あの後、森の入口にて雪菜達と合流した俺達は来るときに通った道筋を村まで同じ日数を掛けて帰った。
目的を想像以上の結果で達成し、これでこれから先問題は少なくなるだろうと思っていた。
しかし…………
「「………………」」
村に帰ってきた俺たちの視界に入った光景に唖然とするしかなかった。おかしいな。
俺たちが村を出た時には嵐牙狼含めて百数匹しかいなかったというのに、俺たちの目にはそれを遥かに超えるゴブリン達が目に見える。
おかしいな……幻覚かな…………
「おお!お帰りなさいませ!リムル様!シキ様!」
村の入り口で呆然としていた俺たちに気づいたリグルドは声をかけてくれるがそれどころではない。
「リグルド…………」
「…………これ、どういう状況なんだ?」
「リムル様とシキ様の噂を聞き、庇護を求めて近隣のゴブリン村から集まってきたのです!」
「「「「「おかえりなさいリムル様ー!シキ様ー!」」」」」
「「……………………」」
リグルドの言葉に再び言葉を失う俺達。
そんなことがあってたまるか。と俺は思ってしまう。
村の復興や発展はまだまだこれからだというのにいきなり数百人も増えては統率が取れない可能性もあるし、家や服といったものの支給も大急ぎでやらなくてはならない。
(…………なあ、リムルさんや。コレ、どうします?)
(どうするって………………今更、追い返すわけにはいかないだろうし…………)
それに俺たちのせいかもしれないし……とリムルが言うので理由を聞くと。
ヴェルドラが消えたことで、上位種族の
それで俺たちのところに来たらしい。
まあ、確かにヴェルドラが消滅したのは俺たちのせい?とも言えなくもないし、仕方ないのか。
結局受け入れることとなり、同時に全員に名前を付けてやることに。
新しく受け入れたゴブリン達の人数は五百弱。
一人で全員に名前を付けるとなると途方もない時間と魔素を消費するため二人で分担することに。
名付けはリムルに一任するつもりだったのだが、見透かされていた。
リムルは今回の名付けではスリープモードにはギリギリならなかったが、魔素が回復する間は動けなくなっていた。
数週間後。
カイジン達の協力の元、本格的な開拓が漸く開始された。
約五百名のゴブリンを配下に迎え入れた結果、村のスペースが足りなくなってしまったため急いで森を開拓して住居を立てられるスペースを確保し、カイジン達の教えの元、村の発展が始まった。
そして俺は今そんな村の状態を雪菜と一緒に見て回っている。
「鉄は熱いうちに打てってな!ガーハッハッハッ!」
カイジンは、ゴブリン達に、鍛治の技術を。
「なめす事で、防具の耐久性が上がるんだ。」
ドワーフ三兄弟、長男のガルムは、防具の作成方法。
次男のドルドは、細工の技術、三男のミルドは、建物の建築技術を伝えている。
カイジン達のおかげで俺たちの村はどんどん発展していっている。
「……この調子でこれからも発展していってくれるといいけどな」
なんの問題もなく発展してくれるならそれ以上にいいことはない。
「はい!じゃあ、オイラが、お手本を見せるっす!」
「ん?」
ふと、ゴブタの声が聞こえてきたのでそちらの方を向くと、ゴブタは同い年くらいの子たちになにかを教えようとしていた。
ゴブタが踏ん張るようにすると、ゴブタの影から黒霧とともに嵐牙狼が現れる。
「おお……ホントにできたんだ……」
そう、なんとゴブタは嵐牙狼族の召喚が出来る様になっていたのだ。
なんでも俺たちに忘れ去られそうになっていた時に助けてほしいと必死に祈っていたら、嵐牙狼の召喚に成功し、嵐牙狼の力を借りて無事に脱出してきたとのこと。
意外とゴブタは才能のある人材なのかもしれない。
「おお、召喚した」
「ん、そっちの用事は終わったのか」
リムルは早朝から嵐牙と一緒に新たに獲得した『スキル』の確認に行っていたのだ。
「それよりも、ゴブタの奴やるな」
「ああ…………教える側の才能は無さそうだけど」
「だな」
ゴブタの説明は全て擬音語と感覚的表現の為、教えてもらう側の全員が頭に?マークを浮かべている。
これは苦労しそうだな。
「リムル様ー!シキ様ー!」
そんなことを思っているとリグルドが駆け寄ってくる。
ちなみに名付けの際、リグルドをゴブリン・ロードからゴブリン・キングに格上げした。
他の村長の纏め役になってもらうためだ。
……ゴブリン・キングになったおかげなのか、また筋肉量が増した気がする。
「どうした、リグルド?」
「何かあったのか?」
「はい!リグルら警備班から、連絡がありました!森の中で不審な者達を発見したそうです!」
「不審な者達…………魔物か?」
「いえ、人間です」
「人間………?」
「領土拡大を狙った、どこかの国の調査隊かもしれません!」
なるほど、確かにその可能性は考えていなかったわけじゃない。
カイジン達から聞いた話によると、このジュラの大森林はヴェルドラがいたことで大陸でも開拓の進んでいなかった地。
そしてヴェルドラが消えた今、この大森林は領土を拡大するには最高の土地というわけだ。
「リグルドたちはまだ偵察中?」
「はい」
「なら……リグルドたちには一旦帰還するように言ってくれ、俺が行く」
「よろしいのですか?」
「ああ、いきなり魔物が接触してきたら警戒するだろうし、人間の俺が出向いた方がいいだろ」
「了解しました!」
「俺も一緒に行くぞ」
まあ、スライムなら問題ないだろうしいいや。
「雪菜は影の中に居てくれ」
「はい!」
俺とリムルは魔力感知を使いその人間達の元へと向かう。
しばらくすると、その人間達を発見しとりあえず木の上から観察することにする。
人間達は四人いてそのうち二人が男性、二人が女性。
何故か、デカい蟻達に襲われている。
「あの蟻って確か……
「で、あれが報告にあった人間か。冒険者か?」
「多分な」
冒険者たちは必死に逃げながら何かを言い合っている。
多分、誰かが巣に何かしたんだろう。
それで追われてるってところか。
すると、最後尾を走る仮面をつけた女性が腰に下げていた剣を抜き、その刀身に炎を纏わせ
「へえ……やるね」
「ああ……って危ない!」
どうやら、一匹仕留めそこなっていたようで女性は迎え撃とうと剣を構えるも、突然胸を押さえながら苦しみだし、その場に膝をついた。
そこにリムルが飛び出していって黒い落雷で蟻を消し飛ばした。
「…………威力強…」
そう思っていると、もう一匹後ろからリムルたちを襲おうとしていたのが見えたので弓矢で頭を消し飛ばす。
動かなくなったのを確認した後、リムルのところに降りる。
いきなり現れた俺に冒険者達が驚く。
「詰めが甘い」
「悪い。助かったよ」
「「「…………人とスライム?」」」
その指摘にリムルがムッとする。
「スライムで悪いか?」
「ああ、いや………スライムと人が一緒に居るなんて…」
「……喋るスライム…」
「信じられない………」
「ほら、そこのお姉さんのだろ?悪いな、怪我してないか?」
そう言って、リムルは自分の上に乗っかった仮面をその女性に渡す。
「ええ、大丈夫。」
その人の顔には見覚えがあった。
その女性はドワルゴンの夜の蝶でのリムルの運命の人の占いで見た女性だった。
あの後、冒険者達を俺たちの村に招いてリグルドに客人用の仮設テントに案内させてから再び向かっていた。
「それで、あの四人はどうしてるんだ?」
「はい…………それなんですが……………」
すると、テントからやかましい声がしてくる。
「ちょっ!それ、俺が狙ってた肉!」
「酷くないですか!?それ、私が育てていたお肉なんですけど!」
「旦那方!こと、食事においては、譲れないでやんすよ!」
外にまで声が漏れていた。
どうやら、焼肉を食べているようだ。
「すみません………腹ペコだと言うので、食事を………」
「おお!良いじゃないか!」
「困っている人を助けるのは、良い事だよ」
「ははっ!ありがとうございます!今後とも、精進したいと存じます!」
「うんうん」
「リムル様、シキ様。どうぞ」
リグルが天幕の布を上げてくれるので、中に入ると鉄板を囲い食べている四人。
そのうち三人は必死の形相で焼肉を食べている。
そういや、あの三人どこかで見たことあるような………………………………………………………………………………ああ、ヴェルドラの封印されてた洞窟で見たあの三人組だ。
それともう一人はさっき戦っていた女性。
仮面を付けたままの状態で器用に焼肉を食べていた。
「お客人。大したもてなしは出来んが寛いでおられますかな?改めてご紹介しよう!こちらが我らが主達、リムル様とシキ様である!」
「「「え?スライムが!?」」」
一同揃って驚愕の声を上げている。
まあ、仮面をつけた女性だけはお肉を食べ続けていたが、この三人の反応は御もっとも。
俺も当事者だったら同じ反応してたわ、多分。
「初めまして!俺はスライムのリムル!悪いスライムじゃ無いよ!」
そんなことを思っていると突然リムルが某有名RPGのスライムのセリフを言う。
知っている人はいないだろうから反応はないだろうと思っていたが、リムルのセリフを聞いた仮面の女性が思わず噴き出した感じだった。
(このネタを知っている?)
「これは失礼致しましました。まさか、魔物に助けて頂けるとは思ってもいませんでしたが、助かりました!」
「あっ!お肉ありがとう御座いますぅ。とっても美味しいですぅ!」
「どうも助かりやした。こんな所でゴブリンが村を建設中とは思いやせんでした……」
三人がそれぞれ感謝を述べる中、反応を示した仮面の女性はマイペースに食事を続けていた。
とりあえず、最初から気になっていたことを聞いてみる事に。
「それで、あなた達は一体何をしにここに来たんだ?」
「俺は、カバル。一応このパーティーのリーダーをしている。こっちが………」
「エレンです〜!」
「ギドと言いやす。お見知り置きを」
「………で、この人は行く方向が同じという事で、臨時パーティーになった……」
「…………シズ」
自己紹介を終えた後、リーダーのカバルは包み隠さず来た理由を全て話してくれた。
ジュラの大森林の周辺の国家の一つ、ブルムンド王国。
そのブルムンド王国のギルドマスターが三人にこの森周辺の調査を依頼したらしい。
やはり、ヴェルドラが消えた影響は、かなり大きいようだ。
話し終わった後、とりあえず疲れているだろうからと彼らには泊まっていってもらうことにした。
その夕方。俺達は気になることもあったので、丘の上から景色を見ている彼女に話しかけた。
「ちょっと良いかな?聞きたい事があるんだけど……」
「スライムさん」
シズはリムルが最後まで言い終わるよりも前にそう言って、続けた。
「さっきのはゲームの台詞でしょ?」
「え?」
「”悪いスライムじゃ無いよ”って」
シズさんがリムルを抱き上げる。
「私はやったことないけど、同郷だった子から聞いたことがあってね。スライムさんも日本から来たの?」
「うん」
「君も?」
「ああ」
「そっか、会えて嬉しいよ」
シズさんは仮面を外して優しい笑顔を見せた。
「スライムさんはどうしてこっちに?」
「それがね...刺されて死んじゃってさ。気が付いたらこんな素敵な姿に」
「そっか、スライムさんは転生者なんだ。シキ君は?」
「俺は車に引かれそうになっていた子を助けそうとして……気づいたらこの世界に転移した」
「シズさんは違うの?」
リムルがそう質問すると、シズさんは表情を暗くしながら答えた。
「私は、召喚者だから」
召喚者……たしか何人もの魔法使いで何日も時間を掛けて呼び出すんだったか。
召喚者は兵器としての役割を期待され、召喚主に逆らえないように呪いをかけられる………
「シズさんはいつ召喚されてきたの?」
そんな風に考えている中リムルはシズさんに質問する。
「ずっと昔、東京にいた頃、空にたくさん飛行機が飛んできて、空から爆弾が降ってきて、街も燃えて炎に包まれたの」
「戦争?」
「うん、その時に」
……戦争か…………実際に体験したことはないし、学校の授業程度でしか当時の状況を知らないから何とも言えないが………………彼女の表情から察するに、本当に酷かったんだろう。
「そうだ!面白い物を見せてやるよ!」
「面白いもの?」
暗くなった空気を変えようとしたのかリムルは『スキル』で何かを始める。
「うわぁ……」
すると突然俺とシズさんの周囲に、とある光景が映し出される。
映し出されたのはどこかの部屋で、パソコンの画面に何かが映っているのが見えた。
それは最近どこかで見たような………………
「……エルフさん?」
「………………リムル?」
「うわぁぁ!違う!そうじゃない!そうじゃない!」
「綺麗だったよ?」
「違う、違う!こっちこっち!」
リムルが窓の外を指すと視界が映り荒れた地が映し出される。
荒れ果てた大地は人の手によって片付けられていき復興し街ができる。
それからどんどんと発展していき景色は綺麗な現代の夜景へと変わる。
「凄い……絵葉書で見たニューヨークの摩天楼のよう……」
「戦争が終わって平和になって町も経済も発展したよ」
「そっか。良かった……お母さんにも見せてあげたかったな」
「俺たちは。こっちの世界でも皆が平和に暮らせる町を作りたいと思ってるんだ」
「素敵……そうなると良いね」
シズは目を輝かせて、そう言ったが,次の瞬間、何やら苦しそうに胸を抑えた。
あの時と同じように息が荒くなり丸くうずくまっている。
(……どういうことだ)
シズさんに解析を掛けた俺の視界に妙な光景が映る。
体内の魔素が乱れている。
だがそれもすぐに収まっていく。
「シズさん!?大丈夫!?」
「ええ、多分.......」
リムルが問いかけるとそう言って仮面をつける。
同時に魔素の乱れもほぼ収まった。
いったい何だったのだろう。
「リムルとシキの旦那!ちょといいかな?新しく家を立てる場所の相談がしたいんだが……」
「わかった。じゃあシズさん、また」
「うん」
声をかけて来たカイジンと共に俺達は村へ戻ることにした。
だが、俺の頭にはさっきのシズさんの光景が離れなかった。
紅四季は十八歳の誕生日以来、おかしな夢ばかり見るようになってしまった。
目覚めると夢で見たモノは、そんなものを見たような?みたいなよく覚えていない感覚になるのだが、それでもどこか懐かしいような、見覚えがあるような、そんな感覚がしてならない。
異世界に転移してからも頻度こそ少なくなったが、この夢は続いており、実に不可解な夢と感覚だ。とシキは思っている。
投稿時間午前と午後ならどっちがいい(午後の場合何時かまで))
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午前
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午後 12時
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13時
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14時
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15時
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16時
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17時
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18時
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19時
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20時
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23時