恋する歌姫と恋した俺   作:ゼレス

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暗めにしすぎたかもしれませんがたまにはいいかなって思います。


一緒に乗り越える為に

 ニュース速報があり、学食に衝撃が走った。隣の蘭は彼氏でもある杉崎くんが事故に遭った事実を受け止めきれずにいる。

 「蘭…」

 

 私、星宮いちごも友達がこんなことになってしまって動揺している。でも一番辛いのは蘭だ…。好きな人と再会してお互いの思いを伝え、やっと結ばれたんだもん。なのにこんなことってないよ…

 

 「星宮。今、杉崎くんのお父様に確認したけどやっぱり本人だわ」

 

 やっぱり、そうなんだ…

 

 蘭はその学園長の言葉を聞き、悲しみが押し寄せる。

 

「なんで…!なんで…奏太なんだ…!やっと…出会えたのに!」

 

「蘭。一旦お水飲も?今は落ち着いた方がいいよ」

 

 蘭に水を渡す。少しずつだが、水を飲んでくれた。

 

「大丈夫だよ蘭。杉崎くんなら大丈夫だよ」

 

 小さく首を縦に振る。あまりのショックに声もでないようだ。今の私にできるのはこれぐらいしかない。

 

「私は、杉崎くんの搬送された病院にご両親にお話を聞きに行ってくるわ」

 

「学園長。アタシも連れていってください…」

 

「とても辛い事だけど、大丈夫?」

 

「今は奏太の傍に居たいんです…」

 

「星宮、霧矢、あなた達もついてきなさい。紫吹のことを支えてちょうだい」

 

「「はい」」

 

 

 

 

△▼△

 

 

 

 

 蘭、いちご、あおいの三人は学園長が運転する車で病院に向かう。

 

「蘭…大丈夫?」

 

「無理だけはしないで」

 

「少し落ち着いたよ…」

 

 それでも蘭の目には涙が溜まっている。それに不安でいっぱいの目をしている。

 

「ついたわよ」

 

 四人は病院に入り、手術中と赤く光った扉の前にいる椅子に座った夫婦を見つける。

 

「はじめまして。杉崎くんのご両親でお間違いないでしょうか。先程連絡させていただきました私、奏太くんがアルバイトをしている学園の学園長をしております。光石織姫と申します」

 

「いつもお世話になっております。奏太の父です。」

 

「奏太の母です」

 

「え…舞…?」

 

「えぇ。そうよ。久しぶりね」

 

 学園長が、驚いている。杉崎くんのお母さんと知り合いなのかな?

 

「こんな再会になっちゃって…何て言えば…」

 

「そうね…奏太くんはどう…?」

 

「右腕から骨が出てしまっているのと、地面を転がった時にできた擦り傷を治療中なの…」

 

「まだ意識は無いの?」

 

「うん…ヒメちゃん、後ろの女の子達は奏太のお友達?」

 

「はじめまして。お友達の星宮いちごです」

 

「私も杉崎くんのお友達の霧矢あおいです」

 

「アタシは、お付き合いさせていただいてる紫吹蘭です」

 

 奏太の母は、蘭の傍に寄っていく。

 

「うちの子がこんな可愛い子と付き合ってるなんて。蘭ちゃん、心配かけてごめんなさい」

 

「ニュースで事故と聞いて驚きました…」

 

「私達もよ…」

 

「赤信号を無視した車に追突されたみたい…」

 

「ひ、酷い…」

 

 事故の真相を聞いた蘭は、我慢してた涙が溢れてくる。

 

「蘭ちゃん、奏太の回復を待ちましょ」

 

 奏太の母は、蘭の肩に手を添えて、落ち着かせる。

 

「蘭…今は無事に帰ってくることを祈ろう」

 

「私達もついてるから」

 

「うん…」

 

 

 みんなで手術室の前で手術が終わるのを待つ。

 

 手術から数時間経過して、赤いランプが消える。扉が空くと中から医者が出てくる。

 

「奏太くんのご両親ですか?」

 

「はい。そうです」

 

「手術は無事終わりました。ですが右腕の損傷は酷く、事故前と同じ腕の動きができるまでは治らないかと…」

 

「そ…そんな…」

 

「擦り傷はそこまで酷くないですが、身体に傷跡は残るかと思います」

 

「お世話になりました…」

 

「この後の経過を見て、病室に移動させます」

 

「はい…ありがとうございました…」

 

「あ、あの…先生…」

 

 蘭が医者を呼び止める。

 

「彼はバイクが好きで…回復したら運転は出来るんでしょうか…」

 

「残念ですが、絶望的です」

 

 蘭は床に座り込んでしまう。

 

 奏太からバイクを取り上げないでよ…なんでこんなことになるの…

 

「蘭!大丈夫!?」

 

「紫吹、今日は帰りましょう」

 

「ヒメちゃん、奏太に変化があったら連絡するね」

 

「わかったわ」

 

「いきなり来ちゃってすみません」

 

「杉崎くんが回復したらお見舞いにきてもいいですか?」

 

「えぇ。あの子も友達が来てくれたら喜ぶと思うよ。蘭ちゃんも会いに来てあげてね」

 

「その時はお邪魔させていただきます…」

 

「それでは、失礼します」

 

 

 車に乗り、スターライトに帰る。

 

「蘭…大丈夫?」

 

 コクンと首を縦に振って答えてくれる。

 

「今日は蘭の部屋に泊まるよ。一人じゃ、不安だと思うから」

 

 また首を縦に振る。車の中はずっと静寂だった。

 

 

 

 

△▼△

 

 

 学園について、私達は蘭を部屋に連れていった。そのまま私とあおいは蘭の部屋に泊まる。

 

「今日はもう休もうね」

 

「うん…」

 

「絶対に杉崎くんは帰ってくるよ」

 

「うん…」

 

 そうして私達三人は休むことにした。

 

 

 真夜中に目が覚めた蘭は椅子に座り、夜空を見上げる。

 

 

 

 

 絶対にアタシの隣に帰ってきて... 

 

 

△▼△

 

 

 

 なんだろ…?すごく落ち着く場所にいる気がする…

 

 隣に誰かいるけど…顔が見えない…でも髪が凄くキレイだ。

 

 蘭みたいだな…なにか伝えようと口が動いてるけどわからない…

 

 

 

 

   アタシの隣に...

 

 

 

 △▼△

 

 意識がハッキリしてくる…目が開けられそうだ…

 

 ゆっくりと目を開けると病室だった。

 

 どこだろうと思って立とうとすると右手が動かない。動かせられない。

 

 は?なんだこれ…てか俺、車が突っ込んできて吹き飛んだのは覚えてるけど、どうなってるんだ?

 

 考えていると看護師が入ってきた。

 

「杉崎さん!起きたんですね!今、先生を連れてきます!」

 

 先生?ってことは病院か…ここは…

 

「杉崎くん!無事に目が覚めたね。目覚めたところ悪いけど君の状況を説明させてほしい。大丈夫かな?」

 

 口も思うように開かない。とりあえず首を振ろう。

 

 コクンと首を縦に振る。

 

「ちゃんと声も聞こえているね。まず君は赤信号を無視した車に追突され吹き飛ばされた。ここまでは大丈夫かな?

 

 コクン

 

 

「そのあと意識を無くし、病院に搬送された。緊急オペをして現在に至る」

 

 コクン

 

「怪我の状態だけど、まず右腕は骨が剥き出しになっており、骨折もしていた。オペにて正常な位置に骨を戻して処置を施してある。身体中の擦り傷に関しては深くないが傷跡は残るだろう。ここまでも大丈夫?」

 

 コクン

 

「とりあえず今はご両親に連絡しよう」

 

 頭が動いてくれない感じがする。なにも考えられない。色々理解が難しい所もあるが生きている事は確かだ。それだけは良かった。右腕を見るとギブスで固定されている。包帯もぐるぐる巻きだ。起き上がりたいけど動かない。身体中が痛い…右腕なんて痛すぎて涙が出そうだ。

 

「杉崎くん、ご両親が今から来るそうだ」

 

 コクン

 

 両親を待とう。

 

 

 

△▼△

 

 

 

 窓の外を眺めていると扉が空いた。

 

「奏太!無事か!」

 

 親父とかーちゃんだ。

 

「今はまだ喋るのが難しいだろ。丸三日寝ていたから無理もない」

 

「奏太…無事なの?」

 

 コクン

 

「良かったわ…ヒメちゃんに連絡してくるわ」

 

 

 ヒメちゃん?誰だ?それより蘭はどこにいる?

 

 

「なにかほしいのか?」

 

「らぁ…ん…どぉ…こぉ…」

 

 声がでない。

 

「蘭ちゃんだな。今呼んでるから待ってろ」

 

 良かった。蘭に会えるのか。待つしかないか。

 

 右手が使えないため、親父に水を飲ませて貰った。喉が潤される。こんなに水を美味しいと感じたことはない。蘭を待っていると病室の扉が勢い良く開いた。

 

「奏太!」

 

 この声は…蘭だ!だが名前を呼びたくても声を出すのが難しい。

 

「らぁ…ん…」

 

「ここにいるぞ…無事に目が覚めて良かった...」

 

 奏太が目を覚ましてくれた。涙が止まらない。ボロボロと溢れてくる。

 

「杉崎くん!無事に目が覚めたのね」

 

「杉崎くんが目を覚まさなくて心配したよ!」

 

 いちごちゃんとあおいちゃんだ

 

「いぃ…ちぃ…ごぉ…ちゃぁ…ん…あぁ…おぉ…いぃ…ちゃぁ…ん…」

 

「ここにいるよ!」

 

「ここだよ!」

 

「杉崎くん!良かったわ…」

 

 学園長だ。久々に見た気がする。

 

「今は辛いだろうからゆっくりしてなさい」

 

「舞…良かったわ…」

 

「ヒメちゃんも来てくれてありがとうね」

 

「心配だったから」

 

 ヒメちゃんって学園長なのね…てか知り合いなのね…

 

 後ろから医者が来てるのが見える。

 

 

「皆様少々よろしいでしょうか。奏太くんも目が覚めたのでいきなりで驚くと思いますがお話をさせてください。まず、怪我についてですが、擦り傷に関しては、治ってきているので問題なく回復すると思います。ですが右腕に関しては完治までに時間がかかるかと思います。バイクの運転は、前みたいにスムーズにはできないです。お話によるとレースに出ていたそうですが、レースみたいなスポーツ走行はできません」

 

 

 え…できない…

 

「リハビリを行っても難しいかと。でも日常生活程度の運転ならスムーズにはできませんが多少はできると思われます」

 

 その話を聞いて息が苦しくなってくる…呼吸がしづらい…大人しくしてられない!

 

「奏太くん!落ち着いて!暴れないで!」

 

 奏太はこの話を聞いてパニックになっている。

 

「みなさん!身体を押さえて!」

 

 みんなが押さえてくる。

 

「奏太!落ち着いてゆっくり息を整えて!」

 

 蘭の声がする。言われた通りにゆっくり息を吸って吐く。

 

「無事に落ち着きましたね…大好きだったものが突然無くなってしまうので、パニックになっても仕方ありません。今は怪我の回復を待ちましょう」

 

「わかりました…」

 

「私達、医師も出来る限りの事はさせていただきます。回復には半年以上かかると思っていてください」

 

 そう言って医者は部屋から出ていってしまう。

 

「奏太…」

 

 蘭は奏太の左腕を握りしめる。

 

「辛いよな…バイクに乗れないのは…」

 

「杉崎くん…今はゆっくりしようね」

 

  そのあともみんな色々話したり、水を飲ませてくれたりした。

 

「少しだけ奏太と二人っきりにさせてもらえませんか」

 

 蘭の提案をみんな了承し、部屋から出ていく。

 

「奏太…アタシだ…わかるか?」

 

「わ…かる…」

 

「少しずつ喋れるようになってきたな…」

 

「怪我が回復したら色んな事をしような…」

 

「蘭…こっちきて…」

 

「うん…」

 

 頑張って左腕で蘭を抱き締めるが身体が痛い。

 

「俺…バイク乗れなくなっちゃった…」

 

「それ以上なにも…言うな…」

 

「でも生きてまた蘭に会えたのが嬉しいよ…」

 

 結構喋れるようになってきた...

 

「アタシもだ」

 

「お医者さんが言ってたみたいにレースに出れなくても日常生活程度の運転ぐらいならできるんだろ?俺リハビリ頑張るよ」

 

「アタシも奏太の力になるから一緒に乗り越えような」

 

「まずは怪我を治す」

 

「アタシが傍にいるからな」

 

 蘭が居てくれるなら頑張れる!こんなところで落ち込んでられない!

 

「当分、デートも行けないな」

 

「治ったらたくさん行こうな」

 

「そうだね!」

 

「今日はもう帰るよ。また来るからな」

 

「また来てね」

 

 蘭は部屋を出ていった。

 

「蘭…」

 

「奏太が前を向いているんだ。アタシも前を向かなくちゃな」

 

「私達も協力するからね!」

 

「なんでも頼ってね!」

 

「いちご、あおい!ありがとな」

 

 

 今は少しずつ頑張ろうな。一緒に乗り越えよう。




次回はドタバタしているお話にしていきたいです。前向きな回にしたいです。
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