うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
作中の時間軸は第2話終了後の夜です。
具体的に言うと、うたちゃんがキュアアイドルとして戦った日の夜。
キュアアイドル研究会
これは俺が中学三年になった最初の登校日に設立された部活である。もう一度言おう、新学期初めての登校日に設立された部活である。
しかもこの部活を設立したのは中学一年生、つまりは新入生と言うのだから驚きである。行動力も然ることながら、その短期間でよく先生から許可が貰えたものだ。
さて。事前知識はこの辺りにして、問題はこのキュアアイドルについてである。
キュアアイドルは突如として現れて人気を獲得しつつあるアイドルである。
まるで俺の幼馴染みであるうたが、最近アイドルプリキュアとして知名度を上げているのと似ている。偶然とは恐ろしいものだ……と、現実逃避するのは止めよう。
結論から言えば、これはうたである。
何故それが分かるのかと言えば、研究会のポスターにキュアアイドルとしてのうたが載っているからだ。
どうやら『アイドルプリキュア』はユニット名であり、プリキュアとしてのうたを指す『キュアアイドル』は活動名のようだ。
そう言えば、キュアチューブの動画───あの後聞いてみたら、どうやらプリルンが動画を上げていたらしい───にもキュアアイドルと記載されていた。これからうたがアイドルとして活動している時は、キュアアイドルと呼ぶとしよう。
「と言うことで、研究会に入部してご本人登場ドッキリしようぜキュアアイドル」
『うん……って、えええ!』
なので早速俺はうたにキュアアイドルとして、研究会に入部しようと提案を電話で持ち掛けた。
あくまで冗談ではあるが、うたの反応がみたくてつい言ってみたくなった。所謂イタズラ心である。
『いやいやいや、なんで研究会に入る流れになったの!?』
突然の俺の提案に思考が追い付いていなかったのか、一度は頷いたものの、脳が言葉を理解した瞬間に疑問をぶつけられてしまった。
うたの性格ならもう少し行けると考えたが……どうやら自分の知らない所でうたは成長していたらしい。幼馴染みとして嬉しい反面、自分の知らないうたが居る事に寂しさを覚えてしまう。
「うたがグダグダなドッキリを仕掛ける所を見たいから提案した」
『もう! 私はドッキリなんてしないよ!』
「そうか。研究会に入ればきっと、みんながキュアアイドルを誉めてる様子を見れると思ったんだが」
『え、みんなが私を? えへへ~』
チョロイな。
俺はスマホ越しに
『プリルンも研究会に入りたいプリ!』
そんな俺とうたの会話を聞いていたのか、スマホ越しにプリルンの声が聞こえてくる。
うたの隠し事の一つである妖精のプリルン。
詳しくは知らないが、キラキランドを救うためにアイドルプリキュアを探しにはなみちランドにやってきたらしい。
改めて振り返ったが、アイドル活動をすればキラキランドが救われる。と言う因果関係はよく分からない。
もしかしたらアイドル活動とは別の「何か」でキラキランドを救うのかもしれないが、これ以上は俺の知らないうたの隠し事になるだろうから、深くは突っ込まない。
「うーん、研究会に入れるのは学校の生徒だけだからなぁ。そもそもプリルンが学校に居たら騒ぎに」
『入りたいプリ入りたいプリ入りたいプリー!』
世間ではキュアアイドルのファンが増加しているように、プリルンもキュアアイドルのファンの一人らしい。
自分も他のファン達と一緒にキュアアイドルを応援したいと駄々を捏ねるプリルンだが、その夢を叶えるには些か厳しいだろう。
そもそもプリルンは人間じゃない。もっと言えば、俺やうたの通っているはなみち中学の生徒でも無い。
生徒ではない相手を研究会に入部は出来ないだろうし、100歩譲って入部出来たとしても、その容姿から目立って応援どころでは無くなるだろう。喋って動くぬいぐるみで押し通す事は不可能に近い。
『もう。駄目だよプリルン、ワガママ言っちゃ』
『プリ~……』
うたも厳しいと悟っているようで、プリルンにワガママを言って相手を困らせてはいけないと注意する。
プリルンの居たキラキランドではどうだったかは知らないが、俺達の所では生徒以外が研究会に所属は出来ない。どうしても研究会に入りたいのなら……そうだな。
「人間になれれば生徒として研究会に入れるだろうな」
『分かったプリ!』
実際には叶えられない条件を突き付けるのは胸が痛むが、それ相応の理由が有ろうと「これも駄目。あれも駄目」と頭ごなしに否定するよりも、条件を付けた上で今は無理だと説得する方がプリルンも納得してくれるだろう。
「ところでうた。一つ気になったんだが、プリルンは昼間何処に居るんだ? ずっと部屋で待たせていたら腹が減るだろ」
『え”っ!? えーと、何処だろうね。あはは』
あー、うん。これ何か隠してくるな。
一周回ってわざとやっているのかと疑いたくなるような誤魔化しに、俺は呆れと苦笑いを隠せない。
それでも俺は自分自身で、うたの隠し事は聞かないと決めているので、その辺りについては何も言えない。精々言える事と言えば、本当に知らないのかの確認ぐらいだろう。
「知らないのか?」
『う、うん。全然サッパリ全く知らないねー』
「そうかそうか。何故だか今日、俺の教室でプリルンを見掛けたけど、うたは全く知らないのかー」
『ギクッ! へ、へー。そうなんだ』
スマホからうたが「ギクッ」と何かに驚いたような声を出しているが、いったい何の事か分からないな。俺はうたの隠し事を指摘した覚えはないと言うのに。
さてと、惚けるのはこの辺りまでにしよう。
実は今日の入学式兼HRの途中、ふと外を眺めていたら蝶のように空を飛んでいるプリルンを見掛けた。
恐らくは初めて見た建物でテンションが上がってしまったのだろう。
キラキラと目を輝かせて飛び回るプリルンを見ながら、俺は誰にも見つからないようにと祈るしか出来なかった。
仮に声を出したなら俺に視線が集まり、外に居るプリルンも俺の存在に気が付いて「あ、台助プリ~」と、はぐれた飼い主を見つけた犬のように俺の元へ来ていただろうから。
そんなトラブルが今後起こらないよう、プリルンはうたの部屋で待機してもらう……案に関して俺は否定だ。むしろプリルンがうたと一緒に学校に居るのを推奨する。
ずっとうたの家で待たせていては退屈で仕方が無いだろうし、生き物である以上は腹も減る。
それに自分を知っている相手と一緒に居る方がプリルンも安心出来るだろうし、家でずっと待ってもらうとうたの家族に見つかる危険性もある。
それならぬいぐるみのフリをしてもらって、学校でも一緒に居てもらうのが最善と言えるだろう。
仮に何かあっても、目の届く範囲の方がうたも何かしらフォローも容易だ。うたが隠し事が苦手なのには目を瞑るが。
「なぁうた、俺はお前の隠し事を聞くつもりは無い。ただ、プリルンを学校に連れてくるなら事前に一言教えてくれ。周りに見られてないかヒヤヒヤしたぞ」
うたの隠し事について聞かないのはあくまで「俺自身」の話であって、周囲の人間に関しては当然ながらそんな決まりもルールも存在しない。
人の秘密を無理矢理聞くのはマナーとして悪くはあるが、プリルンの存在がうたの秘密に通じると一目で分かる人間は居ないだろう。
実際、俺も初見でプリルンを単体で見た瞬間に「この生き物はうたと関係があるな!」とはならない。むしろなったら怖い。
『……ごめん台助くん。次からは気を付けるね』
「プリルン」
『なにプリ?』
「うたと一緒に居たいのか?」
『プリ! プリルンはうたと一緒が良いプリ!』
「なら、うたとの約束を守ろうな。出来そうか?」
『出来るプリ!』
今はプリルンの言葉を信じるとしよう。
キラキランドとは俺らの常識とは何もかもがかけ離れた場所のようだし、俺らにとっての「当たり前」もプリルンにはそうではなくて、それによってまたトラブルが起こるかもしれないが……その時はその時だ。
事前にトラブルを防げるのならそれが一番ではあるが、常識とは当たり前であり、無意識の選択だ。
外から酸素を取り入れて肺で呼吸をするかのように当然の行動であり、それらを逐一意識して行動する人間は珍しいだろう。
しかもわざわざ「呼吸をするにはまず、口や鼻から空気を取り入れて……」なんて説明は赤ちゃんですら聞かずに、自然に行えるのだ。
そんな「当たり前」を全て伝えるのは難しく、説明しようとしても「それぐらい知ってるだろう」と無意識に省いてしまい、結果的にちゃんと伝わらないだろう。
だから、俺らが出来るのはトラブルを起こしたプリルンにそれが駄目な理由を説明し、再度同じトラブルを起こさないようと事後注意するぐらいである。
『ふわぁ~あプリ』
「ん? 眠いのかプリルン」
『今日は色々とあっからね』
色々とは何か、気になりはするが追求するのは止めておこう。
きっとその色々が指すのはうたとプリルンとの間に生まれた思い出だろうし、眠いのに根掘り葉掘り聞かれるのはプリルンも辛いだろう。
「ゆっくり寝て疲れを取れよ。おやすみ」
『うん。おやすみ、台助くん』
『おやすみプリ』
俺はうたとプリルンにおやすみの挨拶をし、スマホの通話を切るのであった。
キュアアイドル&キュアウインク研究会
これは俺が中学三年になった最初の登校日に設立された部活である。もう一度言おう、新学期初めての登校日に設立された部活である。
何処かデジャヴを感じる感想を述べたが、どうやら
きっと俺がうたに「キュアウインクって誰?」と聞けば「ウィンクはね、◯◯ちゃん……って、ごめん! やっぱ今の無し!」と、うっかりと口を滑らすだろう。
しかし俺のポリシー的に聞くのは無しだ。
一切質問してないのに、うたが勝手に口を滑らした場合は聞かなかった事にするが、相手の隠し事は聞くべきではない。つまりキュアウィンクが誰なのかについても同様である。
「あっ、台助くん! 紹介するね。この子は『
「こ、こんにちは」
「…………うん。そっか」
俺はこれに対してどうリアクションすれば良いんだよ。
自ら隠し事を暴露してきたうたを見て、俺は顔に手を当ててただひたすらに反応に困るのであった。
うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す前にバラせとは言ってねぇよ。
続きを書く事になった経緯。
続きを見たいと感想をもらう→一度書けるか試してみる→全然筆が進まない、主人公のキャラ的にプリキュア側の事情が書けず読者に説明が難しそうなので諦める→続きは感想を返す→一応もう一度挑戦するかと、キミプリを最初から見返しながら試す→第4話まで完成した→第2話を投稿(今ココ)
この作品の今後のストーリーは未定です。なので下手したら、主人公はプリキュア達が戦ってるのを一切知らずに物語が完結する可能性あります。
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