英雄になる者たち   作:しろい凛キチ

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第1話

まだ夏の日差しが厳しいある日、俺の日常は突如として終わりを迎えた。

 

『ちょっと待ってくれ。今何つった?』

 

『だから、お前は死んだと言ったんだ。そして、もし未練があるなら転生しないかってね』

 

車に突き飛ばされ、死んだと思ったらいきなり変な場所へ飛ばされ、自称神を名乗る青年と出会っていた。

 

『ふん、どうせ転生したところでろくな世界がねぇんだろ』

 

『転生先は、

1、閃の軌跡

2、フェアリーテイル

3、デート・ア・ライブ

4、ToLOVEる

5、ハイスクールD×D

今のところ、この5つの中からだな』

 

『全部知ってるが、この中でまだマシなのは閃の軌跡だな』

 

『よしそれじゃ、特典を言ってくれ。いくつでも構わん』

 

『なら、

1、能力を作る

2、剣技、銃技、槍技、格闘技の達人の技術を習得

3、どんな状況にも即座に適応出来る判断力

4、閃の軌跡の世界観とその知識

これだな』

 

『なんだ、随分少ないんだな』

 

うっせ、と思いながらさっさと送ってくれと手をヒラヒラと振る。

青年は愛想笑いをしながら説明を続ける。

 

『すまんすまん。それで、送る時間なんだけが……入学の十五年前でいいよな?』

 

『それで構わねぇさ』

 

『それじゃ転生をはじめるぞ。あ、そうそう。君の新しい名前はジン。ジン・ドラグノアだ』

 

そう言うと胡散臭い青年は、何かの呪文を唱え始めた。

そして、最後にこんな言葉が聞こえた気がした。

 

「良い旅を」

 

* * *

 

それからの十五年間、俺は様々な体験をした。

俺が入学するトールズ士官学院があるトリスタにも何度か来たことがある。

そして今日、俺はある人物のツテによりトールズ士官学院へ入学することになった。

 

『本日はケルディック経由、バリアハート行き旅客列車をご利用頂きありがとうございます。次はトリスタ、トリスタ。一分ほどの停車となりますのでお降りになる方はお忘れ物の無いようご注意ください』

 

そんなアナウンスと共に俺の意識は覚醒した。

 

『俺は…寝ちまってたのか……。にしてもなんで今頃転生した時の夢なんか』

 

ふわぁ〜、と大きな欠伸と伸びをして気持ちを切り替える。

駅を出るとそこは以前来た時と何ら変わらない景色が続いていた。

 

『へぇ、さすがはトールズ士官学院。結構でかいな』

 

そんな時、ふと疑問に思ったことがあった。

なんで皆緑や白の制服なのに、俺を含めた数人だけが赤い制服なのだろう、と。

 

『ま、その問題はいずれ分かるか』

 

とりあえずこの問題は置いておき、校舎へ向かった。

 

『ご入学、おめでとーございます』

 

校門をくぐると、ふいにそんな声が聞こえてきた。声のした方向を見ると、緑色の制服を着た小柄な少女と黄色い服を着た太った青年が立っていた。

 

『君が最後みたいだね。ジン・ドラグノア君――でいいんだよね?』

 

『あ、ああ。そうだけど……あんたらは?』

 

『私はトワ・ハーシェル。で、こっちが……』

 

『僕はジョルジュ・ノームだよ』

 

『トワさんとジョルジュさん、ですか』

 

どう見てもトワの方は同級生だよなと思った矢先に補足が入る。

 

『あ、言っておくけど私はキミより一つ年上だからね』

 

『あははは……皆トワを見ると同じような反応をしてくんだよ。っと、いったん申請した品を預からせてもらうよ』

 

『はい』

 

俺は予め案内書に書いてあった通りジョルジュ先輩に太刀一振り、銃二挺、短剣二振り、槍一本を渡した。

 

『――確かに。ちゃんと後で返されるとは思うから心配しないでくれ』

 

『入学式はあちらの講堂であるからこのまま真っ直ぐどうぞ。あ、そうそう――"トールズ士官学院"へようこそ!』

 

『入学おめでとう。充実した二年間を送るといいよ』

 

それから俺は講堂で入学式を終え、特別オリエンテーリングがあるという旧校舎に来ていた。

 

『――サラ・バレスタイン。今日から君たち"Ⅶ組"の担任を務めさせてもらうわ。よろしくお願いするわね』

 

俺達を旧校舎に連れてきた女性、もといサラ教官は旧校舎に入るなりいきなり自己紹介をしてきた。

 

『このトールズ士官学院は、去年までは5つのクラスしかなかったの。それも身分ごとに分けたクラスがね』

 

『去年までは、ということは今年からはこの"Ⅶ組"が立ち上げられた。そしてこのクラスはそれぞれ身分が違い、身分に関係なく揃っている。ということでいいのか?』

 

『まぁそんなところね』

 

『冗談じゃない。身分に関係ない!?そんな話は聞いていませんよ!?』

 

俺がサラ教官に聞くと、緑色の髪をした男子が怒鳴り声をあげた。

 

『えっとたしか君は…………』

 

『マキアス・レーグニッツです!』

 

マキアスと名乗った男子はさらに教官に抗議の声をあげる。

 

『サラ教官!自分はとても納得しかねます!まさか貴族風情と一緒のクラスでやって行けって言うんですか!?』

 

サラ教官が答えあぐねていると、マキアスの隣にいた金髪の男子がさらに続けた。

 

『フン………………』

 

『……君。なにか文句でもあるのか?』

 

『別に。平民風情が騒がしいと思っただけだ』

 

『これはこれは……どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度………さぞ名のある家柄と見受けられるが?』

 

二人の間には一触即発の空気が流れていたので、俺は気を引き締めいつでも止められる体制に入る。

 

『ユーシス・アルバレア。貴族風情の名前ごとき、覚えてもらわなくても構わんが』

 

その名前を聞いたとき、サラ教官以外の全員が驚いていた。

 

『アルバレア家といえば、東のクロイツェン州を治める"四大名門"じゃないか』

 

『だ、だからどうした!?その大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!いいか、僕は絶対に―――』

 

『はいはい、そこまで』

 

これ以上言い争いが激しくならないための考慮だろう。サラ教官は二人の言い争いに割って入るような形で言葉を続けた。

 

『いろいろあるとは思うけど、文句は後で聞かせてもらうわ。そろそろオリエンテーリングを始めないといけないしね』

 

『そのオリエンテーリングってのはやっぱり門のとこで預けた物と関係があるのか?』

 

『あら、いいカンしてるわね。――それじゃ、早速始めましょうか♪』

 

そう言うとサラ教官は後ろへ下がり、右手側にあったボタンをポチリと押した。すると俺達の足元の床が割れ、俺と銀髪の少女以外落ちていった。

 

『――こらフィー。サボってないであんたも付き合うの、オリエンテーリングの意味がないじゃない』

 

そう言ってサラ教官は手に持っていた小型ナイフを投げ、ロープを切った。フィーと呼ばれた少女はめんどくさそうな顔をしながらも素直に落ちていった。

 

『貴方もよ、ジン君』

 

『分かってるさ。だが、もちっとシンプルな仕掛けでも良かったんじゃないか?いや、コレ自体も至ってシンプルだが、もし怪我でもしたら幸先悪いだろ』

 

『これも試練の一つよ。それにもし、これぐらいで怪我してたらこの先やっていけないじゃない』

 

『それもそうか。んじゃちょっくら俺も行ってくるわ』

 

そう言って穴に飛び込もうとすると、サラ教官に呼び止められた。

 

『ねぇ、あなたの名前。やっぱり…貴方、閃光のジン・ドラグノア本人よね?』

 

『………………さてな。案外、その名を語る偽物かもしれねぇぞ?』

 

俺はその次の言葉を待たず、穴へと飛び込んだ。

降りてみるとなぜか黒髪の男子は引っぱたかれ、金髪の少女は怒っていた。

 

『えぇと……聞かなくてもなんとなく察しがつくが、何があったんだ?』

 

『それはリィンのためにも聞かないであげてよ』

 

赤髪の男子にそう言われ、それ以上深くは追求しなかった。

 

『おいあれ、あそこに何か置いてないか?』

 

そんなことを言ってると、案内書と一緒に送られてきた携帯用の動力器が鳴った。

 

「ひとまず、全員無事みたいね」

 

『機械から声が!?』

 

『通信機能がついているのか』

 

「皆が今手に持ってるのはラインフォルト社とエプスタイン財閥が共同で開発した戦術オーブメントの一つ。通称 ARCUS(アークス)よ」

 

『戦術オーブメント……魔法(アーツ)が使えるという特別な動力器のことですね』

 

「そう、結晶回路(クオーツ)をセットすることで魔法(アーツ)が使えるようになるわ。というわけで、各自受け取りなさい」

 

サラ教官が言うやいなや、周りが一斉に明るくなった。

 

「君たちから預かっていた武具と特別なクオーツを用意したわ。それぞれ確認した上で、クオーツをARCUSにセットしなさい」

 

そこでサラ教官からの通信は途切れた。

 

『ふむ……とにかくやってみるか』

 

青髪の女子の言葉をかわきりに皆、自分の武器の元へ行き、クオーツを確認しだした。

 

『これは?』

 

「それはマスタークオーツよ。ARCUSの中心に嵌めれば魔法(アーツ)が使えるようになるわ。さあ、セットしてみなさい」

 

サラ教官に言われた通りマスタークオーツを中心に嵌めると、いきなりARCUSが光だした。

 

『この光は……』

 

「君たち自身とARCUSが共鳴・同期した証拠よ。これでめでたく魔法(アーツ)が使用可能になったわ。他にも面白い機能が隠されているんだけど…………ま、それは追々って所ね。それじゃあさっそく始めるとしますか」

 

サラ教官の言葉と同時に、さっきまで閉まっていた扉が開く。

 

「そこから先のエリアはダンジョン区画になっているわ。割と広めで、入り組んでいるから少し迷うかもしれないけど……無事、終点までたどり着けば旧校舎一階に戻ることが出来るわ。ま、ちょっとした魔獣なんかも徘徊してるんだけどね」

 

そこまで言うと少しの間を置き、宣言した。

 

「それではこれより士官学院・特科クラス"Ⅶ組"の特別オリエンテーリングを開始する。各自、ダンジョン区画を抜けて旧校舎一階まで戻ってくること」

 

それだけ言うと、サラ教官からの通信は切れてしまった。

それからしばらくはどうしようか、ということで話し合いになるかと思ったがそうはならず、結局バラバラになってしまった。

 

『どうする?俺たちはこの四人で行くか?』

 

『うんっ、もちろん!……というより、さすがに一人だと心細いよ』

 

『異存はない。オレも同行させてもらおう』

 

『ああ、俺たちもまとまってた方が対応出来そうだしな』

 

それから俺たちはまず初めに自己紹介をし合うことにした。

 

『ガイウス・ウォーゼルだ。帝国に来て日が浅いから、宜しくしてくれると助かる』

 

『こちらこそ、よろしく。リィン・シュバルツァーだ』

 

『エリオット・クレイグだよ』

 

『最後は俺か。俺はジン・ドラグノアだ』

 

俺の名前を聞いた途端、リィンとエリオット驚いた顔をした。

 

『まさか…ドラグノアって、あの閃光の異名で知られているドラグノアか?』

 

『やっぱ知ってるヤツは知ってんだな。…………そうだ。俺が閃光のジン・ドラグノアだ』

 

『驚いたな。まさかこんなところで本人と会えるなんて……それにしてもその長いのって、武器なの?』

 

エリオットは俺とガイウスが持ってる槍を見ながら質問してきた。

 

『ん?あぁ、これは槍という武器だ。ガイウスと俺のとは少し形状は違うが、まぁほぼ同じようなモンだろ』

 

『へぇ……何だかカッコイイね』

 

『そういうエリオットの武器の方が珍しいんじゃないか?』

 

『杖……いや、動力器(オーブメント)なのか?』

 

『新しい技術を使った武器で"魔導杖(オーバルスタッフ)って言うんだって。入学時に適性があるって言われたから使用武具として選択したんだけど……』

 

『へぇ…ま、何にせよ役には立ちそうだな』

 

『リィンの武器はその太刀か?』

 

『ああ。東方から伝わったもので、切れ味はちょっとしたものだ。その分、扱いが難しいからなかなか使いこなせないんだが』

 

そう言いながらリィンは太刀を前に掲げる。

 

『ほぅ、綺麗な刀身だな。使い手のメンテが良いことが良く分かる』

 

『そういうジンはどんな武器を使ってるの?』

 

『おれか?俺はな……』

 

説明が面倒なので手近にあった台に俺の武器を乗せる。

 

『太刀一振りに銃二挺、短剣二振りに槍一本。これが俺の武具。あとは捕まったり何かあったりしたとき用に格闘技も嗜んでる』

 

『かなり多いな。持ち運びは不便じゃないのか?』

 

『そんなことないさ槍は折り畳めるし、他のはどこにだって仕舞えるしな。っと、そろそろ俺たちも行こうぜ』

 

こうして俺たち四人も出口へ向かって出発した。

そして出口へ向かう途中、

 

『ふむ、そなた達は……』

 

俺たちは少し先に出た女子三人と遭遇した。

 

『遅ればせながら名乗らせていただこう。ラウラ・S・アルゼイド。レグラムの出身だ。以後、よろしく頼む』

 

『レグラムと言えば、かの光の剣匠、ヴィクター・S・アルゼイド子爵が治めている街。そしてあんたの父君がその人、だろ?』

 

『そうだ』

 

『そっちの二人はなんて名なんだ?』

 

俺が問いかけると、眼鏡をかけた女子が礼儀正しく答えてくれた。

 

『エマです。エマ・ミルスティン。私も辺境出身で……奨学金頼りで入学しました。よろしくお願いしますね』

 

『そういやサラがアンタは主席入学者だって言っていたな。勉強面では世話になるかもしれねぇから、そんときゃよろしく頼むわ』

 

『ふむ、随分優秀なんだな』

 

『あはは……その、たまたまですよ。必修の武術にも縁が無くて……こんなものを勧められたんですけど』

 

そう言ってエマは、形こそ違えどエリオットと同じ魔導杖を見せてくれた。

 

『二人の魔導杖の形状が違うのは気になるが、まず自己紹介を終わらせようぜ。それで、アンタはなんていうんだ?』

 

『………………アリサ・R。ルーレ市からやって来たわ。宜しくしたくない人もいるけどまぁ、それ以外はよろしく』

 

『ルーレ市でRというと、やっぱりあの……』

 

『そ、それはいいから、次はアンタ達の番よ』

 

とまぁ少しギクシャクしたところはあったが、女子三人の自己紹介が終わり、俺たちが自己紹介する番になった。

 

『最後は俺か。俺はジン・ドラグノアだ。こいつらには話したし、知ってるやつは知っているだろうが俺は閃光の異名で知られている』

 

俺の自己紹介が終わると、三人は三者三様に驚きを見せてくれた。

 

『そういえばこれからどうしようか?せっかく合流したんだし、このまま一緒に行動する?』

 

『いや、これまで通り私達は私達、そなた達はそなた達で行動しよう。残りの二人を見つけるためにも二手に別れたほうがいいだろう』

 

『了解。何かあったらARCUSに連絡くれ』

 

こうして俺たちは再び別れ、別々に出口へ向かった。

 

 

それから少し行ったところの角で、俺は気配を感じ取り足を止めた。

 

『フィー、だったよな。隠れてないで出て来いよ』

 

『ふぅん。結構鋭いね』

 

意外にも、サラ教官にフィーと呼ばれていた少女は、潔く出てきてくれた。

 

『フィー・クラウゼル。フィーでいいよ。もう半分は超えてるからその調子で行けばいい。それじゃ先に行くね』

 

それだけ言うとフィーは壁を駆け登り、行こうとした。

 

『一人じゃ危ねぇぞ!リィン、俺は彼女を追う。だからお前らは後から来い』

 

俺はまくし立てるように言うと、フィーのあとを追った。

 

『フィー、一緒に行こうぜ』

 

『別に一人でも大丈夫。慣れてるから』

 

フィーはなおも俺の提案を跳ね除けて、行こうとする。それに対し俺は行かせまいと手首を掴んだ。

 

『そういう問題じゃねぇんだよ。…………とりあえず自己紹介だけでもさせろ。俺はジン。ジン・ドラグノア』

 

『ジン……ジンってあの閃光の?』

 

『あぁそうだ。あいつらはともかく、俺くらいなら足手まといにならねぇからいいか?』

 

『………………ん。いいよ』

 

俺はフィーに礼を言うと、一緒に行くことにした。

 

『そういえばフィー、さっき妙な気配を感じなかったか?』

 

『感じたよ。見に行ったら何もなかったけど』

 

『そうか……俺をその場所まで案内してもらえないか?』

 

『ん。分かった。ついて来て』

 

俺はフィーに付いて行き、妙な気配があった場所へ行った。しかし先ほどフィーの言った通り、辺りには何もなかった。

 

『フィー、ちょっと下がってろ』

 

『分かった』

 

フィーに離れるよう指示した俺はその場で短剣二振りを取り出し、

 

『我流剣術 参ノ型伍番・斬昊(ざんこう)!!』

 

――我流剣術 参ノ型伍番・斬昊

様々な剣術を元に我流に編み出した剣技の一つ。短剣一振りで風を起こし気配を読み、二振り目で敵を切りつける。

 

すると、

 

『グオァァァァァァアア!!』

 

切りつけた石像がが魔獣になった。

 

『ほう…ここで登場するってことは、やっぱこのオリエンテーリングの最終試練ってことだよな?フィー、二人で一気に片付けるぞ』

 

了解(ヤー)

 

俺は武器を太刀に持ち替え、戦闘態勢に入る。フィーも二挺の銃剣を構え戦闘態勢に入る。

 

『行くぜ魔獣!我流剣術 "水碧の構え" 壱ノ型肆番・三散(さざん)

 

――"水碧の構え"

これは数ある技を出す際、どの姿勢から放つのが攻撃力が増すのかを試した上で、編み出した構え。右手で持った太刀を肩に乗せ、重心を低くすることにより脚力での瞬発力を生かした攻撃に派生出来るため、あらゆる型に応用が利く。

 

――我流剣術 壱ノ型肆番・三散

相手の懐に一瞬で潜り、三度の居合い切りをお見舞いする。

 

『グギャァァァァァアア!!』

 

魔獣の弱点を狙った攻撃は見事に当たったものの、まだ倒れる気配はなかった。

 

『フィー、バラバラな攻撃じゃ埒があかねぇ!ここは一気にいくぞ!!』

 

俺はフィーと連携をとり、お互いの攻撃の隙間を埋めるように攻撃を仕掛ける。

そしてついに、

 

『グギャァァァ…ア……ァ…………』

 

魔獣は最後の断末魔と共に息絶えた。

 

『オリエンテーリングも案外楽なもんだったな』

 

『こ、コレは!?』

 

そうしているうちに他のⅦ組のメンバーが集まってきた。

 

『おーっすお前ら。とりあえずやるもんやったし、そろそろ出ようぜ』

 

こうして俺達の特別オリエンテーリングは幕を閉じた。

…………はずだった。

 

『ジン、後ろ!』

 

『ん?っぐ!!』

 

倒したと思っていた魔獣がいきなり襲いかかってきた。

 

『ちっ、油断した。おい皆、こいつを速攻で片付ける。手を貸してくれて』

 

そしてみんなの息のあった攻撃の末、ラウラが首をはね飛ばし、今度こそ魔獣は息絶えた。

 

『最後のアレは何だったんだ?今回が初顔合わせのはずだが、まるでお互いの攻撃の間合いが手に取るようだった……』

 

『あれこそがARCUSの真価よ』

 

声のした方を向くと、そこにはサラ教官が立っていた。

 

『いや〜、やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。うんうん、お姉さん感動しちゃったわ』

 

『サラてめぇ、見てたなら助けやがれ!』

 

『まぁいいじゃないの、結果的には勝てたんだから。っと、これにて入学式の特別オリエンテーリングは終了なんだけど……』

 

『待ってくれサラ、特化クラス "Ⅶ組"って一体何を目的としているんだ?』

 

俺がサラ教官に尋ねると、少しの間を置いて答えてくれた。

 

『君たちが"Ⅶ組"に選ばれたのは色々な理由があるんだけど……一番判りやすい理由はその"ARCUS"にあるわ』

 

『コレに?』

 

サラの言葉で俺たちは一斉に自分のARCUSを見る。

 

『エプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した最新鋭の戦術オーブメント。様々な魔法(アーツ)が使えたり、通信機能を持っていたりと多彩な機能を秘めているけど……その真価は"戦術リンク"――先ほど君たちが体験した現象にある』

 

『皆が繋がったような感覚のことか。確かにお互いの行動が把握出来ればあらゆる作戦行動が可能になるな』

 

『そう。……でも現時点で、ARCUSは個人的な適性に差があってね。新入生の中で、君たちは特に高い適性を示したのよ。それが身分や出身に関わらずに君たちが選ばれた理由でもあるわ』

 

『なるほど。理に適ってるな』

 

* * *

 

『トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君たち十人を見出した。でも、やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するクラスやりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟した上で"Ⅶ組"に参加するかどうか――改めて聞かせてもらいましょうか?』

 

そう言われ、皆は少し考え込んでいた。

 

『あ、ちなみに辞退したら本来所属するはずだったクラスに行ってもらうことになるわ』

 

サラは皆の意見を尊重するとばかりにこの件を告げてきた。

 

『――俺はこの"Ⅶ組"に参加させてもらうぜ。どうせここで二年間学ぶことになるんだ。だったら少しは面白そうなクラスのがいいしな』

 

『リィン・シュバルツァー。俺も参加させてもらいます。……両親に我侭を言って行かせてもらった学院です。自分を高められるのであればどんなクラスでも構いません』

 

『――そういう事ならば私も参加させてもらおう。元より修行中の身。此度のような試練は望む所だ』

 

『――俺も同じく。異郷の地から訪れた以上、やり甲斐がある道を選びたい』

 

『私も参加させてください。奨学金を頂いている身分ですし、少しでも協力させていただければ』

 

『ぼ、僕も参加します……!これも縁だと思うし、みんなとは上手くやって行けそうな気がするから』

 

『――私も参加します。テスト段階のARCUSが使われているのは個人的には気になりますけど……この程度で腹を立てていたらキリがありませんから』

 

『私はどっちでもいい。サラが決めていいよ』

 

『だめ、自分の事は自分で決める約束でしょ?』

 

『めんどくさいな。じゃ、参加で』

 

『…………ユーシス・アルバレア。"Ⅶ組"への参加を宣言する。アルバレア家からしてみれば、他の貴族も平民も同じようなもの。勘違いした取り巻きにまとわり付かれる心配もないし、むしろ好都合だろう』

 

『――マキアス・レーグニッツ!特科クラス"Ⅶ組"への参加を宣言する!古ぼけた特権階級にしがみつく、時代から取り残された帰属風情にどちらが上か思い知らせてやる!』

 

こうしてお互いの理由は違えど、全員の参加が決まった。

 

『これで十名、全員参加ってことね。――それでは、この場をもって特科クラス"Ⅶ組"の発足を宣言する。この一年、ビシバシしごいてあげるから楽しみにしてなさい!』

 

そして今日は俺達がこれから生活することとなる第三学生寮に案内され、一日が終わった。

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