悪魔よりもピザとストロベリーサンデーを   作:あるく天然記念物

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劇場特典第2弾で作者が死んだので更新です


岸辺の語る最強のデビルハンター 講義編

 某月某日。

 この日は一部の公安デビルハンター対象の勉強会が開催されていた。

 そんな勉強会に参加すべく、公安対魔特異課の会議室に三人と一羽の影があった。

 

「なぁ、なんで俺はこんなとこに居るんだ? 俺はぁ、勉強なんてこれまで1ミリもしたことねぇぞ。それに悪魔を何匹か殺したから、やっとマキマさんと仕事できるって思ってたのによぉ」

 

 一人目はガラも素行も悪そうな少年。

 つい最近、ゾンビの悪魔討伐の際に保護された武器人間。名はデンジだ。

 頭のネジはだいぶ飛んでいる公安デビルハンター。

 

「ワシの爺さんが勉強の悪魔に殺されてのぉ。それ以来、ワシは勉強すると発狂してしまうのじゃ」

 

 二人目は赤い角がチャームポイントの女性。

 一見するとそれっぽいことを口にしているが、大半の言葉は虚言なのが特徴の血の魔人。名はパワー。デンジの公安デビルハンター活動におけるバディだ。

 こちらもデンジと同じで頭のネジはだいぶ飛んでいる公安デビルハンター。飼い猫の名はニャーコ。

 

「お前たち、社会人になっても特殊な企業を除いて勉強会は存在するからな。大人になれば勉強しないでいいなんて思っていたら大間違いだぞ」

『そうそう。どこぞのピザとストロベリーサンデー狂いの男だって、民間デビルハンターの資格取るために予備校に行ったぐらいだぜぇー。大人の世界は強さだけでは生きにくいのさ』

「うへげぇ………なんか大人になりたくねぇな」

「ワシは総理大臣になったら、勉強が不要な世を作ろうぞ」

「それは普通に日本が終わるから止めておけ」

『悪魔の俺でもその野望はドン引きだ』

 

 最後の三人目と1羽は、現公安総合力最強の早川アキとそのバディ兼契約悪魔。

 悪魔の方の名はグリフォン。何の悪魔かは『トップシークレットだぜぇ』とのこと。

 早川アキは二人の教育係で、今回の勉強会のため嫌がる二人をガム四枚で買収し連れてきていた。

 そうして三人と一羽が集まって数分。雑談をしていると、スキットルを片手に中年のおじさんが入室してきた。

 

「よぉ、全員揃ってるな」

 

 おじさんはスキットルの中身を一口飲み、会議室一番奥の席に着く。

 おじさんの名は岸辺。公安対魔特異1課隊長である。

 総合力では最強の座をアキに獲られたが、個人の戦闘力としては依然として公安最強のデビルハンターだ。

 

「午前は座学だ。俺は岸辺。公安対魔特異1課隊長だ。バカなお前たちのために、最強のデビルハンターが誰なのか教えてやる。要はソイツにダル絡みしたらボコボコにされるから、絶対に喧嘩を売るなと言う注意喚起だ。午後からは物理的に教え込む実技も行う」

「最強のデビルハンター? それってアキの事だろ。公安にいるやつら全員がそう言ってるし」

「バカを言え!! 公安最強はワシじゃッ!!」

「二人とも岸辺さんの話を遮るな。黙って聞け」

「いや、いい。この機会にアキの事についても話すつもりだった。公安最強として歯向かうなってな」

「岸辺さん。タイマン張ったら俺、普通に貴方に負けるんですが?」

「悪魔との闘いは基本総力戦だ。使える手札は全て使う。俺はもう悪魔との契約が出来ない。故に最強はお前だよ」

「なんか…………納得がいきません」

「なら、さっさと本気の俺とのマジバトルで勝てるようになれ。そうすれば俺は晴れてお役目ご面倒だ」

「あ? 結局最強なのはアキなのか? それともこのオッサンか?」

「バカかデンジは!! 最強なのはワシじゃッ!!!!」

「はぁ?! バカじゃねぇし!!」

「お前ら………はぁ」

 

 別の方向で騒ぎ始めるデンジとパワー。

 アキは怒鳴りたくなる気持ちをどうにかこらえつつ、ここ最近の切り札を切る事にした。

 懐から二枚のガムを取り出し、それを二人へと差し出す。

 そして一言。

 

「これをやるから、黙って話を聞け」

「了解です」

「うむ」

 

 エサを与えられた二人は椅子にキチンと座り、聞く姿勢に入る。

 完全に動物園のエサやりである。

 

「よし。静かになったから話を続ける。早速だが最強のデビルハンターについて教えていくぞ」

 

 岸辺は懐から写真を取り出し、会議室のホワイトボードへと張り付けた。

 その写真には赤いコートと2丁拳銃、そして背中に剣を背負った男が写っている。無駄にポーズを決めながら。

 

「この男、ダンテが現在世界で最強のデビルハンターだ。この公安の建物のすぐ近くに事務所を構えている」

「へぇー、なんかそこまで強そうに見えねぇけどな」

「ワシの方が強そう」

『デンジやパワーの言う通りだ。この俺でもボコボコにできるぜ!!』

「妄言はそこまでにしておけグリフォン。現実問題、アキの使役するグリフォン、ついでに使役するアキが片手間にボコられている。そしてその両者から片手間でボコられるのがお前たちだ。連想ゲームは多少頭を使うが、力関係だけは頭に入れておけ」

「「マジで?!」」

『…………岸辺よぉ、事実列挙は鳥の尊厳を破壊するから禁止にしねぇか?』

「…………さらっと俺の尊厳まで壊さないでください」

「なら事実で壊されない強さを手に入れろ」

 

 あのグリフォンとアキがものすごく悲しそうな顔をしている。

 この時点でデンジとパワーの脳内で最強ピラミッドの頂点にダンテが刻まれた。

 なぉ、数秒後にパワーの脳内からは消える。

 

「さて、続けるぞー」

 

 そうしてアキとグリフォンの心のダメージが無視されながらもダンテについての講義が進んでいく。

 ダンテへお願いするときにはピザとストベリーサンデーを与えれば大抵手を貸してくれる事を説明した辺りでデンジが元気よく手を上げた。

 

「あ? 岸辺さん質問です!!」

「先生と呼べ。そっちの方が答える気になれる」

「岸辺先生、質問です!!」

「はい、デンジ君」

「なぁ、ダンテが最強なのは分かったけどよぉ。なんで最強って決まったんだ? 最強トーナメントでも開いたのか?」

「なるほど。ある意味で良い質問だ。名実ともにダンテが最強とされるのは、残念ながらすべてのデビルハンターと本気のマジバトルをしたわけじゃない。まあ、マジバトルをしても勝ち抜きそうだけどな」

「えぇー? ならどうやって決めたんだよ。名乗るだけなら俺も最強を名乗りてぇよ」

「ワシは既に最強じゃけどなッ!!」

「名乗るだけならその辺の悪魔にだってできる。だが、ダンテはそれを世界に見せちまったんだ。ところでお前たち、銃の悪魔についてどれだけ覚えている?」

「前にマキマさんから教えてもらったから色々覚えてるぜ。確か世界で一番被害を出した悪魔だろ?」

「被害は確か主に建造物。人はそこまでじゃったかの。まっ、ワシほどではないがな」

「まっ、大体はあっている。正確にはこうだな」

 

 岸辺は再度ホワイトボードの前に立つと、ペンを取り出し書き込んでいく。

 銃の悪魔の被害の変遷だ。

 

 11月18日 午前10時

 アメリカ 124秒上陸 148名死亡

 カナダ 7秒上陸 81人 死亡 

 ハワイ 0.4秒上陸 死亡者無し。

 中国 37秒上陸 32人 死亡

 ソ連 210秒上陸 302人 死亡

 メキシコ 2秒上陸 88人 死亡

 インド 15秒上陸 50人 死亡

 日本 上陸後、24秒で討伐 12人死亡

 

 倒壊件数約2億8千万世帯。

 

「これが銃の悪魔の被害だ。ちなみに死亡者の死因も大抵は銃の悪魔移動時の倒壊巻き込まれだ」

「へぇー。なんかパッとしない被害っすね」

「逆だデンジ。被害が少ないから凄いんだ。ダンテさんが被害のでないように上空で闘ったから、この数で済んでいるんだ。もし居なかったら、俺の家族もこの数に入っていただろうな」

「ちなみに銃の悪魔の討伐地点は北海道。アキの実家の上空だ」

「アキの実家って北海道なんだ」

「ワシの実家も北海道にあってな。いやー、もう少し早めに里帰りしていればワシが銃の悪魔を討伐していたのぉ」

 

 ちなみに、どこかの時間軸ではアキの家が一瞬で全壊しているが、この時空では半壊で済んでいる。

 上空なのにどうして半壊したのかって? そりゃ銃の悪魔を倒した後にダンテがアキの家へ自由落下したからだ。

 まさにまっ逆さまに落ちる欲望である。

 まあそのお陰でアキとダンテが知り合い、公安総合力最強が誕生したのだから悪いことばかりではない。

 

「デンジ、お前はさっき銃の悪魔の被害がパッとしないと言っていたが、倒壊件数については全てヤツが移動した結果によるものだ。つまり攻撃ではなく、ヤツが歩くだけでそれだけの被害になったと言うことだ」

「えっと………つまり?」

「お前で例えるなら、お前が買い物に出掛けただけで日本が更地になることになる」

 

 岸辺の説明を補足すれば、現在の日本の建物の件数は約5千万以下。銃の悪魔が出現して一時間もかからずに2億件吹き飛んだことを考慮すれば、岸辺の説明もあながち間違っていない。

 

「それとヤツの残り香も理由になる。デンジとパワー。お前たち二人が闘った永遠の悪魔を覚えているか?」

「あぁ。生きていれば俺がノーベル賞を取れた悪魔だな、覚えてるぜ」

「なに?! デンジ、ノーベル賞をもらうのはワシじゃ!! そして総理大臣になるのだ!!」

「お前らの言う総理大臣やノーベル賞は放っておくとして、あの永遠の悪魔が強かったのは銃の悪魔の肉片を取り込んでいたからだ。重さにして数グラム。銃の悪魔全体の割合からしたら、約0.001%あれば良い方だろう。正確じゃない簡単な比較になるが、それだけの肉片であの強さになる。これが100%となれば、あの時の永遠の悪魔が1万体同時に襲ってくるレベルになるってことだ」

「いちッ?!」

「万じゃと?!」

『まっ、話しはそう単純じゃねぇが、おおよそその程度には強いだろうな、銃の悪魔はよぉ』

「グリフォン、お前も闘った事があるのか?」

『あぁ? なんだよアキ、知らなかったのかよ。ヤツと一戦交えたのはここではなく、地獄でだけどなぁ。その時の俺は今よりもっと大きくてカッコよかったんだぜぇ?』

「「……………」」

『んだよデンジにパワー。そんな可哀想なヤツを見る目をしやがって…………おい、お前らもしかして信じてねぇな?!』

「だって…………」

「小さいしのぉ」

『だから昔はでかかったんだよ!! この大きさはダンテのせいだってのッ!!』

 

 羽を広げてアピールするグリフォン。悲しいが、実際の姿を知らないデンジとパワーにはレッサーパンダの威嚇程度にしか見えなかった。

 

「とまあ、銃の悪魔が凄く強いことは分かったな。ヤツは世界各地を移動する際、肉片が焼け落ちて世界各地に落ちている。肉片でも厄介だから、公安で集めるのも仕事になるぞ」

「へぇ………ん? はい、岸辺先生!!」

「はい、デンジ君」

「銃の悪魔の肉片がヤバイのは分かったけどよぉ。本体はどこに行ったんだ? ダンテが倒したってことは死体はあるんだろ?」

「デンジ、それは……」

 

 デンジの質問に苦い顔を浮かべるアキ。

 そんなアキを岸辺は左手で制した。

 

「公安で働く以上、別に遅かれ早かれだ。デンジ、これは公安でも極秘だが、死体については肉片として世界に落ちたのが12%。死体として残ったのが88%。その88%をダンテが持っている。より具体的に言うなら、ダンテが持っている2丁拳銃は元々が銃の悪魔の死体だ」

 

 さらに岸辺はダンテがとあるガンスミスへ依頼して銃を作成したこと。またそのガンスミスが既に亡くなっていることを説明。

 

「とまぁ、とんでもない悪魔を倒したダンテが、とんでもない悪魔でつくった銃を持っている。まさに鬼に金棒な状態なため、世界中がダンテを最強と認めているわけだ」

 

 それにより、銃の悪魔の死体を求め、世界中が水面下でダンテを狙っているのだが、そこまでは岸辺も説明をしなかった。

 それはダンテ個人の問題だし、公安に一切関係ないからだ。

 寧ろ、日本政府が内々に持っている肉片を諸外国が無視し、ダンテにのみ集中している状況に、岸辺はダンテに対して感謝すらしていた。

 

「そろそろ時間か。ここまで説明したから分かったとおもうが、ダンテに対してくれぐれも喧嘩を売るなよ。もし売って諸外国に日本が狙われることになればダンテが火消しのためお前らを消す前に、マジの俺がお前らを消す…………と言っても、俺の事をそこまで知らないお前らには現実味が沸かないだろう。だから午後からの実技でたっぷりと身体に叩き込んでやる。んじゃ、昼食ったら一課の訓練室集合だ。くれぐれも逃げるなよ、面倒だから」

 

 最後にスキットルからお酒を一口のみ、岸辺は会議室から出ていく。

 それを見届けたアキはデンジとパワーの二人へあるアドバイスを告げた。

 

「よし。午後は死ぬより辛いことになるから、今のうちに食っておくぞ。恐らく、晩飯が入らなくなるからな」

『気合い入れて食えよ。実技の岸辺はヤベぇからなぁ』

「………えっ?」

「マジで?」

 

 マジである。




ダンテにお願いするときのメニュー表(今作品のみの公安編)

悪魔を倒してほしい(雑魚悪魔)
対価 ストロベリーサンデー一週間分
※ダンテの気分しだいで断ります
※強い悪魔? 無報酬でも勝手に向かいます

魔具を貸してほしい
対価 ストロベリーサンデーOrピザ1ヶ月分
※とあるうるさいヤツに限り特価で提供

手を貸してほしい
対価 相手次第で変動。悪投の場合鉛弾

レゼを貸して……
『おっと、お帰りはあちらだぜ、お客様』
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