悪魔よりもピザとストロベリーサンデーを   作:あるく天然記念物

4 / 6
レゼ編の特典第二弾はアカンて
次回『作者死す』デュエルスタンバイッ!!


レゼの特殊な1日 後編

「ダンテ、貴様には武器人間を送った筈だ。なぜここにいる!!」

 

 予想外だったのか。

 ダンテの登場に悪魔は慌てだし、疑問をぶつける。

 そんな悪魔とは対照的に、ダンテは余裕そうに……というより、余裕そのもので答えた。

 

「ハッ。んなもん、全部ぶっ倒してからに決まってんだろ。そんなことも見ただけでわかんねぇとは、その見た目どおり頭の中はカチコチみてぇだな」

「ふっ、ふざけるな!! だ、ダンテ、貴様には武器人間を一分隊送ったのだぞッ?!」

 

 一分隊。

 人数にして約10名。

 その全てが武器人間となれば、その驚異は公安デビルハンターの総力と同程度だろう。

 だが、ダンテはそんな尺度では測れない。

 

「ふざけてねぇよ。つーか何人送られようと、どいつもコイツも骨がねぇ。少し時間はかけちまったが、俺の玩具にすらならなかねぇな。次があるんだったら、もう少し頑丈なヤツを頼むぜ」

「オモッ?! いやっ、いくらダンテとは言えそんな………」

 

 言葉にならない。

 今の悪魔の表情を言語化するなら、それしかなかった。

 だが、それも仕方ないことだ。

 どこの世界に1国家機関の総力と互角に戦う個人がいると思うか。

 それほどまでに目の前の男は規格外過ぎたのだ。

 

「さっ、そろそろウチの事務所も飯の時間だ。さっさと終わらせてもらおうか」

 

 ダンテは背中の剣を引き抜き、悪魔の方へと構える。

 それは悪魔にとって死刑宣告に近かった。

 

「ふざっ……けるなよ」

 

 だが、悪魔も諦めるわけにはい。

 某連邦のモルモットである悪魔には退路が無い。

 任務に失敗した諜報員が辿る末路など、古今東西一つしかないのだ。

 

「ふざけるなぁッ!!」

 

 悪魔は鉄球をダンテへ向けて乱雑に振り回す。

 レゼが窮地に追い込まれた技だ。

 さらに付け加えれば、レゼの片腕を奪った遠隔操作も含めた鉄球四つによる多重攻撃と化していた。

 しかし、今回は相手が悪すぎた。

 

「巻きでいくぜ。さぁ、パーティーの始まりだッ!!」

 

 一撃目。

 ダンテは身体を反らして避けつつ、手に持つ剣──リベリオンで兜割りを鉄球へと撃ち込む。

 

「そらよっ」

 

 まるで豆腐を切るかのように、何の抵抗もなく鉄球が真っ二つに切り裂かれた。

 

  Savage!

 

「こっ、このぉ!!」

 

 二撃目、三撃目。

 ダンテを挟み込むように鉄球が撃ち込まれる。

 ダンテは剣を背中に戻し、鉄球が触れる瞬間に合わせるように左腕を少し曲げ、右腕は肘を腰に当てるように構える。

 

「ロイヤルガード!!」

 

 そうして二つの鉄球がダンテに触れると、紅い火花が散りながらその衝撃は全てダンテの内側へと受け流された。

 衝撃を吸収し終えると、ダンテは右腕を二つの鉄球へと向け、掌底から貯めた衝撃を全て解放する。

 

「リリース!!」

 

 ピキーン!!

 紅い衝撃が、鉄球へと流れる。

 まるでガラスを数枚割ったような音を響かせ、二つの鉄球が砕けた。

 

  Sick Skills!

 

「バカな………バカなバカな!!」

「それとお前、ポンポン鉄球投げすぎだ。お前自身、それがどんなに危険か味わいなッ!!」

 

 続く四撃目

 ダンテは避けると同時に鎖を掴み取る。

 ピン、と。悪魔とダンテとの間で鎖が張った。

 

「こっ、このっ!?」

「そーら、派手に躍りな!!」

 

 均衡は一瞬。

 悪魔が鉄球の主導権を取り返そうと引っ張るも、ダンテの怪力によって逆に奪われる。

 

「ほぉ───アチャチャチャチャチャーッ!!」

 

 エセ外国人のような掛け声と共に、鉄球の乱舞が悪魔を襲う。

 扱っているのが1個にも関わらず、悪魔が放ったものよりも数で劣っていながら遜色のないものを繰り出す。

 前後左右。逃げ場がないように撃ち込まれ、悪魔は一歩たりとも動けない。

 全身がボロボロの血塗れとなったところで、最後にダンテが「ホァチャッ!!」の掛け声と共に悪魔の身体ごと、鉄球を壁へと打ち付けた。

 

 Smokin’Sexy Style!!

 

「が………かはぁ………」

 

 肉片を飛び散らせながらも、悪魔は立ち上がった。

 思っていたよりダメージが少ない。

 いや、ダメージそのものが癒えている。

 どう言うことだ? もしかしたら、自身と同じように心臓や頭をぶっ飛ばされようと無事な体質かなのか?

 ダンテの頭に疑問が走るが、その答えはすぐに見つかった。

 見れば空になった輸血パックの残骸が悪魔の足元に散乱している。

 どうやら最後の攻撃で隠し持っていた輸血パックが弾け、思わぬ回復が発生したようだ。

 んだよ、焦らせやがって。

 

「随分と幸運みたいだな。だが、これでそれもお仕舞いだ」

「ひっ──」

 

 ダンテがリベリオンを水平に構えると、悪魔が声にならない悲鳴を上げる。

 どうやら先ほどの攻撃の傷は癒えたものの、精神的な傷は残っているようだ。

 悪魔はダンテから少しでも遠ざかろうとするも、背後は壁。一歩たりとも逃げることはできなかった。

 

「さぁ────行くぜッ!!」

 

 ダンテがリベリオンを前へと突き出しながら悪魔へと突っ込む。

 

「くっ…………来るなぁッ!!!!」

 

 

 悪魔は、目の前に迫り来る恐怖に耐えられなかった。

 思い切り涙を流し、半狂乱になりつつ鉄球をダンテへと投げつける。

 まるで子供の癇癪そのものだった。

 しかし、ここでも悪魔の幸運が働いた。

 運良く、鉄球が真っ直ぐにダンテへと向かっていたのだ。

 これはもしかしたら行けるかもしれない。悪魔に微かな希望な生まれた。

 だが、そんな幸運すらもぶち壊すのが、規格外というやつだ。

 ダンテは向かってきた鉄球に対して、リベリオンの切先を向けた。

 この時点で、悪魔は乾いた笑みしか浮かべることができなかった。

 

 ギィーン!!

 

 金属同士が触れ合う不協和音が鳴り響く。

 火花を散らせながら、リベリオンと鉄球が鍔競り合う。

 しかし、先の一戦を思い出してほしい。

 最初の一発。鉄球はどうなったのかを。

 

「スティンガーッ!!」

 

 スパン、と。

 ダンテが気合いを込めた一撃は、再び鉄球を豆腐へと変えてしまう。

 そしてダンテの放つスティンガーが、勢いそのままに悪魔へと向かう。

 

(あっ───終わった)

 

 神に祈る間もなく、リベリオンが己へと突き刺さる。

 悪魔は恐怖から思い切り目を瞑った。

 次の瞬間──スドンッ!! と。

 まるで爆弾が爆発したような爆音が店内を駆け巡った。

 少しの静寂の後、悪魔に疑問が走る。

 …………………あれ? いたくない?

 全身はこれでとかと言う程に痛みがあるが、決定的な痛みが存在しない。

 もしかして、既に死んでいるのだろうか。

 恐る恐る、悪魔は目を開く。

 

「よお、少しは反省したか?」

 

 目の前にダンテがいた。

 

「───ッ?!」

 

 思わず叫びそうになるのを必死に我慢し、悪魔は視線を移す。

 そこにあったのは薄皮一枚程度の間を挟んで、リベリオンが突き刺さっていた。

 なんで自分は生きているのだ。これはどう言うことだ。

 

「なっ……なんで」

「あ? おいおい。俺はデビルハンターだぞ。倒すのは悪魔だけだ」

 

 意味が分からなかった。

 

「それなら──」

 

 悪魔がダンテへと問いかける前に、ダンテが答えを告げる。

 

「悪魔は涙を流さない。あんたは泣けるだろ? なら、あんたは悪魔じゃない───人間だ」

「なんだよ………それぇ」

 

 甘いにも程がある。

 誰だよ、悪魔すら逃げ出す悪魔って言ったヤツ。最強のデビルハンターの称号が聞いて呆れる。

 けど、納得した。

 この男、ダンテは本気で言っており、その信条を成し遂げてきたのだと。

 そんな信条を掲げてるデビルハンターとか、どんなデビルハンターよりも頭のネジが吹き飛んでやがる。

 あぁ………なるほど。優等生が表社会で生きていけるわけだ。

 ホント、これはズルいって。

 そんなふうに接して貰えたら、否が応でも人になってしまう。

 なんで………優等生より先に私のところに来てくれなかったのだろうか。

 スルリと、両手からモーニングスターが滑り落ちる。それと同時にどろどろの溶解液と一緒に悪魔の肉体が剥がれ落ちて行く。

 数秒と経たず、一人の少女がペタンと地面に座り込んだ。

 もう、悪魔は…………いや、某連邦の刺客であるゾイは闘えなかった。

 

「さて、人間は倒せないが、悪い子にはお仕置きが必要だよな」

「………え?」

 

 言い笑顔だ。

 愉快そうに笑いながら、ダンテが拳をゾイへと向けていた。

 それが何を意味するのか、ゾイは瞬時に理解した。

 え、この状況でやるの?

 

「ちょっ、ちょっとダンテさん? ここは感動的なシーンでは?!」

「古今東西、悪いことをした子供は等しく受ける。安心しろ、俺は男女差別はしない主義だ。初回サービスとして一発で許してやる」

「ちょ───あ゛」

 

 げ ん こ つ!!

 男女平等。ダンテの鋼鉄の拳が炸裂。

 まるで鉄板を思い切りぶつけられた衝撃がゾイを襲い、そのまま少女の意識が刈り取られた。

 漫画のようなたんこぶを携え、ゾイは地面へと沈む。

 

 Crazy

 

「………ホント、ダンテらしい終わりだ…………ね」

「ん? おい、レゼ。しっかりしろ、おい!!」

 

 安心しきったのだろう。

 ゾイと同じように、レゼも地面へ倒れ込むように意識を失った。

 

○ ○ ○

 

 エピローグを語るとしよう。

 スーパーマーケットでの一戦が終えた頃から程なくして、公安デビルハンターである早川アキが現着。

 意識を失っていたレゼはアキから輸血パックを融通して貰い、元気一杯に回復。意識を取り戻した。

 その後アキはゾイを拘束し、公安事務所へ帰る前にレゼに対してキツく指導を行っていた。

 

「レゼさん。貴女、どれだけ危険な事をしていたのか分かっているのですか?!」

「いやぁ……あれは仕方のなかったというヤツでして………」

 

 レゼの言い訳に、アキの雷が落ちた。

 

「仕方がないで死にかける人がいますかッ!!」

「ひっ………ご、ごめんなさい」

 

 あまりの迫力に、レゼは素直に謝罪。

 激昂していたアキもレゼを取り巻く背景は知っている。今回の件についてもおおよその予想はついていた。そのためそれ以上に怒ることはせず、諭す方向へと話題を変える。

 

「レゼさん。どれだけ腕に自信があるとしても、今度からは闘わずに逃げてください。俺、知り合いが死ぬのは本気で嫌なんです」

 

 紛れもないアキの本心。

 それを補足するように、アキの後ろから黒い影が飛び出してきた。

 

『そうだぜ、レゼの嬢ちゃん。アキのヤツはよぉ、知り合いが死んだら仕事では冷淡を装いつつも、一人になったとたんメソメソしちまう甘ちゃんなんだからなァッ』

「…………フンッ!!」

『ぎァあああああああッ!! 人殺しー!!!!』

「あはは………」

 

 鳥形の悪魔がアキをちゃかし、アキが照れ隠しのように鞘に収めた刀でぶっ飛ばす。

 目の前の光景に、しかられていたレゼも思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 アキが契約している“黒いカラスのような鳥”の悪魔とアキの漫才は最早恒例行事。一時期、ダンテがアキを鍛えた時にどこからかダンテが見つけ、何を思ってかアキが契約してからずっとこの調子だ。

 他にもアキは二体の悪魔と契約している。それにより総合力で“公安最強”の称号を獲ているのだが…………それはまたの機会に語るとしよう。

 

「とにかく、絶対に無茶はしないこと。いいですね?」

「はーい」

「…………ホントに分かっているのか?」

「いやいや、大丈夫ですって」

 

 疑心の目をレゼへと向けるアキ。

 これ以上お説教の時間を増やしたくないとレゼが考えていたら、見かねたダンテが助け船を出してきた。

 

「大丈夫だって、アキ。このバカが今後無茶をしないように、俺の方で犬か馬でも護衛につけるさ」

「それなら………はっ? 馬、犬?」

『あいてててて……………死んだ爺さんが川でブレイクダンスしてたぜ…。ほら、アキ。ダンテちゃんもそう言ってることだし、さっさとそのガキ連れて帰ろうぜ。遅くなったら岸辺のヤツ、俺たちが居ないことを良いことにあれこれ仕事を押し付けてくるぞ』

「お前に家族なんか居ないだろうが。けど、岸辺さんについては言う通りか……よし。ではダンテさん、俺たちは帰りますので、レゼさんの事、お願いしますよ」

「おう。お前もチキン野郎の世話頑張れよ」

『誰がチキンだ!! この泣き虫がッ!!』

 

 「バーカ!! バーカ!! あとバーカ!!」と小学生レベルの罵声をダンテへと浴びせる悪魔とゾイの二人を引きずってアキは公安事務所へと帰って行った。

 

 それを見送ったダンテとレゼも事務所へと帰ることとなる。

 

「ねぇ、ダンテ」

 

 その道中、レゼはふと疑問になったことをダンテに尋ねた。

 

「あのゾイって子以外の武器人間は殺したの?」

「まっ、大半はな」

 

 ダンテ曰く、襲ってきたのは10名。

 偶然居合わせたアキと共闘になったとダンテは語る。

 その内2名をアキが対応し、残りはダンテが応戦。

 アキの方は既に民間人を殺していたため、交渉の余地なく処理された。武器人間のため死ぬことはないが、マキマがいる以上、死ぬよりも辛いことになるだろう。

 ダンテも大半が同様。

 だが、8名の内2名は民間人に被害を出しておらず、ダンテに対して泣きながら降伏したため、今回のゾイと同じようにげんこつで済んだそうだ。

 

「俺は紳士だからな。今回のゾイやお前のような泣き虫の悪ガキはげんこつで終わらせたさ」

「えぇー、泣き虫はダンテでしょ?」

「アホか。あのチキン野郎の言うことを真に受けんじゃねぇッ」

 

 あはは、と。笑うレゼに対し、ダンテは苦虫を噛み潰したような顔で後頭部を軽く掻いていた。

 とりあえず、こんどチキン野郎にあったらシバくと考えていたダンテであったが、ここであることを思い出した。

 

「おいレゼ。今さらだが、俺に何か言うことがあったんじゃねぇか?」

「えっ? 何かって何よ」

「とぼけなくてもいいぜ。ほら、俺に日頃の感謝を込めた一言だよ。まだ、面と向かって言われてねぇからな」

「あー………あれね」

 

 ここに来てまさかの催促。

 思い出すだけても恥ずかしいのに、改めて言いにくいことを聞いてきたもんだ………いや、この時のダンテの顔を見てレゼは気づいた。

 この男、笑ってやがる。それもめちゃくちゃ楽しそうな少年みたいな顔でだ。

 どうやらあの悪魔から泣き虫と馬鹿にされ、それを弄った自分に対して根に持っているようだ。

 流石のレゼも、そんな空気で言いたくはなかった。

 そのため、

 

「私抜きで栄養バランスが良くなったら言うねー!!」

「はぁ?! ちょっ、おい!!」

 

 はぐらかすように、レゼは事務所に向かって走り出した。

 本当は言いたかったが、流石に今回はダンテが悪い。間が悪いったらありゃしない。

 追いかけるダンテを尻目に、レゼは顔を真っ赤にしながら走り続けるのであった。

 

 なお、その日のデビルメイクライでの晩御飯はピザとストベリーサンデーが振る舞われたんだとさ。

 

 

「ホント、素直じゃねぇな」

 

○ ○ ○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、岸辺さん。今回、私の出番は?」

「知らん。それよりマキマ、俺は飲みに行くからアキにこの仕事を振っておいてくれ」

「……………しょうがない。今回の件について詳細な報告書を書きたいって言ってダンテを呼び出そうかな」

「ほどほどにしておけよ。んじゃ、俺は帰る」

「そちらもほどほどにしてくださいね」




次回は『作者死す』か『アキの始まり』、『岸辺の語る最強のデビルハンターについて』このどれかになると思います。
契約があるかぎり、この糞小説は甦るのだぁ


追記 誤字脱字報告、毎日感謝です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。