うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
具体的に言うと、うたちゃんとプリルンがプリキュアについて色々と調べたり聞き込んでいる場面。
俺の幼馴染み『
隠し事───つまりは嘘が吐けないのは美徳ではあるが、うたの場合は嘘を吐くと顔に出る。もっと言えば言葉の節々から本音が溢れ落ちる。
例えば俺こと『
今のはあくまでうたが小学生の頃の話であり、中学生に上がる頃には多少はマシになったと言えど、端から見れば何か隠していると捉えられる行動は変わらない。三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。
そんな幼馴染みと同じ小学生、中学校を通っている俺は、うたは嘘が吐けない人種なのだと認識し、あえてうたの「隠し事」を指摘するのを辞めた。
そもそも人には誰だって嘘を吐いたり、秘密を隠したりするものだ。それはうただって例外ではない。
だから俺はうたがどんな隠し事をしようとも、言動から何を隠しているか察していても、あえて指摘せずに「へぇそうなんだ」と流す事にした。
「こんにちはプリ!」
「台助くん!? えっと、その……キラキランドを救う為にはなみちタウンにやってきた妖精のプリルン、じゃなくて! そう。なんでもない。なんでもないよ!」
「悪い。まずは俺の脳内を整理する時間をくれ」
しかし俺の今までの常識が壊れるような事象を目の前にしては、そんな余裕すら無くなってしまうのは仕方がないだろう。
「プリルン」
「なにプリ?」
「あまりプリキュアの事を周りに喋ったり、人が居る時に動いたら駄目だよ」
「なんでプリ?」
「なんでって……もし見られたり聞かれたら、大騒ぎになるからだよ。分かった?」
「分かったプリ!」
公園で思わぬ珍生物、もとい妖精のプリルンとの出会いから凡そ数分。うたに注意されているプリルンの様子を右から左に流し、ようやく今さっきの情報を整理し終えた。
「よし、うた」
「な、なにかな……?」
プリルンに対して注意を終わらせて一息ついていたうたは、俺の声に少し震えながらも返事をする。
大方「プリキュアの事とか、プリルンの事とか色々見られちゃった。マズイよー!」なんて考えているだろうが、そんなのはどうでもいい。
「俺はあえてうたの隠し事については聞かない。聞かないが、その……プリルン? だったか」
まぁそれはそうと遠回しに「何も見なかった事にするが、気を付けような」とうたに釘を打ちつつ、プリルンへと話しかける。
「そうプリ! プリルンはプリルンプリ!」
挨拶がちゃんと出来ている。良い子だ。
うたの口から漏れ出した秘密から察するに、キラキランドと呼ばれる世界? 場所? からやってきたのだろう。そして恐らくだが、周りを気にせず自然体な様子からプリルンと似たような体格の生物が沢山居る場所のようだ。
はなみちタウンに住んでいる俺からすれば、プリルンは珍しい生き物だ。もしうたのような善良な相手以外に見つかれば見世物にされてしまうだろうが、肝心のプリルンからは警戒心を微塵も感じない。
きっと自分と同じ種族の相手が住んでいる場所から来たので、自身が珍しい存在で尚且つ悪意を抱いている相手と会った事無いのだと推測出来る。故に自分の正体を隠す必要がある、なんて微塵も考えていないのだろう。
「プリルンは喋って動くぬいぐるみ。この認識で良いか?」
「う、うん! そうだよ。最近の科学は凄いよね~!」
んなわけねぇだろ。
俺は喉元まで出掛かっていた言葉を飲み込む。
うた自身はプリルンの存在を秘密にした方が良いと理解しており、下手くそな嘘で隠し通そうとしているが、プリルン自身は秘密しなければいけないと言う実感が無いようだ。
仮に俺がプリルンと同じ立場になったとして、急に「お前は見つかると危ないから存在を隠せ」なんて言われても、変な冗談か相手の頭がおかしいかを疑って周りを警戒しようとはしないだろうから仕方ない部分はあるだろう。
特にキラキランドとやらを救う使命を背負っている中、そこまで気が回るかと聞かれれば、俺は躊躇無く頚を横に振る。
「それでうた、喋るぬいぐるみを連れてどうした。何か探しモノか?」
「あ、そうだった。台助くん、アイドルプリキュアって知ってる?」
「え、なに。くりきゅうた?」
「違うよ!?」
どうやら違ったらしい。
力士にそんな名前の人が居ると記憶していたので、その人がアイドルでも始めたのかと思ったが人違いだったようだ。じゃあ誰だよプリキュア。
「アイドルプリキュアはキラキランドを救ってくれる救世主プリ!」
「へぇ。他の特徴は?」
「分からないプリ」
「どう探せと?」
情報は無いようだ。
性別や体格、年齢や出身すらも不明な相手をどう探せば良いのか。俺は頭を抱えるが、わざわざはなみちタウン来たのだから、きっとこの街に居るのだとポジティブな思考へと切り替える。
もしこの街に居なかったらお手上げだが。
「でもプリルンはうたがアイドルプリキュアだと思うプリ!」
「そうか。じゃあうた、アイドルプリキュアを頑張れよ」
「ええ!?」
探し人は見つかった。
探している本人が言うのなら間違えないと、俺はうたの肩を掴み親指を上に立ててアイドルプリキュア(仮)となったうたを応援する。
「ちょっと待って!? 私はそのアイドル、プリキュア? じゃないよ!」
「プリルン、どう思う」
「うたは絶対にアイドルプリキュアプリ!」
「そうか。じゃあうた、アイドルプリキュアを頑張れよ」
「この光景さっき見た!」
それは言われてもと、俺は眉を顰める。
アイドルプリキュアとやらの情報を持っているのがプリルンだけであり、肝心のプリルンがうたがアイドルプリキュアだと言っているのだ。それを信じるしか無いだろう。
「まぁ本当にうたがアイドルプリキュアかは置いといて」
しかし信じるからと言って、それが真実かはまた別の話だ。
今まで生きてきて俺はプリキュアなんぞ聞いたことが無いし、うたも聞いた事が無いから俺に知ってるか否かを聞いたのだろう。
ほんの少しの間だが、プリルンの性格は分かった。
プリルンはうたと同じで隠し事が苦手だ。しかも何か隠し事をするような経験が殆ど無かったせいか、本人自身に「秘密は隠さないと」と言った自覚が薄くて、ポロポロと自分の名前だの、プリキュアだのを話す。
隠し事が出来ないが故に信用は出来る。うたがプリキュアかどうに関しては疑いの目を向けるが。
一行で矛盾しているように思われるが、プリルンの放つ言葉自体はちゃんと信用出来るのだ。
しかしその内容に対しての証拠、つまりは真実か否かと言った材料が無いから「お前の中ではそうかもな」となってしまっている。
故に一度、その話題は置いておく事にした。
ここで本当か勘違いか言い続けても話は進まない。もしかしたから本人には自覚が無いだけで、うたがアイドルプリキュアなのかもしれないし、違うかもしれないからだ。
「うた。俺はお前が隠し事が下手なのは昔から知ってる」
「うっ……」
「だから俺はお前が何を隠そうとあえて触れない。人間、誰だって秘密があるからな」
キラキランドだの、妖精だの、うたが秘密にしている内容は多いようだ。
正直それが気になるか聞かれたら、俺は素直に頷くだろう。しかしその話を聞くと言うのは、相手のデリケートな部分に踏み込むのと同義だ。それは例え、幼馴染みである俺であってもうたは良い顔をしないだろう。
秘密は秘密の方が美しい。
俺の座右の銘だが、無理に相手の秘密を聞き出して恥をかかせたり、相手を傷付けるよりも触れない方が互いの為だと自負している。それでも……
「困ってるとなれば話は別だ」
秘密については一切聞かない。
秘密は秘密のままで良い。だが困っていたら手を貸そう。隠し事に触れないのと、困っている相手を見過ごすのは別の話だからな。
「詳しい事は聞かない、俺もアイドルプリキュアとやらは探すのを手伝わせてくれ」
「え、本当!? ありがとう台助くん!」
「ありがとうプリ!」
見つかるかは分からないが、情報を集めるのなら一人でも人手が多い方が便利だろうからな。
俺はそのまま二人と別れ、まずは図書館でプリキュアについて調べるのであった。
「何処にも情報が無いな、アイドルプリキュア」
後日。
あれから図書館以外にも、ネットや本屋の雑誌などで確認はしているのだが、プリキュアに関する情報が見当たらない。アイドルと言うのだから、何処かで───それが小さいコミュニティだろうと───話題になっていると踏んだのだが、どうやら見当が外れたらしい。
今更になってしまうが、それもそうだろう。
プリルンから聞いた話では、アイドルプリキュアに関する特徴的な情報は一つも無かった。
つまりアイドルプリキュアは大昔に存在したが、何処かのタイミングで詳しい情報が途切れてしまい、名前しか後生に伝わなかったのだろう。これなら調べても出てこないのに納得がいく。
それでも俺は探すのに協力すると言った。
言ったのに、時間をかけた結果「何も分からなかったぜ☆」なんて伝えれば、プリルンもうたも悲しむだろう。
「はぁ。一度気分転換でもするか」
このまま探し続けても脳が煮詰まって調べものが捗らないと、大きな溜め息をついてから大手動画サイトである、キュアチューブを開く。さて、何か面白い動画があるだろうか。
「ん? オススメに知らないチャンネルが……」
プリホリさんが投稿している猫のユキちゃんの動画で癒されようと思い、キュアチューブを開くとオススメに知らないチャンネルの動画が出てきた。
別にそれ自体は特段珍しくない。
よく猫の動画を見ていれば、全く知らないチャンネルの猫動画がオススメに出てきたりするなどは日常茶飯事である。
しかし今オススメにあるのはアイドルの動画だ。
しかも再生数は他の動画よりも断トツで高く、投稿されてから日付もそこまで経っていない。あまりにも怪しく、サクラ───本人が意図的に再生数を伸ばして、第三者に人気であると誤認させる行為───を疑っても仕方ないだろう。
それでも俺は動画を再生してみる事にした。
何故なら動画のタイトルが【~アイドルプリキュア~キュアアイドルのステージプリ!】と、プリキュアと言う単語と凄い聞き覚えのある語尾が目に入ってしまったのだから仕方ないだろう。
『キミのハートにとびっきり 元気をあげるね』
それは知らないアイドルが踊っているライブ映像だった。
歌詞は知らない。ステージの場所も知らない。それでも俺はメロディに聞き覚えがあった。アイドルの顔に見覚えがあった。プリキュアと言う単語を知っていた。
このメロディは俺のよく知ってるモノだ。毎日のように聞いているそれは、歌詞はその時の気分や状況によって変わっているが、メロディだけは固定である。
このアイドルの顔は俺のよく知ってる顔だ。髪は茶から金へ、肩辺りまでの長さから腰までとガラリと変わっているが、顔はそのままである。
プリキュアはこの前聞いたばかりだ。プリルンもうたも手掛かりは無いと言っていたが、わざわざ動画のタイトルにプリキュアと言えるほどなので、二人が探していた人物だろう。
つまり何が言いたいのかと言うと……
うん。うただな、これ。
メロディはうたの歌う曲。アイドルの顔はうた。プリキュアは二人が探していた人物の名前。これらから導き出される答えは一つ。本当にうたがアイドルプリキュアであった。
俺はその事実に衝撃を受けながらも、動画の再生数に改めて目を通して、これが俺の通帳の数字だったら夢があるなと、現実逃避をする。
そしてこの事態をどう説明するか。そもそもちゃんと隠すつもりがあるのか。そう頭の中を不安がよぎりながら、うたへと電話を掛ける。
「もしもし、うた?」
『もしもし、台助くん? どうしたの?』
電話越しのうたの声はいつも通りであった。
それはプリキュアが見つかって安堵したと捉えるか、秘密を秘密としながらも全世界に広まってしまった事に気付いていないのか。喋りたい事は沢山ある。しかし、まずはこれだろう。
「色々と言いたい事があるんだが……まず最初に良いか?」
『え? う、うん』
「うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ」
この時の俺はまだ知らない。
うた以外にも4人も新しくプリキュアが増える事。
そしてうた自身は隠しているつもりでも、キラキランドやプリキュアに関する色んな秘密がポロポロと俺の方に流れてくるとは、思いもしなかったのだ。
【
本作の主人公。
中学生3年生にして、一つ年下(中2)の咲良うたと幼馴染み。
うたが隠し事が苦手なのは昔から知っているので、何か隠してようと大体は見て見ぬふりや聞かなかった事にしている。ただし何故か勝手に情報は流れてくる。
ちなみにそのスタイルが原因で、自分のクラスに
凄いメタ的な発言すると、プリメロ転校回のシーンは思い付いたけど、急にそんな所を書いても展開が急すぎるのでボツ。結果的に本編のような形に落ち着いた。
~主人公の名前の由来~
元々は◯◯くんで通してたが、名無しだと作品に上手く馴染まないと思って1分で決めた。
プリキュア達はステージで躍る存在。そんな相手を影から支える相手が居るとしたら、どんな名前が良い? と考えてアイドルとして無くはならない存在の
どう主人公にプリキュアや妖精について知ってもらう? と考えた時、プリルンが結構便利だなと思う。他のキャラ達だと怪しい言動はしつつも秘密を隠し通せてしまい、主人公が知る機会が無くなってしまうので。
まぁそれすると秘密を話したプリルンにヘイトが溜まるので、本編内で主人公にフォローしてもらいましたが。
プリキュアを見たことある?
-
見たことが無い
-
何話か見た
-
キミプリのみ見た
-
複数のプリキュアシリーズを見た
-
全プリキュアシリーズを見た
-
最新作を見てる