第一話 出会い
暗闇の中で、どこかから、声が聞こえる。
「——僕は——この世界——」
聞いたことはないはずなのに。
「——お前——魔王に———」
とても、懐かしいような。
「——いつか——俺様は——」
決して、忘れてはいけないような。
そんな、声が。
「——あ——て———る——」
また、別の声が聞こえる。
「——いし————て———」
ああ、とても、とても
「——愛してる」
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……
『目覚めよ。人間』
………………ん、なんだよ。
『目覚めるがいい。人間』
………うるさいなあ。
『ええい!いい加減起きんか!!』
…ああ、もう!
「うるっさいわバカ!」
勢いよく体を起こして文句を言う。
まだ少し眠気があって視界が少しぼやけている。
てか、ほんとにうるさい!人が心地よく寝てるんだから起こすなよ!
『ほう、我に向かって”馬鹿”だと…いい度胸ではないか!久方ぶりの客人だと思って下手に出てやったが、どうやら死にたいらしいな!』
あ、ヤバいかも。
そう思った瞬間、鼓膜が割れてしまうかと思うほどの咆哮と萎縮してしまうほど威圧が俺を襲った。
耳を両手で押さえながら俺はとりあえず謝罪する。
「すみません!悪気はなかったんです!寝ぼけてたんです!」
よくよく考えれば初対面の、人?にバカは失礼すぎる。
これは俺が悪い。
『ふはははははっ!いいだろう許してやろう。人間』
許された。よかった。
ほっ、と胸をなでおろしつつとりあえず立ち上がり前方の方を少し見渡す。
どうやらここは洞窟のようだ。
ところどころに目の前に湖があり壁や天井に水晶?いや鉱石?かな、そういったものが生えている。
まるでゲームとかで見るような洞窟だ。
え、てか、待ってなんで俺こんなところにいるんだ?
「えっと……」
たしか、高校からの帰り道で車に跳ねられそうになっている子供を助けようとして、それで……
『おい、こちらを向かんか』
あ、忘れてた。
「ああ、はい。すいま、せ、ん」
声のした後ろに俺は振り返る。
するとそこには……
「ド、ドラゴン……!?」
黒光りする鋼よりも硬そうで柔軟性も兼ね備えているであろう鱗に、巨大な一対の翼を持つ。
俺なんかよりも何十倍デカいドラゴンがいた。
まさかの存在に俺は言葉を失うしかなかった。
『驚いておるな、だがいいだろう。我が名は暴風竜ヴェルドラ。この世に四体のみ存在する"竜種"が一体であるクァーハハハハ!!』
(……あんまり大きい声出さないでほしいな。うるさい)
急な名乗りとうるささに思わず口に出そうになったが、そんなことを言えば今度こそ消されかねないのでとりあえず黙る。
すると何処からかわからないが、水の塊のようなモノが勢いよく飛んできてヴェルドラを覆っているバリアのようなモノにぶつかって弾かれてこっちの方に転がってきた。
(……スライム、か?)
なんかぷよぷよしてるし。弱そうだし。
『ほう、今日は客人が多いようだ。聞こえるか?小さきものよ』
(え、コイツにも話しかけんの?)
返事とか無理だと思うんだけど、スライムだし。
てか、まず自我あるの?この手のモンスターって本能とかで動くものじゃ無いの?
そう思いながらスライムを観察していると、なにやら周りを見るような感じでプルプル動いている。
『おい!聞こえているだろう?返事をするが良い!』
(うっさい!ハゲ!)
「あ、返事した」
頭の中に直接伝わってくるような感じでヴェルドラとは違う声が聞こえてきた。
てか、ハゲってこの感じめっちゃデジャブ。
次のことを予測して耳を両手で塞いでおく。
『ほ、ほほぅ!我の事を"ハゲ"呼ばわりするか…そこの人間といい、いい度胸ではないか!どうやら死にたいらしいな!』
案の定キレて、俺の時と同じように咆哮と威圧を放つヴェルドラ。
(すいません!すいません!思ったことが伝わるとは思っておらず!自分、口もなく目も見えない状態でして!)
それを聞いてヴェルドラは高笑いする。
てか、めっちゃ流暢に喋るじゃんこのスライム。
『面白い。我の姿を見ての発言かと思ったが、目が見えないのか。よし、見えるようにしてやる』
(は?)
『ただし、条件があるがなどうする?』
(どんな条件ですか?)
『簡単だ見えるようになったからと言って我に怯えるな。そして、また話をしに来い。それだけだ、お前にとっては良い話だ』
(それだけ、ですか?)
『うむ。実はな、三百年前にここに封印されてな。それから、暇で暇でどうしようもなく退屈しておったのだ』
(あ、どうりで)
さっきから嬉しそうにしていると感じると思った。
これは、俺の特技?と言っていいかはわからないけど。
俺は昔から目がものすごくいい。
昔から他の人が見えている所の数キロメートル先の距離までは余裕で見えていたし、感覚的にではあるけど視てる相手がどんなことを考えているのかが分かることが出来た。
あと、心霊スポットとか行くと幽霊とかたまに視えてたりもした。
……わりといるんだよねああいう所。
もう慣れたし、視えないようにも出来るようになったし。
それでさっきから、表情には出てないけど、コイツなんか嬉しそうにしてるなーとは思っていたんだけどそういうことね。
〔封印ってのが気になりますけど……わかりました喜んで!〕
『よかろう、《魔力感知》というスキルがある。使えるか?』
(いや、使えないです)
『周囲の魔素を感知する『スキル』だ』
そんな簡単に使えるものなのかソレ。
てか、スキルとかあるんだ。
そういえば俺も目が覚める前になんかそんなこと言ってたような。
確か《千里眼》と《
あと、耐性?とかで《熱変動耐性ex》、《物理攻撃耐性》、《状態異常無効》だったな。
『耐性』はなんとなくわかるけど、『スキル』は何ができるのか正直わからない。
(わかりました!とにかくやってみます)
そう言ってスライムは踏ん張る?ような感じ何かしている。
(お、おお!見える!見えるぞ!)
どうやら出来たみたいでその場で嬉しそうにジャンプするスライム。
その後、後ろの方にあったらしい湖の方へ向かっていく。
「…え、そんな簡単に出来るの?」
『お前もやってみたらどうだ?』
「……試しにやってみるか」
(取り敢えず、目に見えないものを見るような感じで……)
凝視してみると、この空間全域になんか色のついた霧のようなモノが見える。これが魔素かな?
《『エクストラスキル』《魔力感知》を獲得しました》
「え、なんか声聞こえてきたんだけど」
『それは『世界の声』だな』
「世界の声?」
『世界の改変やスキルの獲得、『進化』が行われた際に、『世界の言葉』が響くのだ』
なるほど。じゃあ、俺があの時聞いたのも世界の言葉ってことか。
『進化』っていうのも気になるけど、まあ今はいいか。
『どうだ?』
(あ、はい。出来ました。ありがとうございました!……ん?え、えええ!!ド、ドラゴン!?)
スライムの体が驚愕していることを表している。
てか、本当に器用だな目みたいなのが飛び出てる。
(えっと、君は?)
「俺は……
(おお!その名前、もしかして日本人か?)
「そうだけど……」
なんで、スライムが日本って言葉を?
『おい、我を除け者にするでないわ』
おっと忘れてた。
(あ、す、すいません)
『まあいい。そこの人間には言ったが改めて自己紹介しよう。我が名は暴風竜ヴェルドラ。この世に四体のみ存在する"竜種"が一体である。フフフ、フハハハハハ!!』
…………マジ、うるさい。
その声量もう少し押さえてくれないかな。
『おい。約束は覚えているな?』
(も、勿論っすよ!怯えてなどいません!じゃあ、また話しに来ますんで!)
「めっちゃ嘘だし。てか、逃げようとすんなよ」
逃げようとしてたんで、とりあえず捕まえてヴェルドラの前まで連れていく。
『ふむ、実に珍しい。スライムは本来、思考もしない低位モンスター。それなのに自我がある……ユニークか?』
ああ、やっぱりこのスライムが異常なだけなんだ。
(ユニークと言いますと?)
『異常な能力を持つ個体のことだ』
(ちょっとよく分からないっす。その自分人間だったんですけど刺されて死んで気が付いたらこんな姿になってて)
『ふむ、転生者か』
「へー、てことは前世日本人だったり?」
(おお、なんでわかったんだ?)
「いや、さっき俺に日本人?って聞いてきたからそうなのかなって」
てか、転生って本当にあるんだ。
漫画とかアニメの世界だけだと思ってた。
まあ、俺も転移者?ってことになるのかな?
『お前、ものすごく稀な生まれ方をしたな。異世界からやってくるものはそこの人間のようにたまにいるが、転生者は我の知る限り初めてだ。魂だけで世界を渡ると普通は耐えられないからな』
「異世界からこの世界に渡ってくる人間って他にもいるのか?」
『うむ、”異世界人”と呼ばれている。そういう者たちは世界を渡る際に特殊な能力を会得するらしい。お前は違ったか?』
「ああ、いや。そういわれると心当たりがあるかな」
絶対にアレじゃん。けど、使い方分かんねー。
他に日本人の人とか居るんだったら会って教えてもらおうかな。
スライムの方も同じようなことを考えているようだ。
(ちょっとその異世界人を探して会ってみようと思います。そうだ、一緒に行かないか)
「いいけど……」
チラッとヴェルドラの方を見る。
『なんだ、もう行ってしまうのか……?』
(しょんぼりしてる……)
スライムの方も同じことを思っていたようで。
もう少し居ると言ったらめっちゃ喜んでた。
こいつの性格が少しわかった気がする。寂しがりやなんじゃないだろうか。
(ええっと、ヴェルドラさんさっき封印されてたって言いましたよね)
『よくぞ聞いてくれた!三百年前のことだ……ちょっとうっかり街を一つ灰にしちゃってな』
(しちゃってな。って……)
追記、お調子者も追加で。視たらわかるんだけど、この竜全く反省してないわ。
てか、やってること災害じゃねえか。
『そんな我を討伐に来た者がいた。ちょびっと相手を舐めてたのは間違いない。それでも途中から本気を出したのだがな……負けてしまったな!』
何故か誇らしげに負けたと言うヴェルドラ。
ヴェルドラが勇者に負けたのって見惚れてたとかじゃねえかなぁ。
なんか無駄にその勇者のこと詳細に思い出して考えてるし。
〔ヴェルドラさん結構強そうなのに、相手はそんなに強かったのですか?〕
『ああ、強かったよ。加護を受けた、人間の"勇者"と呼ばれる存在だ』
勇者ねえ……なんか引っかかるような……
『『ユニークスキル』《絶対切断》で我を圧倒!《無限牢獄》で我を封印したのだ』
なるほど、このバリアみたいなのがその《無限牢獄》か。
『そういえば、その勇者は自分のことを”召喚者”だと言っておったな』
「召喚者……さっき言ってた異世界人とは何か違うのか?」
『三十人以上の魔法使いで何日間も儀式を行い異世界から呼び出すのだ』
魔術じゃないんだ魔法なんだ。てか、魔法使いとか居るんだ。
『強力な"兵器"としての役割を期待されておる。そして、召喚者は召喚主に逆らえないように、魔法で魂に呪いを刻まれる』
(なんじゃ、そりゃ!ひどい話ですね!)
『酷いか、元の世界ではどうだったか知らぬがこの世界では弱肉強食こそが絶対なる心理だ』
「まあ、そういうものか」
『召喚者以外にも稀にだが、お前のようにこの世界に迷い込んでくる者もいるらしい』
なるほどね。
てか、召喚じゃなくてよかった。
(それでヴェルドラさんはその勇者に封印されてからずっとここで?)
『そういうことだ。もう、暇で暇で』
項垂れるヴェルドラ。
そりゃ三百年もこんな何もない洞窟に一人きりだと暇だろうな。
そうなるのも仕方がない。
(どうにかしてあげたいけれど……)
(じゃあ!俺達と友達にならないか!)
「は?」
俺がそんなことを考えているとこのスライムは突然そんなことを言い出した。
いや、いいんだけどさ友達くらい。けど俺の了承は?
『な、なんだと? スライムと人間の分際で、暴風竜と恐れられるこの我とトモダチだと!?』
(い、嫌ならいいんだけど……)
『ば、バカ。誰も嫌だと言ってはおらんだろうが』
(え、そ、そう?)
「ああ、スライムさんや、あれは結構嬉しがってるぞ。ほら」
ヴェルドラは手?をもじもじさせながら。
『だ、だが、どうしてもと言うのなら。考えてやってもいいんだからねっ』
「ツンデレかよ」
(どうしても、だ! 決定な! 嫌なら絶交。二度と来ない!)
『し、仕方ないな。お前たちの友達になってやるわ、感謝せよ』
(素直じゃないねえ)
「ほんとにね」
そうして俺達は互いに握手を交わす。
まさか、異世界に転移するなんてことも、竜とスライムと友達になるなんて思いもしなかったがこれからどうなるのやら。
投稿時間午前と午後ならどっちがいい(午後の場合何時かまで))
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午前
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午後 12時
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