うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
シリアス続きですが、私はこう見えてもギャグ畑の人間です。
時系列は第30話です。
具体的に言うと、メロロンが暗闇をさ迷ってる時です。
「おーい、メロロンー!」
ハートキラリロックの中に封印されてから何分……いや、何時間経っただろうか。
目が覚めた俺はいつの間にかはぐれてしまっていたメロロンの名前を呼びながら、何処まで続いているか分からない暗闇を歩き続けていた。
封印される途中で手を離してしまったのだろうか。
いかんせん、途中からの記憶が抜けてしまっていて見当が付かない。もしかして意識を失った際にメロロンが俺の腕の中から落ちて、離れ離れになってしまったのだろうか。
「明かり……は、やっぱり駄目か」
俺はポケットに入れていたスマホを明かりにして、この空間を照らそうとするが電源が付かない。
図書館に戻る前までは充電は満タンに近かった。放電したのか聞かれれば、そこまで古いスマホでは無いので短時間で充電が無くなる事は無いだろう。となれば、ここは光が存在しない謎空間なのだろう。
何故か光が無いのに手の輪郭がハッキリと見えたりと、不思議な事も起こってるので可能性としては有り得る。
一応俺が気付いていないだけで何日も経っていて、その間に放電して充電が切れた。なんて仮説もあるが、空腹具合や喉の乾きは封印される前とさほど変わりは無い。そうなると不思議空間と認識するのが自然だ。
「はぁ、流石に疲れたな」
この空間に来てから時間の感覚が分からない。
スマホはそもそも電源が付かなくて、腕時計なんてのは持ち歩いていない。仮に持ち歩いていたとしても、この空間でちゃんと動くのかは疑問ではあるが、この場に無い以上は考えても意味は無いだろう。
いったいどれほどの時間、メロロンを探しただろうか。
まるで光を全て拒絶するような空間の中、何処に居るのか分からない相手を探すのは疲れるし、本当にこの場に居るのか不安に思う。
が、見つかりさえすれば安心だ。
脱出手段は現状持ち合わせてはいないが、うた達なら助け出してくれると信頼しているから心配は無い。それよりもメロロンが一人で寂しくしてないかが気掛かりだ。
俺はこの場を脱出する方法を知っており、脱出する手段をうた達が用意してくれると言う信頼があり、時間が経てば外に出れる希望を持っている。
一方でメロロンは何が起こったのか分からないだろう。突如としてハートキラリロックに封印され、一緒に居た筈の俺も側に居なくて、こんな暗闇に一人で放り出されたのだ。
きっとひたすらに出口を探して、一人ぼっちの恐怖を内側に押し込めながらさ迷っているに違いない。早く合流しなければ。
「ん? あれは……光?」
右も左も真っ暗で分からず手掛かりも無い中、小休憩を挟んだ俺はメロロンの捜索を再開しようとした時、遠くに紫色の光が見えた。
まさかと思い、俺は再度スマホの電源を付けようとするが反応は無い。恐らくは空間そのものに変化が起きたのではなく、光が発生した部分にのみ変化が起きて、この暗闇の空間を照らしたのだろう。
しかしその光も一瞬のモノですぐに消え、この空間は再び暗闇へと戻ってしまった。
だが変化が無くなっても目的は決まった。
俺は宛もなくひたすらにメロロンを探すのを中断し、光があった方向へと歩を進める。
そこにメロロンが居るかは定かではないが、変化があったのならば、その付近で何かしらが起こったと言う証拠だ。ならばメロロンもそこに向かっていても不思議ではないが……
「よし、メロロン発見」
「メロ!?」
ビンゴだ。
俺が光のあった方向へと近付いていくと、そこにはキラキライトを持って寂しそうな顔をしているメロロンを見つけた。
さっきまで見えていた光の発生源はメロロンの持っているキラキライトだろう。念のため辺りを見渡すが、光を発生させるモノは見当たらないので間違えはないだろう。
「ずっと探したぞ? 無事で良かった」
「メロロンも……」
「ん?」
「なんでもないメロ」
相変わらず素直では無いが、今はそれを注意する必要は無いだろう。こんな空間で叱れば環境も相まって心に深く突き刺さってしまうだろうし、俺に心配の眼差しを向ける程度には少しずつ素直になっているのだ。本人が変わりつつある以上、無理に今すぐにでも変われと強制する必要もないだろう。
「それで台助、これからどうするメロ?」
「待機」
「ここから出ないメロ!?」
「いや、出たいのはやまやまだが、うた達の助けが無いと脱出は無理だ」
「どうして分かるメロ?」
「プリルンが記憶を取り戻した時、うたの歌って言う外部からの衝撃があった。もし今回も同じなら、うた達から何かリアクションが無いと封印が解けないと思ってな」
「でもさっきキラキライトが光ったメロ!」
「ああ。だからうた達が何かしたと思うんだが……」
俺は数秒沈黙し、耳を澄ます。
しかし俺達以外の物音は聞こえず、景色も一切変わらない。まるで最初から何も起こっておらず、ずっとこの暗闇の空間が続いていたかのように。
「出れないメロ」
「そうだな」
俺の仮説が間違っていただろうか。
いや、あくまで仮説だから間違ってても不思議じゃない。だがこの光を拒絶しているような空間でキラキライトが光ったのは気掛かりである。
だからうた達の方で何か行動して、この空間にまで影響をもたらした、ここまでは合ってる筈だ。となると、他の何かが足りないのだろう。だが何が足りないのだろうか。外部からの衝撃では足りない。となると、内部からの衝撃だろうか。
しかしその場合、どうやって内部から衝撃を与えようか。物理的な衝撃……は、意味が無いな。コンクリートのように硬い床を殴っても怪我をするだけだし、壁や天井はこの空間の何処にあるか分からない。
そうなると鍵はメロロンか。巻き込まれた俺がこの場所を脱出する鍵を持っているとは思えないし、ここはメロロンが何かしらの動きを見せなければ脱出出来ないと考える方が自然だ。
「どうするメロ?」
「あー、少し待ってくれ。もう少しで何が」
「奴らの事など忘れよ」
ある程度のピースが揃い始め脱出の糸口が掴めような中、突如として俺でもメロロンでもない、第三者の声が混ざる。
俺とメロロン以外に誰かが封印された? いや、あの場にはうた達以外居なかった。それにこの声は俺の知っている誰でもない。ならいったい……?
「誰だ?」
「妾はダークイーネ」
「ダークイーネ?」
「闇を知る者よ、お前を迎えに来た。お前を妾の仲間にしてやろう」
俺の疑問の声に、ダークイーネと名乗る人物は無視をしてメロロンの影から形を作る。それはまるで自身が闇そのものと言っても過言ではないような真っ黒な姿を。
闇を知る者は恐らく、メロロンの事だろう。少なくとも俺はダークイーネとやらは聞いた事すらないが、隣でメロロンが警戒している様子から知ってはいるのだろう。となると、キラキランドに関連した話だろう。
「話が見えてこないな」
目の前の人物が、メロロンが警戒するほど怪しいキラキランド関連の人物だと分かった。だが話の全容までは見えてこない。
何故メロロンを迎えに来た? ここから脱出する手引きをしにきた様子ではない。むしろ警戒している様子から察するに、メロロンが嫌うような行動をしたのか?
情報が足りない。
他に分かっている事と言えば、ダークイーネは俺の常識外存在なのでうた達の隠し事に関連しているような人物であるぐらいだ。
現状であーだこーだ仮説を建てられるほどの情報は集まっていないし、無理に仮説を建てても可能性が多すぎて絞れない。ここはもうダークイーネに関しては「なんか悪そうな人」程度の認識で置いとくとしよう。
「メロロンはどうしたい?」
「メロ?」
「ダークイーネって人が勧誘してきてるが?」
「メロロンはダークイーネの仲間になんてならないメロ!」
ダークイーネはメロロンからかなり嫌われているようだ。
うた達がプリルンと仲良く喋っているのに嫉妬している時以上の声量と勢いでダークイーネからの勧誘を断る。それこそ心の底から嫌っているほどに。
「だ、そうだ。悪いがここは諦めて」
「邪魔だ」
「むぐっ!」
状況がイマイチ飲み込めていないが、メロロンが嫌だと言っている以上はこの話は終わりだと、俺はダークイーネに謝罪をしつつ諦めてもらおうとしたが、ダークイーネは俺の言葉が目障りだと感じたのか、影を伸ばして俺の口を塞いでくる。
「台助!?」
そんな方法で口を塞ぐと……いや、そもそもとして口を塞がれるとすら考えていなかった俺は、影を振り払おうとするがガムテープのように貼り付いて取れる気配が無い。
幸いにも塞がれたのは口だけであり、鼻までは塞がれていないので呼吸は可能であるが、これでは喋る事が出来ない。
「戯言を……」
それは俺に対してか、メロロンに対して、はたまたその両方か。ダークイーネは俺の口を塞いだまま、その言葉を最後に霧のように消えていく。
そしてその場には黒いメロロンが現れた。ダークイーネとは全く別の存在、名付けるならばダークメロロンだろうか。
「メロロンはメロロンの闇メロ」
「メロロンの闇メロ……?」
「私は貴女、貴女は私。だから分かるメロ、メロロンはあの子達とはお友達になれないメロ」
「ッ!」
ダークメロロンの言葉にメロロンは顔をしかめる。
ダークイーネの発言から考えるに、ダークイーネは闇に関連した存在なのだろう。恐らくはキラキランドのような場所とは正反対の所で産まれた存在……どうしてそんな相手が現れたのかはこの際どうでもいい。俺はダークイーネについて名前ぐらいしか知らないので、考えてもキリが無いからだ。
それよりも今はメロロンだ。
ダークメロロンの話から察するに、ダークメロロンはダークイーネが産み出した、正確には認識出来るようにしたメロロンの心の闇なのだろう。本人もそう言っているし。
闇だから正反対の存在。
メロロンはうた達と友達になれるかもと思ってる。
ダークメロロンはうた達と友達になれないとハッキリと口にする。
メロロンは相手を傷付けてしまったら反省する優しさを持つ。
ダークメロロンは相手が傷付くのも構わず言葉を発する。
メロロンは基本的に嘘は吐かないが誤魔化しはする。
ダークメロロンは誤魔化しはしないが嘘は吐く。
「でも闇の中なら一緒にメロ」
「メロロンは、メロロンは……!」
ダークメロロンは自分が居れば、
「…………」
一方で俺はその光景を冷めた目で見ていた。
やっぱりだ、やっぱり違う。ダークメロロンは確かにメロロンの心の闇を元に具現化されたようだが、メロロン本人じゃない。メロロンの抱えている闇をそれっぽく、そして甘い誘惑に掛かるよう作られた偽物に過ぎない。
本当のメロロンはうた達とは友達になりたいと思っている。
だが一方で、素直に伝えるのが苦手で前に踏み出せないだけだ。決して友達になれないとは思っていない。
本当のメロロンは優しさを持っている。
高ぶった感情による勢いで相手を傷付けてたり、嫉妬の炎に狂う事はあっても、常に相手を傷付けようとは思っていない。仮に傷付けてしまった場合、反省してどうやって謝れば良いかと悩む優しさと繊細な心を持っている。
本当のメロロンは基本的に嘘を吐かない。
素直になれないあまり自分の感情すらも誤魔化す時はあるが、その時の言葉に嘘は混じっていない。表に出ていないだけで、実際は自分の感情に素直になるのが苦手な妖精なのだ。
「メロロンにはねえたましか居ないメロ。でもあの子達はねえたまを奪ったメロ。許せないメロ、許せないメロ!」
「メロ……」
ダークメロロンはそれが自分の本心だと言わんばかりにハリボテの言葉を浴びせ続け、メロロンを悩ませる。
きっとメロロンに今さっき出した結論を伝えれば、簡単に悩みを払い除けられるだろう。しかし今の俺は口を封じられ、ダークメロロンが自身の闇に溺れやすいよう作られた偽物だと伝える事は出来ない。
が、伝えなくてもメロロンなら問題無いだろう。
うた達と友達になりたい、そう一度は抱え続けていた本心を打ち明けられたメロロンなら。だから俺は、再び前に踏み出せるようにメロロンの背中を押すだけだ。
「…………」
「メロ」
俺は優しくメロロンの手を握る。
かつてうたにしたように。
かつてうたを励まそうと考え導き出した方法をなぞるように。
かつて抱えた後悔を再び繰り返さないように。
メロロンは俺に強い視線を送り小さく頷く。
それだけで良かった。言葉が無くとも、手を繋ぐだけで俺の思いはメロロンに通じる。
「メロロンはあの子達を絶対に許さないメロ!」
「それは違うメロ」
ダークメロロンの強気の言葉に、メロロンは淡々と返事をする。そこにはもう焦りも悩みも無い。むしろ清々しいと言わんばかりの表情である。
「本当に許せないのはメロロン自身メロ」
メロロンが俺の手を強く握る。否、正確には自身の素直な気持ちを表に出そうと力んだ結果、手を繋いでいる俺にもその緊張が伝わっているだけなのだろう。
俺はメロロンは一人じゃないと安心させる意味も込めて力強く握り返そうか悩んだが、今のメロロンはもう歩み出している。背中を押す必要は無いと、小さく微笑んで成り行きを見守るだけにした。
「友達になりたいって言ってくれたのに、もう友達って言ってくれてたのに……ずっと本当の気持ちを伝えられなかったのはメロロンメロ!」
メロロンは自身の本当の想いを発する。
絶対にそれを叶えると、ハートキラリロックの封印なんか知らんと言わんばかりに、封じられていた自身の想い───大切にしていた
「メロロンは、メロロンは……みんなとお友達になりたいメロー!」
瞬間、空間にヒビが入り光が満ちる。
それはまるでメロロンが自身の抱えていた闇を振り払ったと表すように。もう暗闇は訪れず、これからメロロンの心には光で照られるように。
俺は白く薄れ行く意識と共に、うっすらと願う。
メロロンと友達に……いや、これからもメロロンと───
「ん、あれ……ここは」
ゆっくりと、夢から覚めたように俺は目を開ける。
記憶は……ちゃんとある。メロロンの本当の想いを聞いたと同時に、光が満ちて意識を失った部分まで。
そして俺が今居る場所はハートの木がよく見える展望台。図書館前から移動している様子から、誰かが封印されている俺をここまで運んだのだろう。
となると、ハートキラリロックの封印を解くのに必要だったのは外側からの衝撃と内側からの……忘れようとも、動けなくなろうとも、封印された人物が封印したモノを何がなんでも取り戻したい。手に入れたいと言う想いだったのだろう。
「おかえり、台助くん」
「ただいま、うた」
状況を一つ一つ整理していると、ベンチに寝転がっている俺の顔を覗いてくる。
まるで遊びから帰ってきたかのように、子どもを諭すような優しい声で挨拶をするうたの表情には、心配と同時に安堵している雰囲気を感じる。きっとプリルンの時のように、俺に何かあったらと不安にさせてしまったのだろう。
「ごめんなうた。そしてありがとう」
「うん!」
俺の謝罪と感謝の言葉にうたは笑顔で返事をする。
この様子から見るに、俺のあの言葉がちゃんとうたに届いたのだろう。
あまりにも時間が無かったから、メロロンの事なら任せろ。その代わりに封印を解くのは頼む。すぐに会えるから心配するな! と言う意味を「此方は任せろ!」の一言に圧縮してもうたになら通じると直感した、そんな長年の信頼に感謝しなければ。
「やっと目が覚めましたね! うた先輩、台助先輩が居なくなって凄い悲しそうだったんですよ! それに戻ってきたと思ったら、全然目を覚まさなくて」
「わー! わー! わー!」
「ふふっ」
「うた、急にどうしたプリ?」
「どうせ叫びたくなっただけメロ」
こころちゃんがうたの本音をぶちまけ、うたがそれを大声で誤魔化そうとし、ななちゃんがその微笑ましく思い、プリルンがうたの行動に疑問を覚え、メロロンが呆れたような態度をとる。
そんなちょっとした日常。何処にでも溢れているような、掛け替えの無い大切な日常の1ページ。
いつの間にか欠けてしまった。何も失っていない、何も封印されていない、誰も塞ぎ込んでいない、暗い感情に閉じ込められていない、何も悩む必要の無い久しぶりの本当の日常。
俺はその日常を見て優しく笑う。
やっと掴んだ、ハートキラリロックの封印がどうたらと悩む必要の無いその幸せな日々を。
「さて、と」
このまま微笑ましい光景を眺め続けていたいが、メロロンが何か言いたげなので話題を変えようと、俺はメロロンへ視線を送る。
きっと今からメロロンが口にする内容はうた達にとっては当たり前だ。わざわざ口に出すまでもない、とでも思っているかもしれないが、これはあくまでメロロンの認識の問題だ。
言葉には言霊と呼ばれる力があるように、たかが言葉でもその中には力が宿っている。誉め言葉なら相手を包み込むような優しい力が、悪口なら相手を傷付けるナイフのように鋭い力が。
口に出すと出さないのとではそれほどまでに差がある。だからメロロンは自身の本音を口に出す、相手により自分がどう思っているかを伝わるようにと願いながら。
「うた! なな! こころ! ねえたま! 台助!」
メロロンが突然大声で俺達の名前を呼ぶ。
今までうたをずっとフルネームで呼んでいたですら名前で呼ぶメロロンが、今から何を言いたいのか。それが分からないほど鈍い相手はこの場に居ない。
「その、えっと……メロロンと、お友達になってほしいメロ!」
一瞬、言葉に詰まりつつも勇気を出して自身の思っている事を素直に発したメロロン。
ずっと待っていたメロロンからの言葉。それに対しての返事も前から……自分達がメロロンを友達と思っている時から決まっている。
「うん!」
「もちろん!」
「はい!」
「お友達プリ!」
「これからもよろしくな、メロロン」
「メロ!」
メロロン、俺達は友達だ。ただし今日よりも前からずっとからな。
メロロンがめっちゃヒロインしてる回でした。
おかしい……こんなの僕のデータに無いぞ!
真面目な話をすると、メロロンと台助がこんなに仲良くなるの自体予想外です。一定の距離を保った知り合いぐらいの予定だったのに、その距離が心地よすぎて仲が深まるのは予測出来ないって!
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