うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
でもストーリー作るの楽しいんだよなぁ~! 後付けを「え、最初から伏線でしたよ?」って惚けた顔で組み込む時とか。
時系列は第21話です。
具体的に言うと、うたちゃんが風邪を引いてるです。
うたが風邪を引いた。
理由はプリルンに自分達を思い出してもらおうと、ピクニックを計画して山を登ったのが切っ掛けである。
ピクニックの道中、幾つもプリルンとの思い出話に花を咲かせたようだが肝心のプリルンには何も響かなかった。
そして何の成果も得られない状態で下山中、プリルンが応援の際に使用しているキラキライトを落としたと発覚。うたは一人で山を登りキラキライトの捜索を始めた。
一緒に居たななちゃん達は一人で突っ走るうたを心配して追い掛けたが、雨が降り始め……戻ってきたうたは登山や精神的な疲労、更には雨で身体が冷えて体力が奪われたのもあり、その場に倒れて田中さん達に自宅まで運ばれて数日。今に至るのである。
「入るぞうた」
「あ、台助くん」
お見舞いの為にうたの自宅までやってきた俺は、うたの部屋に入るとそこにはベッドに横たわるうたと、三つのケーキが机に置かれていた。
うたは別に一度にケーキを複数食べるような食いしん坊ではないので、恐らくはななちゃんとこころちゃんが俺より先にお見舞いに来て、うたとプリルンとメロロンの分を買ってきたのだろう。
「身体の方はどうだ?」
「うん。だいぶ良くなったよ」
嘘を吐いている様子は無い。本当に体調は良くなったのだろう。
その様子を見ると同時に、俺が居たらうたは風邪なんか引かなかったんじゃないかとと言う思いが胸の底から涌き出てくる。その選択をしたのは俺自身だと言うのに。
うたが倒れた日、田中さんからの謝罪と共にその経緯が語られた。自分の責任だと話す田中さんだったが、何もかもの責任が田中さんにある訳ではない。
ピクニックに賛成した。事前に注意しなかった。プリルンの落とし物に気付かなかった。うたを止められなかった。事情を知っている俺含めて、みんなの責任だ。
「悪いな、すぐにお見舞いに来れなくて」
「ううん。気にしてないよ」
本当はすぐにでもお見舞いに行きたかった。
しかし俺が向かった所で意味は無い。俺が無力とかの話ではなく、うたへ無駄に心労を掛けてしまうからだ。もし顔を見せに行けば、心配させないようにと体調が悪い中、無理して平気な顔をして……余計に体調を悪化させてしまうだろう。
だから俺は踏み留まり、プリルンの記憶を戻す方法を調べた。
その結果としては、机に置かれているケーキの数が物語っている。つまる所、成果は何もない。俺はうた達が大変な間にパソコンとにらめっこしてただけである。
「私の方こそごめんね。心配かけて」
「気にするな」
風邪を引いた理由も、無理をした原因も知っているのだ。
それに対してどう責める? 後から「こうすれば良かった」や「ああすれば良かった」はいくらでも言える。だがそれは結果論だ。終わった過程に文句を言っても意味は無い。
紛れもない俺の本心からの言葉。
しかしうたの顔は相変わらず曇ったままだ。無理も無い、プリルンの記憶を取り戻そうと結果的に空回りして倒れ、周りに心配を掛けてしまったのがうたから見た現状だ。
それを「気にするな」の一言で済ませられるほどうたは軽い性格はしてないし、仮に気にしなかったとしてもプリルンが記憶を失ったままなのだ。そんな状態で元気を出すのは無理だろう。
「なぁうた。前から少し気になってた事があるんだが、聞いても良いか?」
「なに?」
「うたがプリルンと出会った時の事を聞いても良いか?」
俺はその空気を変えようと、プリルンとの出会いについて質問する事にした。
今のうたはプリルンの記憶について気にしている。だから敢えてプリルンの話題に触れないのが優しさかもしれないが、変に気を遣わずに平然と会話をするのも優しさと言えるだろう。
人によっては「本人が気にしているのに触れるのは」と思うかもしれない。実際、時と場合によっては触れるべきではないのは同意だ。
けれど変に気を遣って「あっ……」と気まずい空気を作ってしまうよりかは、本人の傷に触れない程度に話題に出すのも優しさだと俺は思う。
「別に良いけど……どうして?」
「プリルンやメロロンがどうやってはなみちタウンに来たのか前から疑問でな」
俺がプリルンと最初に出会ったのはアイドルプリキュアをうたと一緒に探している場面だった。
そしてメロロンと最初に出会ったのは展望台からはなみちタウンを一望している場面だった。
どうやってキラキランドからはなみちタウンへ訪れたのか。徒歩で移動出来るような距離なら噂程度でも地名に聞き覚えはあるだろうし、車や自転車に乗れるような体型もしていない。
機会があれば聞こうと思っていたのだ。変に気を遣ってプリルンやメロロンの話題に触れないよりも、いつもの世間話のように触れた方がうたも多少は気が楽になるだろう。
「えっとね。私がプリルンと出会ったのは、プリルンが大きな桃の中に入って川から流れてきた所だったね」
プリルンとの出会いを語り始めたうたのおでこに俺は手を当てる。
熱は無い。自身の体温と比較するが、ほんの少しだけ温かい程度である。しかもそれはベッドに入って身体が暖まっていたからと考えると、充分に許容範囲だ。
ならば風邪による意識の混濁だろうか。
俺はうたの目を観察するが、明後日の方向を向いていたり、焦点が合っていない様子は無い。むしろ不自然なまで正常である。
「ん? どうしたの?」
「いやなに。急に桃太郎が混ざってきたからどうしたのかと」
「本当の話だよ!?」
ジッと見つめられ、ほんのり赤くなった顔のまま首を傾げるうたに、俺は体調について聞くが正常だったらしい。
あまりにも予想外の発言に俺は頭を抱える。
プリルンやメロロンがファンタジー側の存在なのは当然認識している。だが桃に乗ってくるのは予想外である、それはもうファンタジーを通り越してギャグに片足を突っ込んでいると表現して良いほどに。
もしかして桃太郎はキラキランドの住民だったのではないか。
そんな考察が頭を過るが、考えた所で意味は無い。桃太郎が妖精だったとして、それがなんだである。答えの無い推測は気にしてないでおこう。
俺は深呼吸をし、桃太郎うんぬんの話題を頭から追い出す。
そしてうたに「話を続けてくれ」と促し、再び出会いの話を聞き始める。
「大きな桃が流れてきた時は何事か驚いて、そしたら中からプリルンが出てきたの」
「もしかして俺が知らないだけで、メロロンも桃からはなみちタウンにやってきてたのか?」
「あっ、そうえば前に田中さんが大きな桃を拾ったって言ってたよ」
田中さんが何処でメロロンがはなみちタウンへやってきたと知ったのか疑問であったが、なるほど桃か。言葉にすると変であるが、そこはもうそういうファンタジーだと受け止めるとしよう。
「話を戻すね?」
「あぁ」
「最初プリルンと出会った時は夢かと思ったけど、話を聞いたら悩みがあるみたいで」
「それがキラキランドやアイドルプリキュアか」
「うん」
俺の言葉にうたは軽く頷く。
うたはよくポロポロと隠し事を口から溢しているが、その内容までは詳しくは知らない。いや、俺から進んで聞いていないだけと言うべきか。
「困ってるなら助けたいなって思って、プリルンとアイドルプリキュアを探したの」
「それで俺に会ったのか」
あの時は滝のように浴びせられるファンタジーに脳が追い付いていなかったなと、数ヶ月前の濃い出会いを思い出す。
今はもう大抵の事は流して受け入れるようになったが、最初はプリルンをぬいぐるみとしてうたとの話を進めたな。今ではプリルンやメロロンを妖精と言っても、うたは何も否定しなくなったが。多分うたもぬいぐるみで誤魔化すのは無理だと悟ったのだろう。
「色々とあったんだな」
「うん。それで……あ」
「どうした?」
プリルンとの楽しい思い出を語る内に、少しずつ表面上だけでも笑顔を取り戻していったうただったが、ふと何かを思い出したようで表情が曇り始める。
「歌」
「え?」
「プリルンに歌を歌ったんだ」
うたは割れ物を扱うかのように優しく、思い出と共に自身の放った言葉を噛み締める。
懐かしいと小さく呟くうたは遠くを見ており、それはまるで遺影を見つめるかのように。二度と手の届かない、ある筈の無いものを掴もうとしてるように見えた。
「アイドルプリキュアが全然見付からなくて、プリルンが落ち込んじゃった時に私、歌を歌ったんだよね。大丈夫だよ、プリルンなら見つけられるよって」
「…………」
「あの時のプリルン、私の歌で元気になってくれたんだよね」
消えてしまいそうな声でうたはそう呟く。
俺はうたを励まそうと手を伸ばそうとするが、なんて声を掛ければ良いか分からず、手をゆっくりと下げていく。それはあの時と───プリルンとメロロンの時と同じように。
俺はどうすれば良い。
あの時握れなかった手を今度は握りたい。
あの時届かなかった思いを今度は届けたい。
でも、どうやって? 方法も分からないのに、どうすれば出来る。どうすればうたを笑顔に出来る。どうすれば俺は……
『これからもうたさん達を支えてあげてください』
『それはアイドルとして、ですか?』
『子どもとして、うたさん達の友達としてお願いします』
考えて考えて考えて、俺の脳裏にはかつての田中さんとの会話が思い起こされた。
なんて事はない、普通の会話。今までしてた行動を言葉として改めて形にされた出来事だった。
「あぁ、そうだった」
俺は微かながらも力強く、自分の中で見つけた答えを手放さないように何度も心の中で復唱する。
俺は別に方法に拘る必要なんて無かったんだ、正解を導きだそうとする必要なんて無かったんだ。難しい考える必要なんて無かったんだ。
球技大会で優勝したいと頼まれた時もそうだ。
俺は必ず優勝出来る方法なんて持っていなかった。優勝する方法なんて持っていなかった、だから自分の出来る事をした。最初から目標までの道を全て用意した訳じゃなかった。
俺はあくまで背中を押しただけだ。
うたの為にゴールまで辿り着きやすくしただけだ。
迷子になった子どもを親の元まで届けるように、最初から最後まで手を尽くした訳じゃない。うたはそこまでしないと弱いわけじゃない、だってそこまで補助しないと弱いのなら、自分だけの
うたは強い。幼馴染みの俺が言うんだから間違いない。
プリルンが記憶を失ったり、うたの悲しい顔を見て悩み続けていた頭が晴れていく。うたは守られるだけの存在じゃない、周りを頼るのは弱いのではなく、自分の弱さを認めて周りを頼れるのだと再認識する。だから俺は……
「大丈夫だ。安心しろ」
「え?」
「この前は失敗したけど、次は……次はきっと大丈夫だ」
根拠も中身も無い、それでもうたが元気になるような言葉をかける。
今の俺は気の利いた言葉を発したり、具体的な案を示せるほど頭は回らない。だけど幼馴染みとして、子どもらしくうたを励ます事は出来る。
「本当に?」
「ああ」
俺はうたの手を握る。
かつてプリルンとメロロンの手を掴めなかったような後悔をしないよう、例え振りほどこうとして決して放さないように力強く。
「さてと。俺はそろそろ帰るとしようか、あまり長居してもうたの身体に負担を掛けるだけだからな」
俺はうたの手を放し、その場で立ち上がる。
身体の方は回復しているようだし、精神の方もきっと大丈夫だろう。うたなら立ち上がれる、そう信頼しているのだから。
「台助くん」
「なんだ?」
「大丈夫だよ。うん、大丈夫」
「…………」
「プリルンの事も、メロロンの事も台助くんの責任じゃないよ。だから自分を責めなくて大丈夫だよ」
「…………はぁ」
俺は小さく溜め息を吐いて、その場に座り込む。
一度立ったのに座り込むのは変な動きではあるが、うたの言葉と共に脚の力が、緊張が解けてしまったのだから仕方がない。
すぐにでも部屋を出るつもりだったが、そんな気分では無くなってしまった。もしここで何も言わずに部屋を出てしまえば、うたに余計な心配をかけてしまう。うたが納得するまでこの場に残るしか無いようだ。
「いつから気付いてた?」
「誓いの広場で電話してた時にね。なんか台助くんの態度がおかしいな~と思って」
「あの沈黙はそれが理由か」
俺の言葉にうたは頷く。
思い出すのは、先日の電話での会話。携帯の不調かと考えていたが、うたも俺になんて声を掛けようか考えていた時の沈黙だったようだ。
結局あの場では何も言われなかったが、うたも俺と同様に悩んでいたのだろう。自分もプリルンの事で精一杯だったのにも関わらず。
「うた」
「なに?」
「ありがとうな」
「こちらこそ!」
うたを元気にした筈が、逆に元気にされてしまった。
俺は風邪を引いても相変わらず優しいうたに微笑み、部屋を出るのであった。
うた、次から頑張ろうな。ただし風邪を治してからな。
先に言いますね。
来週の投稿多分無理です。全然書き終わってない+次回の展開を再構成中なので。ストーリーを雑に処理するような形になりそうなので、一から組み直してます。すみません。
Q.台助が一緒に登山してたら何か変わった?
A.元々は調べ物中に天気予報を見て「雨か。うた、雨具持ってったか?」と心配して雨具を持って登山。途中でななちゃん達と遭遇してうたの捜索に参加。ボロボロなうたに自身の上着とカッパを着せて下山。ただし下山中に体力を使い果たして倒れる予定でした。うたちゃんは曇る。
流石に短期間で登山して頂上近くまで行くのは難しいかなとボツに。あと今回みたいに希望が見えてきたとかなくて、全体的に救いが無いのもボツ理由。
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