うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。   作:のろとり

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 個人で楽しむ用でメモ帳にブルアカSS書いて遊んでました。
 なお投稿はしてない。

 時系列は第41話です。
 具体的に言うと、こころちゃんが生徒会長に立候補した時です。


第29話 田中さん、ありがとうございます。ただしそれを少し……考えさせてください。

「生徒会長選挙?」

 

「はい!」

 

 あぁ、そういえばもうそんな時期かと、俺はこころちゃんの言葉を聞いて教室に掛けられているカレンダーに視線を送る。

 ななちゃんがはなみちタウンに残る事を決意し、騒ぎも一段落した頃。肩から自身の名前が書かれた襷を掛けているこころちゃんがそんな事を話し始めた。

 

「研究会の部長をしている時点で上に立つのには慣れてるだろうけど……やけに急じゃない?」

 

「研究会の廃止を阻止するためです!」

 

「ん? あー……ちょっと待って。廃止の阻止と生徒会長の繋がりが分からない」

 

 部長と生徒会長の仕事量が同じとは思っていないが、一番偉い地位と言う意味合いなら同じであり、人の上に立つのに慣れてるなら生徒会長に立候補しても良いかもしれない。

 

 そう思ったのだが、どうやらこころちゃんが生徒会長に立候補した理由は研究会の廃止を阻止する為のようだ。

 しかし俺の中でそれがイコールで繋がらない。別に研究会を作るにあたって生徒会に入れなんて決まりは無いし、そもそも研究会と存続と生徒会長になるまでの繋がりが見えない。

 

「実はですね……」

 

 今日も今日とてアイドルプリキュア研究会の活動をしていたが、生徒会長に立候補している二年生の『甲斐(かい)ちよ』ちゃんが、自分が生徒会長になったらアイドルプリキュア研究会を廃止すると宣言しているのを聞いたそう。

 

 あまりにも急な宣言に理由を聞くと、研究会としての成果が無いからだそう。そんな事は無いと、研究会で作ったグッズやアイドルプリキュアの応援ポーズなど、成果として説明したが「それはただ応援してるだけ。成果とは認められない」と一蹴されてしまったそう。

 

 ちよちゃん以外に生徒会長に立候補している人物は居なく、このままじゃ本当に廃止にされると考えたこころちゃんは、自分が生徒会長になれば研究会の廃止を阻止出来ると思い立って、今に至るそうだ。

 

「なるほど。つまりはその、ちよちゃんって子が生徒会長になったら研究会が廃止にさせられるから、こころちゃんが生徒会長になって阻止しようと」

 

「そういうことです」

 

 俺はこころちゃんの説明を軽く纏めて、そういう事で良いのかと確認をする。

 つまりちよちゃんって子は、成果の無い研究会は廃止するべきと考えてると。そしてそれは逆に考えれば、アイドルプリキュア研究会が何かしらの成果を出せば撤回されるとも読み取れる。

 

「それで俺に話を振ったのは、人手が欲しいから?」

 

「はい! あぁでも、無理にとは言わないです。台助先輩にも予定はあるでしょうし、受験も近いでしょうから」

 

「…………」

 

 俺は再度カレンダーに視線を送る。

 今はもう12月に差し掛かろうとしている頃。俺の学力では志望校に余裕で受かるだろうが、別に受かるのがゴールでは無いし、油断して勉強を疎かにしていると足元を掬われるだろう。

 

 それでもこころちゃんに手を貸せないほど切羽詰まっているか? そう聞かれたら俺は首を横に振る。

 生徒会長選挙までの日付は遠くなく、その間ずっと手伝いをしてようが受験にはさほど影響は無いだろう。

 

 だが俺は手を貸すべきか悩む。

 勉強してないと本当に受かるか不安だの、予定があるだのじゃない。こころちゃんのやり方が間違っていると思うからだ。

 

「うーんと、そうだな……」

 

 

 

 

 

「それで、私に相談してきたと」

 

「はい」

 

 放課後。

 こころちゃんのお願いに対して本音を誤魔化しながら手伝いを断った俺は、田中さんの家にお邪魔してこころちゃんにどう伝えれば良かったと相談しに来た。

 

「こころさん本人に直接言うのが一番早いと思いますが」

 

「それは、そうなんですが……」

 

 田中さんの正論に俺は顔を歪ませる。

 確かに直接本人に「その方法は間違っている」と言うのは簡単だ。だが簡単だからと言って、それが正論だからと言って、状況が好転するかは別の話だ。

 

 仮に本人に伝えたとしよう。しかしその正論を受けてこころちゃんが「はいそうですか」と納得するか聞かれたら俺は首を横に振る。

 

 こころちゃんが頑固と言いたい訳ではないが、現状のアイドルプリキュア研究会は崖っぷちの状態だ。成果を作ろうにも時間が無く、かと言ってこころちゃんが生徒会長になって廃止を防いだとしても、成果が無い問題そのものは解決しない。

 

 なら実績を作る時間を確保するにせよ、研究会の廃止を阻止するにせよこころちゃんが生徒会長に───悪い言い方をすると、ちよちゃんの生徒会長就任を阻止する方が短期的に見れば良い案だろう。

 

 だが一方で、長期的に見れば避けた方が良い案だ。

 何故ならこころちゃんにとって生徒会長就任は手段であって目的地ではない。例え生徒会長に就任したとして、今まで通りに研究会の部長をしたり、アイドルプリキュアとして活動する時間の確保、更には勉強と四足の草鞋を履けるか言われたら難しいだろう。

 

 じゃあ一番良い案は? と聞かれたら、成果を作れば良い。そしてその成果を作るためには時間が無いので、その限られた時間で研究会の廃止を阻止するには生徒会長就任を……と、ループする結果となってしまっている。

 

「……台助さん。前から気になっていた事があるのですが」

 

「なんですか?」

 

「もう少し皆さんの心に踏み入っても良いと思いますよ」

 

 グルグルと思考を回し続けて悩む俺を見かねてか、田中さんは「例え傷付いたとしても、こころちゃんにもその事を伝えるべきではないか」とアドバイスをしてくる。

 

 そのアドバイスは一見、俺が人の心に踏み込むのが怖い臆病な人間と言っているように思えるが、事実なので特に言い返しようが無い。

 人の隠し事に干渉しない。それを気遣いや優しさと表現する相手が居るかもしれないが、裏を返せばそれは人と深く関わるの避けているとも受け取れる。

 

「考えるのは大切です。そして相手が傷付かないようにと立ち回るのも大事です」

 

 田中さんは俺を今までの行動を肯定するように言葉を紡ぐ。

 どうすれば相手の為になるか、どうすれば傷付かないか、どうすれば相手のやりたい事が出来るようになるか。それらを考え、俺は行動に移してきた。

 

「ですが、それで貴方が無理をしては余計に相手を傷付けてしまいます」

 

 だが田中さんにはそれが歪に見えていたようだ。

 相手の事を考えて、考えて、考えて……それで俺が悩み、苦悩をしていたら駄目だと。相手を第一にするのではなく、自身の苦悩も相手に伝え、尚且つそれでいて手を差し伸べるべきだと田中さんは語る。

 

「今すぐにとは言いませんし、台助さんにも譲れないものはあるでしょう。なので少しずつで良いです、相手を深く知ろうとしても良いと思いますよ」

 

「…………」

 

 田中さんが今回の件に関わらないのは、きっとこころちゃんなら生徒会長就任以外の方法でも研究会の廃止を阻止出来ると考えているからだろう。それが例えこころちゃんが傷付いたとしても、そこから立ち上がれると信じているから。

 

「ありがとう、ございます」

 

 俺は……変わるべきだろうか。

 もっと自分に我が儘に、この心の内を伝えても良いのだろうか。それは相手のこれからを邪魔しないだろうか。相手を縛ってしまわないだろうか。

 俺は自身の胸の奥に隠された感情を誤魔化すかのように、田中さんに小さくお礼を言うのであった。

 

 田中さん、ありがとうございます。ただしそれを少し……考えさせてください。




 田中さんならこころちゃんの行動に思うところがある一方で、本人が進んで動いてるのに横から口出しするのは本人の為にならないと、黙って見守ってるのかなと思いました。

 短いですが今週の投稿分はこの話だけです。
 本当はもう一本投稿する予定でしたが、区切りの問題で来週に回します。

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