うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
うたちゃん可愛いなとキミプリ終了を再認識して情緒壊れそう。
時系列は第41話です。
具体的に言うと、オリジナル回です。
「ん? もうこんな時間か」
読み終わった本を机に起き、時計へ視線を向け俺は小さくそう呟いた。
俺は自身の心のざわめきを誤魔化す為に図書館で本を読んでいた。
少しでも落ち着ければと言った気持ちでの行動だったが、どうやら一時しのぎにななったようで、本を読んでいる間は何もかも忘れられた。
だが集中が切れるなり、再びそれは……俺の心はざわめきを始める。
俺は本当に……何もしないで良かったのだろうか。
こころちゃんに何か一言でも掛けるべきだったのではないか。
いや、仮に声を掛けたとして何も言えば良かった? 下手に言葉を紡げばこころちゃんの頑張りを否定してしまう。かと言って何も伝えなければこうして考えても意味が無い。
生徒会長選挙は明日にまで迫っていると言うのに、未だにグルグルと自身の行動について後悔を募らせながら俺は図書館の外まで移動する。
屋根から見える外模様は街灯すら心ともなく感じるほどの厚い雲と大雨によって暗くなっており、帰るのならば周りに注意しなければ危険であるほどだ。
俺は安全を考えてゆっくり帰ろうと思い、カバンに入れている折り畳み傘を取り出そうとする。
「しまった、傘を忘れちまった」
しかしカバンの底を探しても見当たらず、そこでようやく俺は折り畳み傘を忘れていた事に気が付いた。
他の音を掻き消すほどの大雨、もし傘も差さずに帰れば風邪を引いてしまうだろう。
誰かに迎えに来てもらうのも手だが、うた達はこころちゃんの手伝いをしていて忙しいからきっと連絡自体つかないだろう。
じゃあすぐに連絡がつく相手は? と言われれば候補として親が居る。だがこんな天気の中呼ぶのは申し訳がない。どうするか……
「あら、台助」
「あれ、めろん。めろんも図書館に来てたのか」
「そうよ」
そう俺が頭を抱えていると、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこにはめろんが立っており、いつぞやと同じように図書館へ本を読み来ていたのだろう。
「そういう台助はなにしてるのかしら?」
「実は傘を家に忘れてな」
「なら……はい」
俺は空を眺めながらめろんに返事をし、止む気配の無い雨に頭を悩ませていると、視界が黒い雲から綺麗な白へと変化する。
何かと思い、めろんの方向を向くとめろんが自身の折り畳み傘を俺へと傾けていた。
「私のに少し入れてあげるわ」
「良いのか?」
「今日だけ特別よ」
「悪いな」
ぷりん以外を自身の傘に入れるのは嫌がるものだと思っていたが、今日ばかりは特別に入って良いようだ。
断る理由もなく、むしろ濡れずにすんだとめろんにお礼を言い、俺達は互いが傘から出て濡れないようにとゆっくりと歩いて帰路に向かう。
「なぁめろん。こころちゃんの様子はどうだ?」
「頑張ってるわよ。自分も負けられないって教室に残ってるわ」
「この雨でか? 明日が選挙当日だし、風邪を引かなければいいが」
「こころが心配なのね」
「まぁな。そういうめろんも心配なんだろ?」
「…………」
「沈黙は肯定と受け取るぞ」
直接心配していると話すのは少し気恥ずかしいのか、俺の言葉に沈黙で返すめろんだが、俺はそれを肯定と受け取る。否定しない辺り図星なのだろう。
「ねぇ台助」
「ん?」
「最近、何かあったかしら?」
「何かって?」
あまりにも大雑把な問いに俺は首を傾げる。
何か、と言われてもそれの指してるモノが分からなければ、心当たりの有無すらも答えられない。
それに何かが俺に起こっていたとしても、めろんがその何かが起こる前後の俺とで違和感を覚えているのはいったいどこなのだろうか。
「なんだか様子がおかしく見えるわよ」
「そうか? 心当たりは無いし、きっとめろんの気のせい───」
「ハートキラリロックに封印された日」
「……?」
「いえ、それより後からかしら」
「いったい何の話だ?」
めろんは何処か確信を抱いているようだが、俺からすれば話の全容が上手く掴めない。
現状分かるのは、めろんと俺がハートキラリロックに封印されて以降───俺が……うた達の隠し事に一歩踏み込むような形になった日から、めろんから見た俺の様子がおかしいらしい。
心当たりはある。
あの日、俺は改めてプリルンやメロロンが自分の常識の外から来た存在なのだと再認識した。そしてダークイーネと言う危険そうな相手と、うたたちの隠し事に何かしらの繋がりがある事も。
それでも……俺は沈黙を選んだ。
きっとうたに聞けば、何を隠しているか正直に答えてくれるだろう。そしてそれが例え、危険な事だとしても。
仮に正直に答えようとせず、嘘で誤魔化そうとしても、嘘が下手なうたはうっかりと口から真実を漏らしてしまうだろう。
だから俺は何も聞かない事にした。
聞かない、そう決めた。決めたんだ。決めたから触れないようにした。うた達の口から漏れる微かな情報を結び合わせ、何を隠しているのか察してしまっても俺は口を開かないことにした。
「あの日以降、何か悩んでないかしら?」
「…………」
「沈黙は肯定と受け取るわよ」
俺がめろんに返した言葉をそっくりそのまま返される。
悩んでるのは事実だ。うた達はきっと危険な事をしていて、それを俺に隠している。そして俺はそれを察していながらも黙っている。
プリルンがはなみちタウンにやってきた頃と同時に、目撃されるようになった謎の怪物。
怪物はアイドルプリキュアのイベントに何度か現れている。
うた達はキュアズキューンとキュアキッスに怪物相手から助けられた事がある。
関連性こそは不明だが、点と点が線で繋がってしまう。
あまりにもタイミングの良い目撃情報の発生。
あまりにも狙ったかのような怪物の発生場所。
そして俺は……キュアズキューンとキュアキッスの正体が、プリルンとメロロンであると知っている。
どうやってうた達を怪物から守ったかは分からないが、少なくとも噂では建物を破壊する狂暴性や、人を優に越える巨体だと聞いている。
噂を全て鵜呑みにするわけではないが、話し合いで解決するような相手には思えない。
いや、仮に話し合いで解決する相手だとしよう。
それでも危険な相手には変わらない。そんな相手に何をしているのかは分からないが、関わるのは止めてほしいと思ってしまう。
それを決めるのは俺のような部外者ではなく、関わっている本人達だと言うのに。
「台助。何に悩んでるか聞いても良いかしら」
「……随分と、丁寧に踏み込むんだな」
「誰だって急に懐に入られるのは嫌なものよ」
まるで実体験みたいだなと、内心呟く。
まぁ実際にその通りなのだろうが、過去の自分自身の経験をこうも簡単に語り、そして相談と言う形で表に出せるようになったのだと、俺は軽く微笑むがすぐその笑顔は引っ込んでしまう。
「めろんは……誰かに聞いてもらって楽になったか?」
「何処かの誰かさん達のお陰でね」
俺は聞くべきか再度悩む。
俺には秘密がある。誰にも聞かせたことの無い、それこそ一生……墓場にまで隠しておくつもりの秘密が。
誰にも知られたくない。そしてそんな秘密は誰もが抱えている、だから俺は相手の隠し事を聞かない。その代わりに俺も自身の秘密を隠し続ける。
とっくの昔にそう決めた。
なのに今は……そんな決心が揺らいでしまう。
誰かに秘密されるのがこんなに辛いとは思わなかった。
その秘密が何か察していながらも何も出来ない事がこんなにも苦しいとは思わなかった。
「今すぐ話せとは言わないわ。でも抱えすぎるのは」
「いや、もう大丈夫だ」
「え?」
「ありがとうな、気を遣ってくれて」
でも、それを表に出しては駄目だ。
それをしてしまえば、うたが悲しむ。俺がこんなにも辛く、そして苦しんでいるとうたが知れば、なんで気付かなかったんだろうと自分を攻めてしまう。
だから俺は口を閉ざす。
うたの為を思い自分の心に蓋をする。
「じゃあ俺は此方だから」
「台助、傘を差さずに帰ったら風邪を引くわよ!」
「急いで帰るから大丈夫だ!」
俺はめろんの追及をかわすかのように、田中さんの家とは別方向を指差して自身の家へと向かおうとする。
めろんは俺が風邪を引かないか心配しているが、俺なら大丈夫……大丈夫だから、心配はいらない。だから俺を気にする必要なんて無い。
「じゃあな、めろん!」
「あ、台助!」
俺は折り畳み傘の中から出て、カバンを傘代わりにして家へと急いで帰っていく。
めろんが俺を呼び止める声が聞こえるが、これ以上めろんに心配をかけたくない。俺の事を考えて傷ついてほしくない。
空は相変わらず暗く、雨が降っていた。
そしてそんな天気は近い内に変わると……否、変わってしまうだろうと、自身の心から溢れだしそうなざわめきを抱きながら、俺はそう思うのだった。
めろん、俺は大丈夫だ。ただしもし俺が……いや、なんでもない。
今回ちよちゃんを登場させる予定でしたが、様々な事情でめろんに変更となりました。
そういえばたんプリ映画にキミプリメンバーが登場するようですね。ライブ(必殺技)演出はどうなるのかちょっと楽しみです。
プリキュアを見たことある?
-
見たことが無い
-
何話か見た
-
キミプリのみ見た
-
複数のプリキュアシリーズを見た
-
全プリキュアシリーズを見た
-
最新作を見てる