うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。   作:のろとり

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 ここ数日でぽこあにハマって執筆忘れてました。
 あとウソノワール様が未來自由の書を紛失するギャグ短編を途中まで書いてボツにしました。

 時系列は第35話~第37話の間です。
 具体的に言うと、今回はオリジナル回です。


第25話 ぷりん、めろんは離れたりなんかしてない。ただしほんの少しだけ成長しただけだ。

「わぁ……!」

 

 ハロウィンが少しずつ近付いてきた今日この頃。

 これから町中にジャック・オー・ランタンが街灯の如く並ぶのだと考えつつ商店街を歩いていると、ガラスケースに並べられた小物をキラキラとした目で眺めているぷりんを見かけた。

 

 辺りを見渡して他に知り合いが居るのか確認するが見当たらず、ここまでぷりんは一人だけで来たのだと簡単に察せられる。

 

 そうか。ぷりん、もといプリルンは一人で出掛けたのか。めろんやうたから「一緒に出掛けよう」と誘われた訳でなく、たった一人でか。うん、なんだろうな……もの凄く不安だ。

 

「や、ぷりん」

 

 俺は一抹の不安を抱えながら、どうか自分の考えが間違ってほしいと希望を抱きながらぷりんへと話しかける。

 

「あ、台助! おはよう!」

 

「おはよう。一人で買い物か?」

 

「ううん。めろんと一緒だよ!」

 

「……そのめろんが見当たらないが」

 

「はぐれちゃった!」

 

「迷子じゃねぇか」

 

 そんな気はしていた。

 俺は天を仰ぎながら、大方ぷりんが片っ端から色んなモノに興味を持って先へ先へと進んでいって、ふとめろんに話しかけようと思い、振り返ったら誰も居なかった。そんな所だろうと適当に予想を立てる。

 

「ぷりん、一緒にめろんを探すぞ」

 

「うん! 分かった!」

 

「それとはぐれないように手を繋ぐぞ」

 

「台助、私から離れないようにね!」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 ぷりんに直接「迷子になってるのはぷりんだ」と伝えるのは簡単ではあるが、それをしてしまえば「めろんを置いてきちゃった」とショックを受けるだろうと、あえて誰が迷子になったのかは触れず、またぷりんが迷子にならないよう手を繋ぐ。

 

 端からみれば異性の中学生が手を繋いでいる微笑ましい光景なのだろうが、俺からすれば小さい子どもの引率である。

 まるで小さい頃のうたみたいだ。いつ頃かのハロウィンでも、ジャック・オー・ランタンが怖いと俺の背中にしがみついてきて……

 

「ねぇ、台助! あれってなに!?」

 

「ん? あれはいちごメロンパンだな」

 

 そう昔をぼんやりと思い出していたが、ぷりんに元気よく話しかけられて意識を内側から外側へと向き直す。

 するとそこにはいちごメロンパンの絵が貼られたキッチンカーが停まっていた。近くには美味しそうにいちごメロンパンを食べている女の子三人組も居り、少し食欲が唆られてくる。

 

「へぇ……」

 

 ぷりんも同じ意見だったようで、口の端から涎が垂れそうである。しかし財布を持っていないのか、それとも買い物の仕方が分からないのか。ただ売られているいちごメロンパンを見つめるだけで、食べようとは言わない。

 

「ぷりん、少し腹が減ったから何か食べないか?」

 

 ならばここは俺が払うとしよう。

 これも一種の社会勉強だ。キラキランドではどうか知らないが、此方の世界ではどうやってモノを買うか。どの硬貨及び紙幣がいくらを指しているか。

 そうやって話を聞くだけではなく、実際に俺が払っている場面を見た方が覚えやすいだろうし、今度からぷりん一人でも「これ欲しい!」と思った時、いつでも買い物出来るようになるだろう。

 

 まぁそれはそうとして、ぷりんが一人で出掛けていると何かトラブルに巻き込まれていないか不安になるので、結局一人で出掛ける機会は訪れないだろうが。

 

「良いの!? あ、でも」

 

「どうした?」

 

 ぷりんは俺の提案を喜ぶが、ふと何かを思い出したようでぐぬぬと我慢するような表情と共に、涎を拭いていちごメロンパンのキッチンカーとは反対の方向へと歩き出す。

 

「めろんとも一緒に食べた方がもっと美味しいから、また後ででも良いかな?」

 

「ん? あぁ、そうだな。みんなで食べた方が美味しいよな」

 

 どうやらぷりんはお腹は空いているが、めろんを一人置いて勝手に腹を満たすのは心が苦しいようで、いちごメロンパンはめろんを見つけた後のお楽しみにするようだ。

 

 俺も食べたい気分ではあるが、ぷりんがそう決めたのなら俺だけ腹を満たす事は出来ない。自分の欲に忠実なぷりんですら我慢したのだ、ここで俺がそれを無視したらぷりんの我慢も解かれてしまうだろう。

 

「ねぇ台助」

 

「ん?」

 

 そうしてキッチンカーを後にし、中々見つからないめろんの捜索を続けていると、ふとぷりんが俺の肩へと頭を寄せてくる。

 いつもの元気なスキンシップとは違う行動に、俺は歩き疲れたのかとベンチを探そうとしたが、ぷりんの目にそこまで疲れは無い。代わりにあるのは、不安そうに曇る瞳だけであった。

 

「どうした?」

 

 めろんが見当たらない事に不安を覚えたのだろうか。

 連絡が取れれば合流するのは簡単ではあるが、めろんとぷりんは携帯を持っていない。妖精に戻って空に飛んで上から探すのも一つの手ではあるが、人目につき、尚且つめろんも同じ発想をしていた場合、すれ違ってしまう可能性が高い。

 

 だから地道に探すしか無いのだが、そんなにもめろんと離れるのが寂しかったのだろうか。ならばうた達を呼んで、人海戦術でめろんを探すべきだろうか。

 

「最近、なんだか胸がギューって苦しくなるの」

 

「それってどういう時にだ?」

 

「めろんと一緒に居る時だよ」

 

 それってまさか……恋!?

 なんて冗談は置いとくとして、どうやらぷりんの不安はめろんに会えない事に対してではなく、めろんと一緒に居る時に生まれる感情の正体が分からない事に対するものだったようだ。

 

「詳しく聞いても良いか?」

 

「うん。ハートキラリロックの封印からめろんを助けた後からね、なんだかめろんがお姉さんみたいに見えるの」

 

 そうしてぷりんの口から語られたのは、ハートキラリロックの封印から解かれ、無事に俺達と友達になった後のめろんについてだった。

 

 はなみちタウンに来てうた達と出会い、自身の気持ちに正直になり、学校にも通い始めためろんは少しずつだが自身の世界が広がり、精神的に成長を始めていた。

 それだけ聞くと嬉しい事ではあるが、ぷりんからすればその成長はあまりにも著しく、いつも妹のように慕ってきているめろんの方が姉のように見える時が増えてきたようだ。

 

「私がお姉ちゃんだ~って言いたい訳じゃないけど、少しめろんが私から離れていっちゃってるように感じて、なんていうかその……」

 

「寂しいのか」

 

「うん」

 

 言葉を言い淀むぷりんに対して俺はハッキリとその感情に名前を付ける。

 ぷりんは特段独占欲が強い性格ではない。むしろ「一人より二人の方が楽しいよ!」と、積極的に誰かと何かしらを共有しようと動くタイプだ。

 

 だからこそだろう。これは自分のモノと独占欲を抱いた事の無いぷりんが、今の独占欲に近いような……しかしそれとも違う、その寂しさに対してどう言えば良いのか分からないのは。

 

 めろんの世界には今までぷりんしか居なかった。

 それが俺はうた、ななちゃんやこころちゃんと交流が広がり、そしてぷりんと関わる時間が減った。

 

 今でもぷりんの事は大切に思っている。それは第三者の俺からしても充分に伝わっているが、ぷりんからすればめろんが自分の事を大切に思っているのは昔からであり、それがもはや当たり前になっているので、実感が薄いのだろう。

 

 そんな状態で、自分の側に居ためろんが誰かの近くへと歩み、逆に自分から離れたとなれば、その成長に嬉しさを覚えると同時に、隣に誰も居ない寂しさを覚えたのだろう。

 

 端的に言えばぷりんが抱えれているのは嫉妬だ。

 めろんが自分の側から離れてしまう事に対する寂しさと、めろんはもう自分の側じゃなくても良いんだと言う苦しみに近い想い。それらが混ざり、嫉妬となりぷりんの心を締めている。

 

 だがぷりんはその嫉妬を誰かにぶつけたりはしない。

 そもそも誰かに嫉妬を覚えるのですら始めてだったのだろう。だからその気持ちに対する名称も、解決法も、何もかもが分からず、ただただ胸が苦しいとしか言いようが無かった。

 

「……プリルン(・・・・)。メロロンは今までに、はなみちタウンに来るまでに友達を作ろうとしなかっただろ?」

 

「え? う、うん。(ねえたま)だけ居れば良いって言ってて」

 

「でも今は変わった。うた達と友達になった」

 

 俺はぷりん───プリルンが自身を渦巻く感情を整理出来るよう、今さっき知った感情の整理が終わるまで、これまでのメロロンがどんな性格をしていたか、そしてどう変わっていったのかの話を始める。

 

「きっとそれからの成長があまりにも急で、今までのメロロンと今のメロロンが違うように見えて、距離が出来たと思ったってところだろ」

 

 ハートキラリロックの事件から2ヶ月ほど。

 はなみちタウンに来てから、メロロンは心境が変わる程の経験を積み、成長する為の土台を作り始めていた。

 そしてハートキラリロックの事件でその土台が完成し、今まで積み上げてきた土台は精神的なまだまだ幼かったメロロンが急成長するほどの経験を詰め込んでいた。

 

 それはキラリランドからずっと一緒に居たプリルンが、メロロンの成長する姿を見て置いていかれていると思うほどであり、きっと成長を始めてから今日までの時間は、二人が知り合ってから時間で換算すると、瞬き程度しか経っていないのだろう。

 

「…………」

 

 未だに感情の整理が追い付いていないのか、プリルンの表情は暗いままだ。しかし最初に比べると少しは明るくなっており、それはきっと自身の想いに対して飲み込み始めているからだろう。

 

 だがこのまま感情を整理し、飲み込み終わったところでプリルンの表情は完全な明るさを取り戻さないだろう。

 何故なら今のプリルンはメロロンだけ成長しているように見えて、自分だけは何も変わっていないと見えているからだ。

 

 自己嫌悪に走る事は無いだろうが、持ち前の明るさから「メロロンが成長したから、自分も成長しないと!」と無意識の焦りを胸に動き始め、周りが見えず失敗して落ち込んでしまうだろう。

 

「よし! それじゃあ」

 

「まぁ待てプリルン」

 

「ん? なぁに?」

 

「プリルンもメロロンと同じように成長しているから、別に今すぐ動く必要なんて無い。安心しろ」

 

「え?」

 

 俺の言葉にプリルンは目を丸くする。

 やっぱり自覚が無かったのかと、小さく笑い俺は出会ってから今日までのプリルンの様子をうっすらと振り返る。

 

 出会った頃のプリルンの印象は幼稚園ぐらいの子どもの印象だった。

 妖精の状態でも学校に通いたいと我が儘を言ったり、勝手にライブの映像を投稿したりと、何が良くて何が駄目なのかを理解しきれておらず、見た目を相まって幼く見えていた。

 

 だが今は違う。

 はなみちタウンの常識を覚え始めたようで、何が駄目なのかをしっかり理解しており、欲を言葉にする事はあっても───生物である以上、空腹を訴えたりなど自身の欲を出すのは当たり前ではあるが───、我が儘を言う回数が減った。

 

 根っこの純粋無垢な部分は変わっていないので、端から見たら伝わりにくいがプリルンも前と比べると成長している。

 ただ、プリルンの成長は幼稚園児から小学生。メロロンの成長は小学生から中学生と、精神的な成長の段階が違うので、プリルンからすればメロロンが急成長しているように見えてしまったのだろう。

 

「そっか、私もめろんみたいに成長してたんだ!」

 

「あぁ。だから自信を持ちな」

 

「ありがとう、台助!」

 

「どういたしまして」

 

 やっぱりプリルン(ぷりん)は元気なのが良いな。

 ぷりんは自身の感情に対して整理が終わり、メロロン……もとい、めろんと同じように成長しているのだと知るや否や、先ほどまで暗かった表情は一転し、いつものような明るさを取り戻していた。

 

「さてと。それじゃあめろんの捜索を」

 

「お姉様!」

 

「あ、めろん!」

 

 ぷりんの悩みが解決し、話の為に一度中断していためろんの捜索を再開しようとした所、その探し人であるめろんの方が俺達を見つけ、駆け寄ってきた。

 

「はぁ、はぁ……探しましたよお姉様」

 

「ごめんめろん。いつの間にかはぐれちゃってた」

 

「いえ、お姉様が無事に見つかっただけで嬉しいです」

 

「めろん、水分取るか?」

 

「えぇ、ありがとう……って台助!?」

 

 息切れするほどぷりんを探していためろんに、休憩の意味も込めてまだ封を開けていないペットボトルを渡す。ちなみに中身はぶどう風味の水である。

 

 めろんは息を整えつつ、ペットボトルに口を付けようした瞬間、俺がこの場に居ることに驚きの声をあげる。

 恐らくはぷりんが居ない焦りから周りが見えておらず、俺が声をかける今の今まで視界に入っていなかったのだろう。

 

「ど、どうして台助とお姉様が一緒に……それに手も繋いでるし」

 

 あ、手を繋いでいるの忘れてた。

 ぷりんを見つけた安心感からか視野の広さが戻り始め、その影響で俺とぷりんが手を繋いでいる部分まで見えるようになったようだ。

 

「えっーと、これはだな」

 

「もしかしてめろんも台助と手を繋ぎたかった?」

 

 俺はめろんから嫉妬の視線に冷や汗を掻きながら、今の今まで忘れていたこの手についてどう説明しようか言葉を探していると、ぷりんが勘違いと言うより名の助け船を差し出してきた。ここはこの流れに乗って有耶無耶にしよう。

 

「いえ、そういう訳では」

 

「めろんはぷりんと繋ぎたいってさ」

 

「台助!?」

 

 俺はめろんが喋り終わる前に、めろんの本音を伝えて思考を混乱させる。

 直接ぷりんに「手を繋ぎたい」と伝えるのは恥ずかしいのか、遠回しな言葉を紡ごうとしていたが、俺がその本音を伝えた事で嫉妬の視線を消え、全ての意識をぷりんと手を繋ぐことへと向く。

 

「ええっと、それはその」

 

「それじゃあさ」

 

「ん?」

 

 めろんはきっとぷりんと二人で手を繋ぎたいからだろうと、俺はぷりんから手を離そうとしたが何故だか一向に俺の手は戻ってこない。おかしいと思い手元を見れば、ぷりんが俺の手を力強く握っていた。

 

 何をしたいのかと、疑問を浮かべているとぷりんは俺と手を繋いでいる手とは反対の、空いている手でめろんの手を握る。そしてめろん、ぷりん、俺と三人横に並ぶような体勢となった。

 

「これで三人一緒だね!」

 

「……ふふっ。ええ、そうですわね」

 

 まぁ二人が満足そうなら別に良いか。

 俺はぷりんから離れるのを諦め、離そうとしていた手を改めて握る。

 

「そうだめろん! さっき美味しそうないちごメロンパンのお店があったんだ! 早く行こう!」

 

「あ、お姉様!」

 

「待て待て待て待て! この状態で走られたら絶対に転ぶ!」

 

 ぷりんは空腹を早く満たしたいと、急いでいちごメロンパンのキッチンカーへと戻ろうとするが、手を繋がれている状態で急に走られても困る。

 

 もっと言えば、俺達は走るぷりんに引っ張られて前に体重が掛かっている上、手も塞がっているので転べば大惨事である。

 そうならないようにと、俺は両足に力を入れてこれ以上前に脚が進まないように抵抗をする。

 

「そういえばそうだった。ごめん二人とも」

 

「はぁ……ぷりん、イチゴメロンパンは逃げないから歩いていくぞ」

 

 そんな俺の必死に抵抗に、手を繋いでいた事を思い出したようで、怪我をするような真似をしてしまった事を謝るぷりん。

 自分が興味を持った事を前にすると周りが見えなくなるのは、迷子になった時点から分かっていたし、強く言ってはこの後食べるいちごメロンパンの味が分からなくなってしまうからと、俺は溜め息で「仕方ないな」と態度で示しつつ、歩くようぷりんに伝える。

 

「なんだかこうしてると家族みたいに見えるわね」

 

「家族? ん~と、そしたら私がお姉ちゃんだね。それでめろんが妹で台助は~……なんだろう。お父さん?」

 

「なんだか同じ学年なのに凄いしっくりくるわね」

 

「複雑な家庭すぎるだろ」

 

 中学3年生の親に中学3年生の子どもが居るのはもはやホラーだよ。

 そんな他愛も無い会話をしながら、俺達はいちごメロンパンのキッチンカーへと歩を進めるのであった。

 

 ぷりん、めろんは離れたりなんかしてない。ただしほんの少しだけ成長しただけだ。




 うたななここ+台助がカルタする回の予定でしたが、中々筆が進まないし、ななちゃん回の筈だったのに全体の話になったのでボツになりました。

 次回はハロウィン回の予定。キミプリ本編で言うと38話(全49話)ですね。
 また、この作品の残り投稿本数は20本の予定。少しずつ終わりが見えてきました。

プリキュアを見たことある?

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