うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
今回はダイジェスト気味、三人称視点です。
時系列は第30話です。
具体的に言うと、田中さんから話を聞いた後です。
「…………」
「…………」
台助とメロロンがハートキラリロックに封印されてから凡そ一時間。うたとプリルンはハートの木がよく見える展望台で、はなみちタウンの光景を眺めていた。
これは決して封印を解くのを諦めて現実逃避をしている訳では無い。
既に封印を解けるかも、と言う希望は見つけている。今はその希望にすがる前に気分転換をしているだけなのだ。
本当は今にでもハートキラリロックの封印を解きたいのだが、台助とメロロンが封印されてショックを受けているだろうと、二人と再会した時に悲しそうな顔をしていたら心配させてしまうから、と言うななとこころの配慮から心を休ませているのだ。
台助とメロロンが今も苦しんでいるかも、と考えれば休んでいる暇など無いのかもしれない。
それでもななとこころは、一時的にでも休んでほしかった。何故なら目の前で台助とメロロンが封印された直後のうたとプリルンはそれはもう、見ていられないほどに酷い状態だったからである。
「だい、すけくん……?」
「メロ、ロン……?」
時は遡り、台助とメロロンがハートキラリロックによって封印された直後。
うた達は目の前の現実が、何が起こったのか理解が出来なかった。
メロロンの叫び声が聞こえたかと思えば、突如として現れたハートキラリロックによってメロロンを助けようと飛び込んだ台助ごと封印されたのだ。
その時間はたったの数秒。事が起きてから終わるまでの間、うた達の思考が再開するには充分な時間であり、動くにはあまりにも遅い時間でもあった。
視覚から得た情報が整理されていく。
それが幻想だと否定しようにも脳が現実だと訴える。
いつものように自身の名前を呼んでくれる相手が居ない光景が、それが現実だと突き付けてくる。
そんな訳が無いと願うもその希望は届かない。何故ならただすがるだけでは奇跡は訪れないのだから。
「台助くん! 台助くん! 台助くん!!」
「メロロン! 返事をしてほしいプリ!」
相手の名前を何度も呼ぶ。返事は無い。
ハートキラリロックを揺さぶる。何も変わらない。
爪を立てて封印を無理やり解こうとする。外れない。
視界が涙で歪んでいく。ただそれだけで意味は無い。
嗚咽を漏らす。苦しさが胸を締め付ける。
もう離れたくないと思った。
プリルンが記憶を失ってしまった時のように、友達と……親しい相手と一生さようならする、なんて経験はもう二度としたくないと思った。
それなのに、それなのに……また、繰り返してしまった。手が届かなかった、何も出来なかった。この前と違って知らない間に事が動いていた訳ではなく、自身の目の前で起こってしまった。
「う、ぐずずぅ、だいずっ……うあああ!」
「メロロン! メロっ……メ"ロ"ロ"ン"!」
「プリ……」
「ぐすっ……」
「メロロンと台助さんが……!?」
この場に居ても事態は好転しない。
そう考えたななとこころは、未だに嗚咽が止まらないうたとプリルンを気遣いながら田中の家へと向かいこれまでの出来事を説明した。
田中の家に行けば全てが解決するとまでは思っていないが、何が起こったのか分からない今、誰かを頼りたかった思いはある。
そしてそれ以上に、キラキランド出身の田中ならば何か知ってるんじゃないかと考えたからである。
何故、ハートキラリロックが今頃になって動いたのかを。
何故、ハートキラリロックはメロロン───台助は狙われた訳でないのでここでは省く───を封印したのかを。
「すみませんが私ではとても力には……ですが、女王様なら何か知っているかもしれません」
しかし流石の田中でも相談相手にはなれても、事態を好転へと導くほどの力は無かった。が、自身の力で解決出来ないものは出来ないと素直に田中は受け入れる。
自分の知らない間にそんな大変な事が起こっていて、尚且つ自分はそれを解決する事が出来ない無力さに思う所はある。
自分が何かしら動いていれば、こんな事にならなかったのではないか。そう自身の行動を悔いる心もある。
だが今はそんなのはどうでもいい。
自分の手に余る。それでもどうにか……と足掻くのではなく、自分の力では封印された二人を救えない。
ならば自身よりキラキランドに詳しい相手ならばと、田中はすぐに心を切り替えてキラキランドの女王へと連絡を入れる。
そして女王は答えた。
メロロンが「プリルンとの未来」代償にした事を。
その未来が今まではどんな未来だったか明確にしておらず曖昧な曖昧なモノだったが、封印される直前に「プリルンやうた達と友達になって共に過ごす未来」と明確に思い描いた事を。
そしてその未来が訪れないよう、ハートキラリロックに存在ごと封印された事を。
それらの出来事をプリルンの事を想ってメロロンが黙っていた事を。
『以上が私の知る内容です』
女王の言葉に全員が口を紡ぐ。
何も言わなかった女王を攻める訳でも、秘密にし続けていたメロロンを怨む訳でもない。ただ、なんで早く気付かなかったんだろう。もっと早く気付いていればと、自身の無力さを悔やむばかりであった。
「…………」
そんな中、うただけは別の事に頭を回していた。
他と同じようにうたにも悔やむ気持ちはある。悲しみも未だ心の中で燻り続けている。が、それ以上に幼馴染みの台助はいつからこの事を知っていたのかについて疑問が浮かんだ。
自分達とメロロンには距離がある。
それはメロロンがハートキラリロックに封印した願いが証明しており、今の今まで封印されなかった様子から友達とすら思われていなかったのだろう。
だから友達になろうと距離を詰めようとして失敗して、それでもメロロンは自分達と友達になりたいと思ってくれていて……今に至る。
なら台助はどうだ?
友達、ではないだろうが自分達よりも距離が近かったのは確かだ。少なくともうたから見て、メロロンが台助を嫌っているようには見えなかった。むしろ仲が良かった、今更ながら「なんであれで友達じゃないんだろ」と首を傾げるほどには。
そんな仲の良い台助ですら、メロロンの様子に気付かなかったのは一応の理解は出来る。何故ならメロロンといつも一緒に居たプリルンですらメロロンが苦しんでいるのに気付かなかったからだ。
しかし理解は出来るだけで、納得まではしない。
納得が出来ないのは単純に、台助がまるで何かを知っていたかのようにメロロンを助けようと動けたからだ。何が起こっているか分からず、ただ呆然として出来なかった自分達が居るにも関わらず、だ。
もしかしたら台助は何か知っていたかも、そううたは考える。
だがその疑問に答えは無い。何故ならその疑問に答えられる人物はメロロンと一緒に封印されてしまっているのだから。
「もし、台助くんなら……」
うたはこの場に居ない幼馴染みへ想いを馳せる。
女王様からメロロンの事情は聞いた。それで、自分達は何をすれば良い。どうすればハートキラリロックの封印を解いてメロロンと台助に会える。
いつも隣に居て、困った時には背中を押してくれた幼馴染みならば、こんな時どうする。どうやってこの問題を解決を導く。
『此方は任せろ!』
ふと、うたはハートキラリロックに封印される直前、幼馴染みが言っていた言葉を思い出す。
あの言葉の意味はなんだったのか。字面だけを見ればメロロンは自分が助けると受け取れるが、うたはある違和感を覚えた。本当に台助がそれだけの言葉を残すだろうか。
「うーん」
うたは自分が賢いとは思っていない。むしろ馬鹿の類だと自覚している。人の考えを読めるほどの頭脳なんて当然持ち合わせていない。
それでも幼馴染みへの理解力ならば、本人以外には負けないと言う自負がある。
「此方は任せろ……?」
台助の言葉を何度も咀嚼し、少しずつ紐解いていく。
そして疑問を覚える。此方が指すのはメロロン自身だ、今メロロンに接触が出来るのは一緒に封印された台助なのだから、それは分かる。ならハートキラリロックの封印は? それは誰が解く?
封印を解く方法が分かっているなら、台助はとっくに動いているだろう。台助が分かってて何もしない性格ではないのがうたがよく知っている。
なら未だに封印が解けない理由は? 時間がかかってる? いや、違う。それはきっと解けないからだ。じゃあその封印を解くにはどうすれば良い?
「あっ!」
そこまで考えてうたは気が付いた。
台助は封印を解かない、ではない解けないのだと。
何故? それは台助やメロロンだけだと封印は解けないから。
何故? それは内側からだと決して開けられない錠があるから。
じゃあどうすれば良い? 簡単だ、
「みんな! ちょっと良いかな……?」
具体的な方法は一つも思い付いていない。
だがうたにとっては「封印が解ける」の一点だけで動く意味がある。
台助が最後に残した一言はうたへ届き、希望となった。後はうた達の番、託された希望を胸に抱いて、プリルンの時のように奇跡を手繰り寄せるだけである。
「…………」
「うた、大丈夫プリ?」
そして最初の場面へ戻る。
希望を繋ぎ奇跡を起こす前に、うたとプリルンは心を落ち着かせる。
ななとこころは既に準備は完了している。あと自分達だけなのだが、肝心のうたはずっと空を眺めており、プリルンは自身も不安を抱えているのに関わらず、それは隠してうたに台助の事を気に病んでいないか心配する。
「え? う、うん。平気だよ! それより早くメロロンと台助くんを助けなきゃね!」
うたはプリルンの言葉の意味が一瞬理解出来なかった。
しかし自分を心配している内容だと分かるなり、空元気と捉えられるような返事をしてプリルンに問題無いと伝える。
もしここにななかこころが居れば違和感を覚えただろうが、純粋無垢なプリルンは言葉通りに受け取る。本人が平気と言っているなら大丈夫だろうと。
「苦しいな」
プリルンへ作り笑顔を見せたうたは、再度視線を空へと戻すなり眉を下げて誰にも聞こえないような小さな声でそう呟く。
台助とうたは堅い絆で結ばれている。それは台助のたった一言の言葉の意味を裏まで読み、台助が自分達を信頼して希望を託したと理解してる部分からも分かるだろう。
そんな絆と信頼を持っていても……否、持っているからこそうたの胸が痛む。
台助が自分達を気遣って、ハートキラリロックについて何も話さなかったのは理解している。もしその気遣いが無ければ今日までずっとメロロンの事で頭がいっぱいで、何かしようにも空回っていたのが容易に想像が出来るからだ。
それでも……誰にも言わず秘密を抱えていた。その事実がうたの心を締め付ける。
誰にも相談せず、ひたすらに自分一人だけで解決法を探っていた。その努力がうたの心を悲しませる。
突然の出来事にただ呆然と眺める事しか出来ず、メロロンを助けられなかった。その後悔がうたを辛くさせる。
自分達も誰にも言えない秘密を抱えている。
一緒だ。一緒の筈なのに、苦しい。どうして相談してくれなかったのかと、台助の気遣いが分かった上でそんな思考が流れてしまう。
身勝手な考えだ。
もっと頼ってほしいと、もっと頼られたいと、今まで甘えてきた分、もっと力になりたいと考えてしまう。自分達だって台助に隠している事が沢山あるのに、いざ自分達の番になれば「どうして言ってくれなかった」と思ってしまう。
こんなにも秘密にされるのが苦しかったなんて。
自分がいつもしてる、されてる事の辛さがこんなにも胸が痛むものだったなんて。この痛みがこれからも続くのなら、いっそのこと───
「うた」
プリルンはうたの名前を呼ぶ。
無意識だった。何故うたの名前を呼んだのか本人にも分からないが、ただなんとなく「今のうたは苦しんでいる」と察した。助けたいと思った。
でも何も考えていなかった。当然だ、名前をと言う最初の行動自体、無意識の内に行ったものなのだから。その先なんて決まっている訳もない。
「これで悲しくないプリ!」
だからプリルンはうたを抱きしめた。
その小さな身体でうたを包むように、苦しさから解放されるように、自分が側に居ると知ってもらう為に、辛かったら誰かを頼っても良いと肯定するように。
「……うん。ありがとう、プリルン」
そのプリルンからの溢れる優しさにうたはお礼を言い、ゆっくりとプリルンを撫でる。
うたの思考が苦しみから解放される。悩みの根本的な解決はしていないものの、今だけはこの苦しみから忘れさせてくれるプリルンに感謝する。
そしてうたは自分の思考について問い、先程までの考えを全て捨てる。
今さっきまでうたが考えようとしていた、自身の抱えている秘密を台助に全て話すと言う選択は、台助の優しさと気遣いを台無しにする行為だ。自分が辛いから話すと言う、より身勝手な行動だった。
そんな行動をしても台助が困るだけだ。自分の行動のせいでうたが苦しんでしまったと、台助が後悔するだけだ。
それに……そんなの行動をすれば秘密を共有しているプリルン達に顔向け出来ない。うたは悪くないと慰めてくれるだろうが、その優しさはうたにはきっと届かないだろう。
誰にも幸せにならない。
誰もが後悔を募らせてしまう。
だから……だからこそ、うたは秘密を喋らないようにと決意する。今だけは優しさと気遣いに寄りかかる。見なかったフリをする。それでもいつかは───
「待っててね台助くん」
全てを話したい。
その為にはまず、ハートキラリロックの封印を解かなければ。
気分転換は終わった。
うたは自身を立ち直させてくれたプリルンに心の底から感謝をし、メロロンに歌を───自身の気持ちを伝える準備をするのであった。
うたちゃんメイン回を書くたびに思ってる事
「なんか私の作品のうたちゃん重くない? てか回を増す事により重くなってね?」
一応補足するとヤンデレとかそういうルートに行くつもりは無いです。健全を貫きます。貫きますが……どうしてこうなった。こんな激重感情を持つうたちゃんとか予定に一切無かったんだけど。
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