静かにマグルの世界で生きる彼と、彼を探し続けていたハーマイオニー。
再会から始まる、もうひとつの物語。
キャラ設定は以下のとおりです。
ハリー・ポッター
21歳。
日刊予言者新聞にて「ヴォルデモートと共に死んだ」と報道され、魔法界から“亡き者”として扱われている。
実際には生存しており、魔法界から身を引き、ロンドンのマグル社会でひっそりと生活している。
ハーマイオニーへの恋心を自覚しているが、想いを押し殺している。
ハーマイオニー・ウィーズリー(旧姓:グレンジャー)
21歳
魔法省に入省し、魔法生物規制管理部で勤務している。
「ハリーは死んだ」という日刊予言者新聞の報道に疑念を抱いており、彼の行方を独自に追って、マグル社会での手がかりを掴むため、週に1度、父親の歯科医院の仕事を手伝っている。
ホグワーツ卒業後にロンと結婚したが、夫婦関係はすでに冷えきっている。
ロン・ウィーズリー
21歳
兄ジョージのイタズラ専門店で働いている。
ホグワーツ卒業後にハーマイオニーと結婚したが、夫婦関係は冷えきっている。
ハリーの死の報道に対しては肯定的で、ハーマイオニーと口論になる。
ハーマイオニーが夫の自分ではなく、ハリーのことに熱くなるため、呆れ果てている。
ミネルバ・マクゴナガル
ホグワーツの校長。
ハーマイオニーと同じく、ハリーは死んだという日刊予言者新聞の報道に疑念を抱いており、独自でハリーの行方を探すハーマイオニーと手紙で情報共有し合っている。
アルフレッド・グレンジャー(愛称:アルフ)
ハーマイオニーの父。
ロンドンの住宅街で歯科医院を開業している。
寡黙で論理的な性格。口数は少ないが娘を溺愛している。
エイミー・グレンジャー
ハーマイオニーの母。
彼女が作るキッシュは、ハーマイオニーの大好物。
明るく芯の強い性格。娘の幸せを誰よりも願っている。
闇の帝王ヴォルデモートを打ち倒し、魔法界で英雄扱いされた青年、ハリーポッター。
しかし、それも過去の話。
彼は、魔法界から亡き者と扱われていた。
あの日、ヴォルデモートとの死闘の末、彼を鎮めた代償として、ハリー自身も命を落としたと、日刊予言者新聞は報じた。
それから、数年の時が流れた。
ロンドン キングズクロス駅 夕刻
通勤帰りの人波に飲まれるようにして、くせ毛に丸眼鏡をかけた青年が、 足早に歩いていく。
青年の名は、ハリー・ポッター
魔法界の英雄。
しかし、こちらの世界には、その名を語る者はいない。
彼は、マグル界に帰ってきたのだ。
キングズクロス駅の通りを歩くハリーは、通勤の人の波に飲まれていた。
彼は、すっかりマグル式の生活に溶け込んでいた。
マグル界には自分の存在を知る者はほとんどおらず、それが彼には心地がよかった。
小さな会社に就職して、決まった時間に働いて、地下鉄で自分が住むフラットに戻る。
週末は、惣菜をスーパーで買って、家事をして1日を静かに終える。
魔法と全く離れた生活を4年ほど続けて、ハリーは21歳になっていた。
キングズクロス駅の9と4分の3番線ホームから始まった魔法界の記憶は、どこか夢のようであった。
夢であって欲しいとさえ思っていたのだ。
それほど、彼にとって魔法界は遠い世界となっていた。
魔法界を離れて以来、ホグワーツの学友などとは連絡も取っておらず、杖やローブなどの魔法使いとしてのアイテムもグリンゴッツ銀行の金庫に預けてきた。
しかし、ただ1つだけ手放せなかったものがある。
箒磨きセット。
ホグワーツ3年生の誕生日に、ハーマイオニー・グレンジャーが送ってくれたものである。
これでクィディッチで使う箒を何度も磨いたものだ。
そのセットは今、玄関の棚の上にそっと飾っている。
時々、送り主である親友のことを思い出して切なくなる。そして、胸が痛くなる。
それは、ハーマイオニーへの”想い”に気づいてしまったからだ。
彼女のことを特別な存在と思い始めたのはいつからだろう。
その気持ちを自覚したときには、すでに彼女の隣にはロンがいた。
ハリーは、彼女にはもう会えない、会わない方がいいと気持ちを押し殺してロンドンの片隅で静かに生活を送っていたのだ。
物語は、もう動かないと思っていた。
けれど、その静かな日常を破るように、あの声が、彼を呼んだ。
「…ハリー!」
粉雪舞う冬のロンドンで、止まっていた時間が、再びゆっくりと動き出す。