また逢うために   作:ゆうた660

4 / 5
第4話 探し求めたあなた

冬のロンドン。

粉雪がちらつく昼下がりの午後。

 

ハリーは、手にした1枚のチラシに載っている地図を見ながら目的地に向かっていた。

 

「AG Dental Clinic」

緑色の背景に白い文字の看板が控えめに揺れている。

冷えた空気の中、小さな歯科医院の扉の前で、彼はふと足を止めた。

 

「……ここか」

 

看板の下に咲いていた、わずかなスノードロップに目を留める。

冬に咲く小さな白い花。

どこか、彼女を思い出させる。

 

少しだけ胸が騒いだ。

でも理由なんて、思い出せなかった。

 

ハリーは静かにドアノブに手をかけた。

 

 

「ご予約はございますか?」

ハリーより少し上くらいの年齢だろうか。

受付の女性スタッフが笑顔で出迎えた。

 

「いえ… 最近、歯に違和感を感じていて… 郵便受けにチラシが入っていたので来てみたんです」

 

女性スタッフは、ハリーに問診票を渡し、待合室で待つように案内した。

 

ハリーが問診票を書き終え、待合室を診察を待っていると、壁に飾られているひとつの写真が目に止まった。

 

小さな額縁に収められた1枚の写真。

白衣を着た若い夫婦と、その横にちょこんと座る女の子。

膝には厚めの本を抱えて、笑っていた。

 

開院10周年の際に撮影された写真のようだ。

 

「……これ…」

ハリーの胸が、ふいにざわついた。

 

くせ毛の少女。優しげな茶色の瞳。

 

彼の想い人の面影を感じたからだ。

 

ハリーは、目を離すことができなかった。

写真の中の少女は、まるで時の流れに逆らうかのように、

彼の心の奥にある“何か”を呼び覚ます。

 

まさかね。

そう思いながらも、彼は立ち上がり、写真に一歩近づいた。

 

 

 

「お待たせしました。ハリー・ポッター様、こちらへどうぞ」

 

呼びかける声に振り返ると、若い男性医師が診察室のドアを開けて立っていた。

茶髪に眼鏡、優しげな口調。名札には “Dr. Edwards” と記されていた。

 

ハリーは一瞬写真を見つめ、それから診察室へと足を踏み入れた。

 

 

診察はスムーズに進んだ。虫歯ではなかったが、歯茎が少し腫れているとのことで、経過観察が必要とのこと。

 

椅子から立ち上がったハリーに、エドワーズ医師が笑みを浮かべながら尋ねた。

 

 

 

「ポッターさん、初診とのことでしたが、こちらは初めてですか?」

 

「ええ、チラシを見て……偶然通りがかって」

 

「そうでしたか。うちの院長が、かなり前からこの地域でやってまして。家族ぐるみでやってる小さなクリニックなんです」

 

ハリーは、さりげなく聞いてみた。

 

「受付の写真に写っていたのは…?」

 

「ああ、あれですね。うちの院長夫妻と、娘さんですよ。娘さん、昔はよくここに来ていて――今も週末は受付手伝ってくれることがあるんですよ」

 

心臓が、ほんの一瞬だけ大きく脈を打った。

 

ハリーは一言、

「そうなんですね」とだけ返した。

 

だがその声は、どこか乾いていた。

 

 

帰り道。粉雪は変わらず舞っていた。

 

歩きながら、ハリーは無意識にチラシを取り出して見つめた。

「AG Dental Clinic」のロゴが、街灯の下で白く滲んでいる。

 

“もし、あの少女が彼女だとしたら”

そんな想いが喉元までこみ上げたが、言葉にはならなかった。

 

 

魔法省での仕事を終え、帰宅したハーマイオニーは、今日も冷たい自宅のランプに杖で明かりを灯した。

 

この日もロンはまだ帰宅していなかった。

 

夕食を食べ終え、キッチンで食器を片付けていると、マグル用の携帯電話が鳴り響いた。

 

画面に“Dad”という表示が出ている。

 

「もしもし、ハーマイオニー、今少し話せるか?」

 

「ええ、パパ。どうしたの?」

 

「ちょっと驚くかもしれないが… 今日の患者リストに、君の知ってる名前があってな」

 

「知ってる名前?」

 

「ハリー・ポッターだ。僕が直接診たわけじゃないけど… カルテに名前を見つけて驚いたよ」

 

その瞬間、ハーマイオニーの動きが止まった。

 

胸の奥で、時が静かに、しかし確かに、鳴った。

 

「ハリーのこと、探していたよな…?」

 

「うん… 」

 

ハーマイオニーは、自分か探していた名前に驚きながらも平静を保とうとしていた。

 

「その… ハリーの次の診察はいつなの?」

 

「次の土曜日だ」

 

「もしその人が、本当にハリーだったら。私、土曜日も手伝いに行くわ」

 

「ああ、来てみるといい。何か手がかりが掴めるかもしれない」

アルフは期待を寄せるような口調で電話を切った。

 

 

「ハリー…」

ハーマイオニーは、色々な感情がごちゃ混ぜになりながら、その名前を口にしていた。

 

 

「またハリーかよ…!君の頭の中はいつもハリーばっかりだな…」

ロンがちょうど帰宅したようで、怒りと呆れの面持ちで立ち尽くしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。