無事、カイジンさんが俺たちの村に来てくれることになったが、大臣を殴った事はやっぱりただで済む筈がなく。
ほどなくして、店にカイドウさん達がやって来て俺たちは手錠をかけられ、リムルは鎖で拘束された。
「兄貴、一体何やったんだい?」
やってきたカイドウさんは、そんな風に呆れ顔でカイジンさん聞いてきた。
「………フン!そこのバカ大臣が、リムルの旦那に失礼なことをしやがるもんだから、ちぃとお灸を据えてやっただけよ」
「…大臣相手にそれはまずいだろ。とにかく、こっちも仕事だから裁判まで拘束させてもらうぜ」
俺たちはリムルの入れられていた牢屋の中へと入れられた。
そこには、相変わらず天井に吊るされたまま寝ているゴブタが居た。
「ロングスリーパーかい!」
「…………いやホントに寝過ぎだろ」
一体どれくらい寝てるんだ?
そんなことを思っていると、カイジンが口を開く。
「………俺が短気を起こしちまったばっかりに……お前達まで巻き込んじまったな………すまない。」
「大丈夫。問題ないさ」
「そうそう!親父さんが気にする事無いって」
「………………」
「喋れよ!」
この状態でも喋らないのか……
リムルが、カイジンに質問をする。
「………俺たちは、裁判を受ける事になるのか?」
「そうなるな。まあでも、死刑にはならんさ。罰金くらいで済むだろ。アッハッハッハッ!」
「なら、良いが………」
「それにしてもあの大臣、カイジンさんの事を目の敵にしてるみたいだったが………」
そう言うと、カイジンさんは理由を話し始めた。
カイジンさんはこの国の王、カゼル・ドワルゴに仕えていて、七王宮騎士団の内の一つの総長だったらしい。
ベスターはその時の副官だったらしく庶民出のカイジンが面白く無く、よく衝突しており、そんな時、ベスターが当時進めていた計画の一つ、魔装兵計画が失敗したそうだ。
ベスターは、全ての責任をカイジンさんになすりつけ、カイジンさんは軍を辞めさせられたそうだ。
そんなカイジンさんをドワーフ三兄弟は庇い、一緒に軍を辞めさせられたとの事。
カイジン曰くベスターは悪人ではなく、ただ王の期待に応えようと焦っただけとの事。
そして、カイジンさんだけでなくドワーフ三兄弟も俺たちの村に来てくれる事になった。
そして夜、カイジンさんとドワーフ三兄弟が眠った中ゴブタが目を覚ました。
「あれ………リムル様、シキ様………何かあったんすか………?」
(呑気すぎるだろ………)
「俺たちはちょっと藪用があるから、このまま置いていって良いか?」
「…………えっ?」
「抜け出したかったら、相棒の
「えっ!?ちょっ!酷くないっすか!?」
「安心しろ。用事が済んだら、すぐに迎えに来るから」
そう言って、リムルは粘糸を使ってゴブタの口を塞ぐ。
まあ、確かにゴブタは無関係だから巻き込まないようにしようとしているのだろうが…………そこまでしなくてもよくないかな。
口には出さないけど。
そうして二日後、裁判が始まった。
「ガゼル・ドワルゴ王の、お入りである!」
そう言って、武装国家ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴが入ってくる。
その存在感はかなり強く、彼が強者だというのが嫌でもわかる。
今の俺では、勝つのは厳しいだろう。
そう思いながら見ていると、ガゼル王はなぜか俺の方をじっと見つめている。
「これより、裁判を始める!一同、起立!」
裁判長の言葉で裁判が始まる。
武装国家ドワルゴンの裁判では、王の許しがない限り当事者ですら発言は許されないそうだ。
発言した瞬間、即有罪なんて当たり前らしい。
冤罪も何もあったもんじゃない。
そして、この裁判は日本と同じく俺たちには弁護人が必要となるのだが…………
「このように、店で酒を嗜んでいたベスター殿に対し、カイジン達は複数で暴行を加えたのです」
(これは……)
「…………買収されたな」
カイジンはベスターが悪人ではないと言っていたが、悪人にしか見えないし。
それに、あのクソベスターそこまで重傷じゃなかっただろ。
まずいな…………このままじゃ、罰金どころじゃない。
ベスターが畳み掛ける様に、ガゼル王に進言する。
「王よ!どうか、この者たちに厳罰をお与えください!」
その後、裁判長が木槌を叩く。
「これより、判決を言い渡す!主犯、カイジンには鉱山での強制労働二十年に処す。その他、共犯者には鉱山での強制労働十年に処す。これにてこの裁判を閉廷!」
(まずいな……)
判決を聞き、俺はそう考える。
その処罰だと俺たちの村に来てもらうことはできない。
「待て」
これまでずっと黙っていたガゼル王が口を開き、その場に居る全員の視線が王に集中する。
「……久しいな、カイジン。息災か?」
「ハッ!」
カイジンさんたちは、再び跪く。
俺が膝をついていないことに周りが不満そうだが俺は気にしない。
裁判長が口を開く。
「カイジン。答えてよろしい」
「はっ!王におかれましてはご健勝そうで何よりです」
「……カイジンよ、余の元に戻ってくる気はないか?」
「っ!」
どうやらガゼル王はカイジンの事を気に入っているみたいだな。
すると、カイジンが口を開く。
「…………恐れながら王よ、私はすでに新たな主達を得ました。この契りは私にとって宝です。これは、例え王命であっても覆ることはありません」
「無礼な!」
カイジンの言葉に、周囲にいた兵士達が、武器をこちらに向ける。
念のためいつでも動けるように手錠にひびを入れておく。
「…………で、あるか」
ガゼル王はそう言うと、周囲の兵士達に武器を向ける事をやめさせる。
そうして、王自ら判決を言わたす。
「判決を言い渡す!カイジン及びその一味は国外追放とする。今宵、日付が変わって以降この国に滞在することは許さん。余の前より消えるが良い!」
ガゼル王の慈悲により俺たちは、国外追放で済んだ。
俺たちは退室するのだが、その際にガゼル王の寂しそうな感情が眼に入る。
ガゼル王も寂しいのだ、自身の信頼していた部下が国を離れることに。
その後、俺たちはカイジンさん達の荷造りを手伝う事にした。
荷造りを終えて俺たちは大門の前でカイジン達の別れの挨拶をしていた。
ああそうだ、なんで呼び捨てになっているかというと、カイジンが俺に仕えるのだから敬称なんていらないと言ってくれたからだ。
「兄貴、元気でな」
「迷惑をかけたなぁ。お前も元気で」
「……リムルの旦那にシキの旦那。兄貴を頼む」
「心配ない。こき使うだけさ」
「……判決に則り、カイジン及びその一味は国外追放とする。早々に立ち去れ!」
そう言ってカイドウさん達警備隊は、門の内側に戻り門は閉じられた。
「……じゃあ、行こうか」
「ああ、森の入り口で俺たちの仲間が待っている」
「…………ああ」
そうして、俺たちは歩き出す。
なんやかんやあったが、俺たちは当初の目的を果たした。
それどころか、目的以上の人材を手に入れて村に帰ることとなった。
シキたちの裁判が終わってしばらくした後、ガゼル王はべスターに買収されていた代理人を捕えるよう指示していた。
「…………弁護人は捕らえたか?」
「は!」
捕らえたことを確認するとガゼル王はもう一つの指示を出す。
「厳罰に処せ。あのスライムと人間の動向を監視せよ。決して気取られるなよ。絶対にだ!」
「はっ!」
念を押してまで、王が命令を発する。
寡黙な王が、念を押してまで発する命令に命令を受けた配下はすぐに行動に移した。
「…………あのスライムは、化け物だ!まるで”暴風竜ヴェルドラ”の如く!」
(そして、あの人間……)
ガゼル王はスライムを確かに警戒しているがそれ以上に共にいた人間のことも警戒していた。
(……相手の心の深奥を覗くつもりが、覗けなかったばかりか、
ガゼル王は裁判室から退出する際に向けられたシキの視線を思い起こす。
「……あの人間。どこか不思議な気配を感じた………」
ヴェルドラ以上とまでは言わないがそれに似た気配を。
違いがあるとすればヴェルドラのような荒々しいモノではなくどこか神聖なモノを見たような……
「もし、叶うならあのスライムと人間とは話してみたいものだ…だ……」
投稿時間午前と午後ならどっちがいい(午後の場合何時かまで))
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