悪魔よりもピザとストロベリーサンデーを   作:あるく天然記念物

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映画サイコー
チェンソー様サイコー
よし、甘めの作品を書くか


東京で一番高いもの

 ねぇ、この東京でもっとも高いものって知ってる?

 もっとも高いもの? 金とかプラチナ………あとは仮想通貨とか?

 ブッブー。どれもハズレでーす。

 えぇー、じゃあなんなの? 

 正解は───土地でーす。その価格、なんと坪単価で数十億!!

 高っか?! 東京のどこの土地よ?!

 ほら、最近になって政府の建物がみーんな引っ越したでしょ? そこの土地。

 へぇー。あのネットニュースで有名な場所かぁ。でも、あそこってなんか有名な場所とかだっけ? そんなに高騰するなんて。

 えぇー? あんた知らないの? 受験生としてネットニュースだけじゃなくて、新聞も読んどきなさいよ。

 うっさい。余計なお世話よ。それで、一体全体何があるのよ。徳川の埋蔵金でもあったの?

 チッチッチッ。徳川の埋蔵金程度なら、そんな億はつかないって。理由は単純明快。世界で一番安全なの。

 安全? まあ政府関係が集まってるなら、警備やら警察、公安のデビルハンターだって常駐するけど、世界一はなくない?

 違う違う違う。順序が逆だって。政府関係が集まるから安全じゃないの。そこが安全だからみーんな集まったの。あそこね、一切でないの。

 出ないって、何が?

 そりゃ、この御時世といったらあれしかないじゃない。悪魔よ、悪魔。あそこは一体も出てこないし、他所からも入ってこないって有名なんだから。てか、ここ最近の公民で出るわよ。

 えぇー、悪魔が出ないってあり得るの? なんか特殊な建築物とかあるの?

 さぁ。悪魔なんて化物の考えることなんて私たち人間には分かんないよ。でも、一軒だけよく分かんないお店ならあるよ。

 何々、教えて?

 確かお店の名前は─────

 

 

 

 

 

 『Devil May Cry』

 

 

 

 

 

○ ○ ○

 

 東京のとある場所。

 最近政府の各施設や要人達、それから大富豪の人々がこぞって引っ越したことで土地バブルが発生した地区の一角。

 ポツンと一軒。少しだけ傾いた看板を掲げた店があった。

 看板の名は『Devil May Cry』

 一見したらBARのような店名であるが、登記上は民間デビルハンター事務所だ。

 その店の中に、一人の男がいた。

 真っ昼間であるにも関わらず机に脚を掛け、椅子の背もたれを限界まで倒して眠っている。

 顔には途中まで読んだ週刊誌を被せており、日差し対策もバッチリだ。

 このまま世間が労働を勤しむ中、男が優雅に惰眠を貪ろうとした。

 

 ジリリリリリリ。

 

 まさにその時、机に置いていた電話が鳴り出した。

 

「おい、電話がなってるぞ」

 

 ジリリリリリリ。

 

「おい、聞こえてんのか? 電話がなってるぞー!!」

 

 ジリリリリリリ。ジリリリリリリ。

 

「おい………おいって!! 電話がなってるぞー!!!!」

 

 ジリリリリリリ。ジリリリリリリ。ジリリリリリリ。ジリリリリリリ。

 呼び掛けること三回。

 同居人へと呼び掛けるも応答がない。それどころかジャーという水が流れる音が店の奥から聞こえてくる。

 アイツめ、店番を放っといて風呂に入ってやがるな。

 しかし、そんな事など俺には関係ないし、断固として電話を取るつもりはない。

 声を張り上げ、電話を取るように呼び掛ける。

 

「おい!!! 電話がなってるって言って『ジリリリリリリ!!!!』だぁッ、うるせぇ!!!!!」

 

 未だに鳴り止まないコール音。

 趣味でデジタルな世にもかかわらず、時代錯誤な黒電話を設置しているせいで余計に喧しい。

 だんだんとイライラしてきた。

 サボっている同居人が使えない以上、これは電話を掛けてきやがったヤツへ一言文句を言ってやらねば気が済まない。普通なら数コールで諦める筈なのに、延々とならし続けやがって。

 顔に掛けていた雑誌を放り捨て、限界まで倒した椅子を元に戻す。

 それから引ったくるように受話器を取った。

 

「はい、もしもし!!」

『おや、ようやく出た』

「げェッ」

 

 受話器から聞こえた声に、怒りから面倒という感情に切り替わる。

 とんでもない貧乏くじを引いてしまった。

 よくよく考えたら、数十秒間もコールを放っても諦めない存在など一人しかいなかったと気付いたが、電話に出てしまった以上それはもう遅い。

 はぁ、と。ため息を一つついて電話口へ向き合う。

 

『毎日毎日。昼間からサボるのは感心しないよ』

「だったら毎日毎日毎日毎日電話を掛けんじゃねぇよ。つーか、サボりじゃねぇ。俺は品行方正に依頼を待ってんだよ。んで、その依頼が来ねぇから休んでるだけだ」

『屁理屈だね。人はそれをサボりと言うよ』

「うるせェ。昼間からお前のペラペラな説教なんざ聞きたくねぇぞ、マキマ」

 

 電話の奥で女がクスリと笑う声が聞こえた。

 マキマ。それが男の電話口の相手の名だ。

 男とは違い日本政府に所属。は、語弊があるな。正確には公安対魔特異4課のリーダーを勤める内閣官房長官直属のデビルハンター。

 そんな重役中の重役であるマキマと、絶賛閑古鳥が鳴いている事務所の男に電話を掛けるのか。そもそもどうして接点があるのか。

 簡潔に言おう。男とマキマは同郷の仲だ。

 共に同じ、まさに地獄からの付き合いで現在に至る。

 

『ところで、キミはさっき依頼が来ないって言ってたけど可笑しいね。数日前から何度も公安の案件を回してる筈だけど』

「あぁ、あのしょうもないヤツなら無視した。あの程度、俺が行く必要ねぇだろ。お前ら公安で十分だ」

『何人もの民間デビルハンターや非公式だけど公安のデビルハンターが被害を受けている悪魔相手にその言い様。傲慢だね』

「事実だからな。それに俺はプロ中のプロだ。相応しい依頼じゃ無ければ受けない。それが俺のモットーだ」

『閑古鳥が鳴く事務所のプロなんて聞いたことがないよ。“これは命令です”。依頼を受けると言いなさい』

「“受けるかよ”、バカ。つーか、そんなに依頼を受けて欲しかったら電話じゃなくて直接来やがれってんだ」

 

 ノータイムでの応酬。

 マキマのお願いに対して即座に拒否を叩きつける男。

 しかし、姿が見えない電話でありながら男はマキマが“ニヤリ”と笑ったのを感じとった。

 

『言ったね。この前は“二度と来るな”って命令されてたから助かったよ』

「ん? ───あっ?! いや、これは言葉のあやと言うか、あれだあれ!!」

『それじゃ、今すぐ行くね』

「聞けよっ!!!!」

 

 男は叫ぶも、電話はすでに切れており、ツーツーと虚しい電子音しか帰ってこなかった。

 やるせない気持ちと共に、男は受話器を本体へと叩きつける。

 やりやがった。マキマのヤツ、ここまで計算してやがったのだ。

 数日前、マキマが言うように男はマキマに対して『二度と来るな!!』と怒った。

 あの時のマキマはベタベタベタベタとしつこかったのを男は覚えている。そのため頭を冷やす意味も込めて言ったのだ。その時のマキマはこの世の終わりみたいな顔をしていたが、翌日以降には、いつもの調子で依頼の電話(男は無視していた)が来たため気にしてないと思っていた。ついでに店に来ないから、しばらくは落ち着けると。

 だが、マキマの正体から命令は絶対。だからこそあの時からマキマはこの状況を計画していたのだ。マキマならやる。あの女の性格からしないわけがなかったのだ。

 これからやってくるマキマのことを考え、男はため息を深くついた。

 

「ちっ、面倒な。マジですぐに来るぞ、アイツ」

「ふぅ。いいお湯でした~。風呂上がりのアイスアイス~」

「あっ、テメェッ。コラッ!!」

 

 タイミングが良いのか悪いのか。

 受話器を叩きつけた数秒後に、名に知らぬ顔で同居人が風呂から上がってきた。

 頭と胸にタオルを巻いた状態で冷蔵庫を漁る同居人。男は投げ捨てていた雑誌を拾い上げると、そのまま頭へ向けてぶん投げた。

 スコーン、と。いい音が事務所に響く。

 

「アイタッ!? ちょっと、ちょっと!! 可愛い女の子の頭に雑誌なんか投げないでよ!!」

「黙れポンコツ娘。お前が仕事サボって電話にでなかったせいで、こっちは面倒な事になったんだ。どうしてくれる。この補填は給料から差し引くからな」

「えぇー?! すでにゴミみたいな給料なのに?!」

 

 横暴だ横暴ー!! というポンコツ娘────レゼの叫びを男は無視する。

 レゼは男が経営………経営できてるんだよな? 経営している店の従業員だ。主に経理と受付とその他各種事務処理。スゲーな、裏方フルコンプである。

 紆余曲折あり、どこぞの国のエージェントからよろず屋へとジョブチェンジ。より正確には某連邦から人ばし………賄賂として送り込まれた背景がある。

 送り込まれてから数日後に色々と起こったのが、ここでは割愛しよう。結果だけ言えば、レゼは一般人? となり、某連邦は男から恐喝を受ける結果となったとだけ残しておこう。

 そんなレゼに向けて投げた雑誌の回収がてら冷蔵庫からコーヒーのボトルを取り出し、眠気覚ましに一口だけ口に含む。

 男の姿に、レゼは少しだけ眉を潜めた。

 

「うわー直飲み。私も飲むんだからコップ使ってよ」

「俺の家の物に、どうして俺以外の配慮がいるんだ。アホか。ほら、風呂上がったんなら、さっさと準備をしろ。マキマのヤツが来るぞ」

「はーい。見積書と請求書準備しとくねー」

「バカか!! 塩とお茶漬けを用意しろって言ってんだよ」

「…………そんな調子でどうやってご飯食べていくのさ」

「ホント、レゼちゃんの言う通りだよ──────ダンテ」

 

 第三者の声。

 男──ダンテが声のした方を振り替えると、そこにはいつの間に来ていたのか、マキマがたっていた。

 相も変わらず、何を考えているのか読めないぐるぐるの模様の入った目でダンテを見つめている。

 

「よおマキマ。来て早々だが、これからお昼にお茶漬けでもどうだ? それといい時計をしてるな。どこで買ったんだ?」

「わぁお。帰れのフルコンプリートだね。早速で悪いけど仕事の話をしても──」

「オッスオッスー、マキマちゃん。久々に会う私に挨拶は無いのかなー?」

「あぁ、キミいたの。なら“これは命令です”。永遠に彼のもとから去りますと言いなさい」

「“嫌だね”。私、店長以外からの命令は受けたくないの」

「……………ダンテ、仕事の事なんだけど、すこし場所を変えないかい?」

「うーわ。能力が効かないからって、露骨に無視だよ。ヤだね~これだから能力だよりのお上りさんは困るよ」

「…………ダンテ、従業員ならもっと従順でお客様に逆らわない犬みたいないい子にしなよ。今度紹介するから」

「ダンテ~、倉庫からありったけの塩持ってきていい? ついでにお茶漬けも~」

「ダンテ、これは命令じゃなくてお願いです。やっぱりこの子はすぐに棄てなさい」

「ダンテ~。マキマさぁ、もう一度出禁にさせようよ~」

「……………ダンテの小判鮫が」

「なに、支配だけが取り柄のお山の大将さん?」

「「………………ッ」」

 

 バチバチバチ、と。

 目には見えないが、マキマとレゼの間に火花が散るのをダンテは幻視した。

 いや、幻視どころか既に一触即発な状態だった。

 いつの間にかマキマは両手を水平に重ねているし、レゼは首のチョーカーについているピンに右手を添えている。

 

「はぁ…………」

 

 ダンテはめんどくさそうに後頭部をかいたあと、両手をそれぞれの頭に置く。

 

「「?」」

 

 そして雑にワジャワシャとなで始めた。

 

「わぁぁあっ?!」

「にぁあああっ?!」

 

 だが、それは犬猫を可愛がるなんてものじゃない。

 洗車機に放り込まれた車レベルで二人を撫で回したのだ。

 二人は撫でるという名の暴力を一身に受け、やがて目を回しながらも互いを見つめ合う形で固定される。

 なんだこの見たくもないヤツの顔を強制で見せつけられるのは、と。二人は顔をそらそうとするも1ミリたりとも動かせない。ダンテが後頭部を握っているからだ。

 

「喧嘩するなら、二人とも出てけッ。いいな?」

「…………わかったよ」

「はーい」

「よし」

 

 表面上だろうが、言質は取れた。

 これで一旦喧嘩することはないだろう。

 ダンテは二人の頭を解放した。

 

「さて、マキマ。来ちまった以上仕方ねぇ。公安からの依頼はなんだ。言っておくが、弱い悪魔絡みなら、即断るぞ」

 

 ドカッ、と。事務所の椅子に座り直しながら、ダンテはマキマへと訪ねる。

 マキマは手櫛で髪を整えつつ、懐から一枚の封筒を取り出した。

 

「悪魔の種別自体は大したことはないよ。イカの悪魔。ただ、いる場所が場所で相乗効果が起きてとても困ってるんだ」

 

 封筒から写真を数枚、ダンテのいる机に置いていく。

 その写真には綺麗な海と、その海に浮かぶ船の残骸。そしてイカの悪魔と思われる巨体が写っていた。

 その写真を見て、海とイカ。この二つから連想される情報にダンテは気付き、軽く頷く。

 

「なるほど、クラーケン化か。そりゃ、こんなに大きくなるし、公安でも無理か」

「一応優秀なのが何人かいるんだけど、ここまで大きくなったら公安でも無傷での突破は大変でね、実際に何隻もダメにした。だからダンテに依頼したいの」

「ほほー。でもクラーケン程度なら、私が殺ろうか?」

「別に倒すだけならレゼちゃんでも余裕だよ。でも、今回のこの子は特別臆病で、さらに頭がいいんだ。仕留めきれなかったら、即座に深海に逃げる。ついでに顔と気配を覚えるから、公安の懐刀である岸辺先生でもお手上げなの」

「うわー、そりゃ大変だ。流石の私もこの大きさじゃあ時間掛かるし、海に潜られたら湿気きってダメだわ」

 

 レゼが「お手上げ~」と両手を上げるのを尻目に、ダンテはニヒルに笑う。

 どうやら、件の悪魔はダンテのお眼鏡にかなったようだ。

 

「要は一撃で仕留めてしまえばいいんだろ。であって即三秒でなます切りするだけ。板前にだってできるさ」

「なら、お願いできる?」

「あぁ。依頼料とは別にピザとストロベリーサンデーを用意しとけよ」

 

 ダンテは椅子から立ち上がり、後方の壁に立て掛けてある数々の武器から剣を1本掴み背中にしまう。

 そして振り返りざまに机の引き出しに手を伸ばし、中からあるものを取り出す。

 それは2丁のハンドガンだ。

 黒と白。どちらも禍々しく、しかして神々しさすら感じる一品。それをダンテが腰にしまう最中、マキマはふと、その2丁から懐かしい気配を感じた。

 各国が探し求めて止まない、その気配を。

 

「よーし。準備完了だ」

「車を表に用意しているから、早速行こうか」

「それじゃあ漁に行くとするか。それとレゼ、お前はいい加減着替えて店番だ。犬と馬の散歩をしておけよ」

「はーい。お土産よろしくね~」

「おう、新鮮なイカ刺持ってきてやるよ」

「ウゲェ………さすがにそれ以外で!!」

 

 ダンテは出入り口に向かいながら、軽く笑いつつ手を上げて返事を返す。

 ダンテに続くようにマキマも後を追い、二人はレゼに見送られながら店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この物語はチェンソーマンが主役でも、頭のネジが外れた少年が主役でもない。

 民間デビルハンター事務所、『Devil May Cry』

 その店主、ダンテ。

 知る人ぞ知る凄腕のデビルハンター。彼の実力を深く知るものはこう語る。

 悪魔すら逃げ出す悪魔、と。

 その男こそが、この作品の主役だ。

 

「さぁ──────Let's Rockッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イカの悪魔の結末?

 そんなの、ダンテに出会って数秒後には船盛になっていたよ。

 




短編をちょこちょこ書こうと思ってます。
時系列とかは順不同。
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