うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。   作:のろとり

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 3月15日に誕生日を迎えました。今年で22歳です。
 今回の話を書くのに名探偵回を見直しました。EDが映画の曲「♪HiBiKi Au Tta♪」でした。曲聞くだけで感動して泣きそう。

 時系列は第34話です。
 具体的に言うと、メニューについて調査している時です。


第24話 マスター、もう取り扱ってない謎のメニューを無理に頼むつもりは無いです。ただし後で見せてもらうのは可能ですか。

()で始まって()で終わるメニュー?」

 

『うん。台助くんはなんだと思う?』

 

 うたから電話に出た俺は、開始一番にそう質問されて首を傾げる。

 ここ最近で何かしらのメニューについて話した覚えは無い。となると、うたの方で俺に質問したいような出来事が起こったのだと考えるのが自然だろう。

 

 そうなるとうたが俺にこの質問をしたのには何か意図があるだろうが……そこまでは流石に分からない。そもそも今のうたがどんな状態かも知らないのだ。

 誰かにナゾナゾを出題されて俺を頼ったのか、それともしりとりで最初に()が始まる言葉が思い付かなくて、電話したのか。

 

 なんにせよ、ここはパッと思い付いたモノを答えるとしよう。

 うたに直接聞くのが早いだろうが、それはあくまでうたの質問に答えてからだ。質問に質問で返した所で話は進まないのだから。

 

「大盛りハンバーグ、とかか?」

 

『うーん……』

 

「何か違ったか?」

 

『違うって言うより、なんて言えば良いんだろ』

 

「そもそもなんでそのメニューについての話をしたか聞いても良いか?」

 

『えっと、実はね』

 

 うた曰く、グリッターであまり使われていない食器を取り出そうと棚の奥まで探していると、グリッター開店当初に使われていたメニューを発見したそう。

 

 見覚えの無いメニュー表であり、両親に聞いてみると、それはうたが産まれる前に使っていたメニューであると言われたそうだ。

 

 自分が産まれる前のメニューがどんなのか興味が沸き、妹のはもりちゃんと一緒に確認していると、一つだけ黒く塗り潰されたメニューがあったそう。

 ただ汚れただけで読み取れないのならまだしも、メニューの最初と最後の文字だけが読めないのはおかしいと思い、再度聞いてみると、謎のメニューと言う解答を貰った。

 

 謎のメニューとは何か。

 どうして黒く塗り潰されているのか。

 どんなメニューを取り扱っていたのか。

 少し気になった、たったそれだけの行動はうたの中の好奇心を膨らませ、その謎を解こうと調べようと行動するまでとなったようだ。

 そしていざ行動へ移そう……と言う前に、俺の予想を聞きたくて電話した。それがここまでの流れのようだ。

 

「メニューについて直接的聞かなかったのか?」

 

 わざわざ調べようと行動しようとする辺り、何かしらの理由で答えてくれなかったのは想像がつくが、一応の確認だ。

 もしそれが誰にも話したくないほどの秘密にならば、一つや二つぐらいは小言を言いたくはある。尤も、そこまで必死に隠すのならば、うたも両親に気を遣って調べようとはしないだろうが。

 

『聞いてみたけど「このメニューの謎が分かるかな? 探偵さん」って誤魔化されちゃって……』

 

「探偵?」

 

『はもりが見てるズンドコ探偵ってアニメの影響を受けたみたいで』

 

 あくまでうたの両親からすれば、隠しはするけどそれは謎解きの答えをバラさないようにする程度のモノか。

 なら俺がどうこう言う必要は無さそうだな。

 謎解きの答えを最初からバラすような真似をしないのは理解出来るし、それをうたが紐解こうとしているのにも文句を言うつもりもない。

 

 何故なら謎は解くものであり、それを隠すのはともかくとして、謎を解くのに文句を言うなんて行動はただの邪魔でしかないからだ。

 

 それにしても、ズンドコ探偵か。あれ意外と頭の体操になるから好きなんだよな。対象年齢は小学生や幼児向けだが、話の中にちゃんとヒントが散りばめられていて答え合わせの時に「あー、あれか!」とすぐ納得がいくほど内容が作り込まれている。はもりちゃんも見ていたのか。

 

「うた、その謎のメニューの写真はあるか?」

 

『え?』

 

「俺も少し気になってな。その謎、俺にも考えさせてほしい」

 

『良いの!?』

 

 あくまで俺の手を借りたくて電話したのではなく、謎のメニューについて調べる前に、()で始まって()で始まる名前に心当たりが無いか聞きたかっただけなのだろう。

 

 俺も謎を解くのが意外と言わんばかりに驚きと共に、喜びの声をあげるうた。

 うたはきっとななちゃん達と一緒に謎を解こうと動くだろう。そして後日、俺に「実はね~」と話してくれるだろうが、こういう謎解きは誰かから答えを聞くよりも自分で調べた方が楽しいからな。

 

 それに……少し幼い表現にはなるが、うたと競争したくなった。どちらが早く謎のメニューの正体に辿り着けるかと言う、謎解きで。

 

「うたより先に見付けるから待っててくれ」

 

『むっ……負けないよ、台助くん!』

 

 俺の挑発で火が付いたのだろう。

 以前のぷりんとめろんの時にされたイタズラを返すような言葉にぐぬぬと対抗心を燃やしたうたは、自分が先にメニューの謎を解くと言って電話を切った。

 

 それから数秒ほど後に、うたから「ルール無用! 先にお父さんに答えを伝えた方が勝ちだよ!」と言うメッセージと共に、謎のメニューの写真が送られてきた。

 

「なるほど、これが……」

 

おすすめメニュー

特製クリームソーダ

大盛ナポリタン

手作りプリン

       

 

「文字数で言えば10文字前後か」

 

 俺は送られてきたメニュー表の写真を拡大し、黒塗りされているメニューと付近にあるメニューを比べて、大体の文字数に当たりを付ける。

 

 文字数だけで言えば、俺がさっき言った大盛りハンバーグが当てはまってそうだが……あぁいや、大盛りハンバーグはおすすめメニューとは別の所に書いてあるな。

 俺の言葉にうたが微妙な反応した様子からそうなんじゃと思ってたが、ハズレか。まぁそんな簡単に思い付くメニューなら、調べるよりも前に「ねぇ、このメニューって……」と両親に聞いて、それが答えだと言われると同時に調査は完了しているか。

 

「うむむ」

 

「あれ、どうしました?」

 

 ふと、誰かから話しかけられる。

 スマホから顔を上げると、うたと同学年らしき女の子二人が、眉間に皺を寄せて謎解きに勤しんでいる俺を、何か困っていると思ったのか、心配そうに視線を向けてきていた。

 

「ん? あぁいや、ちょっとした謎を解いてて」

 

「まさか事件!?」

 

「あぁいや、事件じゃなくて……ほら。このメニューの謎を解いてるんだ」

 

 どう説明しようか考えたが、謎のメニューの正体を探っている。なんて一言で済ませれば、余計に拗れてしまうかもと、俺はうたから送られてきた写真を二人に見せる。

 

()で始まって、()で終わるメニュー……?」

 

「この謎のメニューが何かと思って考えたんだ」

 

「ふっふっふっ。ならばその謎、このキュアット探偵事務所の名探偵が解いてみせましょう!」

 

「探偵……?」

 

 聞いたことのない探偵事務所だ。

 ただのごっこ遊びか、最近本当に出来たのか、それとも有名だが俺が無知なだけか……手元のスマホでその探偵事務所について調べる事も出来るが、それをしたら本人達の前で「そんなのは聞いたことが無い」と言っているのと同義だ。

 

 ごっこ遊びなら知らなくても当然だと納得してくれるだろうが、もし実在する探偵事務所だった場合、堂々と探偵だと名乗ったのに相手に伝わっていなかったと恥を掻かせてしまう。

 それに目の前の相手を無視してスマホを触るのも失礼だ。ここは探偵事務所について触れないようにするのが一番だろう。

 

「自己紹介が遅れましたね。私は『小林みくる』です」

 

「私は『明智あんな』だよ!」

 

「俺は台助だ」

 

 みくると、あんなか。

 なんにせよ、自分達で探偵と名乗るほどに推理力や観察力に優れているのだろう。ここは二人の力を借りる意味も含めて、探偵に対する誇りに敬意を持ってそれ相応の呼び方をしよう。

 

「それで名探偵みくる、名探偵あんな。この謎をどう見る?」

 

「…………」

 

「あれ? おーい、名探偵みくる?」

 

 ヒントも何も無い状態で答えを出せるとは思ってはいないし、例え的外れだろうとも貶すつもりはないが、現状での予想を聞こうと名探偵二人に話しかけたが、何故かみくるの返事が無い。

 

 それどころか顔を伏せて、身体を震わさせている。もしかして傷つけるような言葉を投げてしまっただろうか。

 俺がしたのは二人を名探偵として呼んだだけだが…探偵もしかした、名前で呼ばれるのが嫌だったのだろうか。

 

「あの、名探偵。俺何か変な事でも言って」

 

「ッ~! あんな、名探偵だって! 名探偵!」

 

「えっーと……?」

 

 一先ずは何が嫌だったのを確認しようとみくるに話しかけた瞬間、突如としてみくるはその場で跳び跳ねて嬉しそうにあんなの手を握る。

 

 一方で俺はみくるの行動の意図が理解出来ず、ただただ首を傾げてあんなへと助けてほしいと視線を送る。

 もし目の前の相手が幼馴染みのうたならすぐに意図を読み取れただろうが、それは知り合ってからの年月が長いからこそ出来る行動である。

 当然ではあるが、今さっき知り合ったばかりのみくるの行動の意図を読め、と言うのはあまりにも無理な話だ。

 

「あー気にしないで! ちょっと名探偵って呼ばれて喜んでるだけだから!」

 

「あぁ、うん。それなら良いんだ、それなら」

 

「ほら、みくるもそろそろ元に戻って謎を解くよ!」

 

「ハッ! そうだったわね」

 

 少し俺が神経質になりすぎていただけのようだ。

 名探偵扱いされた事に喜ぶみくると、そんなみくるを正気に戻そうと肩を揺らすあんなの姿を見て、俺は苦笑いしてその場の空気を誤魔化す。

 

「台助もごめんなさい!」

 

「あぁいや、気にしてないから。それと敬語は要らない、さっきの姿を見た後に敬語使われるのは、少し違和感がな」

 

「え? わ、分かったわ」

 

 探偵として依頼人───今回の場合、正式に依頼したかは少し微妙な状態だが───には敬意を持って接する意味を込めて敬語で話しかけてきていたのだろうが、テンションが上がった姿を見た後に敬語で接されても、猫を被っているように見えて落ち着かない。

 

「コホン。それじゃあ改めて。名探偵みくる、名探偵あんな。この謎をどう見る?」

 

「なんだろうね」

 

「食べ物か飲み物か……判別が難しいわね」

 

 空気を変えようと、俺は咳払いをした後に二人に謎のメニューについて質問する。

 しかし情報も何も集まっていない状況では、やはり候補を絞る事が出来ずに頭を抱えるだけであった。

 

 尤も、この場で重要なのは「複数人で頭を捻っても思い付かなかった」と言う事実であり、この謎のメニューの正体はやはり簡単に思い付くようなモノではないと言った部分に確信を持てた事である。

 例えば聞き馴染みの無い海外の食べ物だとか、オムライス+ハンバーグのように既存の食べ物同士が合体したメニューであったりと、謎のメニューの正体は予想が難しいメニューである。その可能性が高まっただけでも充分な成果だ。

 

「他に情報は無いの?」

 

「他か……今は扱ってないメニューとは聞いたな」

 

「今は扱ってない? じゃあ今はもう材料が無いのかな?」

 

「情報が少ないわね」

 

 俺が持っている情報と言えば、今は扱っていないメニューと言う有っても無くてもさほど変わらない内容だ。

 うたに聞けば他に何か情報が得られるかもしれないが、それはあくまで多分であって確実ではない。そもそもうたもメニューの正体について追っている以上、他に情報なんて持ってな……あぁそうだ。

 

「一つ話し忘れてた」

 

「なにかしら?」

 

「そのメニューの正体について、喫茶店の店主は隠そうとしてたな。多分知られるのが恥ずかしいとかの理由なんだろうが」

 

「恥ずかしい……? いや、まだそう決めつけるには早計ね」

 

 ずっとメニューに意識が向いていたが、そこ以外に視線を向けるならばグリッターに関する情報は外せないだろう。

 メニューについて分からないなら、メニューについて知っていそうな人物……それこそうたの両親に話を聞こうと言う発想になるだろうが、話してくれる様子ではない。と伝えておくべきだろう。

 

「まぁただの謎解きと思って気軽に考えようぜ」

 

 まだみくるとあんなには伝えていなかったが、この謎のメニューは調べないと大変な事が起こるとか、時間制限が決まってたりする謎ではない。遊びの延長戦に近いものだ。

 

 一応、うたと謎をどっちが早く解けるかの競争はしているが、それは俺個人の話であり謎とは一切関係無い。みくるとあんなの二人は暇潰しにクロスワードを解くような、そんな気の持ちようで問題ないのだ。

 

「まずは捜査の基本と言えば情報収集ね。あんな、台助。まずは街を散策するわよ」

 

「でもみくる、喫茶店のメニューなんだから調べるとしたら色んな喫茶店じゃないの?」

 

「あーいや、それはどんなメニューか分からない以上、何処にヒントが転がっているか分からない。だから街全体を散策するって意味だと思うぞ」

 

「よく分かったわね」

 

「まぁな」

 

 今までの会話から、みくるは一歩一歩着実に答えまでの道を進むタイプ……言ってしまえば理論派だ。

 まずは前に進む為に必要な情報を集める。その為には街で謎のメニューと関連がありそうなモノを探すと考えたのだろう。

 

 しかし言葉が少し足りなかったようで、あんなには「情報が無い。だから宛も無く街を散策する」と言う意味合いに聞こえてしまっていたようで、俺はみくるに確認の意味も込めて、あんなへみくるの言葉の意味を説明する。

 

「それじゃあ早速、()で始まって()で終わる名前のメニューを」

 

「あ、それなら別に名前に拘る必要は無いんじゃない?」

 

「あんな、私達の目的はそのメニューの……いえ、確かにそうね。最初の()が食べ物や飲み物の名前とは限らないわ」

 

 何を言っていると言わんばかりに、あんなの言葉に疑問を覚えるみくるであったが、自身がある固定概念に囚われていた事に気が付く。

 別に最初の文字が名詞である。なんてのは誰かが決めた訳でも、そんな真実を見つけた訳でもない。お得だとか、美味しいのように客の注目を集めるような形容詞である可能性もあるのだ。

 

 みくるが理論派だからあんなはどんなタイプかと思ったが、固定概念に囚われない柔軟な発想をしている……性格に言えば、直感タイプと言うべきだろうか。

 

「よし。何かしらのメニューを見つけたら片っ端から共有する、それで良いか?」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

 理論派のみくると、直感派のあんな。

 名探偵と名乗るほどに推理力はあるようで、最初に出会った時に名乗っていたキュアット探偵事務所も存在するのでは。そんな期待感と頼もしさを覚える。

 

 だが俺も負けるつもりはない。

 あんなとみくると競うつもりではないが、この謎解きは元々俺一人で解く予定だったのだ。そこを乗り掛かった船と言わんばかりに協力してくれる二人におんぶに抱っこ、なんて恥ずかしい真似は出来ない。

 本物の探偵に及ぶかは分からないが、せめて脚を引っ張らないように頑張るとしよう。

 

 

 

 

 

「情報はある程度集まったな」

 

「うーん、確かに集まったけど……」

 

「候補が多すぎるわね」

 

 その意気込みを心の中で抱き、脚を進めること数時間。

 俺達は途方も無い作業に疲れを覚え、ベンチに三人揃って伸びたように座っていた。

 

 随分と遠回りしている気分であったが、今はこの方法しか無いと自分に言い聞かせ、情報を集めた……のは良いが、候補になりそうなメニューが多くて絞るに絞れない状況であった。

 

 例えばだが、最初の言葉が大盛りだとしよう。

 その後の最後の言葉が()で終わるのは何かと考えると、ハンバーグ。スクランブルエッグ。ホットドッグ……最初の言葉を仮定で決めたとしても、その後の当てはまりそうな言葉があまりにも多すぎて、頭を抱えているのが現状である。

 

 いつもなら仮定に仮定を重ねてしっくり来るような答えを求めているが、今回に限っては考えれば考えるほど有り得そうな候補が無限に出てくる以上、そういった方法は難しいだろう。どうするべきか……

 

「ん? あれは」

 

「何かあったの?」

 

 俺はベンチから立ち上がり、疲労の溜まった身体でゆっくりと歩き、目に入ったポスターの前まで止まる。

 俺が何も言わずに歩き始めたのに疑問を持ったのか、みくるとあんなも俺の後を付いてきて一緒にそのポスターへと視線を向ける。

 

「少しファストフード店の広告があったのが気になってな。ほら、ここにもメニューが載ってるからさ」

 

「わぁ。どれも美味しそう……あれ?」

 

「どうしたの、あんな」

 

「いや、このスマイル0円って言うのが気になって」

 

「あるよなぁ、こういうの。頼む人居るのかって疑問はあるけど」

 

 メニューとして存在しているのは知っている。だが頼んだ事があったり、頼んだ人を見た事があるか聞かれれば、俺は首を横に振るだろう。

 

 みくるやあんなも反応から察するに、スマイルを頼んだ事が無いのだろう。逆にあったらあったで、なんで頼んだのか経緯が気になるものだ。

 

「はぁ……」

 

 手詰まりだな。

 俺はスマイルと書かれたメニュー表を見て、その言葉の反対の意味を表すような表情をする。

 一応は勝負事になっている以上、聞いても正直に答えてくれるか怪しい───口からポロポロと溢れる分は除く───が、うたに謎のメニューの調査がどのぐらい進んだのか聞いてみるとしよう。

 

 勝負事で相手に情報を求めるのは……とは思うが、情報が無い以上、無闇に探し続けても候補を絞るのは難しいだろう。

 それに勝負しているのは俺とうたであり、流れと興味で調査に付き合ってくれているみくるとあんなには関係無い。

 ここで俺が「これは勝負だから、うたに聞いたりしない」と変なプライドを立てて二人に迷惑を掛けるよりは、少しでも情報が集まるようにした方が良いだろう。

 

「一度連絡入れてみるか」

 

「スマイル一つお願いしますって?」

 

「違うが?」

 

 うん、今のは俺の言葉が足りなかったな。

 内心で色々と考え、独り言のように言葉を呟いた結果、あんなからすれば「ポスターの店に電話をしたくなった」と言う構図に見えたのだろう。

 

 電話でスマイルを頼むのかと、俺の行動がよく分からず疑問を溢したようだが、そもそもスマイルを頼む為に電話をする訳でない。電話越しのスマイルを楽しむ変人と誤解されないよう訂正しなければ。

 

「ちょっと今から俺達と同じように、メニューの謎を追ってる幼馴染みに電話するんだ。少し待っててくれ」

 

「……ねぇあんな。さっき思ってたのだけれど、あの板って何かしら」

 

「あれはスマホって言う携帯電話だよ」

 

「私の知る携帯電話とはかなり形が違うのね」

 

 俺は二人に一言断りを入れてからうたへ電話をする。

 途中、二人が何やら話をしていたようだが電話の着信待ちの音でその声は掻き消される。

 メニューについての話か関係無い内容かは分からないが、仮に前者なら後で教えてくれるだろうから気にする必要は無いか。

 

「もしもし、うたか?」

 

『うん。台助くん、そっちはどう?』

 

「さっき知り合った名探偵と一緒に謎を解いてるが、イマイチだな。そっちはどうだ?」

 

『名探偵……?』

 

「あー、後で色々と話す」

 

 俺がみくるとあんなに出会ったのは、うたと電話した後であり、それ以降は今に至るまで連絡をしていなかった。

 だからうたの視点からすれば、突如として現れた名探偵と俺が一緒に謎を解いている構図になるが……話すと長くなるから、その話は謎を解いた後にでも伝えると一旦置いておくことにする。

 

『ふっふっふっ。私の方はね、昔グリッターに『小原井(おわらい)ヒロシ』さんって芸人さんが人が通っているのを知って、その人に話を聞こうと思ったんだけど』

 

「思ったんだけど?」

 

『10年ぐらい前にはなみちタウンから引っ越してたみたいで』

 

「互いに情報は無しか」

 

 俺達が遠回りした一方で、うたは常連に話を聞こうとしていた。

 結局、どちらもあまり意味が無かったが……いや、僅かにだがうたが進んでいるだろうか。少なくとも「謎のメニューを知っていそうな人物が居る」と言う部分までは探れたのだから。

 

 それにしても、グリッターの常連か。

 俺も時折グリッターに行くので、よく見る顔はある程度覚えてはいるが……そこまでは考えていなかったな。うたが産まれるよりも前───もっと言えば、俺が産まれるよりも前だろう───にグリッターに通っていた人物が誰なのか俺は知らない。

 

 知らない以上、誰かに聞き込むのも難しいと思っていたが……常連から別の常連のように人伝で調べて、その昔に通っていた人を見つけたのだろう。

 

『他の常連さんも知らないって言ってて、どうしようかなって悩んでるところ』

 

「分かった。また何かあったら連絡する」

 

『うん。またね、台助くん』

 

「またな、うた」

 

 あまりにも情報が無さすぎて、これは勝負とか言っている場合ではなさそうだ。

 俺はメニューから、うたは人伝で探したが「これだッ!」と確認して言えるものは無かった。なら別口で攻めるか……? いや、この二つが駄目だった以上、他に情報を得れそうな候補は思い付かない。

 このまま調査を続けるよりもギブアップと言う形にはなるが、これならマスター───うたのお父さん───に直接答えを聞くべきだと言う考えが頭をよぎるほどに進展が無い。

 

「どうだった!?」

 

「昔に芸人さんが喫茶店に通ってたぐらいしか分からなかったな」

 

「そっかぁ……」

 

 仮に俺の調べている内容が街の歴史なら、図書館とかでその時代について載っている本を調べれば良いが、街の小さな喫茶店のメニューとなると、そういう訳にもいかないだろう。

 人に聞いても辿り着けなかったようだし、その昔常連だった小原井ヒロシって人も何処に居るか不明。今はもうはなみちタウンに居ないので、話は聞けな……あぁいや、よくよく考えたら別に直接聞く必要は無いのか。

 

「えっと。小原井、ヒロシ……っと」

 

「何してるの?」

 

「今言った芸人さんがブログか何かで呟いてないかと思ってな」

 

 そもそもブログをしているのか。

 仮にしていたとして、グリッターについて話した事はあるのか。

 不確定な要素は多いが、スマホでブログがあるかどうかを調べるだけならそこまで時間はかからない。無かったら無かったで、みくるとあんなに「無理に付き合わせてごめん」と謝った後に、マスターの所に行って謎のメニューの正体を聞くとしよう。

 

「お、あった」

 

 しかし俺の考えは杞憂に終わったようで、その小原井ヒロシと言う人のブログと一緒に、おそよ10年ぐらい前のグリッターに関する内容を見つけた。

 また、流石にブログを見つけても、全ての内容を確認するのは時間がかかるからどうするべきかと思っていたが、最初に一番古い記事に書いてあったのは嬉しい誤算である。

 

◯月✕日

 今日で俺は生まれ故郷を離れる!

 芸人としての夢を諦め会社員として社会の歯車になっていたが、あの日から……グリッターのマスターと出会ってから変わった!

 俺はあのメニューに勇気を貰った、俺は元気を貰った!

 頑張れ俺! そしてビックな人間になって、グリッターのマスターにお礼を言うんだ!

 

「台助、私達にも見せてくれないかしら」

 

「ん? あぁ、俺だけ見てても伝わらないか。ほら」

 

「えっと、芸人さんが元気を貰うようなメニュー……?」

 

 俺は二人にスマホの画面───正確に言えばブログの画面───を見せると、あんなはブログに書かれている「元気を貰えるようなメニュー」に引っ掛かりを覚えたのか、首を傾げる。

 

「台助、もう一度さっきのメニュー見せて!」

 

「ん? ほら、これだな」

 

 一方でみくるは何か閃いたのか、俺に謎のメニューの写真を見せてほしいとせがんでくる。

 俺はスマホの画面をブログから写真へと切り替えて、みくるとあんなに見せるようにしつつ、何故みくるが写真が見たいと言ってきたのか考えを巡らす。

 

 恐らくブログに書かれている内容が、謎のメニューと関連しているのだろうが……そこはあんなが口にした「元気を貰えるようなメニュー」が重要なのだろう。

 しかしたったそれだけで絞るのは難しい。それこそ好きな食べ物だった、なんて可能性もあるのだ。そうなると、芸人と言う部分に引っ掛かりを覚えたのか?

 

 ()で始まって()で終わるメニュー。

 芸人としての道を再び歩もうと決意する何か。

 勇気と元気が貰えるメニュー。

 

 バラバラだったパズルのピースが埋まっていく。

 まだ幾つか欠片が残らない部分はあるだろうが、そこは手元にあるピースを埋めていけば、自然と分かりそうなモノだから放置するとして……そうか。

 

「あぁ、なるほどな」

 

「「見えた! これが答えだ!」」

 

 俺が答えを導き出したと同時に、みくるとあんなも答えに辿り着いたようで、三人で顔を見合わせて答えを確認するのであった。

 

 

 

 

 

「お邪魔します」

 

 謎のメニューの正体に辿り着いた俺達は、グリッターへと訪れる。

 うたの姿はあるかと、軽く店内を見渡すが居る様子は無い。どうやらうたより先に謎のメニューの正体に辿り着いたようだ。

 

「こんにちは、台助くん。それにそっちの子達は」

 

「キュアット事務所の名探偵です!」

 

「名探偵……?」

 

「偶然出会って一緒に謎を解いてました」

 

 急に探偵と名乗られ、疑問を浮かべるマスターに俺は軽く説明をする。

 俺は今までうたにもマスターにも探偵の知り合いが居ると話した事は無い。そもそも今日初めて探偵の知り合いが出来たので当たり前ではあるが。

 なので探偵と言われても「どうしてここに? そもそも台助くんと居るのはグリッターを紹介しに来たのかな? それとも別の理由があるのかな」と考えてもおかしくはないだろう。

 

「なるほどね。それでその謎って言うのは、あのメニューの事で良いのかな?」

 

「あー……うたが何か言ってました?」

 

「いや、何も聞いてないよ。ただ、うたなら台助くんに話してるかなと思ってね」

 

 なんでもは大袈裟だろうが、やはり親なのもあってうたの行動は見透かされているようだ。

 そうなると、俺がここに来た時点で謎のメニューについての話をしようしてたのも察していたのだろう。

 

「それで探偵さん。君達の推理を聞かせてくれるかな?」

 

 俺達のノリに合わせてくれているのか、余裕を持った態度を見せる犯人のように推理を話すように催促してくるマスター。

 マスターのノリの良さに苦笑いしつつ、俺はみくるとあんなに視線を送る。三人で導き出した答えは同じであり、それを共有している以上は誰でも推理を話せるのだが、こういう推理を話す場面は名探偵の出番なのが鉄板だ。ここは二人に任せるとしよう。

 

「最初、私達は隠されたメニューの謎を調べようと思って色んなメニューを調べてました」

 

「その途中、見つけたの。ファストフード店のスマイル0円って書かれた広告を」

 

「スマイル0円……?」

 

「つまり謎のメニューは食事関連ではなく、行動に関する事が書かれてた可能性があると思い付いた訳です」

 

 これに気が付けたのは、あんなの固定概念に囚われない考え方とスマイル0円と言うメニューの二つがあったからだ。

 まずあんなが「最初の文字は食べ物や飲み物とは限らない」と考え、それにプラスしてスマイルと書かれたメニューを見つけ、メニューそのものが何かの行動を指し示しているのではないかと、あくまで可能性に過ぎないがそんな答えが頭をよぎった。

 

「次に台助の幼馴染みって子から、昔この喫茶店で通ってた小原井ヒロシって人が居ると聞きました」

 

「懐かしい名前だね。お笑い芸人になると言って都会に引っ越したと聞いたけど、元気にやっているかな?」

 

「元気だと思いますよ。芸人になった今も本人のブログが動いてましたし、グリッターの事も書いてあったので」

 

 別に隠す必要も無いし、むしろ今も元気だと伝えた方が安心するだろうと、俺はマスターに小原井ヒロシの最新のブログを見せる。

 そこには数分前に更新されたばかりだと言う表示と共に、地元に戻ってお世話になったマスターに会いに行くと書かれていた。

 

「ここまで出た情報を纏めると」

 

「行動に関する事が書かれてる可能性がある、芸人さんが元気を貰えるようなメニュー、そして黒塗りされた行間から10文字前後の名前」

 

「ここから導き出される答えは一つ……」

 

 あんな、みくる、俺の順番で喋り、答えを話す前に言葉を区切り、三人で顔を見合わして息を合わせる。

 

「「「おもしろい一発ギャグ!」」」

 

 そして導き出した答えをマスターへと伝える。

 最初の()が表すのは名詞ではなく、後の言葉を詳しく伝える形容詞であり、最後の()は芸人さんに関連する内容……コントや漫才をひっくるめた言葉、ギャグであると結論付けた。

 少しカッコを付けるならば、これが俺達のアンサーである。

 

「おお……よく分かったね。正直、誰にも分からないと思ってたけど」

 

「まぁ頼りになる名探偵が居たので」

 

「当然よ!」

 

「えへへ」

 

 正直に言えば俺一人でこの答えに辿り着けたかは微妙なところだろう。

 あんなの直感と、みくるの理論。その二つが無ければ、キュアット探偵事務所の名探偵が居なければここに至るまでのピースが揃わずにお手上げだっただろう。本当に二人には感謝しかない。

 

「はぁ~推理したらお腹空いちゃった。ねぇみくる、どうせだから何か頼もうよ」

 

「そうね。沢山動いて私もお腹が空いたわ」

 

 時刻はまだ昼前。

 無事に謎が解け、緊張の糸が切れたのもあるだろう。あんなは自身の腹を擦り、丁度良いからとグリッターで昼食を済ませようとみくるに提案し、みくるはその案に乗る。

 

「じゃあここは俺に奢らせてくれないか? 一緒に考えてくれたお礼……名探偵に合わせるなら、依頼料と言ったところか?」

 

「良いの!?」

 

「ああ」

 

「奢ってもらって悪いわね」

 

 そして後払いの形にはなってしまったが、ここまで付き合ってくれた礼と推理してくれた礼として俺は昼食を奢ると二人に話す。

 するとあんなは笑顔で喜びで、みくるは言葉では申し訳なさそうにしつつも目線はメニューの方へと動いており、今にでも注文して空いた腹を満たしたいと訴えているように見えた。

 

 俺はそんな二人を微笑ましく思いつつ、メッセージアプリを開き、うたに「謎は全てズンドコとけたぞな」と、謎のメニューの正体が分かったと言う意味を込めて、ズンドコ探偵の決めセリフを送るのであった。

 

 マスター、もう取り扱ってない謎のメニューを無理に頼むつもりは無いです。ただし後で見せてもらうのは可能ですか。




 今回、謎解きよりも台助の「隠し事には触れない」のスタンスを維持しつつ、どうやって謎解きに参加させるかの方に苦労しました。あとサブタイ。
 なんで謎解きと関係無い場所で頭抱えてるんだろ。

 探偵繋がりで『名探偵プリキュア!』のキャラ、明智あんなと小林みくるにゲストとして登場してもらいました。
 あくまでゲスト扱いなので今後は登場しませんし、1999年舞台なのに現代に居る理由も考えてないです。

 来週の投稿はお休みです。

プリキュアを見たことある?

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