「……ちょ、ちょっと待てやついていけへん、殺す? あの神を? そんで滅ぼす?」
「理解が追いつかないのも当然だが、そんな気分のままではこれから起きることに追いつけなくなる、そして君たちは世界から孤立して歩くこともままならない哀れな人形として終わる」
「社長、もう少し分かる言い方をしてくれ、私たちとしても何が何だか」
「ドラグヒースさんの頭が悪いだけです、社長はこう言ってるんですよ……彼に付き合っても碌なことにならないので全員まとめてここで死にましょうっていう」
「それも違う、ただ死ぬだけではまた1から物語が作り直されて同じ過ちを繰り返すだけだ、黒影の全てを否定して! 全ての力を絶って! 全ての物語から解放され、真の自由を得る……今の僕達にはそれしか道がない」
クオンが話している最中だったがマジアサルファはアズールたちを連れて興味ないとばかりに帰ろうとする、貰えるものは貰って後は退散というのは許されないのは分かっていたので言うだけ言ってみる。
「集団心中に付き合う気はないわ阿呆らしい、確かにやってることは気に食わんしそいつをぶっ飛ばす分には構わんが利用されないように死ぬのが幸せ言いたいんなら関わりたくもないわ」
「サルファの言う通りよ、魔法少女として巨悪に立ち向かうのならまだしも、世界を終わらせる事に関して手を借りるわけにはいかないわ、クオちゃんズを作った理由も分かってきたけど……貴方のやり方には愛が欠けているように見えるわ」
「……それもいいさ、後悔することになるがその選択をしたのはお前達だ、僕は僕のやり方で奴の望みを絶つまでだ」
「手を貸すつもりがねえのは俺達も同じだ」
「何?」
サルファ達に立ち塞がるように交通標識の丸い部分からファイヤキャンドルとその部下であるアーイー達が現れる。
クオンの言っていた『プラスアルファ』とはブライダンの事を含んでいたようだが、正義のヒロイントレスマジアと、悪の救世主ブライダンがここに集まった。
更にイミタシオにとっては喧嘩を中断したばかりなので構えるがキスマークに遮られる。
「あまりにも突然のことだがな、女王がお前らと手を組めと言い出しやがった」
「女王? 貴方達を導く人達ね?」
「それもまた本当に突然やな、どういう風の吹き回しでそんなことに?」
「俺が1番そう言いてえが女王も俺達も世界が滅んでほしいわけじゃねえからな、あいつさえいなくなれば俺達も思う存分活動できるわけだが」
「……考える時間はもうあたしたちにはないのね?」
「どうやらそのようだな、俺達もこれから忙しくなる……本当ならお前ら人間共だって眼中にねえがお互い気をつけたほうがいい」
珍しく気を回してくれるファイヤキャンドルが部下を連れてブライダン本部へと帰還するがマジアマゼンタの答えは決まった。
「もっと強くならないと! 黒影さんが行動しなくてもあたし達の世界であたし達が解決できるようにしっかりしないとダメだよね!」
「そういうことや、行くでアズール」
「ええ……」
トレスマジアは解散していき、いつの間にかシオちゃんズも姿を消して残されたクオちゃんズはなんだったんだこの集まり……と三人で呆然とするしかなかった。
帰りながらイミタシオは今後について考える、キラメイジャーの創造の力が失われたことでゼンカイジャーの指輪は使えなくなった……わけでもなくイミタシオは魔法で更に複製しておいたのでカイザーイミタシオへの変身もまだ可能である。
しかし自分達はマジアベーゼ並びにエノルミータに断罪を行うどうするか考えてないところにベルゼルガがぽつりと呟く。
「ここがお話だとして、どうすれば終わる?」
「どうすれば……か、ゴジュウジャーの方はさっさと指輪を集めて誰かの願いを叶えてしまうことか、私たちの場合はなんだ? エノルミータの根絶……? いや奴の事だ、ただ殺すだけでは躊躇いもなく墓から引っ張り出すか」
「でしたら簡単なことですわイミタシオ様……最終的にあの人が活躍するように行動するのなら、その上で強引に解決しても収拾つかなくなるようにしてしまえばよくて」
「……なるほど、加減が面倒だが自分で自分の首を絞めることになるのは随分滑稽そうだ、我々はその方向性で行くなの♡」
「えー、というわけでその……かくかくしかじかということでなんか出来ちゃいました、マジアベーゼ達の合併」
そしてエノルミータの方ではうてなの周りによりつく姉妹達とあまりにも唐突なカオスに現実逃避を始めたネモと改めてそっくりすぎるので本当に姉妹か疑う真珠。
やはりというか言っていた通り一切動じないキウィとマイペースなこりす、たとえうてなが増えてもエノルミータは相変わらずだった。
「あっアンタアイドルやってんだって? ……まぁ言っとくけどあたしのバンドの前では格下みたいなものだから」
「あ“? お前ちょっとツラ貸せ」
「上等だよ根暗こっちは暴力と歌でエノルミータやってんだよ」
「始まって早々仲間割れしないでくれますかどれみ、それでヴェナリータさんとやらが残した紙にはなんと?」
「ああそうでしたね、えっと……実はその紙って2枚あるんですよ、私は此処に来るまでに見ておきましたので各自で確認してください」
既に何回も読み直した痕跡があるのか紙はだいぶ散らかっていたが残った4人がみっちりと寄せ合ってくっつきながら中身を確認すると、殴り書きされたように文字が羅列されて解読するのも一苦労だった、おまけにただ言葉が並べられているだけで意味も分からない。
「うてなちゃんコレどういうこと?」
「言葉の通りです、そっちが私たちの世界でそっちの紙がゴジュウジャーの世界のもので」
「キウィはそれで書いてあることはなんなのかって話をしてるのよ、何この『ダークゴジュウジャー』って安易すぎるでしょバカの考えたしょうもない劇場版みたいなノリよ!!」
「実際ダーク系の戦隊ってあるんですか?」
「戦隊丸ごとの悪は聞いたことないよ、レッドとか追加戦士の闇堕ちは多いけど……5人新キャラ作る必要あるし需要なくない?」
「いやでも新聞に載ってるんだってダークゴジュウジャー」
「はあ!?」
うさぎが持ってきたのは様々な出版社のゴシップ誌や新聞、更に録画したニュース番組のデータにラジオまで、あらゆる方面から今日起きた出来事を記録してあるものだ。
ギャルみたいな見た目のわりには結構マメな性格らしい。
「あのな、パリピやる上で毎日目まぐるしく変わる出来事は大事なわけ、人生エゴサ第一よ」
「……ほ、本当じゃない、あるわよ!! ダークゴジュウジャーと名乗る不審者が現れってこの雑誌に!」
「ん」
一つ一つ確認していくと紙に書いてある事とニュースにあることが大体一致している、テスト答案の答え合わせのように虱潰しに確認していき、それを欠伸しながらかながホワイトボードに書き記していくと、魔法少女にあこがれて世界、ゴジュウジャー世界合わせて20個ずつ40種類もののイベントが同時発生していることが分かった。
ゴジュウジャー世界では禽次郎の元に『五星戦隊ダイレンジャー』のユニバース戦士であり勝負を繰り広げたり、シャチのような謎の銃を持った怪物が確認されたりした他、ダークゴジュウジャーを名乗る謎の存在が真の支配者を名乗ったり創造の力は消滅したはずなのに指輪の偽物が増殖、更には惑星アッサミカから来た異星人アッサムという男が現れたりロードエノルメ派の旧世代エノルミータの代表が『天装戦隊ゴセイジャー』のユニバース戦士だったり、玲という男が指輪の戦士を襲撃し厄災に至ろうとしたり、ノーワンがスランプに陥ったりもうカオスなことに。
一方こちら世界でもクオンAIコンツェルンがメカマゼンタなる安易すぎるものを出してきたり、マカイの扉が開いていたり『イミタシヲ・ランド』なる巨大遊園地が登場、更に対魔組織
そして魔力戦隊サンマジカル……なぎさが推している戦隊も確認されている。
これですら紙に書いてあることのほんの一部に過ぎない。
「詰め込みすぎだろ!!」
キウィがそう言いたくなるのも無理もないが、実際どう考えても黒影の影響としか思えないくらいに大事件の種が蒔かれた。
戦略ゲームでも始まるんじゃないかという混沌具合だがうてなは総帥として冷や汗一つかかない、1度見てきたとは思えないくらいなのでまるで大した事ないように錯覚させられる。
「昨日かな姉さんから能力を聞いた時はどんなチートだよふざけんなと思いましたがいざ見てみると黒影の底が見えましたね、コレ簡単に攻略出来ますよ」
「はあ!? こんな大事件の連続どうしろっていうのよ!? 人手足りないってものじゃないわ!!」
「ここで1度振り返ってみましょう、世界融合が始まってから今まで……」
まず黒影及び時空監理局が初めて遭遇したのが印魔真銀、その次にナンバーワン戦隊ゴジュウジャーが現れて世界ごと融合したことを知る、次にマジアベーゼは向こうの敵組織であるブライダンと遭遇し一瞬即発な雰囲気になったことだ。
その後栗栖タカミが創造の力で指輪を増やし、ヴェナリータが悪用して悪のリングを作成したり、同じタイミングでマジアベーゼの融合世界が6つ増えて柊七姉妹が誕生、更に続くように魔法少女チーム『イミタシオ』と『クオちゃんズ』が結成されたどころか遠野吠の兄のクオンが魔法の姿に変身。
そして今回の事件……これが黒影の『魔法』のからくりがある。
「あっ! この流れって」
「そうです、彼は物語でやりたいことをする際……絶対に何もないところから予兆を挟む、言うならば新キャラを挟まなければ実行することが出来ない」
定期的に自分のやりたいことを成立させるためにどんどん新しいキャラクターを用意する、今回の場合でもイベントを発生させるために在庫処理のようにキャラクターが放出されていったが彼はイベントを作る上で元からあったものに対して改変や延長戦になるようなことはしない、ただ付け焼き刃のように新しい物を用意しているだけだ。
ただやりたいことをやってエンディングを目指すつもりがないのだから黒影はそれでいいのかもしれないが、なんとも単純だ、だからそれを意識しておけば……。
「……かな姉さんあの時めちゃくちゃ余裕ありましたよね? 入れてくれました?」
「まあ面倒ですが言われたとおりに……盗聴器をいくらでも入れられるくらい隙だらけで拍子抜けしましたよ、全員分あるくらいには」
ポチと話している間、時間を延ばすつもりはなかったがあまりにもポチの話し方がまどろっこしかったのでかなはうてなが聞きながら何かあった時のために盗聴器を何個でも取り付けてあるという。
ちなみにまだ予備が山ほどあるらしくスーツの裏から沢山出てくる。
「聞けますか?」
「というか現段階でも聞いている最中ですよ、彼の声……」
盗聴器はポチに付けたはずだがポチは言葉を発さない、どうやら話し声は黒影とローレンの会話のようだ。
「局長は子どもの頃、欲しいものとかありました?」
「ああ……なんだろうな、分からないな、俺は裕福な育ちだったから結構与えてくれたけど満たされることはなかったな、何が欲しかったのか……」
「羨ましい人生だなぁ、俺はあれかこれどっち選んでって悩んでばかりでしたよ」
「ふーん、貧乏も大変なんだな」
「いやお金がないから悩んでたわけじゃないんですけどね?」
「じゃあなんで選ぶの?」
「なんでって……うーん例えば局長は晩御飯がカレーとラーメンだったらどっちがいいとかは?」
「ああ気分的な問題か、その例えだと特にこだわりがないからよくわからないな、栄養だったら取れればなんでもいいし……欲しいものでいえば神になって結論が付いたよ、全部手に入れる、特に欲しいものがないんじゃなくて最終的に全部手に入れるつもりだから悩むわけなかったんだ」
「だからこそこの時空を作ったんですね、見えるもの全部貴方のものだから」
「うん、だからこそのらりくらり平和なんてつまらないものは認められないんだポチ」
「時空は所有物だったとしてもだ、黒影局長……そこに生きる生き物の強い意志までは思い通りにならない、動物と同じように放し飼いというのは言い方的にアレだけど仕事の為にしても関わりすぎるのはダメだ!」
「動物の例えをするならキャラクターは愛玩動物じゃないです? 生きて動くだけで価値はあっても生命体としての存在意義はそこにないです、犬や猫は動画で映っているカワイイ姿だけ存在していればいいみたいな人達のようなものです、俺や貴方もそうやって生まれましたよ」
「あの3人が聞いたらどう思うだろうね、なんとなく察していたが俺達全員時空に期待しているものはバラバラだ、最終的に誰が正しいかみたいになる、この時空は永遠に平和に管理スべきだ!!」
「いいや! 物語として過激な方が面白いです! 滅んだってやり直せばいいんですよどうせ本物はとっくに終わっているんだし!」
「最終的に俺が解決する俺のための物語として最初から作ってるって二人とも忘れてないかな?」
ピッ、という音と共に盗聴器の音を切る。
更に盗聴した音声をパソコンに繋げて音声を記録している、こういう時に事務系が出来る彼女は役に立つものだ。
「この音声を時空各地に発信すれば脅しになりますがどうします?」
「まだ温存しておいてください、さて改めて我々の今後に関してですが……」
「……え? マジで言ってる?」
一方ゴジュウジャー陣営、遠野吠はクオンに呼び出されていた、遠野兄弟数年ぶりの対面……しかしとても感動的な雰囲気ではなく重苦しい様子で吠も落ち着かない。
「兄ちゃん……本当に兄ちゃんなんだよな?」
「ああ……お互いノーワンワールドから生きて帰れるととはね、吠……だがお前は本当に変わらない」
「……だが兄ちゃん、呼び出したのはただ会いに来たわけじゃないんだよな? 世界を滅ぼすってどういうことだよ?」
「トレスマジアは上手く伝えてくれたようだな……だが少し違う、滅ぼすのは奴の命とこの時空其の物……いいかい吠、大真面目な話だからコレは兄として話すよ、信じるよな?」
「それは……こういう時ふざけたこと言うような奴じゃないことはよく分かってる」
「本当に単純だよなぁお前は、その単純さが今は救われるところだが……さて本題に入るがこの世界が他所では架空の存在として広まっていることは知っているはずだ」
「ああ、俺じゃなくて兄ちゃんがゴジュウウルフになってたこともあったぞ」
「そう……僕らは元々複製された存在……物語を進行するための人形……奴にとってはその程度の認識だが違う、僕ははっきりと覚えている、奴の失敗も過ちも全て」
「どういうことだ?」
「僕らは同じ物語の始まりを4回繰り返している、僕はそのうち3回目の記憶を保持しているんだ」
……かつて黒影は同じものを求めて世界を4回も歪めた、そのうち肝となるのが3回目。
黒影……カーレッジ・フレインがまだ『結末』を奪えなかった頃、物語を進める上で主人公というものが不愉快だった。
自分がまだ何もしていないのに勝手に解決させて本を終わらせてしまう、そんな彼が無邪気に発動した悪意が主人公を1回始末することで物語を強制停止させることだった。
「つまり吠、お前は一度アイツになんともまあ身勝手な理屈で殺されているんだ」
「俺があいつに……じゃあなんで今の俺は生きているんだ? 兄ちゃんのおかげか?」
「ある意味では兄ちゃんのおかげでもある、主人公を死なせるやり方では自分にとって都合が悪いから物語の結末の方を消した、まあそう意識させたのは僕や関係者の力によるものだが……これで分かっただろう吠、アイツを直接この手にかけなければ俺達の運命は永遠に弄ばれたままだ」
「確かになんか最近変なこと急に起きてばかりだが……どうする気なんだよ」
いわゆるループ系というものを堂々と語るクオン、まるでライトノベルのような出来事だが指輪の件も含めてこれまでありとあらゆる奇妙奇天烈な体験をしてきたこともあってかすんなりと受け入れられる。
そしてクオンが本気でここまで言っていることも理解させられる。
「まあ吠は死んでいないだけで、ある意味死んだ……みたいな奴らはいくらでもいる」
「どういうことだ?」
「選別だ、これをあげるよ」
そう言うとクオンは山ほど指輪を吠に見せてくる、リングハンターとしての職務を全うしたのだろうか? かなりの数の指輪が吠の手に握られる。
恐竜戦隊ジュウレンジャー、百獣戦隊ガオレンジャー、激走戦隊カーレンジャー、特命戦隊ゴーバスターズ、快盗戦隊ルパンレンジャー、警察戦隊パトレンジャー……これまでの指輪は初めて見た、しかも全て本物。
「いいのか? こんなに」
「ああ、本来の物語でお前が手に入るはずだった指輪だ、あるべきところに帰っただけ……」
「あるべきところって、この指輪だって戦士がいただろ」
「いたさ、本来ならね……じゃあこう言えば分かるか? 本来の物語に
「近しい人……うっ、あああ!!!? そういえば俺、世界が融合してから見てねえやつがいる!! 兄ちゃんまさか!!」
「……その人物とは多分、飯島という苗字じゃなかったか?」
黒影は気まぐれだ、面倒なものは最初からいなかったことにする。
その上で自分のやりたいことの為に存在していたかも曖昧なものを世界に植え付ける。
そうして時空は回っている。
しかし確かにこの瞬間、黒影が本格的に動き出した頃に柊うてなと遠野吠は全く別の道に足を踏み入れた。
「答えは出たか? お前の服についている盗聴器越しの奴らも事の重大さが分かったところで……吠、お前はどうする?」
「俺は……」