転移したら異世界だった件~~新たな神話   作:izuki

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第四話 牙狼族との戦い 

 暗闇が大空を包み込み。

 空にポツンと浮かぶ月の明かりが大地を淡く照らす。

 

「良い月だ、今夜こそ、あのゴブリンの村を滅ぼし、ジュラの大森林の足掛かりとしようではないか」

 

 牙狼族のボスである一匹の狼が丘の上からゴブリンの村を見下ろしていた。

 今宵は満月、戦いには相応しい。

 牙狼族のボスの言葉に草原に集結していた百匹以上の群れがそう遠吠えを上げる。

 士気は上々。

 ボスは全ての戦力を連れ、ジュラの森を駆ける。

 ゆっくりと周囲の魔物達を狩り、この森の支配者となるのだ。

 ゆくゆくは、更なる力を求めて南への侵攻も視野に入れている。

 自分達には、それを可能とする力がある。

 爪はいかなる魔物であれ引き裂き、牙はいかなる装甲をも喰い破る。

 昨日はゴブリンの中でも強い奴を倒した。

 あの村にはもう戦える奴はいないだろう。

 だから今日で確実に仕留める。

 森を駆け抜ける。ゴブリン共の村が見えてきた。

 だが、その様子が以前とは違っていた。

 

「これは……」

 

 村は、丸太を結び合わせてできた柵で囲われていた。

 中にいるゴブリン共も以前よりも立派な武器を持っている。

 

「これは、一体……」

「止まれ。これ以上先に進むことは許さない」

 

 突然声がしたかと思えば村の中から誰かが出てきた。

 

「?スライムと人間……?」

「!?親父殿!例のスライムと人間です!!」

 

 その時、配下の一匹が傍に寄り、そう告げた。

 ボスは思い出す。

 そういえば、数日前、斥候に出した同胞が気になる情報を持ち帰っていた。

 異様な妖気を漂わせた小さな魔物と不思議な気配がする人間がいたと言う。

 人間の方は分からないが、その魔物の妖気はボスである自分を上回っていたと。

 それを聞いたとき自分はそんなことはありえないと思い気にも留めなかったのだ。

 この森には、そんな脅威など感じ取れない。出会う魔物は皆弱かった。

 森の中程である現在地まで、抵抗らしき抵抗は受けていないのが証拠だ。

 それに目の前にいるスライムからもそんな妖気は感じられない。

 

「一度しか言わない……今すぐ回れ右して立ち去るがいい!」

 

 その言葉を聞いて牙狼族のボスは怒りが沸き上がった。

 スライム風情が!

 

 

 

 

 

「引きそうに無いな」

「ああ、なら仕方がない」

 

 俺は柵の中にいる弓部隊に合図を出していつでも撃てるように構えさせる。

 牙狼族のボスと思わしき個体が遠吠えをあげ、配下の狼達はこちらを喰らいつくさんとばかりに柵目掛けて向かってくる。

 

「撃て」

 

 俺は弓部隊に指示を出し攻撃を開始させる。

 この柵には矢が撃てるように小さな隙間、矢狭間というものを設けておいた。

 これによりこちらは安全に一方的に攻撃することが出来る。

 さらにこの柵は蜘蛛の糸で固定を行い、強度を増加して、リムルがついでに所々に『鋼糸』によるトラップを仕掛けている。

 これにより、何も知らずに柵に触れると、スパッ!とその身を切り刻まれる事になる。

 その隙間からゴブリンが弓を射て、牙狼たちを攻撃する。

 牙狼族自慢の爪と牙はこちらに届くことなく次々と敵の牙狼族は射抜かれていく。

 残ったのはボスの狼と数匹の配下だけ。

 だが、まだこちらに敵意むき出しで睨み付けてくる。

 弓部隊に合図を出して攻撃をやめさせる。

 

「なあ、リムル。脅すくらいはしていいよな?」

「まあ、それくらいしないと止まらなさそうだな。いいぞ」

 

 リムルからの許可は出た。

 脅すと言っても一発だけだ。

 

投影、開始(トレース・オン)

 

 記録している弓を投影する。

 その過程で弓の構造を変更。

 想像(イメージ)するのは、あの黒い洋弓。

 構造変更。構成材質、補強。

 自身の身長に合わせて構造を変更し材質を補強。

 弦を粘糸と鋼糸を合わせた粘鋼糸へ変更。

 

「お、おい。それって……」

 

 リムルが何か言いたげだが、無視して剣を一本、投影する。

 これも投影過程で剣の構造を大きく変更し、刀身を捻じり、矢のような形にして投影する。

 剣を弓につがえて大きく引き絞る。

 剣を矢の代わりにして撃つのは初めてだが何とかなるだろう。

 狙いは牙狼族のボス、の少し横を狙う。

 これは、脅しだ。最初から当てる気はない。

 だからこれでいい。

 あとは放つだけとなったとき、ふと思った。

 アー〇ャーが魔力を込めるみたいにこの矢に魔素を込めて撃ったらどうなるのだろう。

 というか出来るのか?

 

「……試してみるか」

 

 矢に魔素を少し流して込めてみる。

 

「へぇ…」

 

 矢が淡い光を帯びる。

 もう少しだけ魔素を込めてみる。

 これ以上は限界なのだろう。つがえている矢が悲鳴を上げているのがわかる。

 これ以上込めれば砕けてしまうだろう。

 ならばこれで十分。

 

「ハァッ!」

 

 放たれる一本の矢。

 それは、まるで光のように一直線に飛んでいき、狙い通りに牙狼族のボスの顔の脇をそれてそのまま後ろに飛んでいき。

 地面に着弾して大爆発を引き起こした。

 

「ッ!」

「おわっ!?」

 

 強烈な爆風と土煙が俺たちを襲う。

 次第に風と土煙が収まっていき、爆破跡地が見えるようになる。

 

「…………うわぁ……」

 

 思わず声がこぼれる。

 そこには爆破の影響で地面が大きくえぐれて直径8メートル程の大きなクレーターが出来ていた。

 

「おい!やりすぎだろ!」

「ははは……」

 

 爆風で吹き飛ばされていたリムルがこの結果を見て怒ってくる。

 いやぁ、これほどとは……これは人に向けて撃つものじゃないな。

 てか、見よう見まねでやったけどちゃんと爆発するんだ。

 

「けど、ほらあいつら怯えててこっちに来ないし、結果オーライ?」

「あのなぁ……」

 

 けど、実際に牙狼族たちは俺の方を見て怯えている。

 脅すということに関しては上手く行ったみたいだし問題なし!

 

「ここで引くのであれば見逃してやろう!」

 

 リムルが怯えている牙狼族に声をかける。

 ここで引けば穏便に終わるが……どうだろうか。

 ボスの方に関してはまだ恐怖はあるけど敵意と殺意が戻ってきているようだが。

 

「矮小なスライムがぁ……捻り潰してくれるっ!!」

「親父殿!」

 

 案の定、リムルの静止を無視して一直線にこちらに向かってくるボスの狼。

 

「俺がやる。少し足止めしてくれ」

「了解」

 

 すぐさま剣を投影し一射、二射、と進行方向に続けて数発放つ。

 それをボスの狼は間一髪といった具合に避けながら迂回してこちらへ向かってくる。

 端から当てる気はあまり無いが、よく避けるものだ。

 野生の感という奴だろうか?

 

(それにしても、速いな)

 

 さすがは狼といった具合か。

 どんどんスピードが上がっている。

 

(もういいぞ)

 

 リムルからの合図があったため射撃をやめて後ろに下がる。

 それを見たボス狼は迂回するのをやめて一直線にリムルに向って突っ走ってきて飛びかかる。

 

「リムル様!」

「問題ない」

 

 ゴブリンたちにはボスの狼がリムルをその鋭い爪と牙で切り裂き殺されるかと思われた。

 

「!?」

 

 突如、ボス狼が空中で何かに捕まったかのように宙ぶらりんになって身動きが取れなくなる。

 よく見ると体に細い糸のようなものが無数に絡まっている。

 リムルが作ったトラップに掛かったのだ

 もがいて抜け出そうとするが、抜け出せない。

 

「無駄だよ。《粘糸》さ」

「貴様……っ!」

 

 リムルに向って吠えるがこうなるともう、怖くもない。

 

「『スキル』、《水刃》!」

 

 リムルは『スキル』《水刃》でボス狼の首を切り落とす。

 相手の大将は討ち取ったこれでこの戦は終わりだ。

 

「聞け!牙狼族よ!お前たちのボスは死んだ!お前らに選択させてやる。服従か、死か!」

 

 リムルは牙狼達に通告するが動く気配はない。

 恐らくなんとかして仇を取ろうとしているのだろう。

 てゆうか、服従か、死か、とか言ってるがコイツ雰囲気で言ってるだけで実際はそんなことをする気はない。

 動こうとしない狼達を見かねたリムルがボス狼の死体を喰らい、《擬態》のスキル使用して再度通告する。

 

「クククッ! 聞け。今回だけは見逃してやろう。我に従えぬと言うならば、この場より立ち去れ!」

 

 言い終えた後に大音声で咆哮する。

 リムルがここで逃げる選択肢を出したのは、根が善人だからな余計な犠牲はあまり出したく無いし、牙狼族の生き残りに関してもこれ以上は殺したくは無いと無意識のうちに思っているからだろう。

 だからあえて逃げる選択肢を取らせようとしている。

 確かにこれ以上やる必要がないのは確かだが少し甘い。

 逃げた奴らが力をつけて復讐しようとしてきたらどうするというんだか。

 …………まぁ、そこがリムルの美点なんだろうけど。

 

 (それに……)

 

 リムルはこれで逃げ出してほしいと思っているんだろうが逆だ。

 コイツらは……

 すると、リムルの咆哮に耐えながら徐々に近づいてきた牙狼達は一斉に平伏して忠誠のポーズをとった。

 

「「我々一同、貴方様方に従います!」」

 (ああ、やっぱりこうなっちゃったかぁ)

 

 この世界は、弱肉強食。

 弱いのモノは淘汰され、強いモノのみが生き残る。

 だからリムルがあの条件を出した以上こうなるんじゃないかとは思ってはいた。

 とりあえず、俺たちはそれを受け入れる。

 これで、牙狼族との戦は終結した。

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