うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。   作:のろとり

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 今の所サブタイは「◯◯(キャラ名)、俺は~~~。ただし~~~。」固定の予定です。予定は未定ですし、思い付かない時は今回みたいに適当になりますけどね。
 ポケモンZAクリア&図鑑埋めしました。執筆再開します。

 作中の時間軸は第7話~第8話の間。
 具体的に言うと、今回はオリジナルの話ですね。


第5話 こころちゃん、俺らは困ったら相談にのるよ。ただし隠し事は除くけどね。

 キュアキュンキュン

 

 こころちゃんがアイドルプリキュアとなった際の名前である。

 どうやら俺が知らない間にプリルンと仲直りして、うた達と同じアイドルプリキュアになったらしい。

 

 仲直りしてプリキュアになると言う、明らかにその間に起こった内容に対して説明が足りないのだが、その辺りはうたの隠し事に関係ありそうなので聞くつもりはない。

 

 それにしても、まだキュアキュンキュンと世間に存在すら公表していない───ライブ映像をアップしていない───のに、部外者である俺に教えて良いのかと疑問が残る。

 

「と言う事なんだが、田中さん」

 

「その件なら心配はいりません」

 

「え? でも機密情報とかじゃ」

 

「キュアキュンキュン、もといこころさんにも貴方の話を通す必要がありますからね。情報交換と思っていただければ」

 

「なるほど」

 

 どうやらうたが俺のキュアキュンキュンについて話すのは想定内だったらしい。

 アイドルとウインクの正体を知っているのに、キュンキュンの正体だけを教えないメリットは無い。

 むしろこころちゃんは自身がキュアキュンキュンだと知られないよう俺に隠そうとし、俺もそれを見て見ぬふりをする必要が発生してしまう。

 

 そんな意味も無く、互いが互いを気遣った結果で生まれる無駄な努力をするなら、最初から教えて気を張り詰める必要を無くす。それが一番だと考えているようだ。

 仮にうたが何も言わなかったとしても、田中さんは俺にキュアキュンキュンの正体を。そしてこころちゃんに俺がアイドルとウインクの正体を知っていると説明していただろう。

 

「って事で、これからよろしく。キュアアイドル&キュアウインク&キュアキュンキュン研究会部長のこころちゃん」

 

「肩書き全部読む必要は無いですよ?」

 

「分かった。改めてよろしくな、こころちゃん部長」

 

「あ、名前だけで大丈夫です」

 

「名前ちゃん」

 

「そういう意味では無いですが!?」

 

 面白いなこの子。

 ちょっとしたイタズラ心で色んな呼び名を使ってみたが、そのどれにも突っ込んでくれる。弄り甲斐のある後輩ではあるが、あまり弄り続けても困惑するだろうから、この辺りで止めておこう。

 

「ところで台助先輩。研究会にキュンキュンの名前は入っていませんよ?」

 

「え? でもキュンキュンの存在を公表したら名前入れるんだろ?」

 

「いいえ、キュアキュンキュンは研究対象外です! キュアアイドル&キュアウインク研究会にキュンキュンが入る隙間はないです!」

 

「でも」

 

「でもも何もありません、キュアキュンキュンはまだまだです。まずダンスにキレが無いです。ロボットのようにカクカクで機械的な動きとまではいきませんが、身体を動かすのに関節一つ一つを意識してなければファンから見たら自信が無かったり、振り付けを覚えてないのかと勘違いされてしまいますからね。それに歌にもキュアアイドルのように「元気がもらえるような雰囲気」だったり、キュアウインクのように「可憐で憧れるような雰囲気」のような、その歌から溢れてくるパワーも無いです。ただ歌詞をなぞるのではなくて、ファンの皆さんを意識して何を届けるか、自分らしさを魅せるかが伝わってないです。最低限その辺りをクリアしなければ、研究対象にすらなりません!」

 

「お、おう。今のは俺が悪かったな。キュアキュンキュンは研究対象外、よく覚えておく」

 

「いいえまだです、まだ語り足りないです! そもそもキュアキュンキュンはですね───」

 

 こころちゃんは自分自身をアイドルやウインクと同格に言われるのを気にしているらしい。今の熱意を大まかに纏めると、自分はまだまだと言っているようなので、いつか並べ立てると思える時が来ると嬉しいものだが……。

 

「な、なぁうた。そこにあるピアノ弾いても良いか?」

 

 このままではこころちゃんのパーフェクト音楽教室が始まると予感した俺は、どうにか話題を逸らそうと視線を動かし、グリッターに置かれているピアノが視界に入った。

 

 そして「これだ!」と自身の直感を信じるや否や、うたにピアノを弾いて良いかの許可をもらう。

 幼馴染みと言えども、勝手に店の備品を使うわけにはいかない。それに万が一壊れている状態で、脆くなっている部分を刺激するような使い方をすれば危険であるからだ。

 

「え、台助くんピアノ弾けるの!?」

 

 うたの反応から察するに、そう言った心配は杞憂だったようだが。

 俺がピアノを弾く姿を一度も見た事が無いと驚くうただが、実際に一度も見せた事が無いので驚くのも無理はないだろう。そもそもピアノが弾けるとも弾けないとも話していないからな。

 

「こう見えて俺は才能の原石だぞ」

 

「才能の原石、ですか?」

 

「そんな話聞いた事無いけどな~まぁいいや。弾いて良いよ!」

 

「あ、その前に一つ確認していいか?」

 

 うたからの許可が降り、早速ピアノを弾こうと椅子に座る俺。うた達からの視線を背中越しに感じる中、ピアノの弾く前に確認しなければいけない事がある。

 

「なになに?」

 

「どれからドの音が出るんだ?」

 

「え?」

 

 鍵盤が多すぎてどれがどれが分からないのだ。

 多分一番端からドレミファソラシド、そのままループするような形になっているのかもしれないが、全部のドから同じ音が出る認識で良いのだろうか。

 それとも俺が知らないだけで、もしかしたら最後のドの続きとして「ラ」や「え」があるかもしれない。もしかしたらドラえもんの名前はドレミファロラシドが由来なのかもしれない。分からないから聞く、それが一番早い解決法である。

 

「才能の原石じゃないの!?」

 

「ピアノを弾いた事が無いから、一度も才能が削れていない。実質的に才能の原石だ」

 

「ザックリしすぎだよ!?」

 

 嘘は言っていない。

 才能とはその者に眠っているかは試さなければ、年月を掛けてその才能と向き合わなければ発見されないのだ。

 例えばバスケで3P(スリーポイント)を決める才能を持っていたとしても、実際に3Pを決めるような場面に出くわさなければ一生その才能は発見されない、要するに原石のままである。また、原石を磨き続けなければ才能が発揮されない場合もある。

 

 試してもいないのに「才能が無い」なんて言うのは、怠け者の言葉だ。それが例えちっぽけでも一度もその才能と向き合わなければ、原石のまま変わらない。

 そして俺はピアノを一度も弾いた事がない、つまり俺の身体にはピアノに関する才能の原石が眠っていると言っても過言ではないのだ。

 

「そう言われてみれば……そう、なのかな?」

 

「うた先輩言いくるめられないでください」

 

「私にバナナを育てる才能が……!?」

 

「すみませんなな先輩、誰もバナナの話はしてないです」

 

 うたは相変わらず俺の適当な言葉を簡単に信じてしまうようだ。ななちゃんに関しては思考が飛躍しすぎてちょっとよく分からないけど。

 

 俺が才能の原石について話してたから、自分にも知らない才能が眠ってるかもと考えるのは分かる。でもそこからバナナが出てくるのは分からない。

 え、なに。バナナ好きなの? あおぞら市辺りにでも行けば育てられそう。あの町は温暖な気候がする場所にあって、パパイヤとか育ててるみたいだし。

 

「キラキラしてるプリ~」

 

「ってあれ、プリルンなに見てるの?」

 

「キュアキュンキュンのライブ映像プリ!」

 

「いつの間に……」

 

 ななちゃんにつられて思考が斜めに片寄っていると、プリルンが何かを撮った映像を見ているのを、うたも後ろから覗くような形で見始めた。

 

 キュアキュンキュンの正体はこころちゃんではあるが、その肝心のこころちゃんが呆れたような声色でいつ撮ったのか呟いている様子から、プリルンが無断で撮ってしまったらしい。

 

 俺達の中では無断撮影は禁止なのは当たり前ではあるが、プリルンの様子からすればキラキランドではそう言った決まりは無いのだろうか。

 

「プリ!?」

 

「えあちょ、なんだ!?」

 

「な、なんですか!?」

 

 プリルンにどう注意するべきか。

 そう頭を働かせていると、突如としてプリルンの頭が爆発して髪の毛がアフロになる。何を言ってるか分からないかもしれないが、文字通りすぎて困る。こころちゃんも困惑してるようだし、いったいなんだ……?

 

「女王様からのお仕置きだね」

 

「「女王……?」」

 

「キラキランドの女王様です。恐らくはキラキランドの言い伝えである『ステージの無断撮影・及び投稿は禁止』を破った罰ですね」

 

「ネット回線あるのかよキラキランド」

 

「突っ込む所そこですか!?」

 

 そら一番に引っ掛かるのはそこだろ。

 こころちゃんとしてはそれ以外の部分が気になったようだが、俺の中でキラキランドは凄い科学とか発展してない、自然豊かな場所を想像していたがイメージと違いそうだ。

 

 よく考えるとプリルンが持ち歩いてるカメラは、うたに買ってもらった訳でなくてキラキランドからの持ち物のようだし、意外にもキラキランドそこら中に電波が飛んでる超科学な場所なのかもしれない。

 

 もしかしてキラキランドの「キラキラ」部分はみんなキラキラしている素敵な場所って意味じゃなくて、常に電気が付いていてキラキラと言う意味なのかもしれない。そう考えると途端にパリピが大量発生してそうな場所に思えてきた。なんか嫌だな。

 

「もう。プリルン、勝手に撮影するのは駄目だよ」

 

「ご、ごめんプリ」

 

「なぁプリルン。その映像どうするんだ?」

 

「ネットにアップするプリ!」

 

「アップする前にこころちゃんの許可は取ったか? ちゃんと話を通さないと、女王様とやらにまた髪の毛アフロにされるぞ」

 

「ハッ! そうだったプリ」

 

 脅しのような形になってしまうが、今のプリルンにはきっと「その行動をした結果、どんな問題が発生するのか」があまり想像がつかないのだろう。

 

 うたがアフロプリルンが女王様のお仕置きだと知っているのは、逆に言えば一度はそのお仕置きされた姿を見ている事になる。

 そして複数お仕置きされても───どうやらアイドルとウインクのライブを無断撮影及びアップした過去があるので、今回で三回目らしい───行動を躊躇するようなストッパーがない様子から、目の前の事に集中して周りや先が見えなくなってしまってるのだろう。

 

 本当なら犯罪に巻き込まれると言った方が良いのかもしれないが、プリルンからすれば具体的な犯罪について説明されても上手く理解出来ない、もしくは想像が難しいだろう。

 しかしたった今、しかも自身に起こった罰をまた受けてしまうと注意をすればもう問題を起こすような事はないだろう。

 

「こころ、この映像をネットにアップりしても良いプリ?」

 

 現にオレの言葉が聞いたのか、プリルンはこころちゃんにキュアキュンキュンのライブ映像をネットにアップして良いかの許可を取っている。

 

「うーん……」

 

「駄目プリ?」

 

「駄目、と言うよりやっぱり動きのキレや大胆さが甘いなぁって」

 

「そうプリ?」

 

 しかしこころちゃん本人は否定気味のようだ。

 どうやらネットにアップする事には不快感は無いようだが、そのライブ映像の出来に不満があるらしい。俺にはよく分からないが、本人なりの拘りがあるのだろう。

 

「私は良いと思うけどな~ね、ななちゃん」

 

「うん。可愛らしさがあって良いと思うよ」

 

「ですが……」

 

「もしかして自信が無いのか?」

 

「ええ、まぁ。私にとってお二人は雲の上のように手の届かない場所に居る存在なんです」

 

「手なら届いてるよ?」

 

「なな先輩、物理的な話ではないです」

 

 こころちゃんの心境を聞いて、ななちゃんは自分は手の届く場所に居ると言う意味を込めてこころちゃんの手を握るが、こころちゃんの話は精神的な意味のモノである。

 

 活動そのものには前向きのようだが、今の自分じゃアイドルとして足りない部分が多い。だからアイドルプリキュアと活動するなら、もう少し力を付けて二人に隣に立てるぐらいになってからが良い。これがこころちゃんの考えらしい。

 

「今の私なんかがお二人の隣に立って良いのかな……」

 

「よしうた。次にライブする時はキュンキュンを担ごう」

 

「なにがあったらそうなるんですか!?」

 

「いや、隣に立つのが恐れ多いなら上に居ればセーフかと」

 

「ハッ! その手があった!」

 

「しませんから! うた先輩もそんな提案に乗らないでください!」

 

 だから俺は隣に立たずにアイドルプリキュアとして活動する方法として、肩車を提案したがこころちゃんに断られてしまった。

 何故だ……肩車なら担ぐ時は後ろから、担いでも上に居るだけで隣には一切居ない完璧な作戦だったと言うのに。

 

 と、ふざけるのはこの辺りまでにしておこう。

 どうやらこころちゃんの意思はかなり固いらしい。真正面から誘うのは難しいそうだと、変化球でアイドルプリキュアとして活動しようと勧誘したが、断られてしまった。

 

 しかしこころちゃんの意思が固いように、うたちゃんとななちゃんの意志も固い。現にこころちゃんをどう誘うかの作戦会議を小声で行っている。このままでは互いのどちらかが折れるまでの戦いとなるだろう。

 

「こころさん。アイドル(・・・・)プリキュアとして活動する以上、早めにライブ映像をアップするのが良いかと」

 

 三人の戦いの火蓋が切って落とされようとした途端、その戦いに田中さん突如として参加してきた。こころちゃんの意見を尊重しつつも、うたとななちゃんの味方をするような言葉を口にして。

 

「あまり遅くてはアイドルとウインクのグループと印象が固まってしまいますし」

 

「うっ。確かにそうですね」

 

 田中さんとしてはこころちゃんの意見に理解は示せるが、時間を置けば置くほどアイドルプリキュアは二人組のグループアイドルとして認知されていき、キュアキュンキュンが加入するタイミングによっては、そのイメージから抜け出せなくなるのを危惧しているようだ。

 

 イメージとは記憶とよく結び付いている。

 それこそデビューの時期が遅れれば、キュアキュンキュンはアイドルとウインクの間に割って入ってきたような印象になってしまう。何故ならその頃には既にアイドルプリキュアは二人組のグループとして認識されているから。

 

 そう言った余計な亀裂を生まず、尚且つスムーズにキュアキュンキュンをアイドルプリキュアの一員として認識される方法としては、時間があまり経っていない頃に「アイドルプリキュアの初期メンバーです」と、人数が増えるのは予定調和であると言った雰囲気を醸し出すのが一番だろう。

 

「プリキュアとしての活動もありますし、余裕が生まれてからアイドル(・・・・)プリキュアとしても活動するのも手ではありますが、そう言った問題がありますからね」

 

「プリキュアとアイドル(・・・・)プリキュア、ねぇ……」

 

 俺は意味深にアイドルプリキュアと、プリキュアと使い分けた田中さんへと視線を送る。

 田中さんはこころちゃんを説得するのに意識を向けており、俺の方へと視線こそは送らなかったが、わざわざ引っ掛かりを覚えるような言葉使いをしてきた様子から察するに、言外にうた達は「アイドル」として以外にも「プリキュア」として何かをしているようだ。

 

 やはり、と言うべきか。

 うた達はアイドルプリキュアとしての活動以外にも「プリキュア」として何か別の活動もしているらしい。そして田中さんの言葉から察するに、アイドルとは全く関係無さそうだ。

 

 気にはなるが……そこはうたの隠し事に直結するからな。うたの隠し事を聞かないと決めているし、今そこに思考を割いて目の前のうた達の話を右から左に流すのは失礼になるだろう。こころちゃんがどうするか聞きそびれるのも避けたいし。

 

「一緒にやろうよこころ!」

 

「きっとこころちゃんのダンスを楽しみにしてる人も居るんじゃないかな?」

 

「キュンキュンはまだ世間に存在を公表してないので、ファンは一人も……いえ、そうですね」

 

 それでもと、誘いを一旦断ろうとしたこころちゃんであったが、ななちゃんの「ダンスを楽しみにしてる人が居る」と言う言葉で、キュンキュンとしてではなく自分自身(紫雨こころ)を応援してくれる誰かを思い浮かべたのか、こころちゃんは小さく息を吐いてニコリと笑った。

 

「分かりました。私もアイドルプリキュアお二人と一緒に活動しましょう!」

 

「「やった!」」

 

 こころちゃんの言葉にうたとななちゃんはハイタッチして喜ぶのであった。

 

 こころちゃん、俺は困ったら相談にのるよ。ただし隠し事は除くけどね。




 キミプリ本編と違ってキュンキュンの存在が広まる前の話なので、こころちゃんには「もう少し力を付けてから公表でも良いですか?」と躊躇ってもらいました。
 個人的な解釈ですが、こころちゃんは自分に厳しいので映像をアップするとなっても「うーん。ここがシックリ来ないので、もう一度撮り直して良いですか?」と何度もやり直してそう。

 今回の地味な拘りポイント
 本来の時系列ならまだ「こころちゃん」呼びのうたちゃんですが、次の話で急に呼び方が変わってたら困惑する人が生まれる可能性があるので、呼び捨てイベントを飛ばしてこころ呼びで統一しました。

プリキュアを見たことある?

  • 見たことが無い
  • 何話か見た
  • キミプリのみ見た
  • 複数のプリキュアシリーズを見た
  • 全プリキュアシリーズを見た
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