うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠す努力はしてくれ。 作:のろとり
作中の時系列は第12話。
具体的に言うと、メロロンがはなみちタウンに来た直後辺りです。
プリルンの故郷、キラキランドは謎が多い。
それらはうたの隠し事に直結する為、わざわざプリルンにキラキランドについて聞かない。聞かないから謎は疑問のまま形が変わる事はない。
プリルンがはなみちタウンに来た方法。
プリキュアはどうやってキラキランドを救うのか。
妖精以外にも田中さんのような人間も居るのか。
そして……
「メロ?」
「あー、うん。なんて言えば良いんだろ」
今俺の目の前に居るプリルンと似たような体格の妖精も、その謎の一つと言えるだろう。
「離すメロ、メロロンはねえたまに会わなければならないメロ!」
俺は自身を『メロロン』と名乗る妖精を捕まえ、散歩で来ていた季節外れの桜が咲く展望台から、人気の少ない公園まで移動して、机が付いているベンチへ腰掛ける。
何故あの場所に居たのか気にはなるが、それ以上にメロロンがある人物と会う必要がある、俺に構っている暇は無いと腕の中で暴れるので、質問する所ではない。
俺がメロロンを見つけた時、何処かへ浮遊した状態で移動しようとしていたので反射的に捕まえてしまった。
俺としては誰かの目に付けば羽の付いていない動物が空を飛んでいると言う、明らかに珍獣にしか見えない姿を撮られて一瞬にしてネット上に広まってしまうから、場所を移して話を聞く。
そんな気遣いからの行動であったが、メロロンからすれば俺は誘拐されると思ったのだろう。もしメロロンが人で、それを第三者が見れば誰でも誘拐と決めつけるだろう。自分の行動だが俺もそう思う。
「待て待て! えっと……メロロンと言ったか。メロロンの言うねえたまってのはプリルンの事で合ってるか?」
「メロ!? ねえたまを知ってるメロ!?」
「まぁな」
このまま暴れ続けられては人目に付き、いつまでも力で抑えるのは難しいと考え、同郷と思われるプリルンの名前を出すとメロロンは暴れるの止めた。
やはりと言うべきか。
メロロンはプリルンについて知っている様子であり、ねえたまと呼んでいる様子からプリルンの妹、もしくはそう呼ぶほどに慕っているのだと推測出来る。
体格はプリルンそっくりではあるが、プリルンは全身が白でリボンのような耳が生えている一方で、メロロンは全身がピンクでツインテールのような耳が生えている。
多少見た目が違うだけで姉妹と認識は一応出来るが、俺の知るキラキランドの住民はぬいぐるみのような見た目をしているプリルンとメロロン、そして人間のような見た目をしている田中さんだけである。
たった三人しか知らない為、これだけで「体格が似てるから姉妹だ!」とは確定は難しい。人で例えると「兄は黒髪ロング、弟は青髪リーゼント。でも人型だから兄弟だ!」と言っているのと同義だからだ。
「ちょっと待ってろ。今プリルン呼ぶから」
なんにせよ、その辺りは一旦置いておこう。
今はメロロンをプリルンと会わせるのが優先だ。とは言っても、素直に場所を教えればメロロンがすぐにその場所へ向かおうとし、その道中で人目に付いてしまうだろう。だからプリルン達を此方に呼ぶ。
俺はプリルンの連絡先は知らない───より正確に言えば、プリルンはスマホを持っていない───ので、いつもプリルンと一緒に居るうたへと電話をする。
「あーもしもし」
『もしもし台助くん? どうしたの?』
「ちょっとプリルンに話があってな。ビデオ通話にして電話を代わってくれないか?」
『え? うん、ちょっと待ってね。プリルン、台助くんがプリルンに話があるって!』
『プリ?』
俺はうた経由でプリルンを呼び、こっちの状況が分かりやすいようにとビデオ通話にするように頼む。
口で説明するよりも実際に見た方が状況の理解が早く、そして数ヵ月ほど、はなみちタウンに居てメロロンと会えていないプリルンを気遣ったからである。
「ねえたま~!」
『メロロン!?』
「ねえたま、もしかしてこの箱に閉じ込められてるメロ!?」
「これ箱じゃない、電話だ」
「そっちには聞いてないメロ!」
はなみちタウンに来ていると思わなかったのか、プリルンはメロロンの存在に驚き、メロロンはプリルンに触れようと俺のスマホをガタガタと揺らしている。
しかし目の前のプリルンの居場所は喫茶グリッターであり、スマホの中では無い。幾らスマホを揺らそうと、その方法で会うのは不可能である。
それにしても、プリルンには「ねえたま! ねえたま!」と甘えているのに対して、俺には当たりが強くてちょっと悲しい。俺とメロロンは初対面なのもあるだろうが、それ以上にメロロンはプリルンにしか心を開いてないように見えるのが理由なのだろうか。
『メロロン、今会いに行くプリ!』
『待ってプリルン、一人で行くと危ないよ!』
『失礼! うたさん、プリルン。一大事です!』
俺が少し落ち込んでいる表情をする中、プリルンはグリッターを飛び出してメロロンの元へ行こうとするが、うたに止められる。そして同時に田中さんが焦った様子でグリッターの扉を開けてうた達へと声を掛けた。
「…………うた。場所だけ送るから、落ち着いたら来てくれ」
『あ、うん!』
こんな状況では俺の方にまで手が回らないだろうと、俺は位置情報だけをうたに送り、電話を切る事にした。
田中さんがあんなにも焦っているのは見るのは初めてで、何があったのか気にはなるが、それを聞いている間にメロロンに一分一秒でも早く会いたいプリルンがグリッターを飛び出して行方が分からなくなるかもしれない。
ここは状況整理を優先してもらうとして、一応はななちゃんとこころちゃんにもメロロンについて連絡を……あ。俺、二人の連絡先知らないんだった。
ななちゃんやこころちゃんに会う時は大体うたが近くに居たからな。
うたに会いに行けば二人が居るし、俺に用事がある時も毎回うたが近くに居るからうた経由で俺に電話をする。それが当たり前になってたから、連絡先を交換してないの忘れてた。今度あったら交換しておこう。
「メロ~、メロ~!」
「え、なに。急にどうした、威嚇?」
うたが来るまでメロロンと二人で待ち続けるかと、メロロンの方へと視線を向けると、俺のスマホへメラメラと誰かに対して嫉妬の炎を燃やしていた。
本人は真面目なのかもしれないが、端から見ればレッサーパンダが二本脚で立って威嚇するような可愛らしいものにしか見えない。
「ねえたまと一緒に居たのはいったい誰メロ!?」
「俺の幼馴染みの咲良うただな。プリルンと一緒に暮らしてる」
「メ、メロー!? ねえたまの隣はメロロンメロ!」
「いや知らんよ」
「咲良うたのねえたま泥棒~!」
「うたに対する評価が一瞬にして下がっていく……」
まだ直接会っていない、なんなら数分程度しか会話していないが、メロロンの中でうたの評価はマイナスになったようだ。哀れうた、多分根は良い子だから関わっていく内にマイナスからプラスになるだろうけど。
「なぁメロロン」
「なにメロ? えっと」
「あぁ、そうえば名乗ってなかったな。俺はだいす……いや、俺は『
「フルネーム、メロ……?」
プリルンは
そっか、そうだよな。
プリルンはプリルン、田中さんは田中とそこまでが名前でありフルネームだから、名字と名前イコールでフルネーム認定なのは俺達人間の常識であって、メロロンには名字って概念が無いのか。
メロロンとしては「うた」じゃなくて「咲良うた」がまでが名前だと思ってそう呼んだのに、急にフルネームだの言われてもよく分からないか。
「家族としての意味を表すのが名字、個人を表すのが名前だ。俺の場合だと
「なら台助って呼ぶメロ」
「あぁ。改めてよろしくな、メロロン」
「別によろしくするつもりはないメロ」
「え、純粋に悲しい」
俺はメロロンに名字と名前の違いに対して軽く説明し、どちらでも呼んで良いと話した上でメロロンによろしくと、握手の意味を込めて手を差し伸べる。
しかしメロロンはプリルン以外と仲良くするつもりが無いようで、握手どころか仲を深めるつもりも無いと、俺に背中を見せて態度で意思表示する。
気難しいと言うべきか、それともプリルンにしか心を開いていないのか。少しも俺と仲を深めようとする態度を見せないメロロンに俺は悲しさで眉を潜める。
「あー……ところでメロロン、さっきプリルンをねえたまと呼んでたが、姉妹なのか?」
「違うメロ。ねえたまはねえたまメロ」
「姉みたいに慕ってるのか」
俺は自身の渦巻く悲しみの感情を隠し、メロロンに声を掛ける。しかし何を話そうか一瞬悩み、ふとさっき疑問を抱いていたプリルンとは姉妹なのかを聞いてみた。
するとプリルンに関する質問だったからか、会話する程度には俺と関わるつもりがあるのか、すんなりと答えてくれて俺は目を丸くする。
「そうか。メロロンはプリルンの事が大好きなんだな」
「当たり前メロ! メロロンがねえたまの事が大好きのように、ねえたまもメロロンの事が大好きメロ!」
「思ったよりノロケが凄い」
軽くジャブを放ったらトラックが突っ込んできたぐらい想像以上の返事が来た。
メロロンがプリルンにそこまで惚れている理由は分からないが、大方の想像はつく。きっとプリルンの裏表の無い優しい心に触れたからなのだろうと。
キラキランドの妖精はその枠組みに入るかは分からないが、人は生きていると誰かに対して隠し事をする生き物だ。
それは俺であっても、嘘が苦手なうたであっても同じだ。だが決して、それが悪いと言いたい訳ではない。人とはそういう生き物なのだ。
しかしプリルンは違う。隠し事があると理解して誰かに嘘を吐かない。それどころか、自身が内に秘めている内容ですら隠さない。正確に言えば隠すと言った考えすら無いのだ。
それが良いか悪いかは人それぞれ、そしてその時の場面によって変わるのだろうが、少なくとも過去のメロロンにはプラスに働いたのだろう。そうでなければプリルンを追い掛けてはなみちタウンまで一人で来ないだろうから。
「…………なぁ、メロロン」
「なにメロ?」
「メロロンは自分の気持ちに素直で凄いな」
「そうメロ?」
「人は誰だって隠し事をしてるってのが俺の持論だ。でもメロロンは何も隠さず、むしろオープンで凄いと思ってな」
メロロンはキョトンと首を傾げるが、俺からすればメロロンやプリルンが眩しく見える。隠し事をせず、自分の思うがままに生きているその様子はまさに太陽である。
「台助は何か隠してるメロ?」
「あぁ。
「それってなにメロ?」
「いや、秘密は秘密だから。そう簡単に隠し事を喋ってたりしないからな」
ペラペラと喋ったらそれは秘密と言わな……あぁでも、うたは口から隠し事が漏れ出してるか。困った、うたが隠し事が出来ない性格だから秘密の定義が壊れ始めてきた。
「おーい、台助くーん!」
「プリー!」
「お、丁度良いところに来た。なぁうた、うたのせいで秘密の定義が壊れそうなんだがどうすれば良いと思う?」
「え、私!?」
田中さんとの話は終わったのか、プリルンを抱えて俺の方へと走ってくるうたに秘密の定義の崩壊について問うと、自分が何かしてしまったのかと、うたは驚いて声を上げる。
「ねえたまあああああ!!!」
「メロロオオオオンー!」
一方でプリルンとメロロンは、久しぶりの再会だったのもあってか、目の前の相手を認識するなり、全力で飛んで互いにハグをする。
「そういやうた。さっき電話で田中さんが慌てた様子だったが、何かあったのか?」
「実はキラキランドから誰かが来たって話で」
「あぁ、なるほど。メロロンか」
恐らくは俺がメロロンを見つけて人気の少ない場所に移動した後で、田中さんがメロロンがはなみちタウンに来てると知って───誰かに聞いたのか、来たと言う証拠か何か残ってたのかは分からないが───、急いでうたとプリルンの元へと駆け付ける。
その頃に俺はうたとプリルンにメロロンについて話していて、会話の途中で田中さんがグリッターに来て、あんな風にドタバタするようになったのだろう。
「ななちゃんとこころちゃんにも伝えたか?」
「うん! 二人に伝えたらすぐに来るって言ってた!」
「そうか」
プリルンの同郷が来たとなれば二人も気になるだろうし、うたと共有している隠し事についてもメロロンと話すだろうからと、一緒に居た方が話がスムーズに進むと思い確認してみたが、どうやら無駄な気の回しだったようだ。
「積もる話とか隠し事とか、色々あるだろ? 俺はそろそろ行くから、その辺りの事はメロロンに話しておけよ」
「…………聞かないの?」
「聞いてほしいのか?」
俺の気遣いを心苦しく思ったのか、うたはベンチから立った俺の指を掴んでキラキランドやプリキュアについて聞かないのか問いてくる。
うた自身、その秘密は喋ってはいけないと理解しているのだろう。喋ればきっと俺も巻き込んでしまうと想像はついているのだろう。それでも隠し事を通し続けるのは苦しく、誰かに話したいと考えているのだろう。
だから俺はうたに問う。
本当に聞いて良いのか、本当に話して良いのか、秘密を隠し通さなくて良いのかと。
うたの良心に問いかける卑劣な行動ではあるが、下手な嘘を吐いても誤魔化そうとする姿を何度も見ているのだから、おいそれと誰かに話せるような隠し事では無いのだと既に察している。察しているからこそ、俺は釘を刺すのだ。
「うーんと、それは」
「なら胸に閉まっとけ。いいか、間違っても口に秘密を入れてポロポロ溢すなよ?」
頭を抱えて話して良いのか悩むうたに、俺は今まで通り隠し通しておけと注意し、うたの考えが変わるよりも先にその場を後にするのであった。
うた、俺はお前の隠し事を聞かない。ただし隠すなら口じゃなくて胸にしておけ。
主人公の名字は「
吐→吐露→口に出す→スピーカー
喜衣→五十音でうたの一つ下の文字(あいうえお。たちつてと)
台助→アイドル達を支える
ステージに立つアイドル達を下から支える存在。と言う意味の名前ですね。
作中の名字に関する話題は私がメロロンが他者をフルネームで呼ぶと勘違いしてた名残です。いやだって、咲良うた呼びの印象が強くて他のみんなにもフルネームだと思ってたんだよ……。
この話を書いてる時に気付いて良かった。まぁその勘違いのお陰で主人公の名字が決定したと考えたら結果オーライですね。
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