うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
プリキュア知らない人でも楽しめる作品を目標に書いてますが、そもそもそういう人は何人居るんだろと疑問に思ってアンケート始めました。
内容は「プリキュアを見たことあるか」です。後書きにて投票可能です。
時系列は第30話と第31話の間、キミプリ映画終了後です。
具体的に言うとキミプリ映画のネタバレ有りなので注意です。
『台助くん、明日二人で何処か遊びに行こう!』
ハートキラリロックの騒動が終わり、プリルンとメロロンが改めてうたの家に住むようになってしばらくが経ったある日の夜。
俺はうたから掛かってきた電話に出ると、開始一番遊びの誘いを受けた。
いつもなら「今日は◯◯があって~」や「ちょっと相談にのってほしい事がある」と世間話や、相談事から始まるのだが、どうやら今日は違うらしい。珍しい事もあるものだが、まぁたまにはそんな日もあるだろう。
「ん? まぁ予定は無いけど、急にどうしたんだ?」
『良いから良いから! それじゃあ、また明日ね!』
「ちょっ、うた!?」
前言撤回、なんかおかしい。
俺は明日の約束を取り付けるなり、理由も言わずに電話を切るうたに違和感を覚えていた。
まず俺と遊ぶ約束をする。その行為自体に違和感は無い。
今ではうたはアイドルプリキュアとしての活動、俺は受験勉強と互いに優先する行動が多いから数こそは減っているが、それ以前はよく二人で何処か出掛ける事が多かった。
だから久しぶりに一緒に遊びたくなって、誘いの電話を掛けた。ここまでは分かる。
だが理由も言わずに切るのはいつものうたと比べると疑問が残る。
俺に対する何かしらのサプライズ、にしてはおかしい。
誘った理由を言わないのには納得の行動ではあるが、今までのうたなら「えっ!? えっーと、台助くんの誕生日に向けて何が欲しいのか事前に知っておこうと……じゃなくて!」と、理由をポロポロと口から溢していた。
嘘を吐けるよう成長したと考えても、根っこが素直なのは変えようが無いので、どうやって誤魔化そうかと考える時間が生まれてもおかしくはないのだが。
「俺に言えない、もしくは直接じゃないと言えない理由か……?」
その詳しい部分では分からない。
今の俺は「うたが遊びに誘う理由を言わない」のと「すぐに電話を切った」の二つに違和感を覚えているが、あくまで手元にある情報はそれだけに過ぎない。
例えば俺との電話中、別の急用───それこそプリルンとメロロンの存在がうたの両親に知られそうになったなど───があれば、さっきまでの行動に納得が行く。たったそれだけで消えるような小さな違和感なのだ。
そもそも俺の考えすぎの可能性もある。
最近はハートキラリロック関連で頭をよく使っていたからか、ほんの少しの違和感すらも思考を回してそれを無理にでも紐解こうとしてしまう癖がついたのかもしれない。
「今日はもう休むか」
今は考えても仕方がない。
色んな可能性がある以上、頭を回しても納得の行く答えは導き出せてもそれが正解かは限らない。下手に深く考えすぎた結果、的外れな答えを出して変に空回りしてしまうかもしれない。
俺は明日うたに会えばこの違和感の正体が分かるだろうからと、思考を中断させて明日に備えて早めに床に就くのであった。
「あ、そうえば待ち合わせ場所決めてなかった」
翌日。
俺は朝食を食べ歯を磨いた後、出掛ける準備をしようと動こうとした時、何時に集まるかも何処に集合かも決めてないのに気が付いた。
なんで当日になって気が付いたんだと頭を抱えたい気分ではあるが、昨日はすぐに寝てしまったのだから考える時間が無かった。と言うのはただの言い訳だろうか。
いつものように行動出来れば良いのだが、いつもは現地集合である。そして今日に限っては何処で何をするかが一切決まっていない。
グリッターに行って直接うたを迎えに行くか? いや、うたが俺の家に向かっててすれ違いになったら合流するのが面倒になる。ならうたに電話を……あぁでもこの時間に起きてるか怪しいな。メッセージアプリに連絡だけ入れて待つか。
「ん?」
そうしてスマホを手にした時、家のインターホンが鳴る。
こんな朝早くから誰だ? 何かを頼んだ覚えも無いし、誰かが家に来るとも聞いてないが……親はまだ寝てるから俺が出るとするか。
『おはよう、台助くん!』
「あれ、うた。今日はちゃんと起きれたのか。ちゃんと寝たか?」
『むっ。ぐっすり寝たよ!』
「それは良かった。ちょっと待っててくれ」
インターホンを鳴らした相手はまさかのうたであった。
朝に弱いうたではあるが、今日遊ぶのが楽しみだったのか、それともワクワクしすぎてあまり眠れなかったのか。
どちらにせようたが遅刻ギリギリじゃない上にこんな朝早くから起きてるのは珍しい事だ。
まだ準備が終わっていない俺はうたに少しだけ家の前で待ってもらい、急いで荷物を纏めて家を出る。
それにしてもまだ店が空いてないような時間来るなんてな……引っ掛かりはするが、今はまだ何も言わないでおこう。俺のただの杞憂かもしれないからな。
「それで、まずは何処に行く? グリッターか?」
「まだ帰らないよ!?」
「冗談だ」
合流した俺達は目的も無くただひたすらに歩き始める。
道中、ちょっとした冗談でグリッターに行くか聞いてみたが、「食べる」ではなく「帰る」と言っている様子からちゃんと朝食は食べたらしい。
もし朝食も食べずに来ていたなら、グリッターに行くと言う誘いに乗ってきているだろう。
じゃあやっぱり自分から朝早く起きたのか? もはや珍しいを通り越して気掛かりなレベルだ。それこそ昨日覚えていた小さな違和感が増すほどに。
「うた、ちょっと買いたい物があるから文房具屋に寄って良いか?」
「うん!」
俺は内心抱えている違和感をうたに悟らせないよう平然を装い、一言断りを入れて早くから開いている文房具屋へと入る。
まだ違和感について指摘はしなくて良いだろう。いつもと様子がおかしい部分には確信を持っているが、その理由までは未だ不透明だ。少なくともそれが見えるまでは何も言わずに様子を見ておこう。
「えっと、これとこれと」
「色々と買うね」
「まぁな。授業で使ってるのもそうだが、受験勉強もあるからな」
別に無理して今日の内に文房具を買う必要は無いのだが、こんな時間だと他の店が開いていないので時間を潰す意味も含めての寄り道だ。とは言っても、吟味し続けてうたを待たせるつもりも無いので、シャーペンの芯や消しゴムのように必要な物だけを買って終わりにするが。
「…………」
「うた?」
「え? うん、なんでもないよ!」
一瞬、俺の言葉に悲しそうな表情をするうた。
何か変な事を喋ったかと、自身の発言を思い返すが特にこれと言って不自然な部分は無い。それとも自然不自然の問題ではなく、気持ちが暗くなるような話が混じっていただろうか。
俺が今は話した内容は、授業と受験の二つ。
授業の話が嫌だっただろうか? いや、うたなら勉強は苦手だと顔は顰めても、悲しそうな表情はしないだろう。
なら受験の方だろうか。受験、つまりは俺が高校に行けばうたとは別々の学校に通う事になる。それが悲しい? でもそれにしてはもっと、別の事を考えていそうな……
「台助くん! 次はアイドルショップに行っても良いかな?」
「ん? プリティホリックじゃなくてか?」
「ちょっと他のアイドルのグッズを見たくてね」
「へぇ~」
なるほど、そういうことか。
さっきまでの悲しい表情は何処へ行ったのか、笑顔で次に行きたい場所を伝えてくるうたに、俺はいつものうたの笑顔と違うと確信を持ちつつも何も言わない事にした。
それにしてもアイドルショップか。
プリティホリック───田中さんが経営しているアイドルプリキュア専門の店───に寄るのかと思ったが、宛が外れたようだ。
「えっと、どの辺りにあるかな?」
うたは開店した直後で人の少ないアイドルショップへ入るなり、どのアイドルを探すのか既に決めているのか。迷い無く歩を進めるうた。
「そういや誰を探してるんだ?」
「昭和の頃に居た伝説のアイドル!」
「あ、い、う……う」
「なるほど。Utakoか」
「え、台助くん知ってるの!?」
「少しだけな」
CDコーナーで脚を止め、五十音を始めから探るうたの様子を見て俺はどのアイドルを探しているのかを察した。
それはいつ頃かに田中さんと見たドキュメンタリー映画の主役である、伝説のアイドルUtakoであった。
「うた、多分だがこういう場所には置いてないと思うぞ」
「え? でもここアイドルショップだよね?」
「最近話題のアイドルのグッズが置いてある、な」
しかしうたには悪いがUtakoのCDはここには置いてないだろう。
もっと大きなアイドルショップに行けば、昔に活躍したアイドルのグッズも置いてあるかもしれないが、ここはあくまで最新の───アイドルプリキュアや響カイトのようにここ数年で人気を集めている───グッズしか置かれていない。
Utakoが当時、どの程度の人気を博したかはドキュメンタリー映画が作られるほどなのだから語るまでも無いだろう。
だが今も知名度があるか言われたら俺は素直に首を横に振るだろう。少なくとも俺自身、映画を見るまで名前を聞いた事が無く、クラスでも話題になった様子は見た事がない。つまりそういう事である。
「昔のアイドルのグッズが見たいなら他の場所に行った方が早いと思う」
「他の場所って?」
「リサイクルショップ」
過去の商品が欲しいなら適任な場所があると、俺はかつての時代を感じられる場所、リサイクルショップをうたに勧めるのであった。
「あった!」
「良かったなうた」
そうして俺達は何件かリサイクルショップを回っていると、ようやくUtakoのCDを見つけた。
昭和、平成、令和と時間が経っている影響か。若干色褪せており、それはUtakoが人気であった時代からかなりの時が経っていると表していた。
「…………」
「うた?」
「え? あ、ごめん。ちょっとボッーとしちゃって」
「別に気にしてないが。それで買うのか?」
「うん。少し待ってて!」
1分、2分、3分と中古のCDを眺め続けて思いに耽るうた。
あまりにも長いので流石に心配になり声を掛けると、キョトンとした様子を見せて軽く微笑むうた。そのままレジへとCDを持っていき購入するのであった。
「なぁうた」
「なに?」
「Utakoって人のグッズを探したくなった理由、聞いても良いか?」
「えっと……どうして?」
「今までうたがアイドルに興味を見せる素振りは無かったからな。少し気になって」
もっと探せば保存状態の良いCDやグッズが見つかりそうなものだが、色褪せた物をわざわざ選び、それを大切そうに抱えるうたに俺は疑問をこぼす。
プリルンと出会って、アイドルプリキュアになって、そこからどういう心境の変化があったのかは知らない。
アイドルとして活動していく内に他のアイドルについて知りたくなったのか、それとも活動とは別の何かが切っ掛けで興味を持つようになったのか。
理由なんて直接聞かない限り正解は分からない。
ただ……なんとなく、その心境の変化と俺が昨日から抱えている違和感に繋がりがあるように思えた。
「実はね。私、この前アイアイ島って場所に行ったの」
「アイアイ島?」
「うん。色んな時代や場所から人が訪れる不思議な場所。そこのアイドルフェスに招待されたの」
うたは何処か遠くを見つめてそう語り始めた。
聞き覚えの無い名前に俺の常識では図れないような秘境。
それでも俺はうたが嘘や妄想を吐いているとは思っていない。
そもそもプリルンやメロロン、更にはキラキランドなんて場所があるのだ。他にも誰にも知られてないような不思議な場所があっても「へぇそうなんだ」と簡単に受け入れられる。
「そこで1000年前にタイムスリップして、アイアイ島の女神様に会って、テラちゃんって子が私のファンになってくれてね! 他にもライブしたり、新しい友達が出来たりね!」
「色々と会ったんだな」
俺の知らない間に一騒動起こっていたようだ。
まぁアイアイ島の話から考えるに、他の時代から来れるって事は1000年前のように他の時代に行けても不思議じゃないな。
それにそんな場所なのだから、女神なる存在が居ても驚きはしない。そもそもキラキランドにも女王様って人が居るようだし。
「そのアイアイ島でUtakoに会ったのか?」
「……ううん。Utakoさんが居た痕跡しか無かったよ」
「……そうか」
俺は何があったのかを察した。
最初は時代を越えてうた達がUtakoに会ったのかと思った。そしてアイアイ島で交流して、歌を聞いて、もっとどんな人か知りたくて、グッズを探したのかと思った。
だがうたはUtakoの居た痕跡しか無いと言った。見てないと言わなかったのは……つまり、もう亡くなっていたのだろう。それも墓や遺書のように、死んでいると分かるようなモノを残して。
きっとうたはアイアイ島から戻ってきて、ふと気になったのだろう。伝説のアイドルと呼ばれていたUtakoって人がどんな人なのかを、どんな風にファンと交流していたのかを、どんな歌を歌っていたのかを。
「アイアイ島の女神様ってね、Utakoさんのファンだったんだよね」
「…………」
「でもアイアイ島の人達と私達とじゃ、寿命が結構違うみたいで、Utakoさんもそれに気付いて」
「うた……」
「私、思ったんだ。誰かが傍に居るのは全然当たり前の事じゃないって」
うたが俺の隣に居るように、俺もうたの隣に居る。
それは当たり前のようで当たり前じゃない。
当然だと思っていた日常はふとした瞬間に終わってしまう。
アイアイ島での一騒動でそんな終わりがいつしか訪れてしまうと知ったのだろう。
「だから、だからね」
うたは震える声を抑え、今にも溢れだしそうな涙を堪えて言葉を続ける。
「昨日、ふと怖くなっちゃったんだ。この前みたいに、また台助くんやみんなが急に居なくなったりしないかなって」
プリルンは記憶を失った。
メロロンは目の前で消えた。
俺はメロロンを助けようとして巻き込まれた。
詳しくは分からないが、アイアイ島でもし俺達を助けられなかった場合の未来を、何年かそれとも何十年後かに訪れる当たり前が無くなった先の未来を、置いてかれる者の姿を見てしまったのだろう。
今まではどうにか出来た。
でも世の中、どうにもならない時は絶対にある。
それこそUtakoとアイアイ島の人達のような寿命の差のように、奇跡なんかじゃ引っくり返しようのない、辛い現実がいつか必ず訪れる。
それがうたには耐えられないのだろう。
もしかしたら、自分達もこうなっていたかもと恐怖を抱えてしまったのだろう。
明日起きたら突然隣から居なくなっているかもと、考えて夜も眠れなかったのだろう。
恐らくは文房具を見ている時に、俺の「受験」と言う言葉を聞いて悲しそうな表情をしたのも、俺が進学して交流が減っていつか自分の隣から居なくなるかもと、考えてしまったのだろう。
「駄目だよね、私。いつも台助くんに甘えちゃって、それで一人で勝手に不安になっちゃって」
うたは自嘲気味笑う。
もっとしっかりしないと駄目だと、迷惑を掛けちゃ駄目だと、助けられてばかりじゃ駄目だと。辛いのをひたすらに隠して見栄を張ろうとしている。
「うた」
「台助くん……?」
「大丈夫だうた。俺はここに居る、もう急に居なくなったりはしない」
その様子に耐えきれなかった俺はうたを抱きしめる。
自分の熱を、心臓の音を、自身の存在がこの場に居ると伝えるように。恐怖で眠れない夜を過ごさないように。
これ以上無理をしなくて良いと、誰かに甘えても大丈夫だと優しく肯定するように。
「寂しい思いをさせちゃったな」
「ぐっ、すぐっ……うぐっ」
たったそれだけでも、うたには充分届いたのだろう。
心の内に抱え続けていた悲しみや辛さが溢れてくる。
今まで心配を掛けないようにと黙っていた気持ちが止まらなくなる。
俺はそれを全て優しく包み込み、俺の胸の中で静かに泣くうたが落ち着くまでひたすらに大丈夫だと声を掛けるのであった。
「寝たか」
昨日からもしも、を考えて怖くてあまり眠れていなかったのだろう。
泣き止むなり俺の胸の中で寝てしまったうたを抱え、俺はベンチへと腰掛けて自身へ寄り掛かるようにうたを隣へ座らせる。
「なぁうた」
俺はうたへ声を掛けるが、当然返事は無い。
分かっていた。それでも声を掛けた、今から発する言葉が聞かれていないと確認する為に。誰にも喋った事の無い俺の
「俺は───」
その言葉は、俺の発した隠し事はやはり誰の耳にも入らず、風に乗って消えていくのであった。
うた、俺は隣に居るから安心しろ。ただしいつかきっと……。
今回の話は前回及び前々回でうたちゃんに関する感想が幾つも来てて「流石にこのままうたちゃんに触れずに話を進めるのは不自然かなぁ」と急遽書き上げました。雑な感じになってしまった……。
予定ではセンター回でしたが、うたちゃんをスルーしてセンターうんぬんの話するよりも間に何か挟んだ方が良いよなと気付きを得れたので感謝です。感想ありがとうございます。
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