転移したら異世界だった件~~新たな神話   作:izuki

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第六話 ルールと問題

 宴が終わった翌日。

 俺とリムルは再び広場に村の全員を集めていた。

 のだが……

 

「……お前、その髭なに…?」

「フッフッフ……わかるだろ?シキ君」

 

 いや、分かんねえよ。

 リムルはみんなを集め始めてからなんか付け髭?をつけている。

 リムルは何かをしたいみたいだが、何がしたいのか全く分からん。

 そんなことを思っていると騒がしかったのが俺たちを見てみんな静かになっていく。

 

「はい。皆が静かになるまで五分かかりました」

「「「「「「???」」」」」」

「………………」

「!?俺の持ちネタが通じないだと!?」

「当たり前だろ」

 

 こんなアホなことしているリムルは放っておいて。

 何故集めたかというと、俺たちが決めたルールとこれからの方針を話すためである。

 

「まず、今回俺たちは大所帯となった。そこでだ、なるべくトラブルを避けるためにルールを作ろうと思っている」

「「「「「るーる?」」」」」

 

 やっぱりと言うべきか、ルールという言葉も知らないらしい。

 もしかしたらそういった単語や言葉はこの世界に無いのだろうか?

 

「ルールっていうのは簡単に言うならこの村での決まりごとみたいなものだよ」

「なるほど」

「では、ルールを発表する! ルールは三つ。最低この三つは守って欲しい」

「一つ、仲間内での争い事はしないこと。二つ、進化したからって他種族を見下さないこと。三つ、人間を襲わないこと。この三つを守ってほしい」

 

 俺たちが考えたのはこの三つ。

 最後に関してはリムルが決めたようなものだけど。

 まあ、俺も人を襲ったりするのは見たくないしいいけれど。

 

「宜しいでしょうか! 何故、人間を襲ってはならないのでしょうか?」

 

 リグルが質問して来た。

 リグルドが、鬼の形相で息子を睨みつける。俺達に意見していると思ったのだろう。

 そんなこと気にせずにもっと気軽に接してくれてもいいのだが。

 むしろ、質問や意見なんかは言ってくれると助かるんだがね。

 

「簡単な理由だ。俺が人間が好きだから!以上」

「なるほど! 理解しました!」

 

 それでいいのかリグルよ。

 もっとこう、ちゃんとした理由とか聞いた方がいいんじゃないだろうか。

 他の奴らもそんな感じだし。

 まあ、簡単な理由位は述べておくか。

 

「人間は基本、集団で行動する生き物だ。こちらが危害を加えればこちらより多い数で討伐しようとするだろう……その場合、進化したからって数で押し負ける可能性がある。故にこちらから人間には手を出さない」

「な、なるほど……」

「だが、覚えておいてほしい。この世界に様々な種類の魔物がいるように人間にだって色んな種類がある……魔物の言葉に耳を傾けてくれるような人間もいれば、逆に耳を貸さずに討伐しようとする人間だっているだろう。その場合は自分の命を最優先にするんだ」

「「「「はいっ!!」」」」

 

 うむ、いい返事だ。

 俺のように魔物の言葉に耳を貸す人間は少ないんじゃないだろうか。

 警戒しておくに越したことはない。

 自衛手段を身につける必要があるな。

 リムルに関してはそこまでは考えていなかったようだ。

 本当に大人なんだろうかこの人。

 

「他に何かあるか?」

「他種族を見下さない、というのは?」

「お前ら進化して強くなっただろ? 調子に乗って弱い種族に偉そうにするなよ!って意味だよ。ちょっと強くなったからと言って、偉くなったと勘違いするな!いつか相手が強くなって仕返しされてもつまらないだろ?」

 

 リムルの言うとおりである。

 そのようなことでいちいち争っていては命が何個あっても足りない。

 とりあえずルールに関してはこれくらいにして次の話題に移ることにする。

 

「リグルド」

「はっ」

「お前をゴブリン・ロードに任命する。村を上手く治めるように」

 

 そう、ゴブリン内の長決めである。

 俺たちは確かにこいつらの主だが、それとは別にゴブリン達をまとめる役が必要になるだろうと思い。

 村長であるリグルドをゴブリン・ロードに任命することに決めていた。

 

「はは!このリグルド、この身命を賭してその任、引き受けさせて戴きます!」

 

 リムルにゴブリン・ロードを任命されたリグルドは表情は喜びで固まり、すぐに膝をついた。

 よかった。これで引き受けてくれなかったらまとめ役を俺らがすることになるところだった。

 俺はそういうの得意じゃないからリムルに押し付けるけど。

 その後、三日間の間に俺が振り分けておいた、食料調達のための狩猟担当班、防衛のための警備担当班、服を作って貰う裁縫担当班、家を建て直す建築担当班の四つの指示をリグルドに任せた。

 任せたのだが……

 

「……建て直してこれなのか?」

「面目ないです……」

 

 すぐに問題が発生した。

 問題が発生したのは、裁縫担当班、建築担当班である。

 そのうちの一つの建築担当班の問題が目の前にある再建されたはずの家だった。

 再建されたコレは木と板をつなぎ合わせただけの、如何にも素人が創りましたと言わんばかりのボロ小屋というに相応しいもの。

 

 「いや、リグルドの采配が悪いわけではない、専門の知識がないからな、こうなっても仕方ない」

 

 そうなのである。

 家を作ろうにも俺達にはそういった専門的な知識がない。

 俺は知っていると言ってもテレビの番組の特集とかで見たことしかないから教えるなんてこと出来ないし。

 リムルは生前ゼネコン勤務だったから良し悪しは分かるが流石に指導出来る程の技術はないらしい。

 そして、もう一つの裁縫担当班の問題もまた同じで、技術がない為まともな服を作ることができず。

 裁縫は俺が教えたから少しはできるようになったが、それでも服の面積を増やす程度。

 そして、デザインがダサい。

 それなら俺のスキルで服を作ればいいって思うだろう。

 だが、考えて欲しい。男モノの服ならともかく女性用の服は着たことない、というか持ってない奴がそんなの作れると思うか?

 否。作れないのである。

 以上の二つが問題として上がってきた。

 

「リグルド、この手の専門家に心当たりはないか?」

「ううむ………そういえば、今まで何度か取り引きをした者達がいます!器用な者達なので家や服の作り方を存じておるのやも!」

「取引なんてしてたのか。何を取引してたんだ?」

「物々交換や雑用で物資を工面して貰っておりました。我らの道具は、その者達に用意して貰ったものなのです」

 

 なるほど、ゴブリンにしてはそれなりにいいもの持っているとは思っていたが、そういうことか。

 

「どんな連中なんだ?」

「ドワーフ族です」

「ドワーフ!」

 

 ドワーフか、確かゲームとかでよく出てくる鍛治が得意な種族だったか。

 そいつらに教えを乞うことが出来ればこの惨劇をどうにかできるかもしれないな。

 

「その、ドワーフ達はどこに住んでるんだ?」

「ドワーフの王国が大河沿いに北上して二ヶ月かかる距離にあります。嵐牙狼族の脚なら更に早いかと」

「行ってみる。リグルド、準備は任せても良いか?」

「お任せ下さい! 今日の昼には、全ての用意を整えましょう!」

 

 そう言って村の奴らに指示をして準備に取り掛かっていった。

 それにしてもドワーフの国か。

 少し楽しみだ。

 

 リグルドは言った通り、昼頃までに俺たちの準備を終わらせてくれた。

 俺たちはその荷物を受け取りリグルとドワルゴンに行ったことがあるというゴフタ、あと二名で向かうことにした。

 移動手段はリムルは嵐牙、俺は雪菜、リグルたちは他の嵐牙狼の背中に乗って移動することになった。

 

「よし、行くか!」

「ああ、それじゃあ行ってくる」

「「「「いってらっしゃーい!」」」」

 

 俺達はドワルゴンに住むドワーフに会いに行くために、村を出て出発した。

 雪菜たちの足はものすごく速くて、村がもう見えなくなっていき、そのまま予定通りに、アメルド大河に沿って俺たちは北上していく。

 この調子なら本当に二ヶ月もかからないだろう。

 もしかしたら一週間くらいで着くんじゃないだろうか。

 それにしても、ほんとに速いな。

 

「すまないな雪菜。負担を掛けて、あんまり急がなくていいんだぞ」

「いえ!問題ありません!進化のお陰かこの程度では疲れなくなっています!」

「ならいいんだが」

 

 その後は河に沿って進んでいき、日が暮れ河の近くで野営をして過ごすことにした。

 空は綺麗で天の川らしきものが見える。

 もしかしたらこの世界は地球の近く、ではなくとも天の川銀河のどこかという可能性もあるのかもしれない。

 

「ところで、ゴブタよ。あと、どのくらいか判るか?」

「は、はいぃぃ!恐らくですが、明日には到着出来るかと思います!大分山が大きく見えておりますので!」

 

 リムルに声を掛けられて緊張したのだろうか?慌てて返事してきた。

 確かに、言われて見れば、山が大きく見える。

 昨日まではその姿も見えていなかったのだが、とんでもない移動速度だ。

 そうだ、聞いておくか。

 

「ゴブタは武装国家ドワルゴンに行ったことがあるんだったな、どんな町だったのか教えてくれないか?」

「ハ、ハィ!武装国家ドワルゴンは天然の大洞窟を改造した美しい都っす。この国は他種族に関しても友好的で、ドワーフだけじゃなくエルフとか人間とかも住んでいるっす」

「へぇ、そうなのか」

 

 ドワーフだけかと思ったらエルフとかもいるのか。

 他種族間で友好的に暮らしている国ってことか。

 それと……

 

「エルフ……かぁ……」

「……いやらしい下心を少しは隠しな」 

「…っは!いや!そそそそんなこと考えてないぞ」

「悪いけど、そういうの視えるんだよ。俺は」

 

 まあ、脳内ピンクなこのスライムは放っておいて。

 

「国ってことは…王様がいるんだよな。どんな人なんだ」

「ドワーフの王、ガゼル・ドワルゴは”英雄王”と呼ばれる人物で国民からも慕われてるんす」

「なるほど」

「今更なんだが、そのドワルゴンという国に魔物の俺達が入っても大丈夫なのか?」

 

 ああ、確かに。

 俺は人間だから大丈夫だけど、リムルたちは魔物。

 入れないだけならいいが、討伐されようものなら大変だ。

 被害が出る。相手側に。

 

「その心配はいりません。ドワルゴンは中立の自由貿易都市。王国内の争いは、王の名に於いて禁止されております。なんでもこの千年、ドワーフ王率いる軍は一度も敗北したことがないとか」

 「エル…千年っ!?」

 

 千年か…………王自体も強いが、国自体も強大な国ということか。

 それなら無敵のドワーフ王国を敵に回そうっていうバカはいないだろう。

 ……それと、いつまでエルフに頭が支配されてるんだこのスライムは。

 

「…………自分が前に行った時は門の前で絡まれたッスけど……」

「トラブルなんておこりませんよ。あ、お肉焼けましたよ」

「……おう」

 

 なにやらゴブタが不穏なことを言っていた気がするが、聞かなかったことにする。

 その後は日が明けるまで少し睡眠をとり、それから約三日の時間をかけドワルゴンへと向かうのだった。

 その際特に何も問題は無く、無事に武装国家ドワルゴンへと到着したのだった。

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