ヒーロー症候群   作:夜行列車予行

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赤くなったり、青くなったり、紅くなったり


作戦!!深めろ!絆の力!

「あり得ない!!絶対に許さないから!!この……偽物!!!」

 

 放課後、校舎の屋上にて女学生の魂の叫びが響く。

 

「ま、まぁ落ち着けよ……別にレッドの恰好で悪いことしたわけじゃねーし、さ?」

 

 俺は怒りに顔真っ赤にして、左手で屋上の柵を、右手でスマホを握りつぶす勢いで握るレッドの大ファン(雪乃道)を窘めるよう、そう呼びかける。

 

「私!レッドを騙る人間がぁ!!世界でいっっっっちばん嫌いなの!!!」

 

 うん、めっちゃ知ってる。

 

 屋上の柵から手を離し、雪乃道は振り返って力いっぱいにそう主張した。

 

「大体なんなの?この中途半端な衣装は!偽物だとしても、仮にもレッド騙るんだったらちゃんとした衣装選びなさいよ!!レッドの衣装はこんな赤色じゃないし、こんな見せびらかす様な光沢もないし、大体持ってるプロテクトギアの形状も違うじゃない!レッドのプロテクトギアはこれより二センチは小さいし、そもそもこれ使うのは相当追い詰められた時だけだし!レッドがこんな魔獣相手に使う訳、ないでしょ!!!」

 

 一息でそこまで言い切ると、流石に息切れしたのか、肩を上下させて呼吸をしだした。

 

 こわ……てかコスチュームの色合いとか、プロテクトギアの形状とか、俺より詳しいじゃん……

 

 俺は雪乃道のレッドに対する熱量に戦慄しつつ、何とか雪乃道を落ち着かせようと、話題を変える。

 

「それよりよ、何話すために呼んだんだよ?もしかして、偽レッドへの愚痴を聞かせるために呼んだのか?」

 

 まぁ、雪乃道ならその理由で呼び出してもおかしくない気もするけど……

 

「ち、違うよ!いや、それも多少あるけど……赤司くん、怪我とかしてないかなって……」

 

 先程までとは違う、恥ずかしさに顔を赤く染めた雪乃道はそう言うと俺の顔を覗き込むように見て、そう言った。

 

「あー、怪我とか特にないぞ。レッドが駆けつけてくれたからな、俺は無傷よ」

 

 俺は無事をアピールするよう、自分の肩を叩きながらそう告げ、昨日の夜にもロインで同じようなやり取りをしたことを思い出す。

 

 実は俺がレッドで、直接戦ったんだぜ!……と言いたい気持ちも少しあったが、言えば次の日平手打ちが飛んで来る事が想像に容易かったため、やめておいた。

 

 それから雪乃道は俺の周りを歩き、体を見回し始めた。

 

「確かに……怪我は無さそう!いやー、レッドに助けてもらうなんて貴重な経験だよ!良かったね!」

「おー、確かに貴重かもな」

 

 俺がレッドに助けられるなんて事、確かにあり得ないし、そういう意味では貴重だろう。

 

「雪乃道も、スノーワルツとして会ったんだろ?良かったな」

 

 俺がそう言うと、てっきり喜んで昨日の話をするかと思われた雪乃道は少し悲しそうな表情で語った。

 

 「いや……生レッドは本当にかっこよくて、カメラに撮って永久保存したいくらいだったんだけど!……サイン、貰えなくて……」

 

 『かっこよくて』を聞いた辺りでにやけていた俺は、サインの事を思い出してハッとする。

 

 そう言えば、あの時は状況が立て込んでたから雪乃道にサインを書いてやれなかったな。

 

「……もしかしたらさ、またレッドに会えるかもしれないし。そん時に雪乃道の分のサイン、貰っといてやろうか?」

 

 明日にでも、レッドと偶々会ったと言う建前で俺がサインを書いた色紙を渡そうかと思ったが、俺の提案に対し、雪乃道は首を横に振った。

 

「ううん、いいの。私もあの時、テンション上がってサイン貰おうとしちゃったけど……実はね、レッドには『魔獣を倒したらサインを貰える』って条件でお願いしてて……魔獣を倒したのカースティって言う別の魔法少女で、私には貰う資格が無いの……」

 

 諦めた様な表情でそう言う雪乃道は、やっぱりサインが欲しいのは本心なのか、悲しそうな目をしていた。

 

 カースティ……どっかで知ったような名前だった気がするが、そうか、あのムカデ野郎を倒したのはスノーワルツじゃなかったのか。

 

「……だったらさ、これからその資格が貰えるよう、魔獣退治頑張ってこうぜ」

 

 俺がそう言うと、雪乃道は一瞬驚いたように俺の顔を見てきた後、笑顔へと表情を変えた。

 

「赤司くん……もしかして、励ましてくれた?……ふふっ、ありがとうね」

「ん……まぁ、な……」

 

 そう言ってくる雪乃道の言葉と笑顔がくすぐったくて、俺は目線を少し下へとずらした。

 

「赤司くん、照れてる?」

「照れてねーよ!……話、終わったなら帰ろうぜ。俺、商店街の屋台で売ってるクレープって奴、食ってみたかったんだよな」

 

 俺は誤魔化すよう、そう話しながら校舎に繋がる扉へと向かう。 

 

「あ!待って!赤司くん!」

 

 そんな俺を止めるよう、雪乃道が後ろから声を掛けてきた。

 

「なんだ?雪乃道、クレープ嫌いか?」

 

 俺が振り返ってそう訊くと、雪乃道は首をブンブンと横に振りながら答えた。

 

「クレープは私も食べたいけど……そうじゃなくて!話!まだ赤司くんに話したい事があるの!」

 

 そこまで言うと、雪乃道は一度深呼吸をした後、真剣な顔つきになって続きを話した。

 

「あのさ、昨日の出来事を整理するとさ、黒いドレスの風の魔女って人が、スノーワルツ(わたし)を倒すために赤司くんを人質として誘拐しに来たってことだよね?」

「あー、そうだな。アイツ、俺の死体を見せるとか、物騒な事言ってたぜ」

 

 俺がそう言うと、雪乃道は表情と声に深刻さを増して語った。

 

「それってさ、結構深刻な事だと思うの……また、私のせいで、赤司くんが狙われちゃったら、今度はレッドが来てくれるかも分からないし……」

「それは……そうだな」

 

 俺がレッドだから問題ない……と言いたい所だったが、アレよりもっと強い敵が、2、3人くらいで襲いかかってきたら苦戦するかもしれない。

 

「でもよ、どうしようもなくないか?俺、気付いたら部屋の中にアイツが居てさ、いつから尾行()けられてたか分かんねーぞ」

 

 実際、俺はアイツの声でその存在に気づいたし。もし風の魔女(アイツ)が油断してなかったら、そのまま無言で殺されていたかもしれない。

 

 俺の言葉を聞いた雪乃道は、顎に手を当てるようにして考えた後、ゆっくりと口を開いた。

 

「二つ、提案があるの。まず、一つ目」

 

 雪乃道はそう言うと人差し指を立てた。

 

「これからは赤司くんのサポート抜きで、私一人で魔獣と戦う。そうすれば、スノーワルツと赤司くんの繋がりが消えて、もう狙われなくなるでしょ?」

 

 俺はその提案を聞き、考える。

 

 確かに、あの魔女はスノーワルツ目当てで俺を狙ってきたみたいな事を言ってた気がする……いや、途中からレッド(おれ)目当てに変わったっけ?

 

 でも、きっかけはスノーワルツを倒す事だったし、最初から俺が雪乃道を手伝わなきゃ、俺が狙われる事もないのかもしれない。

 

「……けどよ、そうしたら、俺を狙いに来た奴が雪乃道を直接倒そうとするかもしれないじゃん」

 

 俺がそう伝えると、雪乃道は少し寂しそうな笑顔を浮かべた。

 

「たしかに、そうかもね……でも、赤司くんが狙われるよりかは、いいかなって」

 

 雪乃道のその顔を見て、俺の頭の中には昨日の光景が蘇っていた。

 

 ボロボロのドレスを着て、怪我の跡をつけたスノーワルツ(雪乃道)の姿だった。

 

 もしこれから雪乃道の言う通り俺が手伝うのを止めて、それで俺が寝てる時とかにどこかでボロボロになった状態の雪乃道が敵と戦ってたら……

 

「…………それは流石に、クソだな」

 

 思考の末、俺はそう呟いてから雪乃道に向け、指を二本立てて告げた。

 

「ナシ!二個目の提案、聞かせてくれ」

 

 俺がそう言うと、雪乃道は困ったような、少し嬉しそうな表情で二個目の提案を話し始めた。

 

「そっか……じゃあ、二個目!それは赤司くんにはもっとこっそりサポートしてもらう作戦!」

 

 そう言った雪乃道の表情は先程の提案を語るよりも明るい気がした。

 

「こっそりって、どうやって?」

 

 俺が質問すると、雪乃道は説明を始めた。

 

「うんとね、今まではさ、放課後になったら一緒に街をパトロールして、魔獣が出たら私は変身しに、赤司くんは先に魔獣が出現する場所に向かうって感じだったでしょ?」

「おう、そうだな」

 

 俺は返事をしながら今までの一週間くらいを振り返るが、概ね雪乃道の言う通りだった。

 

「これからは赤司くんは現場には行かずに、裏でサポートしてもらうって作戦!」

「裏って、それ一個目の提案と変わんなくね?」

 

 結局俺が何もしないんじゃ、雪乃道の助けにならない気がする。

 

 そう考える俺に向け、雪乃道は付け加えて説明した。

 

「ううん、さっきのと違って、完全に赤司くんの力を借りないってわけじゃなくて、変身してない時は私の近くに居て護衛してもらったり、あの魔女みたいな悪い人たちが近くにいないかパトロールして、情報共有をしたりするって事」

 

 俺は雪乃道の言葉を聞き、想像してみる。今までとは違う、魔獣との戦いはスノーワルツの雪乃道に任せ、それ以外の雪乃道を狙う奴らを探し出し、襲撃を未然に防ぐ。

 

「……俺は頭使う作業は苦手なんだけど、それでもいいならやるぜ。スノーワルツ・サポート作戦2!」

 

 右手でVサインを作り、俺は雪乃道へ了承を告げる。

 

「うん!じゃあそうしよう!」

 

 雪乃道のその笑顔を見た俺は、改めて校舎へと繋がる扉へと手を掛けた。

 

 これにて問題解決、俺達は屋上を後にし、商店街にクレープを食いに向かう……

 

「あ!ちょっと待って赤司くん!それだと事前に決めておかないといけない事が!」

 

 俺は半開きになった扉から手を離し、振り返る。

 

「えー、まだあるのか……クレープ食いながらじゃ、だめ?」

 

 俺は雪乃道にそう提案するが、何故だか言葉を受けた雪乃道は俺の顔を見て固まってしまった。

 

 いや、よく見たらその視線は俺では無く、その奥、俺の背後の方を見ているようで……

 

「ほう、進入禁止の屋上でクレープを食べながらの雑談か……随分といいご身分だな」

 

 その声に俺も身体が固まる。一週間に一回くらいのペースで聞くその声の正体を察し、俺はゆっくりと振り返る。

 

「……せ、先生も食いますか?クレープ……」

 

 俺は鋭い眼光で見つめてくる長田先生に向け、そう提案をする。

 

 返事の代わりに放たれたのは、鈍い痛みの拳骨だった。

 

 

 ――――――――――――

 

 

 放課後の校舎の中を、俺達は揃って頭をさすりながら歩いていた。

 

「拳骨……こわい……いたい……もう悪いこと……しない……」

 

 長田先生は男女平等主義者で、初めて拳骨を喰らった雪乃道は虚ろな目でそう呟いて歩いていた。

 

 ここまで効果があるとは、恐るべし『拳骨の長田』……

 

「で、決めておくことってなんだよ?」

 

 俺は、まぁ結構慣れてるので痛みから意識を切り替えて屋上での話の続きを促す。

 

「え?……あー、うん。えっとね、これから色々情報を共有するって決めたけど、集合場所を決めておきたくて……ほら、人目のある所だと話せないこともあるしね?」

 

 雪乃道のその言葉に俺は頷く。確かに、雪乃道がスノーワルツであることを聞かれたら、こそこそサポートする意味もクソもない。

 

「今まで通り屋上で……」

 

 そこまで言った辺りで、雪乃道の表情がみるみるうちに青ざめていく。

 

「……はナシで。あー、カフェとかどうよ。あそこって、勉強したり本読んだりするくらい静からしいぜ」

 

 行ったこと無いけど。その台詞を言う前に、雪乃道が否定の言葉を続ける。

 

「カフェはダメかな……そこまで人目がないってわけじゃないし、静かだから却って声が聞かれやすいかもしれないし」

 

 その理由を聞き、俺は次の案を考える。

 

「じゃあさ、カラオケはどうよ。密室で防音らしいぜ」

 

 それに歌えるらしいし、楽しそう。そう言おうとした俺に、雪乃道の否定の言葉が放たれる。

 

「赤司くん、カラオケって毎回お金かかるよ?たまにならいいけど、もうちょっと頻繁に情報共有したいし」

 

 そうなのか……お金はマズイな……この前春子さんにスマホ買ってもらったばかりだし、ただでさえ毎日飯食わせてもらってるんだ。なるべく金がかからない場所がいい。

 

「……駄目だ。思いつかねぇ……頭パンクしそうだ……」

 

 それから色々と条件を追加して考えたが、見当はつかず、俺の頭は考え過ぎで爆発寸前だった。

 

「……私にも候補はあるんだけど、あるだけっていうか……」

「そうなの?俺全く思いつかないから、言ってみてくれよ」

 

 俺がそう言うと、少し考えた後、雪乃道は話し始めた。

 

「赤司くん、中学の時部活ってどこ所属してた?」

 

 場所の話をすると思いきや、唐突に部活の話をし始めた雪乃道に少し面食らいながら、俺は部活の経験について話した。

 

「部活かぁ……確か、ちょっと前に説明受けたよな。やってみたい気持ちはあるけど……俺興味あるスポーツとか趣味とかないしなー」

 

 そこまで話すと、隣を歩いていた雪乃道が足を止め、驚いた表情で俺の顔を見つめる。

 

「え、赤司くん部活やってなかったの?あんなに運動神経いいのに……」

 

 そう呟くように告げた雪乃道の言葉に、俺は説明をした。

 

「んあ?俺小学校の途中までしか学校行ってなくてさ、中学飛ばして高校入ったから、部活やってないんだよね」

 

 そこまで話して、あれ?これって言っていいことだっけ?と高校に入る前にした春子さんとの話を思い出してると、信じられない物を見る表情の雪乃道が黙って見つめてきた。

 

「……なんだよ。部活、やってなきゃマズかったか?」

 

 何だか気まずい沈黙がたまらなくて、俺は沈黙を打ち破るようにしてそう言った。

 

 それから俺の言葉にハッとした雪乃道は、首を横に振りながら話した。

 

「いやっ!いやいや!全然大丈夫なんだけど!……だいじょうぶ、なんだけどさ……その、赤司くんの事、ちょっと、心配って言うか……」

 

 言いづらい事を話すみたいに話す雪乃道。って言うか、多分実際言いづらい事なんだろうけど……

 

「……別に、遠慮しなくていいよ。俺、多分周りの奴らと違って、ヘンだからさ」

 

 自覚はあった。普通の奴らは、皆学校に行って、勉強して、放課後遊んで、家に帰ってから家族にそのことを話しながら夕飯を食べる。

 

 俺にそう言う『当たり前の生活』を教えてくれたのは、春子さんだった。俺を学校に行かせてくれて、飯を作ってくれて、話を聞いてくれた。

 

 でも、それは一年前からの話で、それまでの時間が取り返せるわけじゃなかった。俺がシュゴレンジャーとして戦ってる間に、同じくらいの歳の奴らは勉強してたし、友達とも遊んでいたのだろう。

 

 その遅れを、普通の奴らとの違いをひしひしと感じ取る毎日だった。

 

 俺は何だかより一層気まずくなって、廊下の床を眺める。

 

「……すまん、雪乃道。俺今日は……」

 

 これ以上話すと、雪乃道ともクラスメイト達と同じように、一歩離れた距離感になってしまいそうで、それが怖くて、俺は今日は帰ろうと提案しようとした。

 

 だが俺が言い終えるより前に、俯いてる俺の視界に雪乃道の手が映った。

 

「え?」

 

 握りこまれるような、温かい感触。雪乃道の手は俺の右手をに掴むと、両手で包むように握られた。

 

 急な行動に俺は思わず視線を上げ、雪乃道の方を見る。

 

「ごめん……!赤司くん、私、赤司くんの事誤解しちゃった……」

 

 目を潤ませ、今にも泣きだしそうな表情で見つめてくる雪乃道の顔が、そこにはあった。

 

「普通の人とは違う人かもって……勝手に赤司くんのこと遠い人みたいに思って……私、赤司くんがそんな人じゃないって知ってるのに……」

 

 そこからは、もう涙声だった。

 

「赤司くんは魔獣から私を守ってくれたし、分からない事は真剣に分かろうとするし、困ってたら助けてくれるくらい優しいって、赤司くんの良い所、私、たくさん知ってたのに……」

 

 ポロポロと、雪乃道の目から溢れ出した涙が床に落ちていく。

 

 俺はそれから少し考え、ゆっくりと喋り始める。

 

「ごめん、雪乃道。俺も雪乃道の事、『普通の奴』って勝手に括って遠ざけようとしてた……まだ雪乃道と出会ったから、そんなに長くねぇけど、それでも雪乃道が良い奴って知ってたのに……だからさ」

 

 雪乃道は、昨日俺がピンチって知ったら、すぐに駆けつけてくれた。出会って1週間くらいの俺のために、それくらい友達想いな奴。

 

 多分、雪乃道だけじゃない。遊川とか、他のクラスメイトとかも、良いところがあるんだと思う。それなのに、ちょっと違う所があるだけで、俺はもう仲良くなるのは無理だと諦めていた。

 

 握り返すよう、俺は左手を雪乃道の手に重ねて雪乃道の目を見つめる。

 

「俺、もっと雪乃道の事知ろうとするよ。勝手に遠くに置かないで、正面から話して、雪乃道って人間を理解する」

 

 俺がそう言うと、雪乃道は涙を止め、ぽかんとした表情を浮かべた後、それからゆっくりと笑いながら答えた。

 

「ふふ……そうだね、私も赤司くんの事、もっと知るし、私の事もっと教えるね」

 

 雪乃道のその言葉を聞いた後、何故か俺達は笑っていた。

 

 夕日が差し込む誰もいない廊下に、二人の笑い声が響いていた。

 

 そんな風に笑ってると、唐突に俺達の横からガラガラと音が聞こえた。

 

 俺達は笑い声を止め、音のする方へと顔を向けた。

 

「うわ、なんだ君たち、カップルか?いちゃつくなら此処じゃない所でやってくれ。ここ、部室前だから」

 

 そう言うと教室から出てきた白衣の女は俺達の横を抜け、廊下の奥へと進んでいった。

 

「カップル……」

 

 俺は白衣の女の言葉を反芻するようにそう呟いた。

 

 すると、俺の手を握る雪乃道の顔がみるみる内に赤くなっていき、やがて火が出るんじゃないかと思えるほど紅潮し、その場に倒れこんだ。

 

「おい!雪乃道!?起きろ!死んだか!?」

 

 これから知ろうと決めた相手が、もしかしたら死体になってしまったかもしれない。

 

 俺はそう考えながら雪乃道の肩を揺すり続けた。

  

 

 

 

 

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