントを先読みしようと本を確認していたところよそ見飛行そのまま踏まれて地面に着地した。
ボロボロになりながらもポチはマジアアズールとマジアベーゼ、両方揃えばそれぞれを狙う奴らが集まるのでそこを一網打尽に出来る作戦を思いついたとハンドサインで説明する。
「サルファも言っているけど私もまだ貴方を信用出来ると思っていない、本当にその作戦で上手くいくの?」
「そ……そりゃまあ俺はすっとぼけた間抜けではあるけど時空監理局ではあるからね、平和が何よりではあるんだよ俺的にはね? それでも信用できないなら俺の事なんてどうしてくれても構わない」
「本気なの?」
「どっちみちろくな生き方も死に方も出来ない最低野郎として生まれてる、どうせ死ぬなら可愛い女の子に処刑されたいなーってくらいには自覚してるつもりだよ? それに俺はグリモアの加護で守られてるって信じてる」
「……グリモア?」
「この世界にも確かに存在する星のエネルギー♪」
この瞬間、ポチの能力で確かにマジアアズールに猟兵の力が宿った。
マジアアズールは一時的に彼を信じてみる事にした、別の所に離して監視させるがくれぐれもベーゼのいやらしいデータは取るなと釘を刺してベーゼとタイマンを仕掛けに行く。
ここにくるまでにまたベーゼは数々の時空犯罪者などをしばいてきたらしく息を切らしているがアズールを見るなり文字通り目の色を変えた、よほどトレスマジアとの戦いに飢えていたらしい。
しかしそれでもやることは変わらない、いや……あるべき姿に戻ったというべきか。
「疲れてるところを襲うなんて卑怯とは言わないわね?」
「結構です、私はあなた以外に倒されるつもりはありませんし……あなた方トレスマジアも我々以外の有象無象にくたばってほしくありません」
「愛ゆえに……ということね」
ポチは改めて生のマジアベーゼを見る、写真で見るより威厳や迫力も違う……見た目だけは華奢な少女だがもう既に何十という時空犯罪者やヒーローが彼女の癇癪に敗れている。
あとポチからすればベーゼも露出がエグすぎて衣装考えた人の倫理観が心配になってくる、多分彼女未成年だよな……? とリアルにそういう恰好を見ていると心配になってくる、現に危ない男達に囲まれているし。
(……本当に大丈夫なのよね)
邪魔にならないようにポチはひっそりと黒影に連絡を入れながら2人の試合を観ていたが……想像以上だった。
V級程度の低級時空犯罪者では間に入ることも出来ない、魔法少女を辱めることを目的としているはずなのにベーゼは犯罪者達を相手していた時よりもキレがよく生き生きとしている、鞭のひと振りで自分ならバラバラにされそうだと感じるくらいには殺意を感じられるのにマジアアズールの前ではまるで決められたシナリオのようだ。
対するアズールも戦い慣れているだけはあり攻撃を全て見切って剣で受け止め近寄ってくるし攻撃は当たるというより最低限の物を受けてカウンターしているように見える……いや本当に作戦か? と思う時もあるが、まるで百合の間に挟まる男を粛清するどこかの特殊部隊のようにこの2人の戦いに挟まる事は出来ない。
善も悪も関係なく無関係なやつは潰される。
「ああ楽しい……なんて楽しいのでしょうか!! やはり私の敵は貴方達ではなくては!! このまま私達の戦いに水を差す者は全員消し去ってずっとこうしていたい! もっと満足させてくださいよ!!」
「くっ……色々戦ってるだけあってどんどん強くなってるわね……わんこみたいな名前の人! まだ終わらないの!」
「おや、珍しく見物客まで連れてきたのですか」
「君の嗜みは眺めていたいところだけど今日は仕事なのでね! 時空全土に通達! このままでは各自豚箱というか拷問地獄の阿鼻叫喚になるのでしっかりご清聴ください!」
あれから黒影が強引に時空のルールを動かして新しい時空法を作成させたらしい、簡潔に言えば決闘罪が時空全土に適応されたという話であり監理局など特定の存在の許可や申請無く他世界の戦闘行為は違法であるとして罰せられるようになったという、ヒーローも時空犯罪者も例外なく取り締まれて仕事ではないのでしっかり監理局の許可をもらってくださいということだった。
それが出来ないのであれば……。
「無許可で他世界戦闘行為、決闘及び鎮圧をした際には100万ジーカ!? ちょっと待って黒影局長! 俺はここまでのペナルティなんて聞いてな……」
話してる途中で焦るポチと次々と奈落の穴が開いていく一同、悲鳴とともに落ちていったり両者が逃げ出したりしていってよく分からないまま2人だけが残った、少なくともこの一件だけでこの世界に限らず時空各地でヒーロー達が捕縛されるという大事件、信用しろと言っておいてこれではサルファに殴られても文句言えない。
「局長ぉ……確かに世界の安全は保たれたしお金が欲しいのも分かるんですけどやり方が短絡的すぎますって……なんて愚痴って改善する人じゃないか、じゃあ俺は他の仲間呼んでくるのでごゆっくりお楽しみください!」
「な……なんなんですかアレ」
「私としてもついこの間来たばかりだから詳しくは……」
ここは逃げるが正解と判断したポチは速攻で安全な所まで逃げ出して残るはアズールとベーゼのみ。
ようやく邪魔者がいなくなってせいせいしたベーゼはちょうど時空通販局から荷物が届いて時空の渦が開き、段ボールごと鞭で叩いて星壁獣を作り出す、通販局は金さえ出せば悪の組織でも平等に荷物を届けてくれるので遠慮なく使う。
なお代金はうてなではなくベーゼ宛なので何回か他の面々にツケにしてもらっている。
「ようやく貴方達にこれを見せられる時が来ました! これまでは邪魔者のせいで楽しむ暇もなく倒されてしまいましたからねぇ!」
【星壁獣ウォーカベル】
元にしたもの:マカライト級レンガ
値段:1300ジーカ
能力:強固な壁。
ベーゼが作り出した岩の巨人のような怪物がアズールを覆い尽くすようにプレッシャーをかける、作り出す怪物もこれまでとは桁違いの実力であることを察知して剣で強固な拳を受け止めるが吹っ飛ぶ。
ポチは戦えなくても身を守る術は持っていたので閃光手榴弾を投げてみるがあっさりとベーゼに詠まれて投げる前に噛み砕かれてしまう、その姿はとても恐怖を感じる
「何もしないほうが賢明ですよ、私は無関係な人には手を出しませんのでさっさと離れてはいかがでしょう」
「そうは言うが時空犯罪者の言う事は信用できないというのが当然の反応かと思わないかい」
「本当ですよ?」
「そこまで言い切れるわけは?」
「私は今、魔法少女と戦えて機嫌がとてもいいからです……貴方みたいなものを攻撃しても楽しくありませんし」
「た、楽しく……ない? な、なるほど資料に加え入れて……」
「考えた所で無駄よ、理解なんてしなくていいわ」
「素晴らしいですねアズール! こんなことでくたばるわけがないと思ってました!」
吹っ飛んだ瓦礫を払いのけてマジアアズールが起き上がりそのままウォーカベルに特攻、同じ部分に攻撃を続けて急所を砕くテンプレのような戦術を取って攻めにかかりポチは本当に逃げる事にした。
──マジアベーゼの考える事は理解が及ばない、マジアアズールはそう言っていたが彼女だってそうではないか。
何故こんな追い込まれてもあの子は笑っているんだ……?
「貴方が溜めていた鬱憤、不満、変わる時代のしがらみ……私が愛をもって全部受け止めてあげるわ!」
アズールの健闘もあり遂にウォーカベルの無敵の身体を砕いて貫いた……貫いたのはいいのだが身体が動かない。
どうやら突っ込んだ勢いでそのまま身体がウォーカベルに刺さってしまったらしい、いわゆる壁尻というやつである、なんかマンガでもこんなことあった気がする。
「おやおや、久しぶりの戦いで昂りすぎているのではありませんか? 隙だらけですよ」
身動き取れずさらけ出されたマジアアズールの尻に力強くベーゼの鞭が入る、声を漏らして暴れるが綺麗にくっついて抜けることはなくお尻を痛めつけられる。
「あ"あ"っ♡お"っおっ!!」
だが、ポチしか知らないのだがマジアアズールは結構ドMだった。
だったというよりはベーゼとの過去の戦いで愛に目覚めたと言った方が正しくてさっきふっ飛ばされた時もそあいえ快感で笑みが漏れていただけで戦闘狂とかではないが、多分しばらくポチには気付かれないだろう。
これだ、この戦いがしたかった、こんな風に魔法少女をめちゃくちゃにしてやりたいのに時空から来た変な奴らのせいで楽しみを邪魔された。
ベーゼの興奮は最高潮まで高まり鞭の勢いが強くなってアズールの喘ぎ声は広がっていく、もう二度と椅子とか座れないね。
「あっやりすぎた!!」
しかしベーゼの方も力を入れすぎたせいか自分のパワーでウォーカベルを破壊してしまい脱出させてしまうことになるが既にアズールのお尻は腫れすぎてやばいことになっている。
それでも尚自由になったらそれはそれ! これはこれと戦闘に入ろうとするその姿をベーゼは推しているのだが、サルファとマゼンタの足音が聞こえてきたことで潮時と考えて撤退するために飛ぼうとする。
「久々に楽しめましたよ、ではまた」
「ちょっと待ったあ!! 逃さないよA級時空犯罪者マジアベーゼ!!」
しかしそうは問屋が卸さないとばかりにポチの持ってきたマガフォンから黒影の声が響く、まだ通話もしてないのに喋り始めたので驚くがベーゼのランクも並外れている、A級といえば時空全土を騒がせた自分の同期にして副局長たくっちスノーと同じ、最高ランクだ。
ポチは顔面蒼白でわなわなとしているが当のマジアベーゼはまた興味ない上にめんどくさいものに絡まれたような感覚で露骨にやる気を無くした顔で降りて話しかけてきた携帯に近づく。
「はぁ……なんですかいきなり、私もう満足したのでこれ以上そういうのに付き合ってられないんですけど」
「残念だが君等の敵はもはや魔法少女どころか時空各地にうようよしている! 君の人生は悪になった時点で皆殺し以外ありえないんだけどね!」
「それはそれでどうかと思うよ局長……それで要件はなんです? お約束的にはそろそろエンディング流れますよ?」
「ローレンに相談されたからね! 一肌脱いで君を徹底的にマーク! 厳密には魔法少女でもなんでも俺から呼ぼうかな! なんて!」
「あっ! さてはこの流れにしたい為にヒーロー達を規制して……あっ言うだけ言って切っちゃった!!」
「ちょ……ちょっと待って貴方!? 局長ということは今話しかけてきたのが貴方の上司!? なんというかその、軽すぎない!?」
言うだけ言って切ったあとに大きな手が空から現れてポチに届かないギリギリの所に落とす、落ちてきたのは赤いフリフリのスカートの美少女でこれまたベーゼが大歓喜する見栄えのものだ、何せ彼女からしたらようやくトレスマジア以外でファーストコンタクトした魔法少女なのだから。
ベーゼも黒影の態度は結構気に入らないがあの届け物に関しては結構悪くないものだと思った。
「痛たた……これってもしかして魔法少女と悪の戦い!? だったら私は選ばれたものとして倒さないと!」
「あれが、新しい魔法少女……?」
「かかってきなさい新しい魔法少女! 早く変身して楽しみだから! 先っちょだけ! 先っちょだけ楽しみます!」
だが女の子は掌のようなアイテムに指輪を差し込んで妙な構えを取る、それは女の子向けの魔法少女作品がやるような変身ポーズとは違う、もっとこうヒロイックで年齢層もはるかに異なるような……?
「エンゲージ!」
『センタイリング! マジレンジャー!』
女の子がリングに包まれ、真っ赤な赤いマントの戦士に……。
「なんか思ってたのと違う!?」
その姿にベーゼはショックを受ける、なんか思ってたのと違う。
その言葉通り女の子が変身したのはトレスマジアのようなキラキラした姿ではなく顔が見えなくてぴっちりとしている魔法少女というか戦隊ヒーローである、しかも女子のスーツでもない。
なんというか年齢層というか需要というか、マジアベーゼの理想とはかけ離れている、アズールとしてもあんなものは初めて見たのでちょっとついていけない。
ただポチも困惑していた、何故ならあの姿は……どこからどう見ても『魔法戦隊マジレンジャー』ではないか。
そして更に、例えるならケーキを切り分けて混ぜ出せるかのように、世界にまた一つ妙なものが……?