また逢うために   作:ゆうた660

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第5話 粉雪の中で

粉雪が舞う、1月の土曜の朝、ハリーは診察で歯医者にやってきていた。

 

「ああ…また、ちょっとだけ痛みます」

 

ハリーは診察台の上で、少し顔をしかめながら答えた。

 

エドワーズ医師が、頷きながらメモを取る。

 

「ちょっと確認しますね」

エドワーズ医師が、ハリーの歯を確認しつつ診察が進んでいく。

 

30分後、診察を終えたハリーは、会計を済ませて、歯医者を後にした。

 

 

 

「…ハリー!」

ハーマイオニーは、探し求めていた親友の名前を呼んだ。

 

歯医者を出たくせ毛の青年は、懐かしい声に振り向いた。

 

「ハーマイオニー…?」

確認する暇もなく、ハーマイオニーに抱きつかれたハリーは、彼女をそっと抱きとめた。

 

ハーマイオニーは、思わず涙が溢れ出す。

 

ハリーは、彼女の亜麻色の巻き毛をそっと撫でた。

 

ハーマイオニーは、流れ出した涙でハリーの胸元を濡らしていた。

 

ハリーもずっと求めていた想い人の温もりに心が熱くなるのを感じていた。

このまま彼女を抱きしめていたいとさえ思った。

 

彼女の髪をしばらく撫で続けていた。

 

ハリーの胸元で涙をこぼすハーマイオニーの体温が、冷えきった彼の心をじんわりと溶かしていく。

 

「まさか… 君がここにいるなんて」

 

ハリーの声は、驚きと、どこか懐かしい安心に満ちていた。

 

「パパの歯医者なのよ… 時々、手伝いに来てるの」

ハーマイオニーは顔を上げると、少し恥ずかしそうに笑った。

 

「私、ずっと…探してたの。あなたが生きてるって、信じてたから」

 

ハリーは言葉が出なかった。

探してくれていた。

その事実が、心の奥を深く揺さぶる。

 

ハーマイオニーが少し距離を取って、まっすぐ彼を見つめる。

 

「ハリー… 本当に、生きていてくれてありがとう」

 

ハリーはそっと頷いた。

 

「こっちこそ… 会えてよかった。君が変わらずいてくれて」

 

その目には、伝えきれない想いが詰まっていた。

 

「この近くに住んでるんだ」

 

ハリーはそう一言だけ口にした。

 

彼の言葉に、ハーマイオニーは一瞬だけ微笑んだ。

 

ほんの短い間のあと、彼女は思い切るように言った。

 

 

「ハリー、このあと…時間あるかしら?」

 

ハリーは、少し驚いたように目を見開いた。

 

「歯医者の土曜日の診察は午前中で終わりだから…

少しだけでいいの。カフェで話せたらって…思って」

 

彼女の声は、期待を押し殺すように静かだった。

 

ハリーの胸に、さざ波のような感情が広がる。

 

嬉しい。

でも、関わってはいけない気がする。

彼女には、今はきっとロンとの生活があるのだから。

 

だが、そんな理屈よりも早く、彼の口が動いていた。

 

「…うん、少しだけなら」

 

ほんの少しの沈黙のあと、ハーマイオニーはふわりと微笑んだ。

 

「じゃあ、この通りの端っこにあるカフェで待ってるよ」

ハリーは、カフェの方向を指さした。

 

彼は、ハーマイオニーと別れて、カフェへと歩いていった。

 

 

 

 

カフェに着くと、ハリーは、コーヒーを注文して持ってきた小説を読みながら、ハーマイオニーの到着を待った。

 

ハリーは小説のページをめくる手を止めて、ふと窓の外を見つめた。

本当に彼女なんだ。

そう思っても、現実味がなかなか湧かない。

心のどこかで、また夢なんじゃないかとすら感じていた。

 

「終わったわ!お待たせ」

40分ほど待っていると、ハーマイオニーが店の中に入って、ハリーの正面の椅子に座った。

 

ハーマイオニーは、アールグレイの紅茶を注文した。

 

「ティースプーン1杯だったよね…」

ハリーは、紅茶に砂糖を入れようとするハーマイオニーに微笑みながら声をかけた。

 

「覚えててくれたのね」

 

「もちろん」

少し驚くハーマイオニーに、ハリーは得意げな顔をする。

 

ホグワーツの思い出話、ハーマイオニーの魔法省での仕事や両親の話、ハリーの現在の生活の話。

それから2人は、近況を報告しあったり、たわいもない話に花を咲かせた。

 

「ロンは元気?」

 

「……ええ」

少しの沈黙のあとに、ハーマイオニーが寂しそうな表情を浮かべながら静かに答えた。

 

「そっか…」

ハリーは、彼女の先ほどの思い出話などを話していたときとは打って変わった表情に、少し戸惑いながらも相槌をうった。

 

ハーマイオニーが腕時計を見やると、針は15時を指していた。

「あら… もうこんな時間。ハリー、会えて良かっ たわ。ありがとう」

 

彼女は、ハリーとの会話がこんなにも楽しくすぐ時間が過ぎていく感覚を感じていた。

 

「僕も、君に会えて… 嬉しかったよ」

ハリーは小さく微笑みながら言った。

 

カフェを出ると、空はすっかり夕暮れ色に染まっていた。

冬の空気が、午後の陽射しをすっと連れ去っていく。

 

ハリーとハーマイオニーは並んで歩いていたが、言葉はなかった。

沈黙が気まずくないのは、きっと、もう言葉が要らなかったからだ。

 

「…また、会える?」

立ち止まり、ハーマイオニーがぽつりと口にした。

 

ハリーはしばらく彼女を見つめたあと、そっと頷いた。

そして、すぐには目を逸らさなかった。

 

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