また逢うために   作:ゆうた660

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第3話 本当の気持ちと届かぬ名前

イギリス魔法省 魔法生物規制管理部

 

「ニフラーがダイヤゴン横丁の本屋さんのコインを盗んだみたいで…」

 

向かいのデスクから声をかけてきたのは、同じ部署で働く同僚のジャネットだった。

ハーマイオニー・ウィーズリーは、書類から目を上げて軽く頷いた。

 

「また?……今月に入って三度目よ。通報の詳細は?」

「被害者はフローリッシュ・アンド・ブロッツの店主で、目撃証言と監視呪文の記録があるみたいです。ニフラーは地下通路に逃げたとのことでした」

 

「管理課にはもう連絡済み?」

「君が判断してくれと… 先月も同じ個体だったから、すぐには動けないとのことで…」

 

「…わかったわ。照会して個体識別番号を確認しましょう。たしか、220-NFだったはずよ」

 

「さすがウィーズリーさん、どんな事案も覚えていらっしゃるんですね!」

 

ジャネットが感嘆の声を漏らし、ハーマイオニーは照れたように微笑んだ。

 

「再発させないための仕組みを考えなきゃいけないわ。覚えてるだけではダメよ、でもありがとうジャネット!」

 

「いつも頼りにしてます」

 

ジャネットは、笑顔でハーマイオニーを見つめた。

 

ハーマイオニーは、ジャネットの方を見つつ、「ウィーズリーさん」と呼ばれるたびに、胸の奥が少しだけざわつくのを、気付かぬフリをしていた。

 

「ウィーズリーさんってすごいですよね!ホグワーツを首席で卒業しちゃうし、若くして結婚もされてて… 私から見ると完璧な人生に見えちゃいます」

 

ジャネットの無邪気な瞳にハーマイオニーは、ため息をつきながら返した。

 

「若くして決めたことが、正しいこととは限らないわ。ジャネット、後悔しないように、自分の心をちゃんと見つめてね」

 

彼女の頭には、話すことさえすっかり無くなってしまった、夫の姿が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

ロンの実家の隠れ穴から、20分ほど歩いた通りにある小さい一軒家。

そこが、ロンとハーマイオニーが住む家だ。

 

「ただいま」

ハーマイオニーは、魔法省での仕事を終えて、ドアノブに手をかけた。

 

ドアを開けると、冷たく暗い部屋が広がっていた。

杖でランプに明かりを灯すと、部屋が明るくなっていく。

 

ロンは今日も帰ってきていなかった。

きっと、実家で夕食を食べてきているのだろう。

 

ハーマイオニーは、コートを脱ぎ、寝室に向かった。

ベッドに座り込んだ彼女は、サイドテーブルの引き出しから、マグル界用の手帳を取り出した。

次の父の歯医者の手伝いの日の暦を見つめて、ため息を吐いた。

 

「ハリー… 会いたいわ…」

ハーマイオニーは、無意識に本音を小さく漏らしていた。

声に出した瞬間、自分の言葉に驚いたのは、他でもない彼女自身だった。

 

 

 

 

 

 

17時。

終業のチャイムが鳴り響いた。

 

「ハリーお疲れ、今夜1杯飲みに行かないか?」

 

業務を終え、パソコンを閉じたハリーに声を掛けたのは、同僚のクリフだった。

 

「ああ、いいね」

ハリーは、クリフの誘いを静かに受け入れた。

 

それからハリーたちは小さなバーに立ち寄った。

 

バーの小さなテーブル。

グラスの水滴が、テーブルの木目に染み込んでいく。

ネオンの光が窓ガラス越しに揺れていた。

 

「忘れられない人か…」

クリフはグラスを指先で回しながら、ぽつりと呟く。

 

「ああ、彼女は親友だった…」

ハリーは、琥珀色の液体をじっと見つめながら、その奥にある面影を追っていた。

 

「親友だった…?」

 

「彼女への想いに気づいた時には…もう、別の人がいたんだ」

 

「そうか… どんな人だったんだ?」

 

少し沈黙が落ちた。

ハリーは、ふっと微笑んだような顔をして、グラスの氷をカラカラさせながら答える。

 

「本が何よりも大好きで、賢くて…

誰よりも優しくて… 正義感の強い人かな」

 

「素敵な人だな…」

クリフは静かに微笑みながら言った。

 

クリフと別れて帰宅したハリーは、郵便受けに入っていた歯医者のチラシに目を通した。

 

「AG Dental Clinic」

近所の歯医者のようだ。

 

ハリーはしばらく、その紙を見つめていた。

どこか懐かしさを感じる名前だと思った。

 

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