うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。   作:のろとり

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 前回シリアスした反動で、ギャグ欲しさにはなみちタウンの住民を強化して生身でチョッキリ団と戦う絵面を想像し始めました。
 四股踏みの風圧で相手を吹き飛ばすくりきゅうた、刑事時代の頭脳を活かして相手の行動を先読みする蓮司じいちゃん、ダンスによる洗脳で敵を笑顔にする寸田先輩……よし、キチゲ発散完了。これからも頑張って執筆しよう。

 時系列は第20話です。
 具体的に言うと、うたちゃん達が女王様からプリルンとメロロンに何があったのか状況を聞いた後です。


第13話 うた、俺は今回一緒に行動しない。ただし俺も俺で出来る事はする。頑張ってプリルンの記憶を取り戻そうな。

「はぁ……」

 

 プリルンが記憶喪失と判明した後、結局俺はうたが落ち着くまで優しく抱きしめる事しか出来ず、話し合いをするような雰囲気でも気持ちでもないので、その日は解散となった。

 

 そうして翌日。

 俺は授業に集中出来ず、昼休みもただ空を見つめるばかり。あまりにも俺の様子がおかしいのか、躍から「保健室で休む?」と声を掛けられるほどだ。

 その場では問題ないと答えたが、周りから心配されるほどに俺の心は疲弊していたようだ。うた達は俺以上に辛いと言うのに……。

 

 そんな状態ながらもなんとか今日の授業を乗り切り、自室のベッドに身体を預けながら、プリルンやうた達について思考を回す。が、どうすれば良いのか分からず途方にくれていた。

 

「ん? 電話?」

 

 答えの見付からない自問自答を続けていると、机に置いていた携帯が震える。相手は田中さんであった。

 キラキランドに帰っていると聞いていたが、いつの間にか戻ってきたのだろう。となると、要件はプリルンの記憶に関する……あぁいや、戻ってきたって報告だけで状態を知らない可能性もあるか。

 

「はいもしもし」

 

『もしもし田中です』

 

 なんにせよ、話をしなければ分からないと俺は田中さんと電話を繋げる。

 田中さんの声色はいつもと変わらない。焦っている様子も、緊張している様子も無い。プリルンの記憶について何も知らないのだろうかと、嫌な汗が流れる。

 

「田中さん、実は」

 

『大丈夫です。うたさん達から事情は聞きました』

 

「話が早いですね」

 

 しかし俺の心配は杞憂であった。

 恐らくはキラキランドから戻ってきて、うた達に戻ってきたのを報告するのと同時にプリルンの話題となったのだろう。

 俺に電話したのはうた達と同じように俺もプリルンの件を気にしてると見抜かれたのか、何かしたら聞きたい事があるのか……。

 

『台助さんはプリルン達の事情をどの辺りまで把握していますか?』

 

「此方に戻ってきたメロロンと少し話した上での推測ですが、プリルンはハートキラリロックで記憶を失った……で、合ってますか?」

 

『ッ! そこまで分かっていましたか』

 

 どうやら後者だったようだ。

 もしかしたら言葉に出してないだけで、俺の心情が読み取られていたかもしれないが……聞いてもはぐらかれそうだ。話が逸れる以上、その話題は置いといても構わないだろう。

 

 改めてだが、ハートキラリロックは願いを叶える代償とした、本人の一番大切なモノを封印する道具だ。今までは推測であったが、田中さんの反応からそれが合っていると判明した。

 

 それにはなみちタウンには恋人同士で使用する道具と曲解されている部分から逆算するに、誰かと二人一緒に使用するのだろう。だからプリルンは……? あれ、じゃあメロロンは対価として何を払ったんだ?

 

 二人で一緒に使用する道具だとしたら、片方だけが代償を払うのは不自然だ。それにプリルンがキュアズキューンに変身する対価として記憶が封印されたように、メロロンもキュアキッスに変身する為の対価を何か払ったはずだ。

 

 何を……いや、それは後回しだ。

 代償と言っても、記憶、寿命、未来、存在、身体、精神、欲求、倫理観、才能。候補を上げればキリが無い。本人に直接聞かない限り、払った代償の内容は不明だ。

 

 本人に直接聞くのが一番早いだろうが、メロロンの事だから「代償? 何の事メロ?」と誤魔化すか、記憶を失った自覚が無いプリルンのように本人自身が何を払ったのか理解してない可能性がある。

 

 少なくとも現状で変わった様子は無い───もしくは俺自身が気付いてない───のなら、メロロンには悪いが今はプリルンの記憶を優先するとしよう。二つの問題を同時に追って解決出来るほどの余裕は無いのだから。

 

『台助さん。今私達はうたさん達と誓いの広場の前まで居るのですが』

 

「ハートキラリロックについてですか?」

 

『はい』

 

 なんで誓いの広場に居るのか、それを聞かずとも俺は今までの会話の内容からハートキラリロックについて調べているのだと理解した。

 ここでメロロンとデートの下見をしていたのが役に立つなんてな……人生何があるか分からないな。こんな形で実感したくなかったが。

 

『ねぇ台助くん。ハートキラリロックってなんなの?』

 

「そういうのはキラキランド出身の田中さんの方が詳しいんじゃないのか?」

 

『えっと、そういう意味じゃなくて』

 

「あー、はなみちタウンに伝わってる方か」

 

『うん』

 

 俺と田中さんとの会話をすぐ近くで聞いていたのだろう、うたが会話に混ざってくる。

 きっと俺が誓いの広場と聞いてハートキラリロックと結び付けた様子から、はなみちタウンに伝わる方のハートキラリロックについて詳しいのだと思ったのだろう。

 

「恋人達で一番大切なモノを伝えてハートキラリロックを使えば、願いが叶うってのが誓いの広場に伝わってやつだな」

 

『看板に書いてあるのと同じだね』

 

『誓いの広場にって事は、他にも何か噂があるんですか?』

 

「どんな願いも叶うって言う都市伝説ぐらいならあるな。逆に言えば、それ以上の情報は無いけど」

 

 キラキランドに伝わる伝承にはもっと詳しい内容が載っているだろうが、ここで話すとはなみちタウンのと混ざってしまうだろう。それにその辺りは田中さんから聞いているだろうと、俺は一呼吸置くために口を閉ざし、はなみちタウンの伝承とは別の話を始める。

 

「メロロンはそこの看板と同じハートキラリロックを持ってると言ってた」

 

『え? ハートキラリロックって一つだけじゃないの?』

 

『あ、見てください! 看板のと誓いの広場のハートキラリロックの形が違います!』

 

『本当だね。じゃあここにあるのは偽物?』

 

「偽物言うのは止めようねななちゃん。なんかこう、色々と大人の事情とかあるかもしれないんだし」

 

 急に何を言い出すんだろう。

 本人は真面目に考えた上での発言なのだろう。それでも、誓いの広場に飾られているハートキラリロックを偽物呼ばわりするのは天然発言に、俺は自身を吊っていた緊張の糸が何本か切れる感覚を覚える。

 

 ほら、多分あれだよななちゃん。

 本物のハートキラリロックとまったく同じだと、誰かが誤って本物を使った時に問題が起こるから形を変えたんだよ。うん、きっとそういう大人の事情があるんだよ。

 

「ンンッ! うた。此方からも一つ聞いても良いか?」

 

『うん。なに?』

 

 俺は切れた緊張の糸を再度張り直そうと、咳払いをして意識を切り替える。肩に力が入る。ななちゃんのさっきの発言を頭の片隅から消し、プリルンの話題で頭を埋めていく。

 

「メロロンとの話から考えるに、本家のハートキラリロックは自分の一番大切なモノを封印するのと引き換えに、願いを叶える道具なんだと思う」

 

『キラキランドの女王様もそういう道具だって言ってたよ』

 

 女王様が効果を知ってるとなると、過去に誰か一度使用したのかと言う思考が過るが、あくまで説明書か何があったのだと納得するとしよう。

 過去に誰かが使ったのだとしても、ハートキラリロックの封印を解除する方法が伝わってないとなると、どうなったかは想像が付いてしまうのだから。

 

「そうだな……二つだ。プリルンの記憶を取り戻す方法が二つ思い浮かんだ。あくまで今思い付いた机上論程度の方法だけどな」

 

『きじょー?』

 

『うたちゃん。机上論って言うのは、実際にするのは難しい行動や計画の事を言うんだよ』

 

『へー』

 

「話を戻しても良いか?」

 

『あ、うん!』

 

 うたの成績が心配になる会話を余所に俺は話を戻す。

 ま、まぁ机上論って言葉は学校だと殆ど使わないから。習ってもなかった筈だし、うたは知らなかったんだろう。そう考える事にしよう。

 

「まず一つ目の方法はハートキラリロックの封印を解く。封印を解けばプリルンの記憶も元に戻るだろうな」

 

『じゃあ早速!』

 

『待ってくださいうたさん。その封印を解く方法はどうするのですか?』

 

『え? あっ』

 

 うたは何処に居るかも分からないメロロンからハートキラリロックを借り、封印を解除しようと動こうとするが、田中さんに止められる。表情は見えないが、きっとハッとした表情の後に残念がっているだろう。

 

『だ、台助くん』

 

「いや、田中さんでも分からないのに俺に言われてもな……それにこれは机上論での方法の話であって、具体的なやり方まではな」

 

 キラキランド出身者でもハートキラリロックの封印解除の方法が不明なのだから、うた達の事情を中途半端にしか知らない俺に頼られても困ってしまう。

 

 今一番簡単に行動に移せる方法は物理的な破壊だろうが、破壊してもプリルンの記憶が元に戻らなかったらと考えると、あまりにもリスクが高い。

 もしこの方法をうた達に伝えて実行に移されても困るので、これは最後の手段として取っておくとしよう。

 

『じゃ、じゃあ二つ目! 二つ目の方法!』

 

「二つ目の方法は普通にプリルンの記憶を取り戻す」

 

『普通にって……どうやって?』

 

「ハートキラリロックをどうこうするんじゃなくて、プリルン本人に記憶を取り戻してもらうんだ。ほら、ドラマとかでもあるだろ? 記憶喪失になった主人公が記憶を取り戻すシーンが」

 

『なるほど!』

 

 じゃあその具体的な方法はなんだ? と問われたら、困るのが正直な反応だ。ドラマやアニメならば、頭に衝撃を受けて記憶を失った。ならもう一度頭に衝撃を与える。なんて手段に出れるが、実際にそれで記憶が戻るかは分からない。

 

 そもそもとして、今回はハートキラリロックの代償を支払った結果である。プリルンが自身の記憶に疑問を覚えていれば、そこから切り崩す。なんて方法もあるが、この前のプリルンの様子から記憶を失ってる自覚すら無いのだろう。

 

 結局の所、具体的な解決法なんてのは一つも無い。

 俺が示したのは曖昧な方向性だけだ。それが成功する保証も、行動の中身も、万が一の保険も無い。それでも今のうた達の役には立つだろう。

 

「一応言っとくが、俺に医療関連の知識は無い。どうやって記憶を取り戻せば良いかも分からない」

 

『…………』

 

「だからその辺りはうた達に任せても良いか? 俺は俺で何か別の方法が無いか調べる」

 

 うたは頭よりも体を動かして物事を解決するタイプだ。

 ななちゃんとこころちゃんは分からないが、きっとうたが行動に移すならそれに乗っかるだろう。となれば、うたのストッパーが居なくなる。

 

 本当は俺もうた達と一緒に体を動かせれば良かったんだが……俺はプリルンとメロロンの手を掴めなかった。動くのを躊躇ってしまった。

 その光景が何度もフラッシュバックする。こんな状態だと冷静ではいられないし、うた達が無理な行動をした時に止められる自信が無い。もしあの時に行動していればと考えてしまうから。行動しなかった、出来なかった結果を見てしまったから。

 

 だからせめて俺は頭を動かす。

 うた達に何かを起こっても、田中さんが付いていればきっと大丈夫だろう。そう簡単に記憶が戻るかは分からない。ただ、うた達が危険な行動をするとなったら、ちゃんと止めてくれるだろう。

 

『…………』

 

「うた?」

 

『ッ! ううん、なんでもないよ。ねぇ、台助くん』

 

「なんだ?」

 

『頑張ろうね!』

 

「ああ」

 

 謎の沈黙が流れ、携帯の調子が悪いのかうたに確認を取るが、なんでもなかったようだ。

 俺はうたにエールを送った後に電話を切り、記憶喪失を元に戻す方法を調べ始めるのであった。

 

 うた、俺は今回一緒に行動しない。ただし俺も俺で出来る事はする。頑張ってプリルンの記憶を取り戻そうな。




 記憶喪失うんぬんを書く為に、軽く記憶喪失を戻す方法を調べました。うん、具体的な方法が全然見つからない。いやまぁ、それは裏を返せば現代科学でも簡単に治せない症状って意味なんですけどね。

 最近の主人公、うたちゃんよりもメロロンと絡んでる気がする。互いに一歩引いた距離を保ってる分、逆に波長が合うのかな?

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