牙狼族との決戦が終わった翌日の朝。
生き残ったゴブリン達と牙狼族を村の中央広場に集めていた。
ゴブリンと牙狼、合わせて総勢百匹以上。
最初では考えられない位の大所帯である。
「大所帯になったな……」
「言っとくけど、半分くらいお前のせいだからな」
「うっ……わかってるよ……」
あの後ゴブリンには焚き火の傍で就寝を、犬共には村の周辺で待機を命令して一晩使ってリムルと一緒にこの後どうするかを考えた。
あいにく、この世界に来てから何故か疲労をそんなに感じなくなったし睡眠も少しの間でよくなったので話し合う時間が取れた。
そして、話し合いの結果。
「えーと、君達。これから君達には、ペアとなって一緒に過ごして貰う事になります!」
とりあえず仲間同士でペアを作り、お互いのことを補いあうことが出来るようにする。
その際にゴブリンと牙狼とのペアも作ってもらい親睦を深めてもらう。
昨日の敵は今日の友、とも言うし仲良くしてくれるといいが。
「?」
「ぺあ?」
みんなの反応を覗うが、どうやらペアの意味を分かっていないようだ。
そういった言葉がないのか、こいつらが知らないだけなのかはわからないが。
「ペアっていうのは二人一組って意味だ。常に二人一組で行動していれば、互いの欠点を補いあうことが出来るからな」
「なるほど……」
俺がそう言うと、それぞれペアを組み始めた最初の予定通りにゴブリン同士のペアとゴブリンと牙狼のペアが複数できたようだ。
ここまでは問題なし。そして一番の問題に移る。
「そういえば村長、お前には名前があるのか?」
「いえ、我らに名はありません」
リムルが隣に立つ村長に問う。
そう、名前だ。昨日の時点で恐らくそうじゃないかとは思っていた。
この村にいる誰もが名前で呼び合っているのを見たことがないのだ。
「普通魔物は名前を持ちません、名前が無くとも意思の疎通は出来ますので」
「なるほど」
やはり、この村にいるゴブリンや牙狼たちには名前がないようだ。
村長の話が確かなら魔物同士は問題ないが、俺たちは誰が誰というのは全く分からない。
なんでリムルもわからないのかは不思議だが。
なんで当初の予定通りにする。
「よし、それなら今から俺たちがお前たち全員に名前を与えよう」
「ないと不便だからな」
そうリムルが言うと俺達以外の全員がざわめき始める。
何だろうか、何かマズイことなのだろうか。
「よ、よろしいのですか!?」
「あ、ああ……?」
そういうと村長を含めたゴブリン達と牙狼達は嬉しそう興奮して大騒ぎする。
本当に一体何なんだ?
名前を付けてもらえることに何か特別な意味でもあるのだろうか?
「とりあえずゴブリンと牙狼で別れて並んでくれ」
そういうと俺たちの前にすぐさまに並ぶゴブリンと牙狼達。
「それじゃあ、まずは村長から」
「は、はい!」
(なあ、どうする?)
(いや、どうするって言われても。俺名前とか考えるの得意じゃないんだけど……)
本当である。決してリムルに押し付けようとかは考えていない。
本当に苦手である。
「えっと、お前の息子の名前って確か…」
「リグルです」
「そうか、じゃあ村長の名前はリグルドだ!」
「おお、リグルド!ありがとうございます、リムル様!」
「おまえは亡き兄の意志を継ぎ、リグルと名乗れ」
「はいっ!ありがとうございますっ!」
号泣しながら大喜びする村長とバンダナゴブリン。
もといリグルドとリグル。
名付けをした際に僅かに光ったような気がしなくもないが、気にしないことにする。
そして、安直だなぁ、あとそれっぽい理由をつけてるな。と思いながらも決して口には出さない。
何故なら俺は決して人のことは言えないからだ。
その後もどんどんゴブリンたちの名付けをしていくリムル。
そのうち何人かは俺も名付けをしたが、正直安直なのしか出なかった。
途中からリムルも少し適当になってたし。
というか、名付けをした際に何かが持っていかれるような感覚があったのだが……
「リムル様、シキ様…大変有難いのですが……その、宜しいのですか?」
ゴブリン達に名づけを終えて一休みしているとリグルドが若干慌て気味にそんなことを聞いてきた。
「何がだ?」
「いえ、リムル様とシキ様の魔力が強大なのは存じておりますが…その、そのように一度に名を与えられるなど…大丈夫なのですか?」
リグルドはこちらを心配するように聞いてくる。
リムルは何を言っているんだろうと思いながら、問題ない。と返すが俺は少し考えこむ。
(リグルドが言っていた魔力……そして、さっき名付けした時の感覚……そういえばあの感覚、矢に魔素を流し込んだ感覚と少し似ているような気がする。もしかしてだけど………)
「シキ様」
「ん?」
俺が考えこんでいると、いつの間にか一匹の牙狼が俺の前に来ていた。
他の牙狼族とは違い白い綺麗な毛を持つ個体だ。
あとの名付けはリムルに任せたはずだが……いったい何だろうか?
「なんだ?」
「シキ様がよろしければ私をシキ様の直属の配下にしていただきたいのです」
これは、驚いた。
まさか牙狼の方からそういう申し出があるとは思いもしなかった。
俺達はこいつらのボスを殺したし、さらに脅しとはいえあんなことをしたのだから恐れられているんじゃないかと思っていたのだが。
「……いいのか?俺はお前たちのボスを殺したんだぞ」
「…思うことがないかと言えば嘘になりますが……それでも私はあなた様に使えたいのです!」
ここまで言われて断るなんて出来はしない。
「わかった。なら、お前は今日から俺の直属だ。その証にお前にも名をやる」
それに、ちょうど試したかったしな。
それにしても名前か……どうしよう。
恐らくだが、多分この子女の子だろう。
であればそれに見合った名前が良いよなあ。
そういえばこの子の毛はまるで雪のようだな……雪か、俺は雪は結構好きだったな。
昔から暑さと寒さには鈍くてそんなに影響はなかったんだけど、夏は日差しがうっとおしいからあんまり好きじゃなくて。
それに比べて冬は降る雪と積もった雪景色がきれいで、それが好きだったっけ。
それでいて刹那の時間しかそれらを見ることが出来ない。
……って違う。そうじゃなくてね。名前だよ名前。
えっと、けど、雪は入れたいな。
「お前の名前は
「
俺が
虚脱感が少しあるが、すぐに自分の体内の魔素量を確認するとやはり名付け前よりも減っていた。
ああ、やっぱりそういうことか。
つまるところ、これは……
「!?リムル様!?」
「我が主!?」
「ん?」
俺がこの現象に推測しているとリムルの方からなにやら慌てるような声が聞こえたので、そちらを振り向く。
するとそこには切り株の上で普段の真ん丸ボディからべちょっとした状態になっているリムルが発見された。
「リムル!?」
急いでリムルの方へ行き状態を確認する。
どうやら、生きてはいるようだ体内の魔素がほとんど無くなっている。
だが、死んでいるわけでは無い。
どうやらただのスライムの塊となっているようだ。
眠っていると言った方がいいだろうか。
体内の魔素も少しずつではあるが回復しているようだし問題はないだろう。
だが、やはりそうだ。
名無しの魔物に名付けをすると魔物に応じて相応の魔素が抜き取られるようだ。
実際にゴブリン達に名付けした時と、
そして抜き取られた魔素は恐らく名付けをした魔物に譲渡される。
俺もリムルのようにバカみたいに名付けをしていたら同じようになっていただろう。恐ろしい。
「大丈夫、眠っているだけリムルは無事だ。とりあえず家に」
「わかりました!」
女のゴブリン……たしか、ハルナだったか。に任せる。
そうしてリムルを受け渡すとき。
突然、みんなが光り始めた。
余りの眩しさに目を瞑り、光が収まった後にゆっくり目を開けてみた。
「…………マジか……」
そこには、思わず声が出てしまうほど驚く光景があった。
あの名付けから三日。
俺は、リグルドと一緒に村のことについて話し合っているとハルナがリムルのいる家から出てきた。
どうやらリムルが目を覚ましたらしい。
その報告を受けたリグルドは急いで家の中に入って行った。俺もその後に続こうとして嵐牙が入り口をぶち壊しながら入っていったのを確認して止まる。
少しすると、家の屋根が家の中から生じた竜巻にリムル共々吹き飛ばされる。
「行かなくてよかった」
「兄が申し訳ありません……」
「いや、お前が気にすることじゃないよ」
申し訳なさそうにしながら隣に寄ってきた
飛ばされたリムルはというと、いつの間にか集まってきていた村のみんなに胴上げされている。
「あっおい!シキこれは一体どういうことなんだ!?」
「《大賢者》に聞かなかったのか?『進化』したんだよ。名付けの影響で」
胴上げされながら聞いてきたリムルにそう答える。
あの後、リグルドに詳しいことを聞いたのだが。
上位の魔物や魔人に名付けされた魔物は、ネームドモンスターになることが出来るそうだ。
ネームドモンスターは『名持ちの魔物』として一目置かれるようになるだけでなく、『進化』を果たすらしい。
それはこいつらも例外は無く、見事に全員進化していた。
雄のゴブリンは、"ホブ・ゴブリン"。
雌のゴブリンは、"ゴブリナ"に。
それぞれ進化を果たしていた。
さらにびっくりなのは進化に応じて背丈が大きく変化していることである。
例として出すなら、元々よぼよぼの爺さんだったリグルドは進化に応じて少し若返り、身長と体格が大きくなっている。
筋肉隆々で身長に関しても俺なんかよりも大きい。2mくらいあるんじゃないかな。
あと、いちいちその暑苦しい筋肉を見せつけなくていいから。
そして牙狼族に関してはリムルが名付けしたボスの
ただ
見た目はそんなに大きくは変わらないが、確か体の大きさを自由に変えることが出来るんだったかな。
この後はリグルドたちが用意していた宴が始まりそれを楽しんだ。
ちなみに宴で肉や果物などの食べ物が出たがリムルは味覚がないため味を感じることができず、美味そうに食う俺のことを恨めしそうに見ていたのであった。
美味しかったです。
・《黒弓》
シキがどこぞの弓兵の使用する黒弓を元に作り上げた無名の洋弓。
シキが扱いやすいように細かな改造が施されており、矢ではなく剣を射出することを主用途としているため、通常の弓よりも頑丈に作られている。
投稿時間午前と午後ならどっちがいい(午後の場合何時かまで))
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午前
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午後 12時
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13時
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14時
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15時
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16時
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17時
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18時
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20時
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22時
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