あれから三日が経過した。
みんなの働きもあって村の復興も進みほぼ元通りの状態になっている。
カバルたちはまだ村に滞在しており、村も復興も協力してくれたため感謝している。
そして問題のシズさんだが…………
「まだ目を覚まさないな」
「……ああ、だが目を覚ましてもこのままでは…」
「ああ、分かってる」
シズさんはあの戦いの後、ずっと眠り続けていた。
そして、これはあの後シズさん調べて分かったことなのだが、どうやらイフリートとの同化がシズさんを延命させていたようだ。
そのおかげでシズさんは五十年以上の歳月を生きることが出来た。
だが、今現在イフリートはシズさんの体から分離し、そのせいでシズさんの生命力は著しく低下。
そして今も減り続けている。
「……なんとか、ならないのかな………」
「…今の俺達じゃどうすることもできない」
可能性があるとすれば、もう一度イフリートを宿らせることくらいだが。
それは望まないだろう。
「……少し外に出ている、何かあったら教えてくれ」
そう言って、仮設テントから出る。
リムルの気持ちはわからないわけがない。
俺も出来ることなら生きていてほしいと思うし、助けられるのなら助けたい。
だが、どうしようもないのが現状だ。
「……歯痒いな」
何かできないか。と考えながら村の様子を確認した後、自身のテントに戻りベッドに腰掛ける。
結局何も思いつかず。
どうすることもできないということを再確認する羽目になった。
「はぁ……」
ため息をつく。
結局のところ俺達にはどうすることはできず。
彼女がこのまま眠りにつくのを看取ることしかできない。
そんなことを思いながら項垂れていると視界の端で何かが光ったように見えた。
ふと気になって顔を上げ、光ったものを探す。
この部屋の中で光りそうなものといえば、机の上に置いた水晶球くらいだろう。
近づき、手に取ろうとした瞬間――
「!」
銀色の水晶球が淡く光を放った。
窓からの光の反射かと思ったが、そうではない。確かに水晶球そのものが輝いている。
光はみるみる強くなり、部屋全体を覆いつくした。
仰向けに倒れている人が見えた。
姿は霞んでいて輪郭すら曖昧だが、俺と同じくらいの年頃に見える。
その体はボロボロで、息も絶え絶えだった。
傷は深く素人目で見ても致命傷を負っていることがわかる。
もう助からない。
俺はそう思った。
倒れているそいつは、何を思ったのか。
おもむろに片手を上にあげ、何かを始めた。
すると、体が淡く光りだした。
光は強くなっていき体から溢れだし六色の光の球体となった。
赤・青・金・緑・銀・紫。
それぞれの色をした球体は上に登っていき弾けるようにして飛んで行った。
『…―……―…―――……――』
その光景を見たそいつは、その男は最後に何かを呟いて。
満足そうな表情で、消えていった。
あまりの眩しさに瞑っていた目をゆっくり開くと、そこは見慣れた部屋の中だった。
周囲を見渡すが特に変化はなく目を瞑る前と同じだ。
水晶球は先ほどのような強い光を発してはおらず、淡く光るだけ。
「何だったんだ、今の………」
目を閉じているはずなのに、映像だけが鮮明に浮かび上がる。
まるで夢の中で自分の記憶を見ているような感覚だった。
そして気がつく。
水晶球から微かに、暖かい温もりような、不思議な“力”が流れ出していることに。
まるで先ほど見た六色の光の一つが、球の内側に閉じ込められているかのように。
俺は思わず、手を伸ばしていた。
そっと水晶球に手をかざすと、指先からじんわりと温かい感覚が伝わってくる。
「これは——」
シキが退室してから数時間後にシズは目を覚ました。
「ねえ、スライムさん……聞いてくれないかな?」
そう言って、シズは自分語りを始めた。
戦争時に召喚者として召喚された事。
無理矢理、イフリートを宿らされた事。
暴走して、大切な友人を手に掛けてしまった事。
勇者に救われてたこと。
勇者が自分のもとを去った後、頑張ったこと。
冒険者を引退して学校の先生となったこと。
それをリムルは静かに聞いていた。
「悟さん……お願いを聞いてくれないかな?」
「ああ、何でも言ってくれ」
「私を——食べて……」
「!」
「私は、この世界が嫌い…でも……憎めない。まるで……あの男のよう…だから…だから…この世界に……取り込まれたくない……最期のお願い。私を君の中で眠らせてくれないかな?」
シズさんの最後のお願いに答えを出せないでいると、テントの中に誰かが入ってきた。
「……シズさん。目が覚めたんだな」
中に入ってきたのは外に出ていたシキ。
その目には出ていく前にはなかった何か強い意志が宿っている。
テントに入ってきたシキの姿を見て、シズはわずかに微笑む。
「シキ君……」
弱々しい声。それでも、どこか安心したような響きがあった。
「話は、聞いていた。……悪いシズさん、その願い……俺は聞けない」
「……え?」
リムルが驚いたようにシキを見る。シズもまた、わずかに目を見開いた。
「俺は……あの日からずっと考えていた。どうすれば、助けられるのか。どうすれば、救えるのか」
シキはゆっくりとシズに近づき、ベッドの傍に膝をついた。
「そして……力を手に入れた」
彼の手のひらが淡く光を帯びる。
緑とも金ともつかぬ温かな輝き。見る者の心を包み込むような“生命の光”。
「それは……?」
「『ユニークスキル』《
先ほど水晶球、《シルバーオーブ》を取り込んだ際にシキが入手したオーブの中に封じられていた『スキル』。
「……ありがとう。でも、もう充分だよ。最後に二人に出会う事が出来て……………」
「本当にいいのか。あなたには、心残りがあるんじゃないか?」
「…………」
「あなたは十分に辛い想いをしてきた……なら、その分幸せにならなきゃいけない。あなたにはその権利がある」
「静江さん。俺も、静江さんに生きて欲しい……助かる可能性が少しでもあるなら、賭けてみないか?」
シズは瞳を閉じ、唇を噛みしめた。
その目元には、薄く涙がにじんでいる。
「……まだ生きたい……」
震える声が、テントの中に響く。
「あの子たちの成長を見届けたい……あの子達が幸せに過ごす姿を見たい……見るまでは……生きていきたい」
シズはその瞳に生への強い意思を宿しながらそう言う。
シキはシズの手をそっと握り、真っ直ぐにその瞳を見つめた。
「……分かった。シズさんがそう言うのなら」
彼の手のひらから再び光が生まれる。
やわらかな白金の輝きとなって広がった。
その光は焚火のように暖かく、見ているだけで胸の奥が安らぐようだった。
(《
光がシズの全身を包み込む。
頬は赤みを取り戻し、冷え切っていた体にじわじわと血の巡りが戻っていく。
弱々しかった胸の上下が、次第に力強くなっていった。
生命力回復——これは、文字通り発動対象の生命力を回復させる。
生命力の減っている人間などに使えば元気になり、枯れている植物などに使えば活性化する。
ただし、そのモノの上限以上の生命力の増加は不可能。
そのため、体の老化による生命力の低下はその老化した体の上限までしか回復させることしか出来ない。
本来なら老化によって減った生命力は回復できない。だがシズはイフリートの影響で肉体があまり老いておらず、回復の効果を最大限に受けられた。
やがて光が収まると、シズの瞳がゆっくりと開いた。
その中には、先ほどまでなかった力強い光が宿っている。
「……あ……」
かすかな声。けれど確かに生きている証だった。
シズは自分の手を見つめ、そして胸元にそっと触れた。
胸の奥で心臓が力強く脈打っているのをはっきりと感じる。
「……体が……軽い……力が戻ってきてる……」
「ああ……これで、普通の人間の寿命と同じくらいまでは生きることが出来るだろう」
椅子に力なく座り込むシキ。
魔素の消費自体は三分の一程だが、それ以上に気を張り詰めていたのもあり、一気に疲労が来たのだろう。
「……シキ君……」
シズの目が潤む。
「本当にありがとう……」
「どういたしまして……なれないことをしたから少し疲れた」
「お疲れ様。これでもう大丈夫だな。シズさん」
そう言ってリムルがシズを見やると、シズは小さく頷いた。
「……ええ。こんな奇跡があるなんて思ってもみなかった。……私はまだ生きていける。子供たちの未来を……見届けられる」
その瞳には、かつてなかったほどの強い光が宿っていた。
しばしの沈黙。
暖かな空気がテントの中に流れる。
「……ありがとう。二人とも」
シズは震える声でそう言った。
その言葉には、これまで背負ってきた重荷が少しだけ軽くなったような響きがあった。
「さてと……」
リムルは軽く伸びをし、場の空気を切り替えるように明るい声を出した。
「シズさんが元気になったんだし、これからのことも考えないとな」
「ふふ……そうだね」
シズは微笑む。頬に赤みを取り戻したその笑顔は、以前よりずっと柔らかかった。
遥か北の果て、凍てつく氷雪に閉ざされた城。
氷の城の大広間、その奥に安置された宝玉――《レッドオーブ》が、不意に淡く光を放った。
その瞬間、城の中にいた存在がわずかに反応する。
氷雪のような美しい美貌を持つ少女が流れる白銀の髪を揺らしながら、じっと宝珠を見つめた。
「……光ったわね」
冷ややかな声。だがその瞳には、ほんのわずかな驚きが宿っていた。
同時に、かつて心を寄せた人の姿が脳裏をよぎり、かすかに微笑む。
思い出の温もりが、氷の心を一瞬だけ柔らげた。
そして、その横で、背凭れに身を預ける男が薄く笑みを浮かべる。
氷の城の主である紅い悪魔。
「ほう……」
赤い瞳が、揺らめく光を映し出す。
紅い悪魔は退屈を紛らわせるように脚を組み、指先で顎をなぞりながら続ける。
「ひとつのオーブが取り込まれた……その余波がここまで届くとはな」
「……運命は回り始めた、ということかしら」
白銀の少女の声は、氷のように冷たく、しかしどこか予感めいた響きを帯びていた。
紅い悪魔はその言葉に小さく笑い、光を放つオーブから目を逸らさない。
その笑みには、遠い昔、共に戦い、語り合った友の面影が微かに映っていた。
懐かしき日々の記憶が、静かに胸を温める。
「……面白くなりそうだ」
静謐な氷の城に、紅き宝珠の光が妖しく脈動する。
それは新たな波乱の訪れを告げる、序章にすぎなかった。
『ユニークスキル』
《
■■がこ■■で■■きた命に関す■■■が『スキル』として■■■■■■。
・権能:無限再生・生命維持・生命力回復・生命力譲渡・完全治療・不老
・生命維持
自身の危機的状況において一度だけ命を維持することが出来るスキル。
一度発動すると十二時間のクールタイムがある。
・生命力回復
文字通り生命力を回復することが出来るスキル。
生命力の減っている人間などに使えば元気になり、枯れている植物などに使えば活性化する。
ただし、そのモノの上限以上の生命力の増加は見込めない。
同時に何人もの回復は可能だがその分魔力の消費も大きくなるため、今のシキでは最大三人までが限界。
(軽傷三人の場合は余裕が生まれるため三人目以降の同時回復も可能)
・生命力譲渡
生命力を他者に分け与えることが出来るスキル。
自身から他者に分け与えること以外に他者から他者や他者から自分に分け与えることも可能。
ただし、譲渡先のモノの上限以上の生命力の譲渡は見込めない。
・完全治療
この世に存在するものであれば、生きている限り触れるまたは手をかざすだけで完璧に治療することが出来るスキル。
同時に何人もの治療は可能だがその分魔力の消費も大きくなるため、今のシキでは最大三人までが限界。
(軽傷三人の場合は余裕が生まれるため三人目以降の同時治療も可能)
・不老
老いることが無くなり寿命という概念が無くなるスキル。
文字通り不老。
ただし、死なないわけでは無い。
投稿時間午前と午後ならどっちがいい(午後の場合何時かまで))
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午前
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午後 12時
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13時
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14時
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15時
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16時
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17時
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18時
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19時
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20時
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22時
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23時