交差する次元、シュテルン   作:ろいど

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エルンの妹、フェリア・ギアレットのお話です。


煌めく虹彩

故郷を無くし、都市部に住処を移してからしばらく経った頃、フェリアは魔法に関連する書物を読み漁っていた。

街の書店に行っては新しい本を買い、自室で読みふけっては魔法を練習する。そんな日々。

だが肝心の魔法は、全くもって使えないままだった。

 

「うーん…全くイメージが湧かない…」

 

私には、魔法の才能がないのかもと思いつつ、何とか兄さんの役に立とうと粘って勉強を続けている。

しかし、独学では限界があるように思えてきた。

 

「…兄さんにも聞いてみますか。炎の出し方とか参考になるかも…」

 

フェリアは本を閉じて自室のドアを開け、

リビングへ移動する。

だが、そこに兄の姿は見えない。

 

「兄さーん、いらっしゃいますかー?」

「ここだ。」

 

すぐ頭上から兄の声がして、思わず飛び退く。

 

「びっっっくりした…なんで天井から逆さで吊り下がってるんですか!?」

「あー、吸血鬼になってから、これがやけに落ち着くんだ。フェリアも試してみるか?」

「しませんよ!そのまんまコウモリじゃないですか!」

「確かに。だからしっくり来るのか。で、何かあったのか?」

「そうでした、兄さんに聞きたいことがあるんです。」

「なんだ?」

「兄さんって、どうやって炎出してますか?」

「…どうやって?」

「例えば、呪文を唱えるとか、力を込めるとか…」

「…走るとか食べるとかと同じだな。出そうと思えば出るというか…」

「そうですか…」

「なんだ、魔法の習得に行き詰ったのか?」

「そうなんですよ。どの本を参考にしても上手くいかなくて…」

「なるほどな…前の任務の時に聞いたが、魔法にはそれぞれ素質があるらしいぞ。」

「素質?」

「魔法の種類による素質だ。『ある者は炎魔法が得意だが、水の魔法は使えない』というようなものだな。」

「なるほど…自分に向いてる魔法の種類を探すと…」

「あとは、触媒も適性があるようだな。杖が得意、魔導書が得意、指輪、ネックレスなんかもあるらしい。」

「ふむふむ…」

「あとは本人の魔力量、触媒と属性の相性なんかも考えて」

「あの!そのめちゃくちゃ魔法に詳しい人ってどなたなんですか?」

「ああ、アトランティアにいる知り合いだ。任務に関わる情報収集の時に世話になってな。」

 

アトランティア。一面が海の陸のない空間で、都市は全て海中にある。そもそもポリスから出たこともないが、あの空間には前から興味があった。

 

「…アトランティア、行ってみるか?」

「え?」

「そいつの居場所ならわかってる。話聞きに行ってみるか?」

「え…い、いいんですか…?」

「いつも暇してるって言ってたし、迷惑ってことはないと思うがな。」

「じゃあ…行きたいです!」

「よし、じゃあ今すぐ行くぞ。」

「へ?」

「今すぐだ。行動は早い方がいい。」

「えっ、ちょ、ちょっと待ってくださいね!身だしなみ整えてきます!」

「…俺もたまには整えるか。」

 

-1時間後-

 

フェリアは大急ぎで化粧をし、髪を整えて部屋を出る。

 

「お待たせしました!」

「ああ、待ってたぞ。」

 

そこには、いつもの黒コートではなく、シャツの上から軽いジャケットを羽織り、帽子をかぶった身軽な兄の姿があった。

 

「兄さんがジャケットなんて珍しい…!」

「そうか?プライベートはいつもこんな感じだ。」

 

兄は何食わぬ顔で日傘をさし始める。

 

「あの、私より先に都会に馴染むのやめてもらっていいですか?」

「いや、適当に街で買っただけで…」

「兄さんに置いていかれちゃいます〜!どうせ私はずっと田舎もののままなんだ〜!」

「わかったわかった、今度街に買いに行こう、な?」

「やったー!!絶対ですからね!」

「ったく…調子いいな…」

 

2人で談笑しながら歩いていると、アトランティアへのポータル前にたどり着く。

 

「これが、アトランティアへのポータルだ。」

「これが…噂に聞くポータル…!」

 

アトランティアが作った、次元間を移動するためのポータル。

魔力を発生させる装置によって固定されており、ポータル前には2人の警備兵が並んでいる。

警備兵の1人が声をかける。

 

『そこのお二方、止まってください。お名前をお伺いしても?』

「エルン・ギアレット。通行許可証は発行済みだ。」

『ご提示ありがとうございます。…はい、確認いたしました。お連れ様も問題ございません。

ようこそ、アトランティアへ。』

「ありがとう。行くぞ、フェリア。」

「はい!」

 

アトランティアへの通行手続きを済ませ、ポータルの前に立つ。

ポータルは雷、水、光の魔法によって構築されているようで、半透明の青色の渦を巻いている。

これは、人間が入って問題ないものなのだろうか…

 

「…不安か?」

「は、初めてなので…」

「大丈夫。俺だって何度も通ってるからな。」

「そうですよね…」

 

あと一歩のところまで来て、唾を飲み込む。

 

「こういうのは思い切りが大事だ、行くぞ。」

 

兄はそう言うと、私の手を握って引っ張り、ポータルへ入っていく。

 

「わわっ、ちょっと!?」

 

抵抗するまもなくポータルに身体が引き込まれ、眩しい光に包まれる。

 

「ちょっとっ、まだ心の準備が…!」

 

目を開けると、そこには同じ世界とは思えないほど異様なような光景が拡がっていた。

オレンジの光に照らされた、背の高い建物が並ぶ都市。

地面は滑らかな材質で整備され、見たこともない機巧が街を埋めつくしている。

空があるはずのところには水が張っており、はるか頭上を魚の群れが泳いでいるのが見える。

 

「これが…アトランティア…!」

「好きだろ、こういう場所。」

「すごい…!すごいです!これって全部魔導機巧なんですか!?

水中都市って空気どうなってるんですか!?あの魚って美味しいんでしょうか!?」

「くくっ、はは、気に入ってくれたみたいで何よりだ。」

「はいっ!はいっ!!大好きですここ!!」

「よかった。一応言っておくが、まだ目的地にはついてないからな。」

「あっ、そうでした…一体どこに行くんです?」

「この先、アトランティア中心部にある、あれだ。」

 

兄は目の前の、一際大きな建物を指で示す。

 

「あれは…なんの施設ですか?」

「それは着いてからのお楽しみだ。」

 

周囲の機巧や建物、華やかな人々に目を奪われながら目的の建物に向かっていく。

建物の入口には警備目的の魔導機巧の兵士が配備されている。

 

「大丈夫だ、ここは一般人の出入りが禁じられていない。」

 

入口に近付くと、扉が自動で開かれていく。

扉の先には、中央にある巨大な円柱状の水槽と、それを取り囲むおびただしい数の本棚が上下左右に広がっていた。

 

「これは…!」

「アトランティア次元立大図書館。シュテルンの全ての書物が集まっていると言われている。」

「これ…全部本ですか…?」

「上から下まで全てな。」

「すごい…!夢見てるみたいです…!!!!」

「ふふ、だが今日の目的は別にある。」

「別…?」

 

振り返ると、中央の水槽の方向から小綺麗な女性が歩いてくる。

その女性の周囲には本が数冊浮いており、女性に追従するように動いている。

この人が、兄の言っていた魔法に詳しい方…!

 

「紹介しよう。この方は、図書館の司書を務めているラミシアだ。」

『初めまして、ラミシア・シェステーメと申します。』

 

ラミシアさんはスカートの裾を持ち、丁寧にお辞儀をする。

 

「ラミシア、こちらは俺の妹のフェリアだ。」

「初めまして、ラミシアさん。フェリアと申します。よろしくお願いします。」

『フェリアさん、よろしくお願いいたします。

お久しぶりですね、エルンさん。本日は何をお探しに?』

「いや、今日の目的はお前に会うことだ。フェリアが、ラミシアに魔法を教えて欲しいって言っててな。」

『魔法を、私に?』

「そうなんです。兄からお話を聞いて、ぜひ直接会って話したいと思いまして…!」

『そうなのですね。わかりました。私に教えられることならなんでも相談にのりますよ。ただし…』

 

司書が指を鳴らすと、図書館中にある本棚が僅かに振動する。

 

『私に教えられることは、この図書館にあることのみですよ。』

 

司書の元へ、図書館の色々な本棚から抜き出された本が集まってくる。

どれもこれも古い書物で、様々な言語で書かれている。

それら10数冊の本は彼女のそばの空中で静止すると、パラパラとひとりでにページをめくり始める。

 

「すごい…一体何が起こってるんですか…?」

『魔法について、役に立ちそうな書物をいくつか選びとっています。

具体的に知りたいことはございますか?』

「えっ、えっと…そもそも魔力が備わっているかとか、自分に適した魔法とか、触媒の選び方とかですかね…」

『わかりました。ではもう少し絞ってみましょう。』

 

司書の元からいくつかの本が本棚へと戻っていき、めくられていた本のページが止まる。

 

『まずは、どの程度の魔力量をお持ちなのか見てみましょうか。』

 

司書は浮いている本のうち1冊を手に取り、開いているページの文字をなぞる。

 

『魔力量を図る際は、ティリンと呼ばれる宝石を用います。

宝石を増幅機巧にセットし、手で触れることで宝石が光で反応を示します。

光が強ければ、それだけ魔力が強いことを表します。』

 

司書は文字を読みながら、魔法陣をテーブルの上の空間に描き出す。

魔法陣が徐々にテーブルから離れていき、テーブルと魔法陣の間に機巧が生成されていく。

 

「これが、ラミシアさんの魔法…?」

 

生み出された機巧の上部、取り付けられた青色の宝石までも僅かな光を放ちながら生成していく。

 

『私の魔法…というより、生まれ持った力です。

魔力を消費して、本に書かれているものを具現化する力。』

 

生成された機巧は、質量を伴ってテーブルに置かれている。宝石も、機巧部分も紛れもない本物だ。

 

「なんでも、ですか…!」

『大きなものほど魔力を消費しますが、なんでも、です。』

「なんて規格外な…!」

 

生成された機巧をこちらへ向けて、ラミシアは手を触れるよう促す。

 

『さあ、触れてみてください。』

「はい…!」

 

恐る恐る機巧に手を触れる。

機巧は駆動を始め、宝石が徐々に光り始める。

淡く、透き通るような光。

その光が宝石の面に乱反射し、様々な色の光を放っている。

 

『…見たこともない反応です。こんな風に光ることはないのですが…』

「わ、わたし、壊しちゃいましたか!?」

『いえ、正常のはずです。本来はもっと煌々と光るはずなのですが、フェリアさんの魔法の形質でしょうか…?』

 

司書の周囲を激しく本が飛び回り、入れ替わり、ページをめくる音が響き始める。

 

『本で見た覚えがあります。魔力の形質が光に限りなく近く、その形質に適した魔術…』

 

ページをめくる音が止まり、ラミシアが一冊の本を手に取る。

しばらく読み込んだ後、こちらに向き直って口を開く。

 

『…あくまで可能性の話ですが、フェリアさんには特殊な魔法への適性があるかもしれません。』

「特殊…?」

『…もう失われたものと思っていましたが、試してみましょう…!』

 

司書は別の本を取り寄せて、再び魔法陣を展開する。

 

『魔法には、必ず適した触媒があります…

その魔法の適性は杖、長く丈夫で、

魔力消費を抑えるための結晶を組み込んだこちらの杖が最も適しているはず…!』

 

司書は素早く杖を生成すると、フェリアに手渡す。

その瞳は見開いて、興奮しているように見える。

 

『さあ、フェリアさん、試してみましょう。さあ、さあ…!』

「えっ、でも魔法の打ち方なんて…!」

『適性があれば、必ず発動するはずです…試しに振ってみましょう。この図書館は多少壊れても平気です。』

 

ラミシアはどんどんと顔を近付けてくる。

 

「じゃ、じゃあやってみますよ…!」

 

フェリアの黄色の目が、輝きを増していく。

 

「はぁっ!」

 

杖を振った瞬間、杖にはめ込まれた宝石は光を放ち、フェリアの周囲に黄色の水晶が出現する。

 

『やはり…!!!』

「えっ、なっ、何が起こって!?」

 

黄水晶は光を強め、熱を帯びていく。

 

「ちょ、ちょっと!!これ何が起きるんですか!!」

『待ってください!本には確か…!』

 

ラミシアは手で急いでページをめくる。

 

『黄色は…れ、レーザーが出ると…』

「レーザー!?レーザーってなんですか!?」

『破壊を伴う光線です…!』

「兄さん!!!!!レーザーが発射されます!!!!」

「あ!?どういうことだ!?」

「止めてください!!!兄さん!!!」

「よくわからんが、止めればいいんだな!」

 

兄は素早く黒炎を展開し、防御体制に入る。

水晶の光は先端に集まっていき、今にもエネルギーを放出しようとしている。

 

「信じますよ…兄さん…!」

「任せろ。止めやすいように、よーく俺を狙えよ。」

「っ…やってみます!」

『エルンさん、気をつけて…!威力は未知数です…!』

「わかっているさ。妹の初めての魔法なんだ。俺に独り占めさせてくれ。」

「兄さん…!死なないで…!」

 

水晶のエネルギーが光の束となり、空気を貫く。

 

「潰えよ、[煉獄]!」

 

兄は黒炎を包み込むように広げ、レーザーを炎の渦で受け止める。

 

「くっ…火力が足りないか…!」

 

徐々に炎がレーザーに飲み込まれていく。このままでは、自分の手で兄を…!

 

『展開[アクアヴェール]』

 

その時、兄の周囲を水の壁が覆う。

 

『エルンさん、これで火力の制御は必要ありません。』

「感謝する、ラミシア!」

 

兄は翼を広げると、自らを包む黒炎をより激しく燃やす。

 

「止まって…!ください…!」

 

フェリアは祈るように杖を掲げると、水晶は光をよわめ、レーザーが細くなっていく。

やがて光を失うとともに、照射は終了した。

 

「はぁ…はぁ…」

「大丈夫ですか、兄さん…!」

「ああ、なんとかな…」

 

兄の腕や身体は焼け焦げており、人間ならとっくに死んでいる量の火傷を負っていた。

それでも、兄は膝をつくことはない。

 

『手当します。もう少し耐えてください…!』

 

ラミシアさんは治療のための本を探してくれている。

私には、見ていることしか出来ない。

せっかく魔法が使えたと思ったのに。兄さんを傷つけることしか…

その時、光を失っていた水晶が、緑色に輝き始める。

それに呼応するように、フェリアの目が緑色に変化する。

 

「水晶の色が…変わった…?」

 

緑の水晶は、兄さんの周りを囲むように展開し、周囲をゆっくりと旋回する。

兄さんの火傷や傷は急速に回復し、元の状態に戻っていく。

 

『緑は治癒の力。かなり深い傷でも治せるようです。ですが…』

「あれ…なんだか…眠く…」

 

司書はフェリアの体を両手で受け止める。

 

『その分魔力消費が多いようです。』

「…危うく、妹の手で死ぬところだったな…」

『その程度の怪我で済んで、むしろ幸運だったかもしれませんよ。

彼女が持つ素質はこんなものではありませんから。』

「…末恐ろしいな。昨日まで魔術を使えなかったのに。」

『将来が楽しみになりましたね。フェリアさんはこのソファに寝かせておきましょうか』

「ああ、頼む。まだ腕が動かなくてな…」

 

次に目覚めた時、私は図書館のソファの上に寝かされていた。

 

「あれ、私…?」

『魔力切れで気を失ってましたね。』

「そうなんですね…ソファもお借りさせて頂いてたみたいで、ありがとうございます。」

『大丈夫ですよ。さて、改めて説明いたしますね。

フェリアさんが先程使用されたのは、水晶魔術と呼ばれるものです。』

「水晶魔術…」

『水晶に様々な色を映し出すことで、それに対応した魔術が発生します。黄色ならレーザー、緑なら治癒…という風に。』

「なるほど…」

『そして、水晶の色に応じて、フェリアさんの目の色も変化するようです。フェリアさんの魔力が、水晶の魔法と適合している証ですね。』

「…でも私、あの一瞬で魔力切れを起こしてましたよね。」

『そうですね。まだ魔法になれていないため、出力が制御できていなかったのでしょう。』

「そうですか…」

『魔法の扱いに慣れて行けば、どの状況にも対応できる強力な武器になりますよ。』

 

ラミシアさんの話を聴きながら、震える手を握りしめる。

この水晶の力は、本当に私が扱える力なのだろうか。

また暴走して、大切な人を傷つけてしまうのではないか。

魔力切れを起こして足でまといになってしまわないか。

いくつもの不安がぐるぐると頭の中を回っている。

さっき兄さんを焼きかけたレーザーの光景がまだ脳裏に焼き付いている。

その時ふと、頭の上に優しく手が置かれる。

 

「…不安なんだな、フェリア。」

「…はい。自分がこんな魔術を扱えるなんて、思ってもいませんでした。」

 

兄は、私の頭を撫でる。

 

「力を持つ上で最も重要なのは、使い道だ。

フェリアは、どんなことに魔法を使いたかったんだ?」

「…兄さんを守るため、兄さんの役に立つために、魔法を使いたかったんです。」

「…そうだったんだな。誰かを守るためってのも、立派な目的だ。もし、フェリアがあの魔術を習得したら、すごく心強いだろうな。」

「っ…いじわるですね。」

「本心だよ。あの魔術の習得を目指すかどうかはお前に任せる。」

 

フェリアはしばらく目を閉じて考えたあと、目を開けてエルンを見つめる。

 

「もし私が暴走したら、兄さんが責任もって止めてくれますか?」

「ああ。」

「もし私が倒れたら、兄さんが助けて連れ帰ってくれますか?」

「もちろんだ。」

「なら…!私挑戦します!必ず、兄さんの役に立ってみせます!」

「わかった。俺も最大限協力しよう。でも、今日は一旦帰って休もうな。」

「はい、そうします…!ラミシアさん、またお邪魔してもいいですか?」

『もちろん。いつでも歓迎しますよ。

今回は特別に、この水晶魔術に関する本はお貸しいたしますよ。』

「いいんですか…!ありがとうございます!」

『ただし、ちゃんと返しに来てくださいね。私はいつでもここで待っていますから。』

「わかりました。必ず返します。」

「ありがとう、ラミシア。この借りは、また何かで埋め合わせさせてくれ。」

『気にしなくて大丈夫ですよ。来てくださっただけで嬉しいですから。』

「ああ、また来るよ。」

「今日はありがとうございました!ラミシアさん!」

『こちらこそ。またいつでも来てくださいね。』

 

私と兄は、図書館を後にする。

貰った杖と書物を抱え、ポリスへと繋がるポータルへ向かう。

 

「…もし赤色の水晶魔術があるなら、兄さんと目の色がお揃いになれますね。」

「確かにな。家で試してみるか?」

「試してみましょう!明日以降に…!」

「明日以降な。」

「うぅ…落ち着いたらお腹すいてきました…」

「何か食べて帰るか。」

「はいっ、私お肉がいいです!」

「肉な。せっかくならアトランティアで店を探してみるか。」

「はいっ、行きましょ!!」

 

元気を取り戻したフェリアは、エルンの手を取りレストラン街へと向かう。

アトランティアの街を写す彼女の目は、澄んだ黄色に輝いていた。

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