バトルスピリッツ 王者の鉄華2   作:バナナ 

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第1話「闇バトル」

 

 

 

鉄華オーカミ。

 

かつて、悪しき者達からバトルスピリッツでこの世界を救ったとされる、伝説の英雄の名だ。この大バトルスピリッツ時代で、知らない奴は先ずいねぇ。

 

これは、その鉄華オーカミの物語ではなく、彼の娘である私、鉄華ヒカリの物語だ。

 

でもあんまり期待しないでくれ。

私の物語は、王道で真っ直ぐな父さんの物語とは違って、歪で、捻くれててるから。

 

 

******

 

 

ここは界放市。日本で最もバトルスピリッツが盛んな大都市である。

 

なんと実に9割の人達がバトルスピリッツをする者達の総称「カードバトラー」らしい。

 

 

「おいヒカリ、待ちなさいって!!」

「誰が待つかよ。捕まえられるなら捕まえてみろってんだ!!」

 

 

ところで私こと、「鉄華ヒカリ」は今、絶賛大ピンチ中である。それは、私の後ろを走って追いかけている40歳くらいの白髪長身のイケおじを見れば一目瞭然だろう。

 

 

「言っとくけどヨッカおじさん。この光景結構やばいからな?…私が真面目な顔して警察に相談したら、変態罪でしょっぴかれるぜ?」

「変態罪ってなんだ。ふふ、しかし残念だったな。オレはこの街の警視長と知り合いなのだ。ちょっとやそっとじゃしょっぴかれないぜ」

「うわ、なんでそんな無敵なんだよ」

 

 

取り敢えず、私はこのヨッカおじさんから逃げなければならない。自慢の煌めく赤いショートヘアを靡かせて、界放市ジークフリード区の下町の中を縦横無尽に駆け回る。

 

だがこのおっさん。何故か凄く身体能力が高い。この私の動きにぴったり追従して来る。その歳でパルクールできるのおかしいだろ。

 

 

「今日こそはやってもらうぞ、バトスピ」

 

 

ギラギラと目を輝かせながら、ヨッカおじさんが私に告げた。

 

そうだ。私がこのおっさんに追いかけられている理由はそれだ。

 

 

「いやだね。誰がやるかよ、そんな紙遊び。トランプで遊ぶ方がマシだろ」

 

 

取り敢えず強めに拒否しておくけど、多分この人はこれだけじゃ諦めてくれない。

 

 

「オマエ絶対才能あるのに、もったいないって。な、一回でいいからやろう。おじさんと一緒に、な?」

「言い回しがキモ、不審者かよ!!」

 

 

だろ?

 

こう言うとこあるんだよこの人。

 

 

「懐かしいな。オマエの父、鉄華オーカミも昔、オレにやれと言われて渋々始めたんだっけなぁ。そこから世界さえ救っちまう英雄になったんだ」

 

 

チェイス中にまた私の父さんの話だ。

 

私の父さんは「鉄華オーカミ」と言って、この世界をバトルスピリッツで救った伝説の英雄である。そのため、私の「鉄華」と言う性は、周囲からしたら特別な称号のような印象を与えている。

 

私からしたら迷惑な話だ。そのせいで私は齢14という年齢で、今日も大嫌いなバトルスピリッツへの熱い勧誘を受けているんだから。

 

 

「捕まえた!」

「ゲ」

「ふふ。なぁにそんな怖いことはしないさ。ただオレやオマエのパパとママの知り合い達とバトスピしてもらうだけだからな」

 

 

油断した。思いっきり手首を掴まれた。結構力強いんだよなこの人。

 

だけど問題ねぇ。ここから巻き返せる手段が、私にはある。

 

 

「キャー痴漢!!…ここに痴漢がいまーす!!」

「え、やば。あ、いや違うんすよ」

 

 

ここはちょうど商店街。大勢の人達が私の棒読みの声を聴き、こっちへ首を向ける。

 

ヨッカおじさんがそれに気を取られた瞬間。私は強引に手を振り解く。

 

 

「そんじゃあなヨッカおじさん。来年のお年玉、期待してるから」

「あ、おい待てよヒカリ!!…つかお年玉って、まだ5月だけど!?」

 

 

取り敢えず、ヨッカおじさんが通らなそうな、人通りの少なそうな道から帰ろう。

 

そう考えた私は、暗い路地の隙間へと向かって行った。

 

 

******

 

 

「ったく、ヨッカおじさんの奴、今日はいつも以上にしつこかったな」

 

 

明るい街並みが特徴的な界放市ジークフリード区にも暗い路地裏は存在する。

 

今日起きたことへの愚痴をこぼしながら、私はそこを歩いていた。もう直ぐ日が沈む。そろそろ家に帰らないとな。

 

 

「こんばんは」

「うお!?」

 

 

背後から私を呼ぶ女の人の声がした。暗い場所だったのもあって、少しだけ驚いた。

 

 

「ニッヒヒ。驚かせてごめんなさいね」

 

 

そこにいたのは精々30歳くらいの黒いローブを羽織った女性。笑い方が独特で、ちょっとだけ怖い。

 

 

「誰だアンタ。ここら辺じゃ見ない顔だな。私になんか用?」

 

 

私は怖いと言う感情を押し殺して、いつもの堂々とした態度で黒ローブの女性に訊いた。

 

 

「おめでとうございます。鉄華ヒカリ。貴女は闇の王の候補に選ばれました」

「……は?」

 

 

女性が告げて来た言葉が、私には理解できなかった。そりゃそうだ。「闇の王の候補」って。

 

そもそも、なんでこの人は私の名前知ってんだ。

 

 

「このデッキを」

「?」

 

 

女性は、ローブの懐から取り出した1つのバトルスピリッツのデッキを私に手渡して来た。

 

普通は、知らない人から何かを受け取るのは良くないことだが、何故か私はそれを拒めなかった。

 

 

「仮面ライダーガヴ……」

 

 

大嫌いなはずのバトスピカード。だが、私は手渡されたデッキの先頭にあった「仮面ライダーガヴ」と言うカードに、ほんの僅かな時間、吸い込まれるように目を奪われた。

 

 

「そのカードは貴女を選んだ。それこそ、参加するための証。では、またお会いしましょう。赤い髪の可愛らしいお嬢さん」

「待て。まだ貰うとは」

 

 

その間、黒いローブの女性は消えていた。不思議だ。来る時も去る時も足音ひとつしなかった。

 

 

「き、消えた。なんだったんだ」

 

 

幻覚でも見ていたような気分だが、手に握られたデッキは残っている。だから今起こったことは、紛れもない現実。

 

不思議な体験だったが、今はどうしようもない。取り敢えず家に帰ろう。私は大人しく帰路につくことにした。

 

 

******

 

 

真夜中。流石の界放市も静まり返る時間帯。

 

私はお気に入りのうさぎ柄のパジャマに着替え、就寝の準備をすると共に、今日成り行きで貰ってしまったバトスピのデッキを眺めていた。

 

 

「今日会った女の人。カードが私を選んだとか言ってたけど。厨二病でも拗らせてんのかな」

 

 

念の為デッキの枚数や効果を確認してみたけど、これと言って何かがあるわけじゃない。

 

やっぱりただの紙束だ。最初こそ自然と視線が吸い寄せられた「仮面ライダーガヴ」と言うカードも、今見返して見ても何の魅力も感じない。

 

 

「そもそもバトスピなんて紙遊び。誰がやるかっての。くだらねぇ」

 

 

私はバトスピが大嫌いだ。どんなに親しい知り合いや友人に誘われたとしても、絶対にやらないし、やりたくない。

 

 

「寝よ寝よ。こんなこと考えるくらいなら勉強してた方がマシだっての」

 

 

私は部屋のゴミ箱にデッキを捨て、ベッドの上に転がり込んだ。今のバトスピのカードは何も知らないため、貰ったカードにどのくらいの価値があるのかは知らないが、私にはどうでもいいことだ。

 

やがて電気を消して、就寝した。

 

だが、時計の針が午前0時ちょうどを刺した瞬間。捨てたデッキが白く光輝き、眠っていた私をどこかへと連れ去って行って。

 

 

******

 

 

「………ん?」

 

 

膨らんでいた鼻提灯が割れる。その割れた音が眠気覚ましとなった。

 

 

「え、なんだ。どこだよここ!?」

 

 

目が覚めると、私の周囲に広がっていた景色は、黒い影でできた天上、無限に広がる大地、見上げれば首が痛くなる程に巨大な、ローマにありそうな円形の闘技場。

 

あまりにいきなり過ぎる突飛な出来事。いくら私といえども、当然困惑してしまう。

 

 

「夢じゃない、よな?」

 

 

一旦自分の頬をつねる。痛みを感じたことから、これが現実であるのだと理解する。

 

いや、どちらかと言えば、「理解せざるを得なくなった」と言うべきか。

 

 

「おい、邪魔だぞ小学生」

「誰が小学、あ、いや、すんません」

 

 

身体をぶつけられた男に「小学生」だと罵られたことで、反射的に強い口調で言い返そうとしたが、その男の体格の大きさとスキンヘッドに萎縮。一旦冷静になって、逆に謝罪してしまう。

 

 

「よく見たら、結構いるな」

 

 

辺りを見渡せば、そこには大勢の人々が招かれていた。私と同様に知らぬ間に来ていたのか、はたまた全く別の方法で来たのかは定かではないが、最低でも100人近くはいそうだ。

 

 

「まさか、今から人生を賭けたデスゲームに参加してもらいます的なことにならないよな」

 

 

いや、それは流石にないか。アニメやドラマの見過ぎだな。

 

 

「こんばんは。我がアンダーグラウンドスタジアムへようこそ。選ばれしカードバトラーの諸君らよ」

「!!」

「我は闇バトル主催者、イスルギ」

 

 

声がした。それも、ここら一帯に響くような大きいものだ。

 

私は直ぐにそこへと振り向くと、そこには全てがデジタルで構築された、巨大な黒服鉄仮面の男がいた。

 

私だけでなく、この場にいる全ての者達が皆、そいつに注目し始める。

 

 

「闇バトル!?…字面が不吉。てか、選ばれしカードバトラーって、別に私カードバトラーじゃ……ッ」

 

 

カードバトラーではない。故に、本来であれば、私は招かれざる客のはずだ。

 

しかし、ゴミ箱に捨てていたはずのあのデッキを知らぬ間に手に握っていたことで、私は色々と察してしまった。

 

 

「このデッキ、捨てたはずなのに。まさかコレのせい!?」

 

 

残念ながら、その答えはドンピシャだった。

 

 

「突然のことで戸惑ってしまった者も多いだろう。闇バトルと言う単語も、実に不吉だ。しかし安心してくれたまえ。命は取らない。ただ我は諸君らに戦って欲しいのだ。バトルスピリッツで」

 

 

鉄仮面、イスルギの言葉に、周囲の人々はどよめく。さっき私にぶつかって来たスキンヘッドの大男が「何が言いてぇんだ」と声を荒げる。

 

 

「言葉通りだ。勝ち残り、優勝した者には、どんな願いも叶えることを約束しよう」

「!!」

 

 

どんな願いも叶える。

 

その単純且つぶっ飛んだフレーズに、集められた者達は魅了され、目の色が変化。辺りは大盛況に包まれる。あまりにも異常な光景だ。

 

全員、まともではないんだろう。

 

 

「さぁ諸君らよ。既に我らが配ったデッキ。その中核たる存在、Aカードを掲げよ。ここに、地下バトル場、アンダーグラウンドスタジアムの祭典、闇バトル開催を宣言する」

 

 

イスルギの闇バトル開催宣言に応じるように、皆、「Aカード」と呼ばれるバトスピのカードを手に握り、掲げ、より一層強い雄叫びを上げた。

 

 

「いや、胡散臭いだろ」

 

 

そうだ。優勝すればどんな願いでも叶うって、どう考えてもおかしい。

 

 

「このイベント中は、終始Aカードを投入したデッキを使用してもらう。それ以外のデッキ構築条件は求めない。因みに、Aカードが無ければ、このアンダーグラウンドスタジアムへの入場は許可できないから、十分に注意してくれたまえ」

 

 

イスルギにそう言われ、「やっぱこれのせいか」と、私は呟いた。ここで言う「Aカード」とは、私の持つデッキだと、多分「仮面ライダーガヴ」のことだと思う。

 

 

「さぁカードバトラー諸君。己が抱く願いに赴くがまま、気の済むまで戦い続けるのだ。フハハハハハ!!!」

 

 

最後にそう告げると、デジタルで構築された、巨大な黒服の鉄仮面、イスルギは姿を消す。おそらく、どこかに等身大の本体がいるのであろう。

 

 

「主催者挨拶は以上になります。具体的なイベント内容は、この私、ウィンドからご説明させていただきます。皆様、聞き漏れがないようご注意ください」

「あ、あの人!!」

 

 

次にデジタルで巨大化して現れたのは、ヒカリにデッキを渡して来た、黒ローブを羽織った女性だった。

 

 

「皆様はこれから毎晩、1日に1回ずつバトルをしていただきます。闇バトルはポイント制。勝てばポイント+1。負ければ-1。先に10ポイント貯めた上位2名のみで決勝戦を行い、それに勝利された方が、晴れて己の願いを叶えることができるのです」

 

 

単純明快でわかりやすいシステムだな。逆に言えば、ポイントを10貯めた者が現れない限りは永遠にバトルしないといけないってことか。

 

いや、バトスピ嫌いな私にとっては拷問に等しいじゃねぇか。

 

 

「つーか、こんなデッキがあるからいけないんじゃん。さっさと捨てよ」

「因みに。貴方方に拒否権はありません。間違ってもデッキを捨てようなどとお考えにならないように」

「……」

 

 

黒ローブの女性、ウィンドから「参加しろよと」言わんばかりの無言の圧が、再度デッキを捨てようとしていた私の手を止めた。

 

私は冷や汗をかき、デッキではなく、デッキを捨てると言う考えを頭の中から捨て去る。

 

 

「では、一旦皆様を控え室にご案内いたします。その先に今宵の対戦相手がいらっしゃいますので、頑張ってくださいね」

「!!」

 

 

ウィンドが最後にそう告げると、周囲はまた白い光に包み込まれる。

 

そして眩しさに閉じた目を再び開けると、そこにはロッカーにベンチ、デスクが転がっている、なんの変哲もない控え室だった。

 

 

「なんか、どうにかして夢ってことにならねぇかな」

 

 

受け入れ難い現実に、驚きを通り越して、もはや呆れて来た。

 

 

「こんばんは」

「わぁ!?」

「ニッヒヒ。リアクション可愛い」

 

 

また音もなく私の横に現れたのは、黒ローブの女性、ウィンド。

 

 

「どう、ガヴのデッキはちゃんと調整した?」

 

 

ウィンドが私に訊いて来た。

 

 

「誰がするかそんなの。私はバトスピが嫌いなんだよ」

 

 

取り敢えず強めに拒否をしておくけど、なんとなく私にはわかる。ウィンドはこんな言い方をしても、遠慮なく勧誘して来るタイプだ。

 

 

「あらそうなの。バトスピが嫌いなんだ。あの鉄華オーカミの娘なのに」

「ッ……なんでそのことを」

 

 

ウィンドから発せられた思いがけない言葉が、私を驚かせる。なんで私の事情にこんな詳しいんだよこの人。

 

 

「ニッヒヒ。闇バトル運営スタッフの情報網をなめてもらっては困るな。バトスピが大嫌いなのは、お父さんのせい?…それとも妬み嫉みを吐き散らす周囲のせい?」

「……」

 

 

答えづらいな。本当はそのどっちでもないんだけど。

 

バトスピしてる奴にろくな奴はいない。バトスピしてると、自分もその一員になりそうな気がする。

 

だから………

 

 

「じゃあ、早速バトルの準備しましょうか」

「……なんて?」

 

 

ウィンドから発せられた言葉に、私は耳を疑った。

 

今の流れでなんでそんなこと言えるんだよ。

 

 

「アンタ、なんでこの流れでなんでバトスピしろなんて言えるんだよ」

「だからこそよ。先ずは1勝1ポイント。頑張りましょう。はい。と言うわけで早速このバトルスーツに着替えて」

「はぁ!?」

 

 

強引過ぎるウィンド。その言葉には妙に逆らいづらい。私は渋々パジャマから、白を基調としたバトルスーツに着替えた。

 

 

「パツパツ過ぎない?…めっちゃ身体のライン出るんだけど」

「サイズは身長に合わせたはずだけど。貴女結構着痩せするタイプ?…意外とスタイルいいのね」

「意外は余計だろ」

「さ。対戦相手はもうスタンバイしているわよ。頑張って」

 

 

ウィンドが控え室の扉を指差しながら言った。おそらくは初戦の相手がその先にいるのだろう。

 

 

「おいおい。本当に行かないといけないのかよ」

 

 

扉の前に立った瞬間。バトスピをしたくないと言う気持ちが強くなって来た。

 

だが、まるで「逃がさない」とでも言うような勢いで、ウィンドが私の肩を押さえつける。

 

 

「大丈夫、多分一回やれば沼るよ闇バトル」

「うわ、ちょっと押すな!!」

「はい、いってらっしゃい」

 

 

嫌がる私を、ウィンドは強引に控え室の出口、バトル場へと押し出した。

 

 

「いてて。クソ、あのおばさん、覚えてろよ」

「あぁ?…なんだテメェ、オレ様にぶつかって来た小学生じゃねぇか」

「ゲ。さっきの」

 

 

扉の先にあった、比較的狭い闘技場。そこには、闇バトル開催前、私にぶつかっておきながら、「小学生」だと罵ったスキンヘッドの大男がいた。

 

私以上に白いバトルスーツをパツパツに着用してるところを見るに、アイツが私の初戦の相手で間違いなさそうだ。

 

 

「ガハハハ。これは幸先が良い。相手が小学生なら、もうポイントを貰ったも同然じゃねぇか」

「……」

「ありがとよ。オレ様の願いの肥やしになってくれて」

 

 

バトスピは大嫌いだ。

 

だけど、私を罵る奴はもっと嫌いだ。上等だぜ。手段がバトスピだろうがなんだろうが、コイツをぶち倒してやる。

 

 

「誰が小学生だ、このデカブツ。私は今年で15。中3だぞコラ」

「あぁ?」

「上等だ。逆にアンタを肥やしにしてやるから、かかって来いよ」

 

 

親指を自分に向けながら、私は大男に告げた。この行動は、アイツを怒らせるには十分過ぎたみたいだ。

 

 

「ガハハハ。逆にオレを肥やしにするだと?…それはオレを元プロカードバトラー『鋼野ガトー』と知っての発言か?」

「そんなtheかませ犬みたいな名前聞いたことねぇぜ。いいからさっさとBパッド構えろ。こっちは今絶賛イライラ中なんだよ」

「……」

 

 

いつでもどこでもバトルスピリッツができる専用端末「Bパッド」を左腕に装着し、展開。額に青筋を浮かべているガトーも同様だ。

 

この世界では、いわゆる「バトスピ版デュエルディスク」と言えるこの端末を使ったバトルが一般的である。

 

 

「小娘が。肥やしは肥やしにしかなれないことを教えてやる」

 

 

私もガトーもBパッドにデッキを装填。バトルの準備を完全に完了させる。

 

そして。

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

コールと共に、私と、鋼野ガトーによるバトルスピリッツ、優勝者の願いを叶える、闇バトルの初戦が幕を開けた。

 

先攻はガトーだ。目力の強さから、私を倒そうと言う気概を感じさせる。

 

 

[ターン01]鋼野ガトー

 

 

「メインステップ。オレはモゲラをミラージュでセットし、ターンエンド」

手札:4

バースト:【無】

ミラージュ:【MOGERAⅡ-SRF】

 

 

ガトーはフィールドには何も召喚せず、バーストゾーンにミラージュとしてカードをセットし、ターンエンドを宣言。

 

次は私のターン。さぁ、大嫌いなバトスピで、ストレス発散だ。

 

 

[ターン02]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。召喚。契約ライダースピリット、仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1(1)BP2000

 

 

色鮮やかな様々な味の巨大グミが集結し、ジューシーに弾け飛ぶ。その中には、グミの鎧を持つ、前傾姿勢のライダースピリットが1体。

 

名はガヴ。私のデッキの核であるライダースピリットだ。

 

 

「ホッピングミだぁ?…それにそのグミの鎧。ふざけた名前と見た目しやがって。やる気あんのか」

 

 

ホッピングミフォームのポップな外見を目にするなり、ガトーがそう告げる。

 

気持ちはわかる。わかるけど。

 

 

「そうだ。バトスピなんて、私が一番やる気ねぇんだよ。アタックステップ!!」

 

 

ガタガタうるせぇ。ボコボコにしてやるぜ。

 

 

「契約ガヴでアタック。フラッシュ。契約ガヴの効果、ターンに一度、ガヴか菓族カードを破棄することで、カウント+4」

「+4!?」

 

 

私は手札1枚を破棄し、ホッピングミフォーム改め契約ガヴの効果を発揮。

 

すると、カウントの代用だろうか、契約ガヴの腹部にあるベルトから掌サイズの生きた小箱が4体、わらわらと出現した。

 

 

「な、なんだコイツら」

「ボサっとすんな。契約ガヴ、一撃食らわせてやれ」

 

 

ガトーが生きた小箱に驚く最中、契約ガヴはヒカリの指示に従い、グミの弾力を利用し、天高く跳び上がる。

 

 

「…ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鋼野ガトー

 

 

「ぐぉ!?」

 

 

ライダースピリットのお家芸、ライダーキックが炸裂。契約ガヴはガトーの前方に展開されたライフバリア1枚を破壊する。

 

 

「か、カウントを一度に4つも増やす契約カードがこの世に存在するとは」

「ごちゃごちゃうるせぇ。ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

たかがカウント+4程度で喧しい奴だ。さっさとターンを進めろよ。

 

 

[ターン03]鋼野ガトー

 

 

「メインステップ。ミラージュのモゲラの効果。メカゴジラを召喚する時、その軽減シンボル3つを満たす」

 

 

前のターンにセットしたミラージュの効果を今説明した。

 

と言うことは、このターン中にそれを使うってことか。

 

 

「メカゴジラ1974を召喚」

 

 

ー【メカゴジラ[1974]】LV1(1)BP3000

 

 

「召喚時効果、カウント+1し、自身に1コアブースト。LV2にアップ」

 

 

やっぱそうか。フル軽減で呼び出されたのは、有名なゴジラの機械版、メカゴジラ。効果によりガトーのカウントとコアが増える。

 

 

「行くぞ小学生。契約スピリット、Gフォース メカゴジラをLV1で召喚」

 

 

ー【Gフォース メカゴジラ】LV2(3)BP6000

 

 

本命が来た。ガトーのフィールドに2体目のメカゴジラが現れる。1体目とは違って一際大きく、一際強そうだ。

 

 

「バーストをセットし、アタックステップ。契約メカゴジラでアタック」

 

 

アイツの反撃が来た。まさか効果が何もないなんてことはないよな。

 

 

「契約メカゴジラのアタック時効果。カウント+2し、相手スピリット1体を手札に戻す。対象は当然、契約ガヴ」

「魂状態でフィールドに残す」

 

 

契約メカゴジラの口内より放たれる凍てつく光線。

 

契約ガヴはそれを受けて粒子化し、消滅する。だが瞬間には、私の側に色素を失った状態で帰還する。魂状態って奴だ。だけどこのままだとアタックもブロックもできない。

 

 

「契約メカゴジラのもう1つの効果。相手スピリットを手札かデッキに戻した時、1コアブースト。魂状態で残したか、だがアタックもブロックもできんぞ」

「知ってるよ。契約メカゴジラのアタックは、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華ヒカリ

 

 

契約メカゴジラの鋼鉄の拳が、私のライフバリア1枚を叩き壊す。

 

 

「もう1体でも来いよ」

「安い挑発に乗る程愚かじゃないぞ。ターンエンド」

手札:2

場:【Gフォース メカゴジラ】LV2

【メカゴジラ[1974]】LV2

バースト:【有】

ミラージュ:【MOGERAⅡ-SRF】

カウント:【3】

 

 

元プロと言うだけあって、流石にもう一度アタックしちゃくれないか。もう少しコアが増えた方が動き易かったんだけどな。

 

 

[ターン04]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。【契約煌臨】発揮。魂状態の契約ガヴを、ザクザクチップスフォームに契約煌臨」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】LV2(3)BP9000

 

 

魂状態となり、色素を失っていたガヴが、ポテトチップスの鎧とポテトチップスの形をした二振りの剣を持つライダースピリット、ガヴ ザクザクチップスフォームとして、フィールドへ復活する。

 

 

「グミの次はポテトチップス。ふざけたカードだ」

「ザクザクチップスの煌臨時効果。デッキ3枚オープンし、その中の対象カードを手札へ」

 

 

ザクザクチップスの効果が発揮。私はデッキから捲れた3枚のカードを一目視認するなり、一瞬でその中の内1枚のカードを選択し、手札へと加える。

 

 

「私が加えるのは、ネクサスカード、ブルキャンバギー。そして、ザクザクチップスの契約煌臨元にいる契約ガヴの効果。今加えたブルキャンバギーを破棄し、カウント+4」

 

 

再びカード1枚を消費し、契約ガヴの効果を発揮。ザクザクチップスの腹部のベルトから、生きた小箱が4体増え、合計8体となる。

 

この生きた小箱、よく見るとちょっと可愛いかも。

 

 

「4ターン目でカウントが8だと」

「今捨てたブルキャンバギーの効果。自身を配置」

 

 

ー【ブルキャンバギー】LV2(1)

 

 

私の背後へ、青と赤のキャンディーの形をした車輪を備えた車両が豪快に停車。

 

 

「アタックステップ。ザクザクチップスでアタック。その効果でカウント-1することで、相手スピリット1体からコア2個までリザーブに置く」

「!?」

「ブロッカー、メカゴジラ1974を消滅。斬り裂け」

 

 

1体の生きた小箱が、ザクザクチップスの腹部のベルトへ戻ると、ザクザクチップスは即座にベルトの回転式ハンドルを回し、それを消費。

 

そうすることで力が蓄えられたのか、ザクザクチップスは重ねたポテトチップスの形をした二刀の剣を振い、その刀身からポテトチップスの色をした斬撃を披露。見事にメカゴジラ1974の首を切断し、消滅へ追い込んだ。

 

 

「私のカウントが減った時、契約ガヴの効果。1枚ドロー。さらにブルキャンバギーの効果。カウントが5以上なら、トラッシュにあるソウルコアをザクザクチップスに戻す」

 

 

並べて来たカード達の力により、私はドローとコア回収を同時に行う。

 

 

「へぇ。あの子、バトスピは嫌いとか言いつつも、ちゃんとルールはわかってるんじゃない」

 

 

バトル場の観客席にて、黒いローブの女性、ウィンドが、これまでの私のプレイを観ながら、そう呟いた。

 

だが、その直後に「だけど」とも吐き捨てて。

 

 

「相手は元プロのカードバトラー。一筋縄では行かないかもね」

 

 

瞬間。

 

ウィンドの言葉によって生まれたフラグを回収するかのように、ガトーの伏せていたバーストカードが輝きを放つ。

 

 

「待っていたぜ、その攻撃をよぉ。自分のスピリットの消滅により、バースト発動。対G兵器スーパーメカゴジラ」

「!」

 

 

バーストカードが勢いよく反転。ガトーはドヤ顔でその効果を発動させて行く。

 

 

「デッキから3枚オープンし、その中のメカゴジラ全てをノーコストで好きなだけ召喚できる」

「契約デッキと見せかけて、まさかのガチャデッキかよ」

「カード3枚、オープンだ」

 

 

ガトーはデッキから力強く3枚のカードを捲る。

 

その3枚は、なんといずれもメカゴジラのカード。しかもコスト9の超大型カードだ。

 

 

「ガハハハ!!…来たぜ、ナノメタルメカゴジラ、3枚だ!!」

「は!?…3枚とも同じ!?」

「コイツら全て、ノーコスト召喚だ」

 

 

ー【対ゴジラ超重質量ナノメタル製決戦兵器:メカゴジラ】LV2(2)BP12000

 

ー【対ゴジラ超重質量ナノメタル製決戦兵器:メカゴジラ】LV1(1)BP10000

 

ー【対ゴジラ超重質量ナノメタル製決戦兵器:メカゴジラ】LV1(1)BP10000

 

 

「効果発揮後、スーパーメカゴジラもノーコスト召喚。これでオレ様のフィールドは5体のメカゴジラで埋め尽くされた!!」

 

 

ー【対G兵器スーパーメカゴジラ〈R〉】LV1(1)BP7000

 

 

1体のスピリットを倒してしまったばかりに、青い結晶体で構成されたナノメタルメカゴジラが3体と、背部にブースターを備えたスーパーメカゴジラの計4体のメカゴジラのスピリットが呼び出されてしまう。

 

 

「やってるだろコレ」

 

 

流石に私は不正を疑った。だけど如何なる不正も見抜けるBパッドでバトルしているから、多分ない。単純にあのデカブツの運命力が強いんだろう。

 

 

「やってなどいない。オレ様の熱いバトスピ魂にデッキが応えてくれたのだ」

「言い回しダサ過ぎだろ」

「ダサくなどない。ナノメタルメカゴジラでザクザクチップスをブロック。ブロック時効果でそのままそれをデッキ下に戻す」

 

 

ザクザクチップスが、ナノメタルメカゴジラを1体倒そうと、ポテトチップスの剣を振るう。だけど、全く刃が通らず、刀身の方が先に砕け散った。

 

直後にナノメタルメカゴジラの口内から光線を受け、塵となって消滅してしまう。

 

 

「契約ガヴは魂状態で残す」

「契約メカゴジラの効果。相手スピリットを手札かデッキに戻した時、1コアブースト。ナノメタルメカゴジラは、オマエのアタックステップ中は如何なる効果も受けず、疲労状態でブロックができる堅牢なる守護神」

 

 

ザクザクチップスが倒されたことで、契約ガヴがまた魂状態で私の側に帰還する。

 

ほぼ鉄壁の要塞と化したガトーのフィールド。今の私には、それを突破する手段はない。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【ブルキャンバギー】LV2

【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】(魂状態)

バースト:【無】

カウント:【7】

 

 

ならエンドを宣言するしかないよな。どう足掻いても突破口が開けない今、そうせざるを得ない。

 

でも見た感じ、まだなんとかできる範疇かもな。

 

 

「オレ様のターンだ。終わらせてやる」

 

 

不正を疑う程の運命力で5体のメカゴジラを従えた、ガトーのターンが始まる。

 

 

[ターン05]鋼野ガトー

 

 

「メインステップ。契約メカゴジラのLVを1に。それ以外のメカゴジラをLV2にアップ」

 

 

既にフィールドを仕上げたガトーは、手札のカードを展開せず、今存在するスピリット達のLVを調整した。

 

その後直ぐにアタックステップを宣言する。

 

 

「アタックステップ。ナノメタルメカゴジラでアタック。スーパーメカゴジラのLV2効果、このスピリットとソウルコアが置かれているスピリットはブロックされない。もっとも、オマエのフィールドにスピリットは1体もいないがな」

 

 

3体いるナノメタルメカゴジラの内1体が、私のライフバリアを破壊しようと動き出した。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉鉄華ヒカリ

 

 

ナノメタルメカゴジラは、身体中の水晶をドリルのように射出し、ヒカリのライフバリアを一気に2枚貫く。

 

 

「ナノメタルメカゴジラはダブルシンボル。一気にライフを2つ持っていかれるのは辛かろうよ。だが容赦はせん。これで終わりだ。2体目のナノメタルメカゴジラでアタック」

 

 

トドメのアタック宣言が成された。

 

これが通れば、私の残りライフは0となり、敗北する。

 

 

「ガハハハ。オレ様の願いのために、散れ!!」

「願い、まさか闇バトルに優勝して、何か叶えてもらおうって感じ?」

 

 

ナノメタルメカゴジラが迫り来る中、私はガトーに訊いた。このタイミングで「願い」なんて言われたら、その内容が気になるのは当たり前だ。

 

 

「そうだ。オレ様は闇バトルに優勝して、プロの世界に戻ると言う願いを叶える!!…そして、あの栄光を再び我が手に収めるのだ」

 

 

願いを高らかに公言するガトー。きっと、その頭の中には、自分がプロに復帰し、栄光を手にするビジョンが浮かび上がっているんだろう。

 

だけど。

 

 

「しょうもな。やっぱバトスピやってる奴ってろくなのがいないな」

「なに!?」

「訊いて損したよ」

 

 

事情は詳しく知らない。嘲笑いはしない。

 

だけどしょうもない。たかが紙遊びで強くなって、勝って栄光なんて、反吐が出るぜ。

 

 

「オマエだってバトスピやってんだろが。そこまで言うならオマエの願いはなんだ、言ってみろ」

「ねぇよそんなもん。強いて言うなら、バトスピやりたくないが、私の願いだ」

 

 

そこまで言い切ると、私は手札にある1枚のカードを引き抜き、それを自分のBパッドへと叩きつけた。

 

 

「フラッシュ【契約煌臨】を発揮。魂状態の契約ガヴを、ブリザードソルベフォームに契約煌臨!!」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ブリザードソルベフォーム】LV2(3)BP10000

 

 

魂状態の契約ガヴが、アイスクリームの形をした生きた小箱をベルトにセット。その後回転式ハンドルを回し、そのエネルギーを己へと蓄積。

 

カップコーンのアイスを纏ったような新たな姿、ブリザードソルベとなって、フィールドへ復活を果たした。

 

 

「そう言えば、前のターンにネクサス効果でソウルコアを回収していたな。だが所詮はBP10000。メカゴジラ軍団の敵ではない」

「このタイミングで豪語する奴は、大体負けるって言うのがお決まりだ。ブリザードソルベの煌臨時効果。LV2、3の相手スピリット1体をデッキ下に戻す」

「!!」

「まだアタックしていない、3体目のナノメタルメカゴジラをデッキ下へ。私のターンなら無敵でも、オマエのターンなら無防備だろ」

 

 

ブリザードソルベは口内から凍てつく吐息を放つと、ナノメタルメカゴジラはそれに氷漬けにされ、機能停止。粒子化し、消滅した。

 

 

「たかが1体処理したくらいでいい気になるな」

「ならねぇよ。フラッシュ、契約煌臨元の契約ガヴの効果。手札の対象カード1枚を破棄し、カウント+4。その後私のカウントを-1することで、コア2個以下の相手スピリット1体を破壊」

「!?」

「契約メカゴジラを叩き壊せ」

 

 

ブリザードソルベは、自身が握る赤い剣の刀身に、生きた小箱1体をセットすると、刀身をレール代わりにそれを射出。

 

生きた小箱は、契約メカゴジラの胴体を貫き、爆散させた。

 

 

「ナノメタルメカゴジラのアタックは、ブリザードソルベでブロック。今の私のカウントは10。ブリザードソルベの【OC:8】を達成している。よって、ブリザードソルベのBPは8000上がって、合計18000。ナノメタルメカゴジラを返り討ちにする」

「バカな……」

 

 

ブリザードソルベは、凍てつく吐息を自分の赤い剣へと吐きつけ、その刀身を氷で強化。

 

それを振い、ナノメタルメカゴジラを一刀両断。また爆散させる。

 

 

「オレの軍だが、たった1体のスピリットに3体もやられるだと」

「アタックできるスピリットは残り1体。アタックしとく?」

「……ターンエンド」

手札:3

場:【対G兵器スーパーメカゴジラ】LV2

【対ゴジラ超重質量ナノメタル製決戦兵器:メカゴジラ】LV2

【Gフォースメカゴジラ】(魂状態)

バースト:【無】

ミラージュ:【MOGERAⅡ-SRF】

カウント:【3】

 

 

また挑発には乗らなかったか。だけど、どちらにせよ、ここまで来たら、オマエの負けだ。

 

 

[ターン06]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。仮面ライダーヴラム プリンカスタムを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーヴラム プリンカスタム】LV1(1)BP4000

 

 

私は、キャラメルとろけるプリンの装甲を持つライダースピリット、ヴラムを召喚した。

 

 

「召喚時効果。デッキから1枚ドロー。その後、私のカウントを-2することで、デッキ下からも1枚ドロー。さらに私のカウントが減ったことで、手札からヴァレン フラッペカスタムを提示。このカードはカウントが減った時、4以上ならノーコスト召喚ができる」

 

 

ー【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV2(2)BP8000

 

 

次いで召喚したのは、チョコフラッペのような形をした装甲を持つライダースピリット、ヴァレン フラッペカスタム。

 

 

「召喚時効果。相手スピリット2体からコアを1個ずつリザーブに置き、その後、このターンの間、相手スピリット1体のBPを-12000。0になった時、それをデッキ下に戻す」

「!!」

「スーパーメカゴジラとナノメタルメカゴジラのコアを1個ずつリザーブに置いて、ナノメタルメカゴジラをデッキ下へ」

 

 

氷を纏うヴァレン フラッペカスタムの拳骨は、スーパーメカゴジラとナノメタルメカゴジラを殴打。

 

スーパーメカゴジラはLV1にダウンし、ナノメタルメカゴジラは氷塊となり、散って行った。

 

 

「堅牢なる守護神とはよく言ったもんだな。効果を受けないのは私のアタックステップ中のみで、それ以外はほとんどただの木偶の坊じゃんかよ」

「くっ。この小学生が」

 

 

悪口が随分苦し紛れになって来たな。良い気分だぜ。

 

 

「複雑に効果が絡み合うガヴのデッキを、初見で手足のように操るなんて。鉄華ヒカリ。思ってた以上にセンスの塊ね」

 

 

観客席にいる黒ローブの女性、ウィンドがそう呟いた。その口角は、何か悪巧みでも企んでいるかのように上がっていた。

 

 

「アタックステップ。ヴァレン フラッペカスタムでアタック。効果でデッキ下から1枚ドロー」

 

 

アタックステップを開始した。

 

ヴァレン フラッペカスタムの効果で1枚ドローすると、私は、フィールドにいるライダースピリット、ガヴ ブリザードソルベへと視線を向ける。

 

 

「ブリザードソルベの契約煌臨元、契約ガヴの効果。手札1枚を破棄。カウント+4。その後-1することで、コア2個以下のスーパーメカゴジラを破壊する」

「!?」

 

 

手札消費に合わせて、カウント代行の生きた小箱が4体生成。その内の1体が、ブリザードソルベの赤い剣の刀身をレール代わりに射出。弾丸となって、ガトーの最後のスピリット、スーパーメカゴジラを撃ち抜き、爆散させた。

 

 

「契約ガヴの効果で1枚ドロー」

「オレ様の鉄壁の布陣が、こうもあっさり突破されるとは……」

「ほざく暇があったら、さっさとコールしな」

「ぐっ……ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鋼野ガトー

 

 

「ぬぅ!?」

 

 

ヴァレン フラッペカスタムの拳骨が、今度はガトーのライフバリア1枚を殴り壊す。

 

 

「次だ、ヴラム」

「それもライフで受けてやる」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鋼野ガトー

 

 

「ぐぉ!?」

 

 

ヴラムの武器は弓。そこからエネルギー状の矢を放ち、ガトーのライフバリア1枚を射抜いて見せる。

 

これで彼の残りライフは2つ。ヒカリのアタック可能なスピリットは、ブリザードのみとなる。

 

 

「どうする。ここでサレンダーするか、それとも今、私に倒されるか」

 

 

私はガトーに訊いた。

 

勝負が佳境なのだと言う自覚と、緊張感を同時に与えるこの二択の問いかけ。ただ、根っからのカードバトラーは皆、ここに三択目を追加して来る。

 

 

「サレンダーなどするものか。ましてやオマエみたいなガキに負けなどもしないわ」

 

 

そう。こんな感じにな。

 

だけどそれは「私に倒される」選択をしたのも同然だ。

 

 

「そうか」

 

 

納得の旨を呟くと、私は無慈悲にも、自身のBパッド上にあるブリザードソルベのカードへと指先を添える。

 

 

「ブリザードソルベでアタック。フラッシュ、ブリザードソルベの【OC:8】の効果。ターンに一度、自身を回復させる」

「なに!?」

「これで1ターンに二度のアタックが可能」

 

 

ブリザードソルベはベルトの中心に植え付けられたアイスクリーム型の小箱を回転させ、エネルギーを充填。身体中に大量の冷気を纏う。

 

 

「終わらせろ、ブリザードソルベ!!」

 

 

私の声に応えるように、ブリザードソルベは口内から絶対零度の吐息を放つ。その吐息は、数本のコーンカップのアイスクリーム型の刃となって、ガトーのライフバリアを貫く。

 

 

〈ライフ2➡︎1➡︎0〉鋼野ガトー

 

 

「ぐぁぁあ!?!」

 

 

ガトーのBパッドから「ピー……」と言う甲高い機械音が流れ、私こそが勝者であることを告げる。

 

 

「ま、負けた。このオレ様が、あんなガキ相手に」

 

 

元プロのカードバトラーと言う立場で、「小学生」だと罵っていたそこら辺の小娘に負けたからか、ガトーは相当へこんでいる。

 

ざまぁ見ろ。

 

 

「久しぶりにやったけど、バトスピ、やっぱ全然面白くないな」

 

 

役目を終え、徐々に粒子化し、消滅して行く3体のライダースピリット達の背中を目に映しながら、私は欠伸と共にそう呟く。

 

 

「だぁムカつく。何が一回やれば沼るだ。あのおばさん、今度会ったらただじゃおかないからな」

 

 

バトルが終わっても尚、フラストレーションが抜けない。

 

私は観客席にいるウィンドがいることも、それを聞かれていることも知らずに、彼女への愚痴をこぼす。

 

 

「バトスピなんて、何回やっても沼んないっての。大体バトスピさえなければ……」

 

 

バトスピさえなければ。

 

そう考えた瞬間。私の脳内で点と点が線で結ばれ、ある計画を思いついてしまった。

 

そう。思いついたんだ。この世の大抵の人々を驚愕させてしまうであろう、私の脅威の計画を。

 

 

「そうじゃん。バトスピさえなければいいんじゃん!!…じゃあ闇バトルで優勝して、バトスピがこの世から消してって願えばよくね?」

 

 

正直、闇バトルのあれこれに関しては未だ疑心暗鬼だけど、可能性が1%でもあるのならば、やってみる価値は十分にある。

 

そうだ。バトスピなんて、この世から消えて仕舞えばいいんだ。

 

 

「うわ、それ良いわ。流石だぜ私!!」

 

 

自分の天才的閃きに感動した私は、今日あったイライラした出来事を全て忘れていた。

 

そんな私を観客席から眺めていたウィンドは、また笑みを浮かべる。

 

 

「フフ。なんて魅力的な子なの。この世で最もおかしな力を持つカードが見初めたのは、同じくおかしなカードバトラーだったか」

 

 

鉄華オーカミの娘である私、鉄華ヒカリの物語は、真っ直ぐ英雄譚を突き進んで行った父さんのものとは違って、歪で歪んでいて、尚且つおかしい。

 

今日から、私の、バトルスピリッツをこの世から抹消するための物語が幕を開ける。





次回、第2話「仮面ライダーガヴ」

******


《キャラクタープロフィール》

【鉄華ヒカリ】
性別:女
年齢:14
身長:147cm
誕生日:11月11日
髪:赤いショートヘア
使用デッキ:【ガヴ】
概要:主人公。中学3年生。バトスピで世界を救った鉄華オーカミの娘。本人はバトスピが嫌いだが、そのせいで勧誘は絶えない。男勝りでぶっきらぼうだが、根は優しく情に厚い。


******


今作はメインタイトルから見てもわかる通り、「バトルスピリッツ 王者の鉄華(https://syosetu.org/novel/250009/)」の続編です。以前は途中で断念しましたが、どうしても完結まで行きたいと思い、執筆を決意しました。因みに内容や設定は僅かに変化してます。
あまり長くはやりませんが、今までのバトルスピリッツに別れを告げるような作品になればなと思っております。
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