魔法少女ナンバーワンにあこがれて   作:黒影時空

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パロディネタが多いのは手癖です、すみません


魔法少女のひまつぶし

 

 少し前、トレスマジアとゴジュウジャーがノーワンと戦いに出る前。

 うてなは貯めていた貯金を出したり、キウィが多少お金を出してくれたりして星壁獣の素材となる物を調達できた。

 とはいっても全然足りなかったので大半はキウィが出してくれたものだが……。

 これですぐに倒されるようなことがあればさすがに凹む。

 改めて、話を聞いて思いついた星壁獣の素材となるものとは何万も超える価格のバイクだった。

 

「念の為聞いておくが仮面付けるタイプのアレになったらいよいよ収拾つかなくなるぞ」

 

「どっちかと言うとベルトじゃないのそれになるなら……」

 

「全然違いますよ、ちょっと将来というものに興味が湧いたので……若返ったり大人になれる星壁獣とかいたら面白そうだなぁって」

 

「今、時間と一緒に思考と倫理観も跳躍した?」

 

 何はともかくバイクに鞭を軽く叩いたら極上の星壁獣ができる、別に金をかければ良くなるというわけでもなさいのだがなんか気合が入るような感じがする。

 

「にしてもうてなちゃん最近はなんか作るのにも金かこるようになったよなー、昔はその辺の花とか道具ちょっと叩いて怪物作ってたのにさ」

 

「現地調達ではちょっと限界があるというか……ありあわせに頼っていては我々はすぐに壊滅します、トレスマジアは別に勝たなくてもいいので基本はいつもので構いませんけどブライダンはそうもいきませんからね」

 

「そんな強いのか? その蝋燭男は」

 

「念には念をです、さてこれをこうして……」

 

 ベーゼに変身して支配の鞭でちょいと叩けばバイクは動物のようにというか原型がなくなるほど変化していき巨大な乗り物のような怪物へと大変身。

 しかしネモはなんだかその姿にとてもデジャブを感じているというか、タイプ的に電気系のドラゴンっぽいというかで違う方向に危なくて冷や汗ダラダラだった。

 

「出来ました! 星壁獣ミライドンブラー!」

 

「アウト──!!! 未来行く前にパラドックスしちまう!! 別の方向に収拾つかなくさせる気か!!」

 

「?」

「?」

「?」

 

「これアタシがおかしいのか!?」

 

「キュウス……」

 

「お前もそっち側に寄せてくるんじゃねえ! 色んな意味でもっとまずいところ敵に回す気か!!」

 

「うてなちゃんうてなちゃん! 早く試してみようぜ! バリバリのキャリアウーマンに大変身すれば合法的にもバイクに乗れる!」

 

「まあ試してみないことには……ですよね、お願いしますミライドンブラー!」

 

「アギャス!」

 

「喋るなあああ! 時空新時代でどこでも行き放題だからってやっていいことと悪いことがあるだろ! おい真珠も止めろ!」

 

「ネモ……こういう時に『どんどん実っていく』とか言ってノるタイプだと思ってたわ」

 

「悪ノリできるラインを悠に超えてるんだよ!!」

 


 

 何はともかくエノルミータが色々ない意味で危ない怪人枠を用意して改めて魔法少女相手にする前にマジアベーゼとレオパルドが散歩がてら様子を確認しようとしたら悲鳴の数々。

 変なウナギみたいな奴が次々と人を小槌で潰しては箱の中に放り込んでいく。

 

「ヒマだ! ヒマだ! こんなにも暇な奴らがいるぞ!」

 

「前にベーゼちゃんが見たノーワンってやつが来た?」

 

「ああー……アレ私苦手意識あるんですよね、一般人取り込まれてる時点で巻き込まれてる形だし私達はどうしようもならないし」

 

 文句を言っても仕方ないし無視するのも気分的に良くないのでノーワンが暴れているところにミライドンブラーで跳ね飛ばして出撃。

 近くにファイヤキャンドル他ブライダン幹部が来ていないことを確認した上で時間稼ぎくらいにはなるだろうと拡声器片手に真っ向から挑みに行く。

 

「えーそちらの方は具体的に何のナンバーワンを司る方なのでしょうか」

 

「おっと暇な奴発見! 俺こそはノーワンワールド・ヒマつぶしナンバーワン! 持て余す暇を完璧に解消することに右に出るものはいないヒマつぶしノーワンだ!」

 

「……で、あいつなんでうなぎなんだ?」

 

「多分ひつまぶしとかけてるんだと思う……」

 

「どうするよアレ、所謂その界隈では持ち上げられるけど界隈が狭すぎて世間から認知されてないタイプのナンバーワンだぞ、もらっとく?」

 

「ええ〜……じゃあレオちゃん私がヒマつぶしナンバーワン自称して凄いって思われると思う?」

 

「それは悩むかもな……もっとこういい感じのナンバーワンさえ出てくりゃやる気も出るだろうに」

 

「聞けぇ! 年頃のおギャルはこれだから他愛のない話でせっかくのヒマを無駄に消費する!」

 

 ヒマつぶしノーワンは手に持っている小槌をガンガンと壁に叩きつけて苛立っている様子、ノーワンの中にはこんなヘンテコな称号を誇る存在も普通にいるのだろうかと納得することにして、一旦ちゃぶ台に腰掛けてヒマつぶしナンバーワンバトルの段取りを確認することに。

 悪VS悪は即ちそれぞれの拘りのぶつけ合いでどっちが正義に好きなエゴをぶつけられるかという争いなので前持って整理は大事。

 

「そもそもヒマつぶしのナンバーワンって何が凄いんだ?」

 

「よくぞ聞いてくれた、お前達人間も知っての通り生きることは常に逃れられない出来事の数々! 仕事に家事、人間関係と息も詰まるような日々にわずかに残された個人的な休息の一時、それがヒマ! この限りあるヒマを有益に使える人間こそナンバーワンの価値があるといってもいい!」

 

「今時コスパだタイパだ言われてることを考えると、もしかして結構凄いことなんじゃないですか?」

 

「その通り! 適切にヒマをつぶせば幸せを短い期間でじっくり噛み締められる、実際お前達1日のヒマはどれだけある?」

 

 ヒマつぶしノーワンに問われて実際マジアベーゼ(うてな)とレオパルト(キウィ)の1日スケジュールを思い返して紙に書いてみることにした。

 朝起きる時間はバラバラで各自朝食を食べて学校に向かい授業を受ける、ここでヒマができる。

 

「はいそこ! 学生なら必ずしも平等に与えられるヒマ消費タイム『放課中』若いうちからヒマをいかに使うかをここで学べるということだ!」

 

「といっても……学校の放課後って時間としては少ないし出来ることなんてそんなにないような……学校で育ててる花壇に水をあげたり、魔法少女の観察したり……あっ無理だ勝てない」

 

「諦めないでベーゼちゃん! んじゃナンバーワンは何するんだよ」

 

「決まっているだろう! 学校の放課ヒマつぶしといえばグラウンドに出てドッジボールをするのだ!」

 

「それ出来るの小学生までなんだよ!!」

 

「でも実際あの限られた時間でボール遊び出来るあの時期のノリなんだったんだろう、もしかしてヒマつぶし力って日に日に劣化していく?」

 

「いかん! ベーゼちゃんがヒマつぶしバトルで負けそうに!」

 

「では貴方の学生時代最も打ち込んだヒマつぶしを教えてください」

 

「グハアァァ!!」

 

「やべぇふざけてたら思ったより強敵だったわ!! おいなんとかしろミライドンブラー! アレやってくれアレ!!」

 

 想像以上にヒマつぶしというものの深さにマジアベーゼになるまで陰キャ生活で潰してきたうてなはベースに乗せられてヒマつぶしノーワン相手に深手を負ってしまう。

 そんな見ていられない姿を変わらせるためにミライドンブラーが一肌脱ぎます、口からビームを吐いてベーゼを包み込み更に変身を加えていく。

 レオパルトがどこからか持ってきた立て鏡を変化後のベーゼに見せると……。

 

「ほらよく見て!! 今のベーゼちゃんは陰キャなんかじゃない! 25歳のバリキャリウーマンだよ!」

 

「えっ」

 

「何いいいい!? 年齢を操作して強引にスケジュールをねじまげた!? いやそれありなのか!?」

 

怪人(おまえ)がそれをいうか」

 

 ミライドンブラーの能力、それは年齢操作。

 将来がどうとか言うのでじゃあ実際に年を取ったり若返ってみたりしたらどんな結果になるのかとAIのシミュレーションのようにミライドンブラーのビームが対象人物の年齢を強引に変質させる。

 

「いや……年を取ってヒマが変わるかどうか」

 

「考え方が変わるんだよ! 大人ってむしろ一人のほうが気楽だしさあ!」

 

「なんというフォロー……ヒマに対するアフターケアまで万全とはやるなエノルミータ、では休日はどうだ! 悪の組織といえど家事手伝いくらいはするだろう! ファイヤキャンドル様もやっているぞ」

 

 エノルミータVSヒマつぶしノーワンのヒマつぶしバトルが盛り上がっていく中、時間がかかっていたのでようやく真銀が合流して発火で攻撃しようとするが後ろを向いたままヒマつぶしノーワンは片手のうなぎを鞭のようにしならせて吹っ飛ばし立ち上がる。

 

「おっと新手! それも指輪の戦士! ファイヤキャンドル様に献上しなくては!」

 

「あいつがベーゼちゃんの言ってたニート系魔法少女気取り!」

 

「レオちゃん今私の身体アレとほぼ同い年」

 

「えっまた来たのエノルミータ!? ちょっとしつこくない?」

 

「貴方のせいでもあるんですけどね……で? どっちとやります?」

 

「それはもちろんレベル上げの為にもノーワンもエノルミータも両方!」

 

 真銀は即座に変身してヒマつぶしノーワンと戦闘開始、巻き込まれたくないのでベーゼはレオパルトを抱えて避難するとちょうどゴジュウジャーから吠と陸王、トレスマジアからマゼンタとサルファが駆けつけてきた。

 

「なんだまたお前……ん? なんかお前背が伸びてないか?」

 

「いや伸びてるどころやない目に見えてデカいわ、ボディラインそんななっとらんて」

 

「この身体についてはまあ後ほどとして……で、やるんですよねアレ、ヒマつぶしノーワンと言ってました」

 

「どんどん集まってくる! これだけの数のヒマを潰せたらさぞ楽しいだろうなぁ!」

 

「ヒマつぶしのナンバーワンって他人の暇を潰す事も出来るのか」

 

 一番最初に挑んだだけに段取り説明は必要だろうとかくかくしかじかのノリでヒマつぶしバトルの様子を説明、いまいち何言ってるか分からない感じもするがベーゼも受けた以上引き下がるわけにはいかない。

 ヒマつぶしノーワンを倒すには如何に自分達が充実した生活を送れているか、自分だけの時間を満足いく結果で過ごせているかにかかっている。

 しかし考えてみると問題があった。

 

「……俺のヒマな時間っていつだ?」

 

「え? 吠くんってそんなに忙しかった?」

 

「ちょっと何立ち止まってるのこっちの心配もギャッ」

 

「何!? 世の中にヒマも認識できないほど時間のない人間がいるとは思わなかった、聞かせてみろ!」

 

 ヒマつぶしノーワンは吠の事を聞くとちゃぶ台を整えて座布団を敷き吠達を座らせる。

 あまりにも隙だらけすぎてサルファはぶん殴りたいところだが、こんな奴でもナンバーワンの称号を引きずり出さないことには中の人を救出することは出来ないのでしっかり相手のルールに則ることにする。

 真銀はベーゼに縛られて強引に座る。

 

「お前達魔法少女も結構忙しいんじゃないのか?」

 

「えーと……朝起きて普通の人として家事やったり、勉強したり……その上で魔法少女としてテレビに出たり、トレーニングしたり」

 

「まあ忙しいっちゃ忙しいけどそれでも人並みに休みは取れてるな、福利厚生がしっかりしとる……んで休みやろ? 普通にサブスクで映画見たり貯めてたゲームしたり、まあそんな平凡な暇潰しや」

 

「最近はゲーセン行くよ! モグラ叩き楽しいんだよね!」

 

「吠くんは普段何していたっけ? ずっとバイトしているような気がするけど……」

 

「履歴書書いてバイトの面接受けて就活の方の履歴書や面接の確認、あとたまに資格勉強もする、一応俺も禽次郎から漫画を借りたりもするが……」

 

「ふむ、自分磨きに転用して将来に繋げる所は中々ポイントが高い、しかしまだまだいい感じにヒマを潰せているとはいえない! ヒマの消費とは人生の投資! 自分だけの時間で自分のためになってこそだ!」

 

「なんか意識高くてムカついてきたなこの怪人……てかこれじゃキリがないぞ、爆破したほうが早いって」

 

「まだ落ち着いて……ふう、なんか身体が年をとったから身体に重みが……あっ、そうだ」

 

 マジアベーゼ(25)は年を取って思いついた観点がある、自分磨きだの趣味だの余った時間を消費するのは結構だがその為には体力と気力が伴う、そもそも『何かする』と考えるだけで結構なエネルギーを使い切る、若い頃は良くても少しずつ身体に疲れが溜まっていき横になることしか出来ない。

 

「ハッスルするのはいいんですが若いうちにしか出来ないことをして後々しんどいだけのやり方はヒマつぶしナンバーワンの過ごし方とは言えないんじゃないですか?」

 

「何っ!?」

 

 実際マジアベーゼの身体はむちむちで成長しているが既に熟された段階に入り少しずつ落ちていく段階にある、若干首や肩は凝ってきたし疲れが落ちるのにも時間はかかる。

 若者のようにがっつりとした暇潰しはとても難しい。

 これにはヒマつぶしノーワンも納得した様子であった。

 

「なるほど、時間のみならず体力も限られている! そんな中でいかに仕事に支障をきたさずヒマを満喫するかを考えてこそナンバーワン、実に奥が深い!」

 

「禽次郎に話でも聞いてみるか、あいつ願いで若返った老人だからな」

 

「おじいちゃんのレベルまでくると暇とかそういう次元越えてるんじゃないかな……?」

 

「それは暇潰しやないセカンドライフ言うんや……待てよ、つまり若返ったそいつは今サードライフなのか?」

 

「ちょっとちょっと! さっきからなんで私の事は無視するの!?」

 

「いや貴方は暇潰し以前の問題じゃないですか……さっきのノリからして期待出来ませんよ」

 

 しかしそれぞれのヒマつぶしスケジュールを確認するだけでは勝負にならない。

 このままヒマつぶしバトルを進めるにはどうすれば……というところで、この時を待ってましたとばかりに現れたのはマンガ片手に盛大にポーズを決めたポチ。

 ようやく時空監理局として真面目に仕事が出来そうなので張り切ってる様子だ。

 

「ヒマつぶしバトルを監理局として取り仕切らせてもらいまいますがよろしいですね!?」

 

「お前は上から目線の犬っころ!」

 

「俺は元々発明家なのでね! この勝負をはっきりさせるのに相応しいものを作らせていただきました!」

 

 ポチが指を鳴らすとヴァーツの手も借りて大広場まで一気にワープし、用意されたのはまるでインテリアがミニチュアハウスのように部屋が丸見えになっている箱。

 これが何個もある。

 

「この部屋の中では1日を仮想的に満喫出来る! 名付けて『私生活チェックシミュレーター』外の人から見ればダイジェストだから安心」

 

「なるほど、この中で過ごすことで各面々がいかにヒマを潰しているかを判断するわけか面白い! 俺が如何に充実した暇潰しを行っているか見せてやる!」

 

「上等だ、いつも通り過ごせばいいんだろ?」

 

「いやいや……プライベート全公開はちょっと」

 

「大丈夫! そういう危ないシーンは自動的にカットされているから! 時空のコンプラは凄いからね!」

 

「あの……出来れば私、元の年齢に戻りたいんですけど」

 

 各々がヒマつぶしバトルの為にそれぞれハウスに入っていき、気がつけばオーディエンスも色々集まって実況席まで埋まる。

 シミュレーターに入った一同は時計がセットされると自動的に朝起きるところから仮想体験がスタートして当たり前のように寝ているところから始まる。

 

 

「さぁ! トレスマジア、ゴジュウジャー、エノルミータ! そして我らがノーワンの4大勢力が一斉にヒマつぶしの質を競い合うこの対決! 実況には私、スケジュール制作大好きゴルゴ・ディーロがお送りします、解説にはゴジュウジャーにしてヒマつぶしに意見のある現役パーリーピーポーナンバーワンの猛原禽次郎さんに来ていただいてます!」

 

「よろしくお願いします」

 

「更には各陣営から追加の審査員も用意させていただきました!」

 

 ゴジュウジャー代表より爆神竜義。

「私は店の仕入れなどで全然暇を持て余していないのだが?」

 トレスマジア代表よりマジアアズール。

「代表というか私しかいないからそうなるしかないだけね……」

 ブライダン代表より慈愛のブーケ。

「陸王様の私生活をこの目で拝めるなんて……いやいや、招かれた以上しっかり公平に……」

 エノルミータ代表よりロコムジカ。

「ロコもう帰っていい?」

 

 何はともかく、ちゃんとした? ヒマつぶしバトルが始まりそうなのでしっかり観戦する各面々。

 バトル開始を告げるゴングが鳴り響き、ハウス内のタイマーが始まりを告げる。

 

「ところでこのヒマつぶしバトルの判断基準について教えてくれないだろうか?」

 

「えー資料によりますと皆様共通にこなしていただく1日のタスク! 掃除や洗濯にお仕事などがありますね、それらを適切にこなした上でいかに余った時間を有意義に過ごせるか!」

 

「要するにちゃんとした生活を送れているか……あっ、始まったわ」

 

 まず最初に起床したのは陸王、午前6時とかなり早めに目覚めて手元にある資料を一通り確認し1日の予定を確認する、これを見て何をするか把握しておくところから勝負は始まる。

 吠やマゼンタ、ベーゼにサルファと次々と目覚めていくので起床に関しては何事もなく進行、レオパルトが少し出遅れる形でダルそうに目覚めた。

 

「おっとレオパルト選手遅かった!」

 

「あ〜あれは普段から夜遅くまでスマホを弄ってる様子っぽいかも、睡眠も浅くて仕事にも支障が出るかもしれん」

 

「レオパルトはマイナス10点っと……」

 

「何!? なんでアンタ達普通に審査員してるの、ついていけないロコがおかしいの!?」

 

「私も正直ついていけないが……ああそうだ、吠もマイナスだな」

 

「そうなのですか? 実況席の私から見て各面々朝食の部分は問題ないように見えるのですが」

 

「あいつの食べているオムライスは私の店のツケだ、これまで負債している分を含めるとマイナス100点といったところか」

 

「どんどんマイナス方向に点が積み上がっていく……こ れそういう勝負だったの!?」

 

 起床→着替え→朝食→洗顔歯磨きといつも通りのモーニングルーティンをこなす。

 この辺りに関しては特に問題がない、朝起きて行動を始めるという段階で気になる所はないように見えた。

 しかしヒマつぶしノーワンはここがすごい! 

 

「おっとノーワン選手既に行動が早い! マルチタスクです! 多くのヒマを確保するために一度に無数のやるべき事を済ませています! 適切にヒマを潰せるものは適切に役目も潰せてこそという信条でしょうか!」

 

「まずいわね……マルチタスクはやりかたによっては集中力が落ちて却って効率が悪くなるというけど無駄がないわ!」

 

 昼ご飯の下ごしらえをしながら洗濯物をたたみ、おまけにロボット掃除機を使って掃除しながら前もってスマホの宅配で買い物を済ませている効率化の鬼。

 大食いノーワンもそうだがナンバーワンの称号は伊達ではないのだ。

 

「これはヒマつぶしノーワンに高ポイントが期待できるのではブーケさん!」

 

「いえ! 手際だけが生活感ではありません! 陸王様の部屋をご覧なさい!」

 

 ブーケが指さした陸王の部屋の様子を全員が眺める、ノーワンのようにマルチタスクを行っているわけではないが掃除の仕方に違いがある。

 

「おお! なんというか……キレ! ちゃん陸の掃除の仕方が美しい、まるでダンス大会のようじゃ!」

 

「暇を解消する前からやるべき課題を愉快にそれでいて優雅に満喫しています! 立ち振る舞いから行動まで素敵、1000ポイント追加して」

 

「じゃあマイナス10000ポイント追加」

 

「今この人私怨でポイント加算してなかった!?」

 

「何よー!! あれくらいロコにだって出来るし! アイドルはアレが基本姿勢なんだから!!」

 

「今の10000は除外するとして皆淡々とタスクはこなしておりますねー」

 

「遠野もこういう所で怠け者というわけではないからな、雑用は出来るし個人で出来ることは淡々と済ませている……そちらの魔法少女や敵もスケジュール帳を前もって作成しながら書き記したり、サブスクで海外映画をBGM代わりにして作業している」

 

「それにしてもアイツなんでおばさんみたいな体型のままなのかしら、ヒーヒー言いながら魔法少女CD片手に掃除してるわ……そういえば印魔真銀は?」

 

「や……やっと起きたわ!?」

 

「もう10時を過ぎるというのに!?」

 

「さすがに1日丸々までジャッジすると長いので昼食後まで一旦カットします!」

 

 ポチがレバーを引くと一気に時間が進み昼食後へ。

 タスクが殆ど片付いたのは陸王とヒマつぶしノーワン、レオパルトはマイペースにタスクをそれなりにこなして吠は昼飯を適当に済ませてまで優先、マゼンタとサルファも追いついているので勝負は分からないがマジアベーゼ(25)はダウン。

 

「どうやら済ませないといけないタスクが多すぎて頭がパンクしたようですね」

 

「学生にしてもバリキャリウーマンにしても課題が多すぎて詰まる人普通にいるからなぁ……なんというか向いてなかったんだろう、ここで終わりだろうなぁ」

 

「問題はね、アイツ現状ロコ達の上司ってことなのよ!! 何ちょっとやることが20個くらいあるからって魂抜けてるの!!」

 

「後は百夜とノーワンが夕方までどのように過ごすかだが」

 

 忘れてはならないがこの勝負はあくまで『ヒマつぶし』

 やるべきことを終わらせた上で余った時間を有意義に過ごせるか、さっきまでやりたい放題でポイント増やしたり減らしたりしているがここからが本題。

 この時間をどう過ごすか、吠達は間に合うのか? 

 審査員達もここまでくると真剣な目線になってくる。

 陸王、ヒマつぶしノーワン共に暇潰しの為……動く! 

 

「あっとヒマつぶしノーワン! DIYです! 本棚に似合う装飾を作ろうしているのでしょうか黙々と作業に取り組んでます!」

 

「意識高いやつって大体ものづくりしようとするわね……」

 

「となると陸王様はもしや作曲を!? ……い、いや違うこれは!! ぬあっ!?」

 

「リラックスしとる! ベッドに腰かけて実に優雅に! まるでそういうグラビアのようじゃないか!」

 

 姿勢が悪ければダラダラゴロゴロ、しかし顔が良くて常に整えてあればそれはまるでオフショット。

 ブライダンからきたこの慈愛のブーケという女、一度観てからかなりの百夜陸王推しであり普段の撮影や写真集でも観られないようなある意味素を目撃できる贅沢に魂が弾け飛んで爆発するような感覚に陥る。

 

「飛ぶッッッ!!」

 

「ブーケ様!? 過剰な供給に審査員のほうが耐えられなかったようです!!」

 

「まさか百夜は分かっててあんなことを……ゆっくり休みながら人に見せても恥ずかしくない振る舞い!」

 

「自分だけの時間で何かこなさなきゃという僅かな時間にありがちな概念を払うような唯我独尊の暇潰し!」

 

「ぐ……ぐぬぬ、寝るだけでファンを熱狂させるなんて、悔しいけどロコのライバルとして認めてやろうじゃないの百夜陸王!」

 

「実況の金アーイーゴルドさん! これは文句無しに高得点と言えるんじゃないか!」

 

「これはこの勝負分からなくなってきましたよ! オーディエンスも大盛りあがりです!」

 

 気がつけばヒマつぶし対決も盛り上がり、陸王推しのファン達が陸王のリラックスシーンを激写してトレスマジアの方もマゼンタ達を応援している。

 しかし勝負はここで急展開を迎えることになる、その引き金を引いたのはなんとマジアマゼンタだった。

 タスクの半分以上を終えて一息ついたマゼンタが携帯を持って電話をかけているではないか、声は聞こえないので内容は分からないが盛り上がってるので友達にかけてるのかもしれない。

 

「……あれちょっと待って? 私の携帯じゃないということは今かけてる相手って」

 

 その瞬間だった、一つの家のドアから力強い音が響いたかと思えば強引に蹴破られてマジアサルファが何もかもぶち壊す勢いで部屋から脱出する。

 

「ちょっとサルファさん!? 何してるんですか!?」

 

「いやマゼンタが暇やから一緒に遊ばへんかって、別に一人で過ごせなんて言っとらんやん、ほーれマゼンタちゃーん、あーそびーましょー」

 

「あっ待って!! それ終了するまで開けられるようになってな」

 

「ぎゃああ!!」

 

「大昔のコントみたいになったわ!?」

 

 サルファがバリバリと扉を引っ張り出すとその時の勢いで綺麗に折り畳まれるように家が崩れてマゼンタが下敷きになってしまうが材質的には柔らかいものだったのちょっとビックリした形で突き破って出てくる。

 

「あれ今何時!?」

 

「あれからまだ1時間も経ってないわ……」

 

「仕方ない……一旦全員解放!」

 

 ここで一旦勝負を止めて全員引っ張り出して結果発表の段階に入る。

 

「ちゃんと勝負になってたのか? 俺としてはやることやって過ごしただけだぞ」

 

「スケジュールはびっしり埋まっている! 俺以上に暇を有意義に潰したものなどいるはずがない!」

 

「ではこのハウスのヒマつぶしバトルを見に来たオーディエンスの皆さん投票をお願いします!」

 

「ところでなんでロコちゃんいるんですか?」

 

「いい加減元に戻りなさいよ! ミライドンブラー!!」

 

「あっちょっと待ってぐえー」

 

 各面々がバトルの結果報告をバラエティ番組のように集計していく中、ヒマつぶしノーワンは勝ちを確信するが……ポイントランキングに1.5倍の差をつけて1位になったのは百夜陸王であった! 

 

「何い!? そんなバカな!?」

 

「皆応援ありがとう! 僕は普通に過ごしていたつもりだったんだけど……」

 

「ちなみにこちらがトップになった陸王さんの暇潰しです」

 

「この姿わざとらしすぎへんか……?」

 

「ありえない! この男はせっかくのヒマをゴロゴロと横になっているだけで全く有益に使っていない! 俺はこうしている間にも自己啓発本を読んで能力を磨いたり、筋トレして汗を流したり……!」

 

「しかしポイントが結果ですので……解説の禽次郎さんお願いします」

 

「ヒマつぶしノーワン、確かにお前は暇潰しの時間を的確に使おうとしている、しかし余った時間を無駄にしたくない一心で余計なことまでしているように見える! せっかくできた時間を無駄にしたくない、何かに消費しないといけない、それは……暇つぶしではなく自ら時間に追われている形に追い込んでいるだけじゃないか? あのマルチタスクにもそれが伺える!」

 

「なっ……」

 

「見てくれ! ちゃん陸のこの優雅にリラックスする一時を! やるべきことをじっくり丁寧に済ませて、余った時間でゆっくりと休む! それでいいじゃないか! ちゃん陸の過ごし方のほうが時間の無駄とか関係なく有意義に楽しんでいたようにも見える! まぜまぜがサルファンを誘って楽しく遊ぼうとしてたのも充分有益な暇つぶしだ!」

 

「まぜまぜとサルファンって……」

 

「もしかしなくともウチらのこと言うとんのか、どんなセンスや」

 

「私は悪くないと思うわよサルファン」

 

「ヒマを……暇な時間は適切に潰すためにある! ヒマを潰せない人間は俺がこの手で潰してやる!!」

 

 ナンバーワンの座を奪われそうになったヒマつぶしノーワンは完全に激昂して暴れ始める。

 アーイーたちは未だに尊死ビッグバンしているブーケを担ぎ上げるため何人かが脱出し、暴れ出した所に禽次郎が変身の構えを取ろうとするがサルファが制止する。

 

「いつまでもいいカッコさせへんで」

 

「エノルミータはいいのか?」

 

「大丈夫よ、ほら……」

 

 エノルミータは何をしているのかというと、レオパルトとロコムジカはどの陣営にも構ってられないほどあわあわとした状態だった、何故ならマジアベーゼは……。

 

「ばぶーばぶー」

 

 身体が縮んでしまっていた!! 

 

「バカ!! 若返りすぎだろこれ生後何ヶ月!?」

 

「あ、慌てることないわ! ミライドンブラー! もう1回十何歳くらいまで年を取らせればいいのよ」

 

「アギャス……」

 

「ああ!? エネルギー切れだぁ!? 仕方ねえ一旦帰るぞ!」

 

「あぶー」

 

「ってか赤ちゃんになったベーゼちゃんマジ可愛くね????」

 

「言ってる場合か!! もうなんてこんなことに……ほらミライドンブラーも行くわよ!」

 

「キュウス……」

 

 赤子ベーゼを担いでレオパルトとロコムジカは空を飛び撤退、ミライドンブラーは飛べないし重いので2人がかりで引っ張ってなんとか逃げていく。

 さすがに赤ちゃん連れているのに攻撃は出来ないので見送ることにして今はノーワンだ、小槌をサルファが片手で受け止めてアッパーカット、吹っ飛んだ所にエルボードロップの派手な連撃。

 

「ぐふぅ!? トレスマジアというのはこんなに強い奴らなのか!? このままでは暇潰し感覚でやられてしまう!?」

 

「何勘違いしとんねや、お前なんか暇潰しにもならへんわ」

 

「何!? 俺は所詮暇を潰す予定ですらないというのか……!!」

 

「そういうことだよ、さて後はよろしく、トレスマジア!」

 

 いつの間にか変身していたゴジュウレオン(陸王)が背後から銃撃を行い完全にヒマつぶしノーワンが油断したところにトレスマジアが手を掲げると中心に丸い魔法陣が描かれてゴジュウジャーの時のように大きな渦になる。

 

「ここから引っ張ればいいんだよね……捕まって!!」

 

 マゼンタが手を伸ばして渦から人の手を掴み、サルファの腕力を借りて一気に引っこ抜いた後、アズールが抱きしめる形で安全な場所へ介抱させるように転送。

 これがゴジュウジャーを参考にして会得した新たな魔法、ノーワン相手でもトレスマジアは挫けないことへの証明だった。

 

「お、俺のヒマがいつの間にか終わっていた〜っ!! 次の予定は爆死ーっ!!」

 

「見せ場は譲ったけど、ヒマつぶしナンバーワンは……もらったよ」

 

【WINNER! ゴジュウレオン&トレスマジア!】

 


 

 何も知らない印魔真銀はただ適当にぐっすり寝ただけで終わってしまった。

 戦闘もいつの間にか過ぎていたので仕方ないからとそのまま帰ろうとボロい賃貸に入ると、誰もいないはずの部屋に眼鏡をかけた少女が座っていた、年齢はおよそマジアベーゼのちょっと上くらい……。

 

「だ、誰よアンタ!? 勝手に私の家に上がり込んでおいて……」

 

「ああーうん、あなたはもう私の物語に必要ないから消しに来たの」

 

「は? 何言ってるか分かんないんだけどアンタ一体」

 

「さすがにバカすぎたか……まあいいや、実験は終わったしこの世界のおかしさも分かった、貴方はその為の存在だから消えてもいいってこと、じゃあね」

 

「だから何っ

 

 真銀が言い終えるまでもなく、少女は指輪を光らせて真銀は画用紙に描かれた棒人間になってしまう。

 というよりはこれが正しい姿だった、まるでAIに適当なプロンプトを組んで試しに作らせたような存在、少女からすれば本当にそのくらいの扱いだ。

 汚い画用紙をビリビリに破いてゴミ箱に捨てたあと、少女は窓からヴェナリータが見ていたことに気付くが驚く様子もなく、マジレンジャーの指輪を差し出す。

 

「これが欲しかったんでしょ? 私の能力で作ったレプリカだけど利用したいなら好きにして、悪役とはいえ使えるものは使わないと」

 

「本物の指輪の持ち主はどうしたんだい?」

 

「さあ? 案外他のやつにやられてたりして……真銀に関しても監理局の偉い人に急にあんなのを作ってくれって頼まれて……いや、それはいいか」

 

 少女はヴェナリータに真銀が持っていたマジレンジャーリングを描いて真似した偽物を渡すが、奴の目が自分の方を向いていたのが分かる、狙っているのだろう。

 しかしあんなやつはただの『悪役』、自分もまたユニバース戦士とバレたとして先に自分が願いを叶えてしまえば少なくともエノルミータが手出しすることは出来ない。

 

「はあ……印魔真銀はもういいか、ゴジュウジャーとやらから指輪を奪うためにはそろそろ私も動かないとなぁ、せっかく大好きな『魔法少女にあこがれて』の世界にも来れたんだし! 創造(デッサン)!」

 

 少女はオリジナルの『魔進戦隊キラメイジャー』の指輪を光らせると画用紙に描いた絵から次々と指輪を作り出していく。

 それを各地にばらまくと、またお絵かきを始める。

 

 

「あと少し……あと少しで正しい世界に作り直せる、私は貴方に尽くします……パンタノペスカ様!!」

 

 1人の少女は絵の山に囲まれて暗躍する。

 すべては愛しき魔法少女の為に。




印魔真銀(マジレンジャーのユニバース戦士:偽)
創造の力で適当な設定で作られた偵察用の駒。
本物の魔法の指輪の持ち主はどうなったか定かではない、本来通り灰色の目の男に取り込まれたか、あるいは…?
どちらにしても『印魔真銀』という人間は存在しない、いたとしても白いゴジュウジャーと同じ名前の人間などあってはならないのだ。
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