うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
時系列は第31話です。
具体的に言うと、アイドルプリキュアに関するアンケートをしている時です。
「あれ、こころちゃん。三年の教室で何してるんだ?」
授業の間の休み時間。
恐れを知らないと言った様子で上級生の教室へ入り、何かしらの紙を片手に片っ端から俺のクラスメイトへ話しかけている様子を見て、俺は何をしているのか気になり声をかけた。
「実は今アンケートを取っていまして」
「アンケート?」
俺はこころちゃんの持っている紙を拝借して、その内容を確認する。
そこには「アイドルプリキュアの中で誰がセンターになってほしいか」と言う題名と共に、各メンバーの名前とそのメンバーのイメージカラーのシールが貼られていた。
「センター……?」
「はい。誰が一番アイドルプリキュアのセンターに相応しいか悩んでいまして」
「悩むって……今まで通り、キュアアイドルがセンターじゃ駄目なのか?」
「駄目ではないですが、元々流れでキュアアイドルがセンターであっただけで、まだ正確には決めていなかったんですよね」
「それでアンケートを取って改めてセンターを決めると」
「はい」
アイドルプリキュアは最初から五人で活動している訳ではない。
キュアアイドル、キュアウインク、キュアキュンキュン……そしてキュアズキューンとキュアキッスと、段々とメンバー増えていって結果的にグループになったに過ぎない。
それをなぁなぁと言うべきか。
最初に始めたのはキュアアイドルだから自然とアイドルがセンターで歌って踊ってとしていたが、ふとメロロンが「キュアアイドルがセンターなんだろう」と疑問に思い、誰がセンターになるべきかアンケートを取ることにした。それが今までの経緯らしい。
「台助先輩は誰がセンターが良いと思いますか!?」
「誰がって、言われてもなぁ……」
正直に言えば、今の時点で完成されてるから無理に変える必要は無くね? が俺の本音だ。
しかしそれは素人意見であり参考になるかは怪しい。
例えばの話をすると、これからアイドルプリキュアは元気なイメージから、大人っぽいイメージに変えたいと行動に起こしたとしよう。
それなら常に元気を振り撒いているキュアアイドルがセンターのままなのは雰囲気が合わず、キュアキッスの方がセンターに合っていると言えるだろう。
「うーん」
だが変える必要が無いと直接伝えるつもりはない。
繰り返すがこれはあくまで素人意見だ。決定権を持つのは当然アイドルプリキュアに属しているこころちゃん達だし、今の時点で完成されてると思うのは俺個人の意見だ。
雰囲気を変えたいだの、今までと一新したいだの、今回のように改めてセンターを決めようと動いているのにそれに水を差す真似はしたくない。
それに完成されてると思うだけで、実際にセンターが変わったら今以上の人気やモチベーションが上がる可能性もあるのだ。動きもせずに変化を嫌い頭ごなしに否定したくない。
「あの、そんなに悩むなら無理にとは」
「あーいや、そうじゃなくて」
俺が言葉に悩んでいると、こころちゃんは誰がセンターに相応しいか悩んでいると勘違いしたようで、そこまで悩む必要は無いと気を遣ってくれる。
少し思考が明後日の方向に行きすぎたか。
そもそも今はまだセンターを変える前提の話ではなく、あくまでセンターを改めて決めようと言う話だ。こころちゃん達も手探りで動いている中、横からあーだこーだと口出しするのはただの邪魔になるだろう。
それにこれはアドバイスが欲しい訳じゃなくて、アイドルプリキュアのファンから見て誰がセンターに相応しいかと言う話で……あー、そうか。いつの間にか俺の中で前提が変わってたな。
「そういえば言ってなかったな」
ここまで俺はあくまでアドバイス前提の話と考えていた。
一方でこころちゃんは一人のファンとしての意見を求めていた。
ただのコミュニケーション不足では起きないような認識の違いが何故起こったのか。それは俺とこころちゃんの中で認識に差があったからである。
「俺、アイドルプリキュアにそこまで興味ないんだよな」
「え……えええええ!」
今まで話した事無かったなと、あっけらかんと喋る俺の様子にこころちゃんは大声をあげるのであった。
「それでは只今より、アイドルプリキュア布教活動会議を始めます!」
「おー、ですぞ」
「なんで俺がこんなの付き合わないと……」
「どうしてこうなった」
放課後。
あの後こころちゃんに「放課後空いてますか!? 空いてるなら私に少し付き合ってください」と勢いそのままに押しきられ、手を引かれて着いた場所は田中さんの家であった。
そしてそこで見知らぬ大人二人───田中さんの家に居るし、こころちゃんの知り合いの様子───とこころちゃんで机を囲い、俺にアイドルプリキュアの布教をする会議が開かれた……よし、あまりにも急展開すぎるがなんとか追い付けてるな。
「えっーと……」
「おっと、自己紹介がまだでしたな。自分は『カッティン』、プリティストアのスタッフですぞ」
「あ? あー、俺は『ザックリン』、コイツと同じスタッフだ」
「どうもこんにちは、台助です」
俺が混乱しているのを察してか、カッティンさんが名前を名乗り、ザックリンさんと俺もその流れに乗る。
珍しい名前だがキラキランド出身の妖精だろうか。それとも外国人なのか……どちらにせよ、初対面で急に「キラキランド出身ですか?」と聞くのは警戒、もしくは困惑させてしまうだろう。
それにキラキランド出身だとしても、この場では関係無い。
あくまで俺がこの場に連れてこられたのは、こころちゃんが俺にアイドルプリキュアの布教をしようとしたからだ。わざわざその流れを無視してまで聞くほど重要な事でもないのだから。
「なんと台助先輩はうた先輩、つまりはキュアアイドルの幼馴染みなんです!」
「えちょ、こころちゃん!?」
あくまで名前を名乗るだけの軽い自己紹介する程度に考えていたが、こころちゃんの補足に俺は目を丸くする。
うた達がアイドルプリキュアなのは秘密である。それこそ本人達以外で知っているのは、俺と田中さん。それとキラキランドの女王様ぐらいだろうか。
「ほぉ」
「へぇ」
それをこうもあっさりと喋っているのには驚いた……が、やけにカッティンさんとザックリンさんの反応が薄い。
多少の驚きはあるのだろうが、それはキュアアイドルの正体ではなく、そのキュアアイドルに幼馴染みが居ると言う意外性から来る感情であった。
だとすると、カッティンさんとザックリンさんはアイドルプリキュアの正体を知っているのだろう。それがスタッフだからなのか、それ以前に何かしらの理由で知ったのかまでは分からないが。
俺はこころちゃんが、直接言葉にせずとも目の前の二人がアイドルプリキュアの正体を知っていると、伝えてくれたのだろうと思い、こころちゃんへと視線を向けると何故かドヤ顔をしており……あぁ違った、この顔は単に幼馴染みってのを紹介したかった顔だ。
「じゃあ自己紹介も終わった事ですし、早速台助先輩に布教を」
「待て待て待て待て!」
「なんです? ザックリン」
「そもそも布教するにしてもコイツの意見を聞いてからだろ」
「そうですぞ。相手に意見を無視するのは布教ではなく押し付けですぞ」
「う……確かに、そうですね」
勢いそのままに俺に布教を開始しようとしたこころちゃんを、カッティンさんとザックリンさんが相手の意見を無視する布教は布教ではなく押し付けだと注意をする。
その注意で自身に籠っていた熱が冷めたのだろう。
それに特に反論せず、ただただ迷惑をかけてしまったと落ち込むこころちゃんに俺はどう声を掛けるか思考をする。
きっとここまで暴走してしまったのは、俺がアイドルプリキュアに興味が無いのがショックだったのだろう。いや、正確に言えば勝手にファンだと思い込んでいた自身へのショックと言った方が正しいだろうか。
なんにせよ布教しようと空振ってしまったのは事実だ。
ここで俺がどんな言葉を尽くそうにもこころちゃんの後悔から生まれた心の傷は癒せないだろう。むしろ変に言葉を選んでは、よりその心の傷を広げてしまうかもしれない。
「ごめんなさい台助先輩」
「あーいや、気にしてないから」
結局、俺は無難な言葉を紡いだ。
俺自身、押し付けられようとした事に怒りを覚えている訳でも、こころちゃんが嫌いになった訳でもない。ただどう反応すれば良いか困っていただけに過ぎないのだから。
「つーか今の今まで、コイツがアイドルプリキュアにそこまで興味無かったって気付かなかったのか?」
「うっ。それは、その……台助先輩、あまり自分の事を話したりしなかったので」
「そうだったっけ?」
「そうですよ! 好きな食べ物とか全然教えてくれないじゃないですか!」
俺はボンヤリとこころちゃんやななちゃんと知り合ってからの出来事を思い出すと、確かにこころちゃんの言う通り、俺自身について話した覚えは殆ど無かった。
俺自身がそこまでお喋りな性格ではないのもあるだろうが、いつの間にか話した気になっていた。
別に「これぐらい話さなくても大丈夫だろ」と傲慢になってた訳ではないが、自分の事を話さないってのがいつの間にか癖になってしまっていたらしい。
今度から少しずつでも自分の事について喋るように意識するとしよう。
「まぁまぁ落ち着くですぞ」
また熱が籠ってきたと察したのか、カッティンさんがこころちゃんに落ち着くよう諭してくる。
こころちゃんも自身が熱くなっていると自覚があったようで、今度はすぐに熱が引いていき、罰が悪そうな……またやってしまったと後悔するような表情へと変わった。
「それで御主はどうしたいですな」
そんなこころちゃんの表情を見て、カッティンさんが俺に問いてくる。その内容は俺がアイドルプリキュアに知りたいか否か。
少しばかり強引な話題転換な気がするが、その理由は話の流れを変えたいから。こころちゃんに視線を送った後、俺にそう聞いてきたカッティンさんの様子から簡単に察せられた。
「こころちゃん。アイドルプリキュアのついて教えてもらっても良いかな?」
「……はい! 任せてください!」
当然、俺が選ぶ答えは決まっている。
暗い感情を抱いているこころちゃんをどうにかしたかったのもあるが、それ以上に俺はそこまでしてこころちゃんが布教しようとしているアイドルプリキュアについて知りたくなった。
俺のアイドルプリキュアの知識は、どんな活動をしているうたやクラスメイト経由で耳にする程度だ。他にはライブ映像にも目を通してはいるが、自主的に情報を集める事は殆ど無い。
丁度良い機会なのかもしれない。
そこまでこころちゃんが興味を持ち、布教したいと言う想いが強いあまり空回ってしまうほどの熱がどんなものなのか、興味が沸いてきた。
「とは言っても全て話すと長くなるので、あくまで一言程度ですけどね。ではまずはキュアアイドルの説明から」
流石に何度も熱が籠った影響か、沢山語りたい気持ちと何度も空回ってしまった反省を込めて、こころちゃんは自身に言い聞かせるように、アイドルプリキュアの紹介は簡単に済ませると宣言する。
俺としてはもっと語ってくれても構わないが、それを言ってまた歯止めが利かなくなって、再び自己嫌悪に陥るこころちゃんが見たい訳ではない。ここは変に口を出さないでおこう。
「キュアアイドルの紹介は自分に任せてほしいですぞ」
「む。私も話したいのに……まぁ任せました」
こころちゃんが口を開こうとした直前、カッティンさんが手をあげて自分から紹介させてほしいとこころちゃんにお願いをする。
頬を膨らまして「自分は不満です」とあからさまな態度をとるこころちゃんであったが、さっきの反省と後悔が頭の中で渦巻いているせいか、それ以上の不満は言わずにあっさりとカッティンさんにキュアアイドルの紹介を譲った。
「キュアアイドルと言えばやはり、ファンのみんなを照らすような明るい笑顔が特徴ですぞ」
「分かる」
「台助先輩のそれはキュアアイドルじゃなくてうた先輩に対する感想ですよね?」
「あ、バレたか」
うたもキュアアイドルも同一人物ではあるが、こころちゃんからすれば俺がどっちに対しての感想を述べているのかすぐに分かったようだ。
俺はうたの笑顔が好きだ。
それこそキュアアイドルの正体がうたであると一番確信を持ったのが、うたとキュアアイドルの笑顔が同じであると気付いたのが理由であるほどに。
その笑顔が俺以外にも振り撒かれ、誰かをキラッキランランにしているのを事実を聞くと、好きを誰かと共有している気分になり、俺もなんだか嬉しくなってくる。
「次はキュアウインクですね。ではザックリン、お願いします」
「はぁ!? な、なんで俺が」
「じゃあザックリンが説明したくないようなので次に」
「誰も説明しないとは言ってないだろ!?」
なるほど、これがツンデレってやつか。
思ってる事を素直に口にするのが苦手なのだろう。最初はキュアウインクについて語りたくないといった態度をとっていたザックリンさんであったが、自身の推しが布教されない流れになるや否や、大急ぎで止めに入ってくる。
「……あっ! ハメやがったな!」
そしてそれがこころちゃんの策略だと気付いたのは、止めに入った後であった。
してやったりと言う表情をするこころちゃんに、ザックリンさんは何か言いたげであったが、一度説明すると言った以上はあとに引けないのだろう。悔しそうな表情をしつつも、キュアウインクについて語るために気持ちを切り替えて口を開き始めた。
「ウインクはその、だな……いつも煌びやかでピアノの旋律みたいに美しくてそれでいて、キラキラしててだな」
「へー」
「ちょっ、おま! そのニヤニヤした表情は止めろ!」
「仲良いですね」
「ですな」
ここまで誰かに対して押せ押せな態度をとるこころちゃんは珍しい思える。
周りが常に年上だから敬語を使っているのもあるが、それ以上にうたとななちゃんはこころちゃんにとって尊敬する相手、正確に言えば推しであるので畏まった態度をしているので、こんな風に誰かを弄るのは見たことが無いのだ。
「じゃあ次はキュアズキューンとキュアキッスを」
「待て待て、次は順番的にキュアキュンキュンだろ?」
「いえ、キュアキュンキュンはまだまだなので良いんです」
「面倒な性格だな……」
「ザックリン。それはブーメラン、と言うやつですぞ」
だがそれはカッティンさんの言う通りブーメラン、つまりはザックリンさんも面倒な性格である。
どちらがより面倒かの議論をするつもりはないが、少なくともその面倒な正確に理解のある人物が周りに居るのは本人達にとっては幸運、とだけは言っておこう。
「…………」
こころちゃんは自分が未だにキュアアイドルとキュアウインク、そして新たに加入したキュアズキューンとキュアキッスと肩を並べられるほどの実力を身に付いているとは思っていないようだ。
ダンスや歌の評価は素人の俺には出来ない───正確に言えば、評価出来るほどの知識を持っていない───が、キュアキュンキュンとして人気を獲得している時点で、世間から認められているのだと考えられる。
今の地位に満足せず常に上を目指す向上心を持っていると言えば聞こえは良いが、少しぐらいは自分がどのぐらい評価されているか生の声を聞いてもバチは当たらないだろう。
と、色々と語ったが要するにいつもと違う表情をするこころちゃんが見たい。そんなイタズラ心が俺に芽生えた。
「ザックリンさん。キュンキュンについて教えてもらっても良いですか?」
「おう俺がザックリと教えてやるよ」
「え!?」
俺の一言でザックリンさんは全てを察したのだろう。
さっきまで自分を弄ってきた仕返しと言わんばかりに口角を上げ、今からイタズラすると言う表情をこころちゃんに向ける。
こころちゃんが驚きの声をあげるが、そもそもアイドルプリキュアを紹介すると言っておきながら一人だけ飛ばす訳にはいかないだろう。
だからまぁ……うん。仕方がないのだ、いくらこころちゃんが恥ずかしがろうとも、紹介しないって選択肢は無いからな。あー仕方がないナー。
「やっぱキュンキュンと言えば、子どもが憧れるようなアイドルって側面が強いだろうな」
「子どもが憧れる、ですか?」
「ああ。一言にアイドルっても、色々あるだろ? 雲の上のような存在とか、自分もなりたいって思うようなとか」
「あー、確かにそうですね」
Utakoが伝説のアイドルならば、響カイトはレジェンドアイドルと言ったように、アイドルとしての一括りだけでも多くの二つ名が存在する。
キュアアイドル達のアイドルプリキュアはあくまでグループ名であり、まだ明確な二つ名が存在している訳ではないが、もし例えるならばザックリンさんの例えが相応しいだろう。
「そういうのでキュンキュンを表すなら、やっぱ子どもの憧れだろうな。ザックリ言って、他の奴らと比べて子ども人気が高いし」
「あの、もう台助先輩に伝わったと思うのでそれぐらいに」
「えー、俺まだキュンキュンの魅力分からないナー。ザックリンさんにもっと説明してほしいナー」
「それなら仕方ネーナー。伝わってないって言うなら、まだ話すしかないよナー」
「二人ともわざと言ってますよね!?」
「まぁまぁ、それぐらいにしておくべきですぞ」
流石に弄りすぎたか。
カッティンさんに窘められ、俺達は口を紡ぐ。
こころちゃんに対するイタズラ心が芽生えたのもあるが、元々はキュアキュンキュンについて知るためにザックリンさんへと話を振ったのだ。
これ以上キュンキュンについて布教してもらっても、イタズラ心が暴発して変な方向へ話が向かってしまうかもしれない。ここはもうキュンキュンの話は終わりにするべきだろう。
「そ、それでは気を取り直して次はキュアズキューンとキュアキッスですが……この二人の場合はペアとしての人気が高いですね」
「元々はズキューン&キッスだったからまぁ予想は出来てたな」
「ズキューンは見た目と中身のギャップ、キッスは時折見せる乙女らしい言動が注目を集めています」
例えアイドルになろうとも、元の性格を変えてまで演技を貫いている訳ではない。
ズキューンは高身長と整った凛々しい顔をしているが、正体はプリルンである。黙っていれば美人。喋れば子どものように無邪気な部分の二面性が人気なのだろう。
一方でキッスはズキューンと同じ美人であり、正体はメロロンなので見た目通りの性格と言えるだろう。
時折乙女らしい言動に一瞬だけ疑問を覚えたが、それはきっとズキューンに対して接する時に見せる表情についての話なのだろう。
「どうですか、アイドルプリキュアの魅力伝わりましたか!?」
「…………」
「台助先輩?」
「ん? あぁ、ごめん。少し考え事」
「考え事ですか?」
「なんて言うか、アイドル活動頑張ってるんだなって思って」
俺のアイドルプリキュアとしての認識は、うた達が何か頑張ってる程度だ。こころちゃんのように研究会を立ち上げたり、グッズを集めたりしたり熱狂するほどの想いは無い。
ちゃんとうたがアイドルなのは認識している。それはいつ頃かにうたにアイドルに関する内容で相談された時から。
それでも俺の中でうたの認識はキュアアイドルではなく大切な幼馴染みだ。
アイドルとして認識していないからか、俺はうたがアイドルプリキュアとして人気になった今も、それを何処か他人事のように感じていた。
しかしそれもこうして、カッティンさんやザックリンさんのように俺が今まで関わった事の無い人達からアイドルプリキュアの何処が好きなのかを聞くまでの話だ。
自分の周りやネットの一部だけで流行っているようなモノじゃない、自分が知らない相手と直接関わってようやく実感する自分の鈍さに思わず苦笑してしまう。
そして同時に思う。今の自分はうたの隣に立てているのかと。
前に少なくとも今は隣に居ると宣言したが、うたがステージに立ってアイドルをしている中、自分はステージにすら立てていないただの傍観者だ。
自分だってアイドルになりたい、と言うつもりはない。なるつもりもないが、遠い場所に居るうたに自分の手は届かないんじゃないかと、隣に立つと言う宣言は守れないんじゃないかと不安に駆られる。
「ほら、やるよ」
「自分達からのプレゼントですぞ」
「え? あ……ありがとう、ございます?」
そう焦りから拳を握っていると、突然ザックリンさんとカッティンさんから、封の空いていないキラキライトを渡された。
プレゼント、と言われてもあまりにも唐突すぎて俺はお礼を言うが疑問形になってしまった。
意図が読めない、どうして二人は俺にキラキライトをくれたのだろうか。
「なんだよ、推しを応援する時はライトあった方が盛り上がるだろ?」
「俺まだアイドルプリキュアの誰を推すか話してないですけど」
「細かい事は良いんだよ」
「相変わらず不器用ですな」
「なっ!」
自分は不器用じゃないと言葉を並べるザックリンさんと、それは軽く流すカッティンさんの会話を右から左に流しつつ、俺は二人の言葉の意味を考える。
二人は推しを応援する為にと、キラキライトをプレゼントしてくれた。
でも俺は誰が推しなのかを話していない。もっと言えば、アイドルプリキュアの布教にも基本的に相槌をうっていただけだ。そんな態度で推しが誰なのか決めつけたりはしないだろう。
だとすると……あぁ、なるほど。二人には俺の推しが誰なのかもうバレてたのか。
心の内までは知られていない事に安堵し、俺は貰ったキラキライトの明かりを点ける。当然だが、ライトの色はピンクである。
「そうだな、そうだったな」
あくまで隣に立てていないと、手が届かないんじゃないかと思っているのは俺の主観だ。うた本人がどう思っているかは関係無いし、問題は俺自身の認識そのものである。
「今日はありがとうこころちゃん」
「いえ! 此方こそ迷惑をかけてしまって」
「お陰で色々と見えたものがある」
「……?」
俺の言葉に首を傾げるこころちゃんを他所に、俺は自分の認識を改める。
変わったと思うのは俺自身の認識だ、立ち位置はアイドルと傍観者に変化したかもしれないが、関係性はずっと幼馴染みのままだ。肩書きが変わったにすぎない、ただそれだけで俺は無駄に悩んでしまっていた。
例え俺がこのキラキライトでうたを推しとして応援しても、キュアアイドルとして歌って踊っている姿を見ても、幼馴染みなのは変わらない。決して変わらないのだ。
それなのに俺は肩書きだけを見て悩んでしまっていた。
俺が中学生と言う肩書きを持っているように、うたもアイドルと言う肩書きを持っている。少し時間が経てば高校生と言う言葉に変わるほどに軽いモノである筈なのに。
それをこころちゃんからのアイドルプリキュアの布教で誤った認識をしていると気付き、カッティンさんとザックリンさんからのプレゼントで認識を正しい形に直せた。
その感謝だったが、勝手に不安になって勝手に解決したのでこころちゃんからすれば、意味が分からなかったのは少し自分を出さなすぎたと反省するとしよう。
こころちゃん、布教ありがとう。ただし俺は昔から一筋なんだ。
話を書く時は何度も脳内シュミレーションしてキャラの言動に違和感が無いか確認してますが、たまに何度も確認しすぎて「この展開って前にもやったかな?」と分からなくなります。
後半で急に不安に駆られて勝手に解決した主人公に困惑を隠せない。でもキャラが勝手に動いたのだから仕方ない。
プリキュアを見たことある?
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キミプリのみ見た
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