うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
時系列は第21話です。
具体的に言うと、うたちゃんが風邪を引いてる時(前回の続き)です。うたちゃん視点です。
台助くんは昔から優しかった。
『お、当たった』
『ジー……』
『うた。俺は腹いっぱいだから、代わりに当たりを貰ってくれ』
『良いの!? やったー!』
例えば二人でアイスを食べた時。
台助くんの食べたアイスの棒が当たったのを羨ましく見ていたら、お腹いっぱいだと嘘を吐いて私に当たりの棒をくれた。
『プリルンは喋って動くぬいぐるみ。この認識で良いか?』
『う、うん! そうだよ。最近の科学は凄いよね~!』
例えば初めてプリルンと会った時。
キラキランドとか、妖精とか知られたら騒ぎになるから何も言わないでほしいと思っていた私の心を察して、下手な嘘に乗っかってくれた。
『今日はちょっと用事があるから無理だが、明日から引き受けよう』
『やった! 台助くんありがとう!』
例えば球技大会で優勝する手伝いをしてほしいと頼んだ時。
台助も自分の種目があるのに、嫌な顔一つしないで私とななちゃんにバレーボールを教えてくれて、無事に優勝まで行けた。
嬉しかった。でもそれと同時に思った。
私は台助くんに頼りすぎなんじゃないかって。
自分が無力って言いたい訳じゃない。自分一人で何もかも出来る力があるとも思っている訳でもない。ただ、あまりにも何度も頼りすぎて図々しくないかなって思うようになった。
キラキランドやプリキュアについて台助くんには話せない。それは分かってる。でも事情も何も言わずに、困ったら取り敢えず頼って、相手の優しさに甘え続けるのはどうなのかなと悩んだ。
『…………聞かないの?』
ある日───メロロンと始めて会った日───、私は空気を読んでその場から去ろうとする台助くんを引き留めて、私が……私達が隠している秘密について聞かないのか尋ねた。
友達に何か隠し事をするのは辛い。
特に親しい人に何も言えないとなったら罪悪感で押し潰されそうになるし、もし私が台助くんの立場だったら相手に嫌われちゃったかなと不安になる。
『聞いてほしいのか?』
それでも台助くんは深くは聞かず、本当にそれを話して良いのか逆に問いてきた。今までのようなちょっとした内容とは違う、決して誰かに話していけないような内容だと察した上で、気になる思いを必死に隠した状態で。
『うーんと、それは』
『なら胸に閉まっとけ。いいか、間違っても口に秘密を入れてポロポロ溢すなよ?』
結局、私はまた甘えちゃった。
多分……この時の台助くんは私の隠し事を大きく考えていなかったんだと思う。精々、プリルンやメロロンが困ってるからちょっとした人助けしている程度だと考えていたんだと思う。
もし、もし言っていればあの時……
『プリルンが、プリルンが私の事覚えてなくて……!』
『ごめんな、うた。ごめん』
悔しそうな顔をさせなかったかもしれない。
悲しそうな顔をさせなかったかもしれない。
辛そうな顔をさせなかったかもしれない。
あの場で一番泣きたかったのは台助くんだったのに。
キラキランドについて知らなくて、私達が隠れて何をしている伝えてなくて、一足先にプリルンが記憶喪失な事を知ってどう伝えるか悩んで……何も出来なかった。
私が泣いてる姿を見て謝られた。本当に謝るべきなのは、色々と黙っていて台助くんをあんな顔をさせちゃった私たちなのに。
それなのに台助くんは私が泣き止むまで抱き締めてくれた。甘えすぎてないか悩んでた筈なのに、また台助くんの優しさに甘えちゃった。
『だからその辺りはうた達に任せても良いか? 俺は俺で何か別の方法が無いか調べる』
それから数日後。
プリルンが記憶喪失になった理由を調べようと、誓いの広場までやってきて台助くんに電話越しで事情を説明した時、なんだか台助くんが無理しているように思えた。
ななちゃんも、こころちゃんも、田中さんも疑問に思っている様子は無い。
きっとそれは、幼馴染みとしてずっと一緒に居た私にしか分からないほどの小さな違和感だったから。
『…………』
私はなんて声をかけるか悩んだ。
私だけ気付いてるって事は、変に心配してるような言葉を掛けたら周りのみんなも不安にさせちゃうから。だから言葉を選ぼうと思ったけど、いくら考えても言葉は出てこなかった。
『うた?』
『ッ! ううん、なんでもないよ。ねぇ、台助くん』
『なんだ?』
『頑張ろうね!』
『ああ』
それでも何か言わなきゃと思ったけど、台助くんが心配そうに私の名前を呼んでいる声が聞こえた。
逆に心配かけちゃった。今でもプリルンの事で心配を掛けてるのに、これ以上は台助くんの迷惑になるからと、私は無理矢理電話を切った。
そして私は無理をしている台助くんに心配を掛けないよう、そして元のプリルンに戻ってもらいたくて、記憶が戻るように頑張った。頑張って、頑張って、頑張って……風邪を引いた。
雨の中、カッパも着ないでプリルンの落としたキラキライトを探してたからってのもあるんだろうけど、山登り前日にあまり眠れてなかったり、やる気が空回りしてたり、色々な原因が重なったからだと思う。
どうすれば良いんだろう。
風邪で心細くなって、プリルンの記憶が元に戻らなくて、頑張ったけどどうにも出来なくて、また台助くんに心配を掛けて……いつの間にか、私の目からは涙が溢れていた。
『大丈夫だ。安心しろ』
『え?』
『この前は失敗したけど、次は……次はきっと大丈夫だ』
だから、元気をくれた時は凄い嬉しかった。
いつものように具体的に何をすれば良いかとは言わない。それでも台助くんが私の背中を押してくれてるのは変わらない。頑張れって応援してくれてるのはいつもと一緒だった。
「うた。また明日、学校でな」
「うん! また明日!」
まだ完全には治っていないからと、私の身体を気遣って話を終えるなり私の部屋から出ていく台助くんと、明日学校で───今日の内に風邪を治すと───約束し、部屋には私一人になった。
最近まではプリルンとメロロンと一緒だったけど、今では懐かしさと共に寂しさを感じる一人だけの部屋。さっきまでだったら二人が居ない事が辛くて心が暗くなっていたけど、今の私の心はとても明るい。
それは台助くんの体温をまだ感じているからか、はたまた風邪で体温が上がってきたからか。どっちかは分からないけど、この暖かさは心にまで伝わっている。まるで今度こそプリルンの記憶が戻ると自分自身を奮い立たせるように。
「~♪……って、今は歌っちゃ駄目なんだった」
奮い立つ自分の気持ちそのままに、いつものように歌を口ずさむけど、今は風邪で喉を痛めてるんだったと気付いてすぐに口を閉じる。
ついつい癖で歌いそうなっちゃった。でも今は我慢だよ、我慢。今歌っちゃったら風邪が長引いちゃうだろうし、プリルンにも私の歌を……
「あっ」
そこでふと、私は気付く。
記憶喪失になったプリルンにまだ私の、プリルンの憧れの『キュアアイドル』としてじゃなくて、プリルンの友達の『咲良うた』として歌を歌っていないと。
私はプリルンと初めて出会った日を思い出す。
強く記憶に残っている出来事。それは私の歌が大好きと言ってくれたプリルンもきっと同じ。もしかしたらあの時と同じように歌を歌えば何か思い出してくれるかもと、微かな希望を抱く。
「よし。そうと決まれば早く治さないとね!」
私は布団を被って寝る……前に、こころちゃんとななちゃんが買ってきたケーキを冷蔵庫に仕舞おうと、ベッドから起き上がる。
私とプリルンとメロロン用にと買ってきてくれた三つのケーキ。二人が戻ってきたら私も食べようと思ってまだ手を付けてないけど、このまま私の部屋に置いといても腐っちゃうからね。
それと三つもケーキがあったらお母さんやお父さん、はもり───私の妹───に怪しいと言わないまでも、食べて良いのか聞かれそうなので、プリルンとメロロンの事をポロッと喋らないようにしないと。
「…………」
ケーキの乗った皿を持ち上げようとした時、私の視界には自分の手が入ってくる。それと同時に、台助くんに元気をもらった時に手を握られた感覚が甦ってくる。
「台助くんの手、暖かかったなぁ」
私はゆっくりと、両手を祈るように握って自分の胸に当てる。
風邪による熱とは違う、ほんのりと台助くんの体温が残る両手を優しく全身で包むように、台助くんの優しさをほんの少しだけ貰うように、私は奮い立った心を通じて全身に熱を伝えていく。
「えへへ……」
自然と笑顔が溢れる。
その笑顔にはどんな感情が含まれてるのか。私にも分からないけど、台助くんの熱を感じるとなんとなく嬉しい気持ちになって、ここ数日上がる事の無かった口角が上がる感覚を覚える。
もう私の心には不安や心配なんて無い。
あるのはただ、きっとどうにかなると言う前向きな気持ちと、キラッキランランな想いだけだった。
話数の表記が違いますが仕様です。
本編にガッツリ絡む内容なのに、番外扱い(0.5)は違和感があるので「15-1」と表記しました。あくまで私の個人的な感覚による表記なので、普通に本編扱いと思ってください。
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