うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
投稿頻度は週一予定です。一週間も間を開けるのは(私が)耐えられませんが、執筆速度を考慮するとこのぐらいが丁度良いので。
作中の時間軸は第5話~第6話の間です。
具体的に言うと、マネージャーが付いた話(第5話)~こころちゃん主役回(第6話)の間に起こった話です。
うたから新しいプリキュアを紹介されてから何日か経った頃、キュアウインク───本名は『
いや、訂正しよう。俺は関わってないが色々起こっていた。
キュアウインクのライブ映像をプリルンがキュアチューブにアップして、キュアアイドルに続いてウインクも注目を集めたり。
現在は活動休止中のレジェンドアイドル『響カイト』が、うたの両親が経営する喫茶グリッターに来店したり。
尤も、それらはうたから世間話と聞いた事後報告のようなモノになるが。
前者はアイドルプリキュアについて調べれば、ウインクの存在は簡単にヒットする。プリルンの行動に関しては俺がプリルンの存在を認知しているからこその話だろう。
後者は俺がアイドルや芸能人にさほど興味が無いからこそ、話してくれたのだろう。まるで今日会った出来事を家族に話すような、ちょっとした日常のように。
俺はうたが何をして、何を隠してるかを全て把握してる訳ではない。
逆にうたの家族ですら、おはようからおやすみまでの全て把握している訳ではないので当然ではあるし、むしろ第三者が自分の全てを把握してたら怖い。
学校での出来事に関しても、俺は
昼休みや放課後を一緒に過ごそうと思えば可能ではあるが、授業中に何があった。どんな内容を覚えたかを、進行形で把握するのは不可能である。
そして、アイドルプリキュアとしての裏事情も知らない。
俺が聞こうとしない。うたが関係者しか知らない情報を意識して話そうとしない。以上の理由から当然ではあるが。
だから俺は知らない。
プリルンと出会ったうたが、どういった経緯でキュアアイドルとなったのか。
だから俺は知らない。
新しいプリキュアとなったななちゃんが、どういった経緯でキュアウインクとなったのか。
だから俺は知らない。
アイドルプリキュアに、いつの間にかマネージャーが付いている事を。
「初めまして台助さん。私、喫茶グリッターのアルバイト兼アイドルプリキュアのマネージャーを務めております、田中と申します」
「え? あぁ。これはご丁寧にどうも」
なのでここに呼ばれた経緯を教えてくれませんか?
俺は深呼吸をして、今一度自分の状況を整理する。
俺は喫茶グリッターの喫茶店の部分から階段を登って辿り着ける、従業員専用の休憩所のような場所で、アイドルプリキュアのマネージャーである田中さんと対面している。
一応の話であるが、俺と田中さんは初対面である。
産まれてからずっとはなみちタウンで暮らしている為、もしかしたらすれ違っている可能性はあるのだが、目の前の相手を意識したのは初めてである。そしてグリッターでアルバイトしているのも初耳だ。
全くと言って呼ばれた経緯が分からない。
唯一分かるのは、俺と田中さんの中心に置かれているテーブルに座っているプリルンも、俺がここに居る経緯を知らないようで、キョトンとした様子でメロンフロートを美味しそうに食べている事ぐらいだ。
いや、もう一つ分かる事があった。
プリルンが目の前で動いて居ると言うのに、田中さんが全く動揺しておらず、大して意識も向けていない様子から、少なくともプリルンについてはある程度把握しているようだ。
プリルンがそういった生き物として認識しているのか。
キラキランドを救いに来たと知っているのか。
俺の知らない部分まで把握しているのか。
何処までかは分からないが、うた達とはある程度情報を共有していて、尚且つプリルンの存在を知られても問題が無い程度には信頼も信用も出来る人物らしい。
「田中さん」
「タナカーンプリ!」
「タナカーン……? あぁ、渾名か」
「本名です」
「どっちだよ」
「タナカーンの方です」
「まさかのそっちかよ!?」
どうやら田中は偽名だったらしい。
海外の方だろうか。でも、それにしては茶髪七三のワイシャツネクタイと、見た目は完全に日本人である。それともプリルンと仲が良いのから考えるに、もしやキラキランドの住民……?
いや、これ以上は止そう。情報が少なくて判断が難しいし、その辺りは田中さんの隠し事なのだろう。
田中さんの本名はタナカーンで、数日程度の仲とは思えないほどプリルンと親しい謎の多い人。これで良いだろう。
「ところで台助さんはうたさんの幼馴染みと聞いていますが……」
「あ、はい。そうです」
「なるほど」
田中さんは俺の肯定の言葉を聞くなり、黙って下を向く。
きっと俺が田中さんを観察しているように、田中さんも俺を観察しているのだろう。
何を聞きたいのかはまだ不透明で……あぁいや、察した。
うたから俺について聞いている、プリルンが俺らを気にせず動いてる、その状況をわざわざ田中さんが用意した。
これらから考えるに、田中さんは俺がプリルンについてどの程度把握しているかの確認をしたいのだろう。
恐らくだが、俺がここに呼ばれるまでの経緯はこうだ。
『田中さん田中さん!』
『どうしましたかうたさん』
『マネージャーが出来たって台助くんに言っても良いかな!?』
『台助……あぁ、うたさんの幼馴染みの。ですがあくまで私は裏方です。変な噂が立つとアイドルとしての活動に支障が出るので、あまり私の事は』
『大丈夫! 台助くんはプリルンの事とか色々知ってるからね!』
『…………』
『田中さん?』
『うたさん。その台助くんと言う方に伝えたい事があるので、すみませんがグリッターに呼んで頂けませんか?』
『……? 分かった!』
俺の推測と想像が混ざった会話なので、全く違う経緯なのかもしれないが、うたなら純粋に「台助くんは信頼出来るよ!」と伝えたのだろう。プリルンの事を知っていると言う理由も重ねて。
その信頼の結果、田中さんは確認したくなったのだろう。
俺がプリルンについて、そしてプリキュアやキラキランドについてどの程度知っているのか。
「ではプリルンやプリキュアについてはどの程度ご存知ですか?」
俺と田中さんは敵対している訳ではない。むしろうた達の味方である。
しかし味方だからと言って、何もかも共有するかは別である。
味方だから、自分の名前からスマホのパスワード。更にはホクロの数まで何もかも全てを教える事は無いだろう。
特に信頼を寄せてる相手、が信頼している人物。つまりは知り合いの知り合いのような相手ともなれば尚更である。
「例えば……そうですね。キラキランドの事とか」
故に俺らは心理戦を行う。
腹を割って素直に話すのが一番だろうが、俺らは互いに「他人に知られてはいけない情報」を何処まで持っているか分からない。
何を知っていて、何を知らないかは会話しないと分からない。でも下手に相手の持ち得ない情報を喋って、それが何か追及されるのは避けたい。
まず田中さんはジャブとして、キラキランドについて俺に聞いてきた。
もし俺が知らないと答えても、プリルンの故郷だと嘘を吐かずに誤魔化せる内容を。
もし俺が知ってると答えれば、どの程度の知識を有しているか深掘り出来る内容を。
「あー……プリルンはキラキランドを救うためにやってきた妖精で、それにはプリキュアが必要なぐらいですね。取り敢えず、うた達がアイドルプリキュアとして活動してるのは把握してます」
「ふむ。そうですか」
その問いに対して俺は、知られても問題ない情報を話した上で、プリルンが妖精であると把握していると伝える。
キラキランドについては、プリルンの故郷であると。
その為にはプリキュアが何かしらの理由で必要であると。
その理由、及び救う方法は把握してないと。
また、うた達がプリキュアとしてアイドル活動してると。
これらは恐らく田中さんも知っている内容だ。
キラキランドと言う単語を知っているのは、プリルンか誰かから聞いた。もしくはその出身だから。
キラキランドを救う件に関しては、俺は詳しくは知らない。
田中さんも事情を把握しているかは不明ではあるが、俺と同じように知らなかったとしても、俺の持ってる情報の把握。及びプリルンがはなみちタウンに居る理由が判明する程度で問題は無い筈だ。
そしてプリルンが妖精である件に関しては、田中さんがキラキランドについて聞いてきたジャブの返しである。
本来なら秘密の内容をぶつけてきたのだから、俺もそれに答えて秘密をぶつけた。ただそれだけである。
例え妖精と知らなかったとしても、そもそもプリルンを「へぇ、新種の動物か」で簡単に流すような性格はしていないだろう。
それなら素直に妖精と伝えた方が、プリルンについてある程度事情を知っていると遠回しに伝えた上で「知らなかったです」や「そこまで知ってましたか」と、どちらか二択を選べるので田中さんも軽く流せるだろう。
「台助さん。一つ確認しますが、プリキュアについて知りたいとは思いますか?」
「いや全然」
「…………」
「えっと、どうしました?」
それはうたの隠し事である以上、俺は何も言わない。
自分の信念に従ったまでではあるが、田中さんにとっては予想外の解答だったのか。何かを喋ろうとした口は電池が切れたオモチャのように止まり、半開きとなってきた。
「ハッ! すみません。うたさんから話は聞いてましたが、こうもアッサリ断られるとは思っていなかったので」
「まぁその辺りはうたも隠してるようですからね。俺の信念的に、無闇に詮索するつもりが無いだけですよ」
「信念、ですか?」
「はい。人は誰しも秘密を抱えている。それは俺もうたも例外じゃない。秘密を聞かない代わりに秘密を答えない。それを貫いてるだけです」
「……そうですか」
それ以上、田中さんは何も聞かなかった。
きっとうたから聞いた俺の話や、実際に話した内容を総合して、無闇に秘密をバラさないと信頼してくれたのだろう。
「台助さん。頼むまでも無いかもしれませんが、一つお願いが」
「なんですか?」
「これからもうたさん達を支えてあげてください」
「それはアイドルとして、ですか?」
俺の言葉に田中さんを首を横に振る。
どうやらマネージャーの立場から、アイドルプリキュアとしての活動を手伝ってほしいと言うお願いではないようだ。
じゃあいったい何に対してのお願いだろうか。
「子どもとして、うたさん達の友達としてお願いします」
「ん~……あー、なるほど」
「はい。そういうことです」
「プリ?」
メロンフロートを味わっていたプリルンは田中さんの言葉を理解しきれていなかったようで、首を傾げているが俺はなんとなく察した。
田中さんはあくまで大人であり、アイドルプリキュアとしてのマネージャーだ。それらを示すのは、
それに対して俺は子ども。
子どもが子どもを支えるのは変な話ではあるが、大人の立ち位置からでは絶対に解決出来ない問題はある。
例えばうたが「アイドルとして自分は頑張れているのか」と悩んだ場合、田中さんが投げられるアドバイスは大人として、マネージャーとしての厳しくも、うたに寄り添った言葉である。
精神的な悩み。アイドルとしての今後や将来の夢と言った、漠然とした悩みをパーフェクトに解決するのは難しい。
特に「大人」として、そして「マネージャー」として支える立場の人間から投げ掛けられる言葉は、例えそれが正論でも相手に響くかは怪しい。
そう言った人間に響く言葉を投げ掛けられるのは、同じアイドルか距離の近い友人……ななちゃんや、俺のような立場の人間である。
田中さんもわざわざ頼む必要は無いと理解しているのだろう。
それでも言葉に出したのは礼儀として。俺も察しているだろうと口に出さないよりも、口に出して俺に意識させる為なのだろう。
「台助もうたさん達のマネージャーになるプリ?」
「そうじゃないんだよなぁプリルン」
「プリ?」
俺はプリルンの頬をつついて、やんわりと否定する。
俺と田中さんの会話は結論ぐらいしか喋っておらず、その結論に至った理由や、その会話をする意義に関しても、互いに察していたに過ぎない。端から見れば、よく分からない会話だったのだろう。
「まぁ細かい事は気にするな」
「分かったプリ!」
俺はうた達の友達、今はそれで充分である。
雑な話の逸らし方であったが、プリルンは特段気にしている様子は無いようだ。裏を返せば、何も考えずに人を信頼しているとも言えるが……。
「これから何かあればお願いする事はあるかもしれませんが、今日は以上ですね」
俺はその言葉を聞くや否や、小さく息を吐く。
何が理由で呼ばれたか分からず、その上で色々と頭を使っていたので、いつの間にか緊張や疲れが身体に乗っかっていたらしい。
リラックスするや否や、身体が喉の渇きと糖分の摂取を訴えてくる。
幸いにもこの場は喫茶店。折角来たのだから、飲み物の一つぐらい注文するのが礼儀だろう。
「さて。頭も使いましたし、沢山喋りましたからね。アイスコーヒーでもいかがですか? 砂糖やガムシロップを入れて糖分を補給するのをオススメしますよ」
「…………商売上手ですね」
「はて、何のことやら」
そんな俺の思考は既に読まれていたらしい。
田中さんは俺が何か言葉を発する前に、飲み物の注文を勧めてきた。
その勧めに乗るしか出来ない俺は、そこまで読んでいたのかと田中さんに聞くが、何の話か分からないと惚けられてしまった。
田中さん、俺は貴方の隠し事は聞きません。ただしキュアアイドル達のフォローはお願いします。
タナカーン登場回でした。なんで味方同士なのに心理戦してるんですかねこの人達……。プリキュアってそういう作品じゃねーから。
それとななちゃんのマトモな出番はまた今度です。
理由としては現状で主人公がななちゃんと絡む動機が無いからですね。
プリキュアとしては関わりが薄いですし、主人公としても友達の友達ぐらいの距離感なので。
対するななちゃん側も「うたちゃんが信頼を寄せてる幼馴染みなんだ」程度の認識で、自分から進んで関わる理由が無いですからね。
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